TOPQ&A記事パワハラにならない部下指導の仕方を知りたいです。
SHARE

パワハラにならない部下指導の仕方を知りたいです。

最近、パワハラだと言われることを恐れて部下を適切に指導できない管理職が増えてきたと感じています。
パワハラと指導を線引きするのが難しいのですが、指導する側はどのような基準を持つべきなのでしょうか。
パワハラと指導は、「対等な立場であっても使う言葉か」を基準としましょう。上司と部下の関係に甘えが生じ、つい行き過ぎてしまうのがパワハラですので、感情をコントロールできているか、という観点で線引きをしましょう。
回答者
池辺 健太 弁護士
池辺法律事務所

対等な立場であっても使う言葉か、を基準とする

パワハラと言われることを恐れて、部下指導に及び腰になってしまう、と悩む管理職やマネージャーが増えています。

パワハラとは、厚生労働省の定義からしても、「業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの」がこれに該当するため、通常の指導がパワハラになることはありません。しかし、どこからが「業務上必要かつ相当な範囲を超えた」こととなるのか、心の中で基準を設定していなくては、しっかりとした部下指導はできません。

そのため「対等な立場であっても使う言葉かどうか」を基準として意識し、パワハラを避けることが、私のお勧めです。

上司と部下の関係では、上司の立場に甘えて、強い言葉や感情的な発言をしてしまうことがあります。これがパワハラの原因です。そのため、上司と部下ではない、対等な人、社外の人、あるいは、あまり親しくない知人と話す際に使うような言葉遣いと態度をとっているのであれば、指導がパワハラにあたることはありません。

上司と部下の関係に甘えない

対等な人であっても、あってはならないミスをしたときや、非常識な行動にでたときは、「それはおかしい。」「何をやっているんだ。」という言葉が出ると思います。

しかし、ミスを指摘するような場面であっても、対等な立場の人に対して「お前のような人間はクズだ、人生の落伍者だ。」「お前の顔も見たくない、この給料泥棒が。」といった言葉は出ないでしょう。これらの言葉は、上司から部下へのパワハラ、といった場面で出てしまうような言葉です。

なぜ、対等な人には出ないような言葉が、上司から部下には出てしまう危険があるのでしょうか?

それは、パワハラが「上司と部下」の関係に甘えている状況から、生じるものだからです。

毎日のように「上司と部下」として、立場の優位性に慣れきってしまうがゆえに、無意識のうちに、心に甘えが生じます。「自分は偉いんだから、こういった言動をしてもいいのだ。」といった、無意識に生じる、この甘えが、強すぎる言動や、侮辱的な発言を引き起こし、パワハラが発生するのです。

感情をコントロールするのも仕事のうち

上司から部下への言動を適切なものとするためには、まず感情をコントロールする必要があります。

これからの時代、感情のコントロールは、管理職に必要な1つのスキルであると考えましょう。

指導の際に感情的になると、メッセージが歪んで伝わります。伝えるべきことは伝わらず、部下のモチベーションは低下し、パワハラとして問題とされるリスクも高まります。

感情をコントロールするためには、まず「怒っている。」「がっかりしている。」等の自分の感情に気づき、それを認識することが重要です。

また、感情が高ぶった場合は、一度冷静になり、どういった言葉で指導すべきか、指導計画を思案するなど、時間を取ることが効果的です。重要なフィードバックを行う際には、事前に話す内容を整理し、メモを用意することもお勧めです。

まとめ

パワハラを避けつつ効果的に部下を指導するためには、「対等な立場であっても使う言葉」を基準とし、上司と部下の関係に甘えず、感情をコントロールすることが重要です。

冷静な態度とフィードバックを心掛ければ、あなたの指導がパワハラと誤認されることはないはずです。また、会社側としても、適切な指導についてまで、パワハラだと誤った判断をすることは避けましょう。

以上を心掛けることで、言うべきことは言うが、ハラスメントはない、明るく生産性の高い組織を目指すことができます。

 

 

この記事は、2024年5月30日に作成されました。

関連Q&A

当社のリモートワーク従業員の管理方法は、ハラスメントにあたりますか?
当社では、リモートワークを行う従業員に対し①勤務時間中は常時オンラインで顔を映すこと②2時間に1回業務報告を行うことを義務付けています。先日従業員から、上記①②はハラスメントであるとのクレームが入ったのですが、これらはハラスメントにあたるのでしょうか?
職場内でのパワハラ対策目的での録音を禁止できますか?
最近ニュースで、パワハラ対策目的で勤務中に録音し証拠にするケースがあると耳にしました。当社では営業秘密の観点から一切の録音は禁止したいのですが、従業員に「パワハラ対策が目的です」と主張された場合でも、録音は禁止できるのでしょうか。
どうすれば退職時のストックオプションの持ち出しを禁止できますか?
現在、当社のストックオプションは、退職時にも持ち出せる設計となっています。 しかし、この度役員が一人退職するとのことで、ストックオプションの持ち出しを禁止したいです。ストックオプションの持ち出しを禁止するにはどうすればよいですか?
外国人を従業員として採用する場合の留意点について教えてください。
グローバル化に伴い、当社も海外取引が増加しています。外国語で交渉したり、外国語で作成された書類を正確に理解したりできる外国人材の必要性を感じています。そこで国内外から外国人材を採用したいと思っています。外国人採用における基本的な留意点を教えてください。
パワハラをしたとされる当事者が否認している場合の対応を教えてください。
当社の従業員から「上司のパワハラに耐えられない」との相談を受けました。しかし当該上司に確認をしたところ「思い当たる節がひとつもない」とのことでした。パワハラをしたとされる当事者がパワハラの存在を否認している場合、どのように対応すればよいでしょうか?