債務不履行(契約不履行)とは?
不法行為との違い・対応方法
(損害賠償請求など)などを分かりやすく解説!

この記事のまとめ

債務不履行(契約不履行)とは、契約によって約束した義務を果たさないこと(守らないこと)をいいます(民法415条)。

相手方が契約違反を犯した場合は、債務不履行責任の追及が可能となり、
・損害賠償請求
契約解除
などによって損害の回復を図ることができます。

また、売買契約や工事請負契約などの場合は、
履行の追完請求(目的物が契約内容と異なる場合に、契約に適合するよう履行を求めること)
代金減額請求
なども認められています。

相手方の債務不履行責任を追及するときは、契約違反の根拠を明確化したうえで、適切な種類の請求・手続きを選択することが大切です。

今回は、債務不履行(契約不履行)について、基本から分かりやすく解説します。

先生、A社が契約で定めた期限までに、代金の支払いしてくれませんでした。どうしたらいいでしょうか。

契約が守られなかった場合にとれる手段はいくつかあります。まずは、どのような対応ができるのか整理し、最適な手段を考えていきましょう。

※この記事は、2023年1月16日時点の法令等に基づいて作成されています。

債務不履行(契約不履行)とは|債務不履行の種類と要件

債務不履行(契約不履行)とは、契約によって約束した義務を果たさないこと(守らないこと)をいいます(民法415条)。

そもそも「債務」って何ですか?

債務は、法令でよく使われる用語なので、関連する単語と一緒に意味を覚えておきましょう。

債務と債権

・債務=相手方のために、何らかの行為をする義務(例:代金を支払う義務・借金を返済する義務)

・債務者=債務を負っている者

・債権=相手方に対して、何らかの行為をすることを請求できる権利(例:購入した物を受け取る権利・利息の支払いを求める権利)

・債権者=債権を保有している者

・履行=債務者が義務を果たすこと

債務不履行は、以下の4つに分類されます。

1|履行遅滞
2|履行不能
3|履行拒絶
4|その他の債務不履行(例:不完全履行)

債務不履行によって損害を被った場合、損害を被った側は、損害を発生させた側に対して、損害賠償請求ができます。ただし、債務不履行に基づく損害賠償請求をするためには、債務不履行が、債務者の責めに帰すべき事由によって発生した必要があります。

「債務者の責めに帰すべき事由」って、何ですか?

簡単にいうと、「(債務不履行の発生が)債務者のせいだといえる理由」という意味ですね。具体的には、故意(わざと)または過失(不注意)が、債務不履行に基づく損害賠償請求の要件です。

これに対して、債務者の責めに帰すべき事由によらずに発生した債務の不履行は、「危険負担」(民法536条)の問題として取り扱われます。

履行遅滞・履行不能・履行拒絶・その他の債務不履行の概要は、それぞれ以下のとおりです。

1|履行遅滞

履行遅滞」とは、契約で定めた期限(履行期限)までに債務の履行をしないことをいいます。

契約上の履行期限の定め方には以下の3パターンがあり、それぞれ履行遅滞に陥る時期が異なります(民法412条)。

(1)確定期限
特定の日時に到来することが確定している期限を「確定期限」といいます。確定期限のある債務は、その期限が到来したときから履行遅滞となります(同条1項)。
(例)
「2022年12月31日までに、金100万円を支払う。」
→2022年12月31日が終わった時点(期限が到来した時点)で、100万円の支払い債務が履行遅滞となります。

(2)不確定期限
将来的に到来することが確実なものの、その時期は確定していない期限を「不確定期限」といいます。不確定期限のある債務は、以下のいずれか早いときから履行遅滞となります(同条2項)。
①期限が到来した後に、債務者が債権者から履行の請求を受けたとき
②期限が到来したことを債務者が知ったとき
(例)
「Aが就職したら、BはAに100万円を支払う。」
→Aが就職した後に、BがAから支払い請求を受けた時点で、100万円の支払い債務が履行遅滞となります。また、支払い請求を受けるよりも早く、Aが就職したことをBが知った場合には、その時点で履行遅滞となります。

(3)期限の定めなし
債務の履行につき、契約によって期限を定めなかったときは、債務者が債権者から履行の請求を受けたときから、当該債務が履行遅滞となります(同条3項)

2|履行不能

履行不能」とは、債務の履行ができないことをいいます(民法412条の2)。

契約上の義務(=債務)が履行不能であるか否かは、契約その他の債務の発生原因や、取引上の社会通念に照らして判断されます(同条1項)。また、契約成立の当時から債務の履行が不能だった場合も、後発的な不能と同様に「履行不能」として取り扱われます(同条2項)。

なお、履行遅滞中または受領遅滞(※)中の債務が、当事者双方の責めに帰することができない事由によって履行不能となった場合、その履行不能は、以下の者の責めに帰すべき事由によるものとみなされます(民法413条の2)。

