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エンジェル投資家から出資を受ける際に注意すべき点を教えてください。

エンジェル投資家から、投資したいとの申し出がありました。投資を受ける際に最低限注意すべき点を教えてください。
最低限、エンジェル投資家が反社会的勢力にあたらないかの確認が必要です。できれば、ベンチャー投資経験があるエンジェル投資家であるかも、本人や起業家仲間等に聞く等として確認をした方が良いです。
回答者
石鍋 文人 弁護士
プロコミットパートナーズ法律事務所

反社チェック

株主に反社会的勢力がいた場合、今後の資金調達、M&AまたはIPO等の際に、重大な支障となります。そのため、エンジェル投資家が反社会的勢力にあたらないかの確認は必須です

また、完全に防ぐことは難しいですが、事後的に犯罪をしていたなどの問題が発覚するケースもあります。そのため安易に投資を受けることはせず、起業家仲間や他の投資家に、当該エンジェル投資家に悪い噂がないか等は、必ず聞くようにした方が良いです。

エンジェル投資家と締結する契約の内容

エンジェル投資家から投資を受ける際は、増資等の登記をするために、必要最低限の事項のみを盛り込んだ内容の総数引受契約のみを締結することが多く、エンジェル投資家に、権利を付与するとしても、インフォメーションライツ(事業年度ごとに財務諸表等を送付する等)程度とすることが通常です。

VC(ベンチャー・キャピタル)が求めるような、投資家の権利(オブザーバー権、株式買取請求権等)を付与する内容の投資契約の締結を求めるようなエンジェル投資家であっても、必ずしも悪意があるわけではありません。しかし、要求水準が高いか、ベンチャー投資経験が浅い(契約内容を理解せずに他の案件の契約を流用し提示している。)可能性があります。

このようなエンジェル投資家の場合、投資を受けた後、過剰な要求がなされるなどのトラブルが生じる可能性があります。また、例えば、ベンチャー企業の多くは、資金調達等ために頻繁にかつ、早急に株主総会を行う必要が生じることも多いため、事務手続の省略や株主総会までの期間短縮のために、株主全員の同意を得て株主総会の招集通知(会社法299条)の省略(同法300条)や書面決議(同法319条)を行いますが、そのような対応に対して協力が得られない可能性があります。

エンジェル投資家から内容に疑問のある契約書を提示された場合には、弁護士等の専門家に相談することをお勧めします。

エンジェル税制

エンジェル投資家は、エンジェル税制の適用を受けられるか否かを、投資するか否かの重要な考慮としていることが多いです。そのため、適用を受けられると説明したにも拘わらず、事後的にエンジェル税制の適用を受けられないことが発覚した場合、トラブルになる可能性があります。投資を受ける前に、顧問税理士等に確認する等して、エンジェル投資家にエンジェル税制適用の有無を正確に説明できるようにしておく必要があります。

金融商品取引法上の規制

エンジェル投資家からの投資を募集するにあたり、50名以上に対して株式等の有価証券の取得を勧誘した場合、「有価証券の募集」(金融商品取引法2条3項2号、金融商品取引法施行令1条の6)に該当する可能性があります。「有価証券の募集」を行っていると判断された場合、有価証券届出書の提出義務(金融商品取引法4条1項)および有価証券報告書の提出義務が課されますが(同法24条1項3号)、ベンチャー企業がその対応をすることは現実的ではありません。

したがって、SNS等で、多数の方に投資を呼びかけることは避けた方が良いです。なお、3か月以内に複数回株式等の発行を行う場合や、多数の者に対して投資を呼びかける場合には、弁護士等の専門家に相談することをお勧めしします。

資本政策の不可逆性

基本的に、一度、普通株式を割当または譲渡すると、当該株主からの協力を得ずに株式を強制的に取り上げることは、極めて難しいです。仮に、強制的に取り上げる法的な方法が採れたとしても、多大な費用、時間、労力がかかります。
したがって、金融機関からの借り入れや、事業から得た利益を運転資金とするVC等から資金調達することも検討し、最終的に当該エンジェル投資家から投資を受けるメリットとデメリットを、よく検討された方が良いと考えます。

この記事は、2024年2月19日に作成されました。

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