TOPQ&A記事カスタマーハラスメントにどのように対応したらいいでしょうか。
SHARE

カスタマーハラスメントにどのように対応したらいいでしょうか。

最近、当社の商品に対して、言いがかりともいえる苦情を言い、くり返し電話をしてきては、商品の返品や交換を何度も求めてくるお客様がいます。このようなお客様にはどのように対応したらいいでしょうか?
自社のビジネスの特徴を踏まえて、説明を尽くす時間の長さについて合理的な基準を設けるなど、カスタマーハラスメントと判断する基準を設定しましょう。それを超える対応に至ったり、対応すべき要求を超える不当要求になったりした場合には、カスタマーハラスメントであるとして毅然と拒否できる社内体制を整備することが肝要です。
回答者
荒川 仁雄 弁護士
荒川・荒木法律事務所

BtoCのカスタマーハラスメントの法的関係からの分類

ご質問の内容はBtoCのビジネスにおけるクレームと考えられます。クレーマーとの法的関係に着目してBtoCのクレームを分類すると、①契約関係にあることに起因するクレームと②契約とは無関係に行われるクレームの二種類があります。クレームが行き過ぎた結果がカスタマーハラスメントになります。

契約関係にあることに起因するクレームがカスタマーハラスメントになる基準

①の契約関係にあることに起因するクレームは、クレームに対応すること自体は契約上の付随義務であるといえるでしょう。したがって、苦情の内容に根拠があるのかについて検討を行い、回答することは義務であり、その間はカスタマーハラスメントではないと考えられます。

しかし、その内容に根拠がないことが判明して合理的説明を尽くしているのに了とせずクレームが続くことや、債務不履行とは言えないにもかかわらず返品や交換を要求して社会通念上不当な要求をするに至った場合には、カスタマーハラスメントになるといえます。

合理的説明を尽くしているのに了としないということの判断基準としては、流通業を中心とする労働組合であるUAゼンセンのUAゼンセン流通部門が策定した「悪質クレームの定義とその対応に関するガイドライン」が参考になります。同ガイドラインは、流通業の店舗における「長時間拘束型」の悪質クレームの判断基準について、以下のように示しています。

膠着状態になってから20分程度で慎重な対応に入り、30分後に理解されない場合にはお引き取りを求める流通業は比較的ビジネスがわかりやすく合理的説明を尽くしやすいことから、自社のビジネスの商品の特性に応じて、基準となる時間の長短が決まるものと考えられます。

会社が行うべきカスタマーハラスメント対策

カスタマーハラスメントになったというのは、契約上対応する義務がない状態であるだけではなく、対応を強いられることで就業環境が害されるレベルに至っていることです。したがって、それ以降の対応を拒否して、それでも執拗にアプローチしてくる場合には法的に民事・刑事の対応をするということになります。例えば、拒否しているのにも関わらず架電が何度もあるという場合には、毅然と内容証明郵便を出して対応を拒否する旨を明らかにすることや、威力業務妨害罪等で告訴するなど刑事事件としての対応をすることが考えられます。

会社としては、カスタマーハラスメントになると考える基準を自社のビジネスに即して検討すること、クレーム対応から法的対応への移行までの流れについてフローチャートのような形で明確化しておくこと、それをクレームに応対する従業員から法的対応を担う従業員に至るまで研修等で周知を図ることが必要になります。

まとめ

自社のビジネスに即したカスタマーハラスメントの判断基準を検討して、基準を超えるクレームになった場合には、カスタマーハラスメントであるとして毅然とした対応と拒否をできるように体制整備を行うことが肝要です。

この記事は、2024年2月7日に作成されました。

関連Q&A

契約書の確認や契約書雛型の作成を専門家に依頼すべきでしょうか?
数年前にIT企業を立ち上げたのですが、取引先から提示された契約書に応諾して、契約を締結している状況です。取引先を信頼しておりますし、今のところトラブルが発生しているわけではないのですが、徐々に取引金額が増えてきていますので、そろそろ、専門家に依頼して、契約書の確認を受けることや、自社の契約書雛型を作成することを検討した方がよいのでしょうか。
タイの企業と取引をする際の注意点を教えてください。
当社は今度タイの会社と取引することになり、売買基本契約を締結することになったのですが、どのような点に注意すればよろしいでしょうか。
秘密保持契約の基本的なチェックポイントを教えてください。
取引先と秘密保持契約を結ぶことがありますが、正直なところ、あまり内容を理解できないまま締結してしまっています。特に確認するべきチェックポイントはどのあたりになるのでしょうか。
自社の製品を模倣されました。
自社製品のデザインにそっくりな製品が、他社から販売されていることに気付きました。勘違いして購入してしまうお客様がいそうなので、SNSで注意喚起を行いたいですし、すぐに販売を止めて欲しいです。また取引先に対しても、これは自社製品ではないと伝えておきたいです。どうすればよいですか?初期対応や注意が必要な点についてアドバイスをお願いします。
なぜ「反社チェック」をしなければならないのでしょうか?
最近「反社チェック」という言葉をよく聞くようになりましたが、そもそもなぜ反社チェックを行わなければならないのでしょうか。また、一見しただけでは反社会的勢力かの判断が難しいことも多いと思うのですが、どのようにチェックを行うべきでしょうか。