※受領遅滞:債権者が債務の履行を拒んでいること、または債権者が債務の履行を受領できないこと

(1)履行遅滞中
債務者の責めに帰すべき事由によるものとみなされます。

(2)受領遅滞中
債権者の責めに帰すべき事由によるものとみなされます。

3|履行拒絶

履行拒絶とは、債務者が、債務の履行を拒絶する意思を明確に示すことをいいます(民法415条2項2号)。

履行拒絶が認められるには、履行拒絶の意思が確定的であり、その後に翻る見込みがないものである必要があります。具体的には、履行拒絶の意思が、繰り返し伝えられていたり、書面で示されたりした場合にはじめて、履行拒絶が認められます。

4|その他の債務不履行(例:不完全履行)

債務不履行の形態は多様であり、うえで挙げた履行遅滞・履行不能・履行拒絶以外にも、例えば、「不完全履行」などがあります。

不完全履行」とは、債務の履行はあったものの、その履行が本旨に従って行われていないことをいいます(民法415条1項)。

債務の「本旨」とは何かについては、契約内容を解釈することによって決まります。基本的には、契約書に明記されている義務を実行ことが、債務の「本旨」に従った履行に当たります。ただし、契約書で明確に定まっていない部分については、契約の目的や取引慣行なども考慮し、当事者の合意内容を解釈したうえで、債務の「本旨」とは何かが判断されます。

債務不履行と不法行為の違い

債務不履行と混同されやすい法律上の概念として、「不法行為」があります。

不法行為とは、故意または過失によって、他人の権利違法侵害する行為をいいます(民法709条)。

債務不履行が契約上の義務に違反する行為であるのに対して、不法行為は契約関係を前提としていません。例えば交通事故知的財産権の侵害など、契約関係にない者同士の間でも、不法行為は問題になり得ます(一方、契約関係がない場合、債務不履行は問題となりません)。

これに対して、契約関係にある者同士の間では、債務不履行と不法行為の両方が問題になり得ます。債権者が債務者の責任を追及する際には、債務不履行・不法行為のどちらを請求の根拠とするか選べます(両方を根拠に請求を行うことも可能です)。

債務不履行の場合、債権者は債務者に対する損害賠償請求に加えて、

・契約の解除
・履行の追完請求
・代金減額請求

ができることがあります。

これに対して不法行為の場合、債権者が選択し得る救済手段は、原則として損害賠償請求のみです。

企業においてよくある債務不履行の事例

企業は多数の契約を締結する反面、債務不履行に関するトラブルに巻き込まれることもよくあります。企業においてよくある債務不履行の事例は、以下のとおりです。

(1)履行遅滞の例
・買掛金の支払いが遅れた
・業務委託契約に基づく成果物の納品が遅れた

(2)履行不能の例
・原材料の調達が間に合わず、製品を納品できなくなった
・納品予定の製品を、保管上のミスにより、修理できないほどに壊してしまった

(3)不完全履行の例
・納品した製品が、契約書に添付された仕様書に従っていなかった
・納品した製品が、その欠陥に起因して発火し、火災に発展して相手方に大きな損害を与えた

相手方が債務不履行を起こした場合の対応方法

契約の相手方が債務不履行を起こした場合は、以下のいずれかの方法によって対応しましょう。

・損害賠償請求をする
・契約を解除する
・履行の追完請求をする
・代金の減額請求をする

上記に相手方が応じない場合は、強制執行の申し立ても検討すべきです。

1|損害賠償請求をする

債務不履行によって損害を被った場合には、相手方に対して損害賠償を請求できます(民法415条1項)。

損害賠償の対象となるのは、原則として、債務不履行により通常生ずべき損害のみです(民法416条1項)。ただし、特別の事情により生じた損害であっても、債務者がその事情を予見すべきであったときは損害賠償の対象となります(同条2項)。

債務不履行に基づく損害賠償請求の消滅時効|時効の起算点も併せて解説

債務不履行に基づく損害賠償請求権は、以下の期間が経過すると時効が成立し、消滅します。

債務不履行に基づく損害賠償請求権の時効期間

(1)2020年3月31日以前に契約を締結・更新した場合
権利を行使できるときから10年

(2)2020年4月1日以降に契約を締結・更新した場合
以下のうち、いずれか早く経過する期間
①権利を行使できることを知ったときから5年
②権利を行使できるときから10年

内容証明郵便によって請求を行ったり、裁判所に訴訟を提起したりすれば、損害賠償請求権の時効消滅を避けられます。時効期間を正しく把握・管理したうえで、できる限り早めに請求を行うことが大切です。

2|契約を解除する

債務不履行があった場合、契約解除もできます。

ただし、以下のとおり、債務不履行の形態によって、解除できる要件が異なります。

【履行遅滞または不完全履行の場合】
相手方に対して、相当の期間を定めて履行を催告したにもかかわらず、その期間内に履行がないときは、契約解除が可能
※ただし、債務不履行が契約および取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、例外的に契約の解除が認められない(民法541条)

