TOPQ&A記事海外企業から共同研究の話が来ました。契約の際の留意点を教えてください。
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海外企業から共同研究の話が来ました。契約の際の留意点を教えてください。

アメリカの会社から共同研究を持ち掛けられました。契約書のドラフトが送られてきたのですが、どのような点に気を付けて交渉をし、契約を締結したら良いですか?

海外の会社との共同研究契約においては、まずは研究の目的や範囲などの契約の大枠・基本的な条件を固めた上で、研究の成果である知的財産権の帰属など、ポイントとなるところをしっかりと押さえて、契約の交渉・契約書の作成をすべきです。
回答者
松本 慶 弁護士
橋口・松本法律事務所

はじめに

海外の会社との契約においては、コミュニケーションに食い違いが発生することも少なくありませんし、契約書も英語で作成することになることが予想されます。本稿では、共同研究契約を例にとって、契約の際の留意点を検討します。

契約の大枠や基本的な条件

まず、契約書の大枠や基本的な条件について、しっかりと確認の上、議論をする必要があります。

これは、契約において実現したい内容の肝となる部分であり、共同研究契約では、研究の目的範囲、研究をするに当たっての基本的な条件ということになるでしょう。場合によっては、タームシートのようなものを作成して共有し、お互いの認識を確認しても良いですし、そうでなくても、会議録のような書面を作成して認識の確認をすることがおすすめです。

共同研究契約のポイント

共同研究契約においては、まず研究の目的や範囲、研究に当たっての基本的な条件を定めることが重要になってきますが、研究に当たっての基本的な条件としては、研究の場所スタッフィング費用負担などを定めることになるでしょう。

しばしば問題となるのは、研究の成果によって発生する知的財産権情報財の帰属です。場合によっては、特許の出願への対応等についてまでかなり詳細に定めることもあります。一方、研究の成果によって発生する知的財産権や情報財と、元々有していた知的財産権や情報財との区別が難しくなる場合もありますので、そのあたりはしっかりと意識しておく必要があります。

また、研究の分野や内容によっては、各国での規制なども問題となり得ますので、留意しておく必要があります。

以上のようなところが一般的には問題となるところですが、契約書のドラフトについては、しっかりと読み込んでこちらの意図していないことが含まれていないか、あるいは理解できないところがないか、などを十分にチェックすべきです。

さいごに

共同研究契約に限らず、契約において(特に海外事業者との契約において)、もっとも避けるべきは、契約書に記載されている権利・義務の内容やリスクを十分に理解せずに契約に至ることです。

そのような事態を避けるために、海外の事業者との間における契約の作成や交渉に慣れている専門家のサポートを受けることも、積極的に検討すべきです。

この記事は、2024年1月22日に作成されました。

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