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海外企業とのジョイントベンチャー契約での注意点を教えてください。

海外企業とジョイントベンチャーを立ち上げることになりました。特にジョイントベンチャー契約を締結するうえで、どのような点に注意すべきでしょうか。
海外企業とのジョイントベンチャー契約では、事業目的や領域を明確に定義し、出資比率に基づく多数株主の支配権と少数株主の拒否権を契約に定めます。株主総会や取締役会での意思決定ルールを定め、デッドロック回避策や資金調達の公平性を確保します。資本構成を維持するための株式譲渡制限を設け、契約終了事由も明確に規定します。これらの対策が、JVのスムーズな運営と長期的成功を支える鍵となります。
回答者
和田 圭介 弁護士
オリンピア法律事務所

合弁会社の体制

ジョイントベンチャー(以下「JV」といいます。)を立ち上げる際、まず重要なのは、JV事業の目的やJV会社の事業領域を明確に定義することです。JV事業の目的が不明確なままでは、事業運営において双方の理解にズレが生じ、将来的なトラブルの原因になりかねません。

JVでは合弁会社で運営するケースが多く、その出資比率が各パートナーの支配権に大きく影響します。過半数を持つ株主は、現地の会社法に基づいて会社の重要な決議事項に関する決定権を持ちます。他方、少数株主は、自社の権利を守るため、JV契約で一定の議題に拒否権を確保することが重要となります。典型的な拒否権事項には、会社の解散、重要な資産の売却、合併・買収など、会社の存続に重大な影響を与える事項が含まれます。これにより、少数株主も経営に関与し、重要事項について発言権を持つことができます。

少数株主としては、これらのJV契約の内容を会社定款に反映させることが望ましいです。定款に反映することで、契約違反が発生した際に当該行為を無効化するだけでなく、損害賠償請求やExitオプション(売却オプション)を行使する手段として活用できるようになります。

合弁会社の運営

JVでは、株主総会や取締役会における機関設計が必要です。

取締役会レベルでは、取締役の人数、取締役の選任権、開催頻度、開催方法、招集権者、議題提出権、決議事項、定足数、決議要件、議長、議事録作成、使用言語等を決定します。

株主総会においても同様に、これらの事項を定めます。これらは、現地の会社法を踏まえて取り決めることが重要です。

さらに、代表取締役(CEO)や財務責任者(CFO)等の役職ポジションを定めたり、実務者委員会などの機関を置く場合もあります。

50:50の出資比率や、少数株主が拒否権を行使する場合、デッドロックが発生する可能性があります。デッドロックとは、意思決定が進まなくなる状態を指し、これを回避・解消するために再協議の仕組みや株式売却の仕組み(たとえば、Put Option/Call Option)、清算手続き等を設けることが有効です。

また、JVの資金調達においては、株主・第三者からの出資や、株主・銀行からのローンなどが選択肢として考えられますが、これらが出資比率や運営権に与える影響を十分に検討する必要があります。資金負担の公平性を確保するため、出資比率に基づいた資金負担を徹底することも重要です。

資本構成の変更

まず、持株比率を維持することが原則となります。そのために新規の株式発行や株式の譲渡に関する規制を設け、既存株主の持株比率が不当に変更されないようにします。新株発行時には、既存株主に新株引受権を付与し、支配権を保護します。

次に、定款やJV契約に基づく譲渡制限を設けることで、予期しない第三者の参入を防ぎます。さらに、株式譲渡時には契約上の義務が適切に引き継がれることを確認する必要があります。

さらに、契約終了事由を明確に規定しておくことが重要です。JV期間の満了、契約違反、事業目的の達成、一定の損失額の累積などを契約書に明記することで、ダウンサイドシナリオを限定できます。

まとめ

以上のポイントを踏まえ、JV契約を締結する際には、株主間のバランスを維持しながら、これらの事項を適切に規定することが成功の鍵となります。事前に様々なシナリオを検討し、将来的なトラブルを回避する仕組みを持つことで、パートナーシップを円滑に進めることができます。

 

※この記事は、2024年10月1日に作成されました。

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