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契約書に暴力団排除条項を盛り込むとどのような効果があるのでしょうか?

新規の取引先と契約を締結する際に、暴力団排除条項を盛り込むべきと耳にするのですが、盛り込まない場合と比べて、実際にどのような効果があるのでしょうか。また、具体的にどのように記載すべきでしょうか。
暴力団排除条項(以下「暴排条項」といいます。)は、契約締結後に契約の相手方が暴力団などの反社会的勢力であると判明した場合、取引関係から排除することができる旨を定める条項をいいます。暴排条項を定めることにより、反社会的勢力と取引関係に入ってしまった場合に取引を解消することが容易となります。
回答者
増田 大亮 弁護士
法律事務所あかつき

暴排条項とは

暴排条項とは、契約書、規約、取引約款等に設けられる条項であって、暴力団をはじめとする反社会的勢力が当該取引の相手方となることを拒絶する旨や、当該取引が開始された後に取引の相手方が反社会的勢力であると判明した場合に契約を解除してその相手方との取引を解消することができるを定めた条項をいいます。

暴排条項が求められるようになった経緯

政府は、平成196月、「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」(以下「政府指針」といいます。)を示し、「取引を含めた一切の関係遮断」を挙げました。

また、政府指針は、基本原則に基づく3つの対応を明らかにしているところ、平素からの対応の1つとして、「反社会的勢力が取引先や株主となって、不当要求を行う場合の被害を防止するため、契約書や取引約款に暴力団排除条項を導入する」ことを挙げています。

これに加えて、2011年までに、全国すべての都道府県において、暴排条項を契約書等の書面に設けることの努力義務などを定めた暴力団排除条例が定められました

暴排条項を設けることのメリット・設けないことのデメリット

暴排条項を契約書に設けた場合、取引を開始した相手が反社会的勢力であることが後日に判明した場合、そのことを理由として契約を無催告で解除等して取引を解消することができます。この点が暴排条項の最も大きなメリットとなります。

また、暴排条項を契約書に設けることは、契約締結段階で反社会的勢力に対するけん制機能にもなります

他方、暴排条項を契約書に設けていない場合、取引を解除するために、錯誤、債務不履行等の様々な契約終了事由を駆使して契約解除を図ることになりますが、これらの事由による取引の解消は往々にして簡単ではありません。その結果、反社会的勢力と契約を継続しなくてはならず、場合によっては反社会的勢力と関係を有する企業と評価されてしまうおそれがあります

暴排条項の記載例

国をはじめとした行政機関、各業種団体は、暴排条項のモデル条項を公表しています。例えば、契約書に次のような暴排条項を設けることが考えられます。

契約書に暴排条項を設けるにあたっては、①事後に相手方が反社会的勢力であることが判明した場合に解除が容易になるような内容であること②暴排条項の内容が文言上明確かつ適正であることをよく確認するとよいでしょう。

【記載例】
第○条(反社会的勢力の排除)
1 甲および乙は、相手方に対して、互いに、自らおよびその代表者、役員または実質的に経営を支配する者(以下「役員等」という。)が、現在、暴力団、暴力団員、暴力団員でなくなった時から5年を経過しない者、暴力団準構成員、暴力団関係企業、総会屋等、社会運動等標ぼうゴロまたは特殊知能暴力集団等、その他これに準ずる者(以下「反社会的勢力」という。)に該当しないこと、および次の各号のいずれにも該当しないことを表明し、かつ将来にわたっても該当しないことを確約する。
① 反社会的勢力が経営を支配していると認められる関係を有すること
② 反社会的勢力が経営に実質的に関与していると認められる関係を有すること
③ 自己、自社もしくは第三者の不正の利益を図る目的または第三者に損害を加える目的をもってするなど、不当に反社会的勢力を利用していると認められる関係を有すること
④ 反社会的勢力に対して資金等を提供し、または便宜を供与するなどの関与をしていると認められる関係を有すること
⑤ 役員または経営に実質的に関与している者が暴力団員等と社会的に非難されるべき関係を有すること
2 甲または乙は、相手方が前項の定めに反することが判明した場合、催告することなく、本契約を解除することができる。
3 前項に基づき本契約が解除された場合、解除された当事者は、解除による損害について、相手方に対して一切請求することはできない。

まとめ

反社会的勢力排除およびコンプライアンス確立の姿勢が強く求められている昨今、契約書上に暴排条項を設ける重要性はますます高まっています。既存の契約書に暴排条項が設けられていない場合、早急に暴排条項を導入するようにしましょう

 

※この記事は、2024年9月11日に作成されました。

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