TOPQ&A記事会社株式を生前に後継者へ譲渡するうえで何に気を付けたら良いですか。
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会社株式を生前に後継者へ譲渡するうえで何に気を付けたら良いですか。

相続で揉めないように、会社株式は生前に後継者へ譲渡したいです。生前贈与するうえで、どのような点に注意すべきでしょうか。
生前贈与を行う場合、後継者に会社株式の取得対価としての金銭負担は生じませんが、会社株式が特別受益として遺留分算定の基礎財産に算入され、他の相続人から遺留分侵害額請求の対象となり得る点や、贈与税の負担が課せられる点に注意する必要があります。
回答者
岡崎 仁美 弁護士
虎ノ門さくら総合法律事務所

はじめに

会社株式の生前贈与は、親族内承継における相続対策の一つの方法です。生前贈与は、先代経営者と後継者の間だけで確実に会社株式の承継が実現されるというメリットがあります。

また、相続法の改正により、遺留分算定の基礎財産に算入される相続人への生前贈与(特別受益)が、原則として相続開始前10年以内になされたものに限定されたため(民法10443項・1項)、早期に生前贈与された場合には、遺留分の侵害自体が生じない可能性があります。

会社株式の承継手段としての生前贈与は、その法的安定性が格段に増してきているということができます。

遺留分の除外特例・固定特例

もっとも、生前贈与が相続開始前10年以内になされ、他の相続人が遺留分侵害額請求権を行使した場合には、生前贈与を受けた後継者は、遺留分侵害額に相当する金額の支払いを求められます。その結果、会社株式を処分せざるを得なくなり、株式が分散するなど、相続の場面で揉める原因となり、かつ、事業承継にとって大きなマイナスになる可能性も潜んでいます。

 

そこで、このような遺留分による紛争や会社株式等の分散を防止するための対応策として、経営承継円滑化法は、「遺留分に関する民法の特例」(経営承継円滑化法3条ないし10条、以下「民法特例」といいます)を規定しています。

民法特例として、具体的には「遺留分の除外特例」と「遺留分の固定特例」があります。

遺留分の除外特例とは、先代経営者から後継者に会社株式を生前贈与し、後継者と推定相続人全員が会社株式を遺産から除外することについて合意をすることによって、遺留分を算定するための財産の価額から会社株式を除外することができるという特例です。

遺留分の固定特例とは、生前贈与において、後継者と推定相続人全員の間で、価額を固定する合意をすることにより、生前贈与時の株式の価額に固定できるというものです。仮に会社株式が生前贈与時よりも、相続時点で価額が増えていたとしても、生前贈与時の価額で固定するという特例です。

民法特例が適用される要件

特例中小会社であること

中小企業のうち3年以上継続して事業を行っている会社です。ただし、上場している株式、店頭売買有価証券登録原簿に登録されている株式を発行している株式会社は除かれます。中小企業者の範囲は、経営承継円滑化法2条のとおりです。

先代経営者(旧代表者)

特例中小企業者の代表者であった者です。

後継者

先代経営者(旧代表者)からその特例中小企業者の株式等の贈与を受けた者です。

推定相続人

相続開始時に相続人となるべき人のうち、兄弟姉妹や甥姪以外の人です。

当事者間の合意

遺留分に関する民法特例を適用するには、当事者が合意し、合意書を作成することが必要です。

民法特例を適用する手続き

当事者間で遺留分特例の適用について合意をします。

その後、合意をした日から1ヶ月以内に、後継者は、所定の申請書に必要書類を添付して、経済産業大臣に提出をします。経済産業大臣が書類を確認し、不備がなければ申請者へ確認書を交付します。

経済産業大臣による確認を受けたら、その日から1ヶ月以内に後継者は家庭裁判所へ「合意の許可の申立て」を行います。家庭裁判所において許可が認められ、審判が確定したら合意の効力が発生することとなります。

まとめ

遺留分に関する民法の特例を適用できると、遺留分トラブルを防ぎやすくなり、円滑な事業承継に役立ちます。本コラムでは、遺留分に関する民法特例をご紹介しましたが、贈与税の課税に対して、暦年課税、相続時精算課税制度、事業承継税制等を検討することと合わせて、会社株式を後継者に生前贈与する際に検討いただくことが有用です。

 

※この記事は、2024年10月25日に作成されました。

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