【履行不能または履行拒絶の場合】
契約の無催告解除が可能(民法542条1項1号、2号)

契約を解除した場合、すでに相手方に引き渡した目的物や、支払い済みの代金などについては返還を請求できます。

3|履行の追完請求をする

履行の追完請求とは、目的物が契約内容と異なる場合(契約不適合の場合)に、契約に適合するよう履行を求めることをいいます(民法562条1項)。

履行の追完は、以下のいずれかの方法によって行われます。

・目的物の修補(修理・補修)
・代替物の引き渡し
・不足分の引き渡し

ただし、不適合が自社の責めに帰すべき事由によって生じた場合には、履行の追完請求を行うことができません(同条2項)。

4|代金の減額請求をする

目的物に契約不適合があった場合に、履行の追完請求をしたにもかかわらず、その期間内に履行の追完がなされないときは、不適合の程度に応じて代金の減額を請求できます(民法563条1項)。

ただし、

・履行の追完が不可能であるとき
・相手方が履行の追完を拒絶する意思を明確に表示したとき
・履行の追完を受ける見込みがないことが明らかであるとき

などには、履行の追完を催告することなく、直ちに代金減額請求を行うことが可能です(同条2項)。

なお履行の追完請求と同様に、不適合が自社の責めに帰すべき事由によって生じた場合には、代金減額請求を行えません(同条3項)。

5|強制執行する

損害賠償・履行の追完・代金の減額や、契約解除に伴う目的物等の返還に相手方が応じない場合は、債務名義を取得したうえで、裁判所に強制執行を申し立てましょう。

債務名義って何ですか?

強制執行によって実現されるべき債権の存在および範囲を公的に証明した文書です。例えば以下が該当します。

債務名義の例

・確定判決
・仮執行宣言付判決
・和解調書
・調停調書
・仮執行宣言付支払督促
・強制執行認諾文言付公正証書(執行証書)
など

強制執行を申し立てると、相手方の財産を強制的に換価・処分して、債務の弁済に充てることができます。

相手方の財産を把握していない場合は、
財産開示手続き(民事執行法196条以下)
第三者からの情報取得手続き(同法204条以下)
などを利用すれば、財産の特定につながる情報を得られる可能性があります。

債務不履行責任を追及する際の注意点

契約相手の債務不履行責任を追及するに当たっては、以下のポイントに注意ください。

・契約違反の根拠を明確化する
・請求の種類を適切に選択する
・手続きを適切に選択する

契約違反の根拠を明確化する

債務不履行に基づく損害賠償請求を成功させるには、相手方による契約違反の根拠を明確化することが大切です。

具体的には、以下の各点を具体的に明確化し、事前に十分な法的検討を行いましょう。

・契約違反に当たる相手方の行為
・違反の対象となる契約条項
・契約違反に当たる理由

請求の種類を適切に選択する

前述のとおり、相手方の債務不履行責任を追及する請求の種類には、以下に挙げる複数のパターンがあります。

・損害賠償請求
・契約解除(+目的物や代金の返還請求)
・履行の追完請求
・代金減額請求

各請求は、それぞれ要件と効果が異なります。相手方の債務不履行責任を追及するに当たっては、どの請求を行うことができるのか、自社のニーズを満たせる請求は何なのかをよく検討することが大切です。

手続きを適切に選択する

相手方の債務不履行責任を追及する手続きにも、以下のように複数の種類が存在します。

(1)協議
相手方と直接話し合って解決を目指します。合意できれば、もっとも早期に低コストで紛争を解決できます。

(2)ADR
裁判所以外の紛争解決機関に仲裁してもらうことで解決を目指します。紛争解決機関によっては、技術的な知見を有する専門家に仲裁をしてもらえます。

(3)調停
裁判所において、調停委員による仲裁のもとで話し合って解決を目指します。客観的な立場にある調停委員の仲裁により、論点を整理したうえで冷静な話し合いが期待できます。

(4)訴訟
裁判所の判決により、強制的な解決を目指します。紛争解決の合意ができない場合に有力な手続きですが、長期化しやすいのが難点です。なお、訴訟の途中で和解が成立することもあります。

相手方の交渉態度を踏まえつつ、コストや期間などを考慮して、適切な紛争解決手続きを選択することが大切です。

この記事のまとめ

債務不履行の記事は以上です。最新の記事に関する情報は、契約ウォッチのメルマガで配信しています。ぜひ、メルマガにご登録ください!

参考文献

中田裕康著『契約法 新版』有斐閣、2021年

中田裕康著『債権総論 第四版』岩波書店、2020年

我妻榮/有泉亨/清水誠/田山輝明著『我妻・有泉コンメンタール民法[第8版] 総則・物権・債権』日本評論社、2022年

喜多村勝德著『損害賠償の法務 [勁草法律実務シリーズ]』勁草書房、2018年