契約書とは?
書き方の6つのポイントを分かりやすく解説!

この記事のまとめ

契約書を書くときに気をつけるべき6つのポイントを解説

この記事では、契約書作成の初心者の方にむけて、ポイントを分かりやすくご紹介します。 ポイントは、6つです。

ポイント1│取引の目的と背景を理解しよう

ポイント2│契約当事者双方の権利と義務を洗い出してみよう

ポイント3│想定されるトラブルを洗い出し、予防できないかを考えてみよう

ポイント4│法律・判例で、どのような効果となるのかを理解しよう

ポイント5│法令に違反していないかを確認しよう

ポイント6│取引の重要性やパワーバランスをふまえた妥当な内容かを確認しよう

それぞれのポイントを分かりやすく解説します。

契約書の作成を依頼されました。 法務部に配属されたばかりなので、何に気をつけたらよいのか分かりません。

契約書の書き方は、どんな契約書であっても共通するポイントがあります。 まずは、このポイントから理解していきましょう! 契約書を作成するときだけでなく、レビューするときにも役立ちます。

※この記事は、2020年7月28日時点の法令等に基づいて作成されています。

契約書とは何か?意味を解説

契約 は、申込みと承諾によって成立します(民法522条1項)。

契約書とは、契約が締結されたことを証明した文書のことをいいます。 法令に、書面を作成する義務が定められているときは、契約書を作成しなければ、契約自体が無効になってしまうおそれがあります。 他方で、それ以外の契約については、契約書を作成しなくても、契約自体は成立します(民法522条2項)。 これは、 契約は、口頭でも契約を成立させることができる からなのです(民法522条2項)。

(契約の成立と方式)
第522条 契約は、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示(以下「申込み」という。)に対して相手方が承諾をしたとき に成立する。
2 契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない。

民法 – e-Gov法令検索 – 電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ

たとえば、スーパーなどでお買い物するときに、いちいち契約書を作成するということはしませんよね

なぜ、契約書を作成する必要があるのか?

契約書を作成しなくても契約は成立するにもかかわらず、多くの企業では、発注書や注文請書といったものも含めて、 実に多くの契約書が作成されています。 法務部では、日々、契約書に目をとおして、リスクがないかを確認したり、必用に応じて契約書を作成したりしています。

なぜ、契約書を作成するのでしょうか??

それは、次のように、契約書には、大きく3つの機能があるからです。

契約書の機能(3つ)

①確認機能

②紛争予防機能

③証拠機能

①確認機能

契約書の作成は、契約内容を理解し、取引するかどうかを熟考できる機会となります。
ビジネスは、利益を得ることが主な目的ですが、利益を得るためには、ときにリスクを負わなければならないことがあります。 取引では、そのようなリスクが潜んでいることがありますので、「この取引にはどんなリスクがあるのか?」 「会社は、このリスクを引き受けても大丈夫なのか?」を慎重に判断することが重要なのです。

書き起こされた文字を読むと、「この取引をして、本当に大丈夫なのか??」と慎重に考えることができるのです。

②紛争予防機能

また、契約書を作成することで、契約内容が明らかになり、「言った、言わない」という紛争を予防することが できるようになります。 口頭では曖昧にしてしまう事項についても、契約書に記載することで、相手方の認識と相違がないか、 誤解がないかを確認することができます。 その後、相手方との間で、トラブルが発生したときは、契約書に書かれたことを拠り所として、交渉することが可能となります。

契約書に、あらかじめ自社にとって有利な条件を定めておくと、トラブル時の交渉が楽になりそうですね。

③証拠機能

さらに、契約書は、訴訟において、もっとも重要な証拠となります。 通常、契約書には、署名または押印がなされます。このような署名または押印がなされた契約書は、民事訴訟法上、 「真正に成立したもの」と推定されます(民事訴訟法228条4項)。 そのため、契約書に定められたことが、訴訟で重視されるのです。

【引用】
(文書の成立)
第228条 文書は、その成立が真正であることを証明しなければならない。
2 文書は、その方式及び趣旨により公務員が職務上作成したものと認めるべきときは、真正に成立した公文書と推定する。
3 公文書の成立の真否について疑いがあるときは、裁判所は、職権で、当該官庁又は公署に照会をすることができる。
4 私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する。
5 第二項及び第三項の規定は、外国の官庁又は公署の作成に係るものと認めるべき文書について準用する。

民事訴訟法法 – e-Gov法令検索 – 電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ

契約書に定めたことと異なることを立証することは、まったく不可能なわけではありません。
しかし、立証のハードルは一般的に高くなります。

口頭の契約・書面上の契約・電子契約の違い

契約は、口頭・書面(契約書)・電子契約のいずれの方法によっても締結できます。各締結方法の特徴・場面等に関する違いは以下のとおりです。

契約締結方法の特徴・場面等に関する違い

・口頭の契約
→一方の当事者が口頭で契約の申込みを行い、他方の当事者が申込みを承諾した時点で、口頭の契約が成立します(諾成契約)。最も簡単な契約締結方法である反面、合意内容が不明確になりやすい点が大きなデメリットです。

家族や知人など、近しい間柄における金銭の貸し借りなどでは、契約の締結を口頭で済ませる場合があります。

・書面上の契約
→紙の契約書を作成して、全当事者が記名押印等を行うことにより、契約が成立します。契約書の記載によって、合意内容を明確化できるメリットがあります。

特に企業が当事者となる契約においては、紙の契約書を作成するのが最も一般的な契約の締結方法です。

・電子契約
→電子データ(PDFファイルなど)によって契約書を作成して、全当事者が電子署名などを行うことにより、契約が成立します。リモートでの締結が可能である点や、管理・保存がしやすい点などから、近年注目されています。

