TOPQ&A記事広告にタレントを起用する際、契約上どこに気を付けるべきでしょうか?
SHARE

広告にタレントを起用する際、契約上どこに気を付けるべきでしょうか?

製品広告を打つにあたり、今回初めてタレントを起用することになりました。タレントの所属事務所と広告出演契約を結ぶのですが、どのあたりに気を付けるべきでしょうか?
広告出演契約は、タレントが広告に出演すれば原則として債務の履行は完了します。そのタレントが製品のイメージを壊すような行為をしないことについては、契約書にあらかじめ記載しておかないと当然には認められません。また競業他社の広告に同時期に出演しないことも同様です。それらの点に注意する必要があります。
回答者
石上 麟太郎 弁護士
石上法律事務所

タレントを用いた広告の効用とリスク

人気のある旬のタレントを広告に起用すると、製品や会社の知名度を一気に上げることが可能です。しかし、タレントも生身の人間であり、しかも芸能界は浮き沈みが激しく誘惑も多い世界です。そこで、広告に出演したタレントがスキャンダルを起こすと、それに巻き込まれ製品等のイメージがダウンするリスクがあります。

広告出演契約の法的性質

広告出演契約におけるタレントの債務の内容は、広告に出演することです。そこで、タレントの側としては広告に出演すれば原則として義務を履行したことになります。しかし、広告は、タレントの持つ顧客誘引力を最大限使い、製品の知名度を上げイメージアップを図ることにありますが、広告出演後に、不倫や薬物の使用疑惑などのスキャンダルが生じると今度はマイナスのイメージが製品にも及びます。また、広告を放映等している期間中にライバル会社の製品の広告に出られることもマイナスの効果が生じます。

広告出演契約を締結する際のポイント

単に広告に出演する旨について合意するだけでは上記のようなリスクに十分に対応することができません。そこで、付随的義務として製品や企業のイメージや信用等にダメージを与えないことも定める必要があります。具体的には製品のイメージを毀損するようなスキャンダル等が発覚した場合には違約金を支払う等の条項を契約書に入れておく必要があります。

また、競業他社の広告に、出演した広告が放映等されている一定期間内には出演しないことも、その旨の合意をしないと当然には認められません。これまでは、芸能界の当然の慣行として競業他社への出演は自己規制されていました。しかし、今日においては自らが立ち上げた新しい芸能事務所に所属するユーチューバーなど、これまでの芸能プロダクションとは無縁なタレントもおり、芸能界の不文律に任せてはいられない状況が生じています。そこで契約書に明記しておく必要があります。

まとめ

タレントは顧客誘引力や知名度を有していますが、その一方スキャンダルや競業他社の広告への出演等のリスクも有しています。そこで、タレントを広告に用いるにあたっては、製品や企業のイメージを毀損せず、一定期間は競業他社の競合する製品等の広告には出ないなどの付随的義務と違反した場合の損害賠償等の条項を契約書に定めることに留意する必要があります。

 

※この記事は、2024年7月1日に作成されました。

関連Q&A

広告審査の流れと気を付けるべきポイントを教えて下さい
当社では今後広告に力を入れていく予定のため、広告審査体制も整えたいと考えています。どのような流れで審査を行えばよいでしょうか。また、どのような点に気を付けて審査を行うべきでしょうか。
ベンチャー企業が弁護士に依頼すべき事項の判断基準がわかりません。
弊社は100名以下のベンチャー企業ですが、これから人員や事業を拡大していく予定です。外部の弁護士に依頼・顧問弁護士に依頼・社内対応すべき事項について、どのような判断基準を持てばよいでしょうか?
任期の途中で取締役が死亡した場合、どのように対応すれば良いですか?
任期の途中で取締役が死亡した場合、どのような手続きをとればよいですか? 報酬や退職慰労金はどうなるのでしょうか?
会社が破産して個人で債務整理する場合、どのような選択肢があるのでしょうか。
会社が破産した場合、個人でも債務整理をすることになるだろうと考えています。債務整理をする場合、いくつか種類があるようなのですが、それぞれどのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか。
経営者保証ガイドラインで破産免除になるのはどのような場合ですか?
会社の経営が厳しく、廃業を考えているのですが、私は会社に個人保証を提供しているため、会社が破産した場合は私個人も破産するのか不安です。 救済措置として「経営者保証ガイドライン」というものがあると聞いたのですが、どのような場合に破産免除になるのでしょうか。