最近ではコロナ禍の影響もあり、各企業において、書面での契約から電子契約への移行が進みつつあります。

個人契約書と法人契約書の違い

契約を締結する当事者としては、個人・法人のどちらも想定されます。

個人が当事者となる契約書(個人契約書)と、法人が当事者となる契約書(法人契約書)では、特に方式・内容に関するルールの違いはありません。

個人契約書・法人契約書のどちらも、口頭・書面・電子のいずれの方式によっても締結できます。契約内容についても、取引の内容に応じて決めるべきであって、「個人契約書だから」「法人契約書だから」という理由だけで差が出るものではありません。

ただし一般的には、法人の方がコンプライアンスやリスク管理を強く意識する傾向にあります。そのため、法人が当事者となる契約においては、口頭での契約締結を避け、かつ契約書の内容を詳細に作り込む傾向にあると考えられます。

また、法人(事業者)と個人の間で締結される契約については、消費者契約法をはじめとして、消費者保護を目的とした各種法令の規制が適用されることがある点に注意が必要です。

契約書はどちらが作成するべきか?

契約書を締結する際には、いずれかの当事者がドラフト(たたき台)を作成し、そのドラフト上で当事者がコメントのやり取り(契約交渉)を行って、最終版の形に整えていくのが一般的です。

契約交渉のたたき台として、最初に作成される契約書のドラフトを「ファーストドラフト(1st draft)」などと呼ぶことがあります。契約書のファーストドラフトをどちらの当事者が作成すべきかについては、状況によって異なりますが、おおむね以下の基準で判断するとよいでしょう。

契約書のファーストドラフトはどちらが作成すべきか?

・当該取引に慣れている側が作成する
→契約書において想定されている取引に慣れている当事者は、契約書のテンプレートを保有していることがあります。

契約書のテンプレートには、実務経験に基づき、問題となりやすい事項への対処法等が反映されていることが多いです。そのため、当該取引に慣れている側が保有しているテンプレートを利用してファーストドラフトを作成するのは、合理的な考え方の一つでしょう。

・可能であれば自分で作成した方がよい
→相手方から提示されるファーストドラフトには、相手方に有利な条項・自分に不利な条項が盛り込まれる可能性が高いです。契約交渉の中で修正を求めることはできますが、すべて自分の思い通りに書き換えることは困難でしょう。

ファーストドラフトを自分で作成すれば、自分にとって有利な条項を盛り込むなどして、契約交渉を有利に進めることができます。そのため、取引に関する経験等に明らかな差がない限り、ファーストドラフトは自分で作成することが望ましいです。

契約書の書き方で気をつける6つのポイント

契約書を書くときは、次の6つのポイントに気をつけてみることをおすすめします。 これらのポイントは、契約書をイチから作成するときは、もちろん、レビューするときの手順にもあてはまります。

契約書を書くときに気をつけるポイント(6つ)

ポイント1│取引の目的と背景を理解しよう

ポイント2│契約当事者双方の権利と義務を洗い出してみよう

ポイント3│想定されるトラブルを洗い出し、予防できないかを考えてみよう

ポイント4│法律・判例で、どのような効果となるのかを理解しよう

ポイント5│法令に違反していないかを確認しよう

ポイント6│取引の重要性やパワーバランスをふまえた妥当な内容かを確認しよう

以下、それぞれ解説します。

ポイント1│取引の目的と背景を理解しよう

まず、取引の目的や背景事情を理解することが重要です。

事業部門からの依頼を受ける際、取引の目的や背景もあわせて説明されることもありますが、 とくに詳しい説明もなく、ただ、「契約書を作成してください」と言われることもあります。 そんなときは、 「なぜ、この取引をしたいのか?この取引をするに至った経緯はどんなものか?」 といったことを聞き出してみましょう。 なぜなら、そうした取引の目的や背景によって、自社にとって、勝ち取るべき事項・妥協してはいけない事項が 変わってくるからです。

最初のうちは、取引の目的と背景を理解したら、次の事項について、それぞれ整理してみるとよいでしょう。

  • 必ず勝ち取るべき事項
  • 勝ち取ることが望ましい事項
  • 自社が妥協してよい事項

たとえば、こんな感じです。

【法務部員(博士)と事業部(ひつじ)のやりとり】

法務さん、小売店を営んでいるお客さんに、タブレット端末を貸してあげようと思うんだけど、 契約書を作成してくれない??

わかりました。タブレット端末を貸して、どうされるのですか?

よくぞ聞いてくれました!
実は、まだ社外秘なのですが、タブレット端末を使った新サービスの立ち上げを検討しているんです。 そこで、お客さんから、配布したタブレット端末の利用状況を報告していただき、検証するのです。

となると‥検証に協力してもらうことが、 この取引で必ず勝ち取るべき条件になりそうね。 しかも、社外秘であるようだから、守秘義務を課しておくことも重要になりそう・・・

このように、取引の目的や背景事情を聞き出したことで、必ず勝ち取るべき事項が明らかになりましたね。 すなわち、相手方には「検証に協力してもらうこと」「新サービスと検証の存在を秘密にすること」を義務づける必要があるのです。

こんな調子でヒアリングを進めて、取引について、 自分の頭の中でありありと思い描くことができるようになるまで聞き出すことが重要なのです。

ポイント2│契約当事者双方の権利と義務を洗い出してみよう

次に、自社と相手方に、 それぞれ、どんな権利と義務があるのか を洗い出してみましょう。

冒頭でご説明したように、契約書には、後から「言った言わない」といった紛争を予防する機能があります。 紛争は、相互の権利義務について認識が一致していないときに生じやすいため、 お互いの権利義務を正確に契約書に記載するということが重要になります。

たとえば、先ほどのタブレット端末の例で紛争になりそうな事態を想像してみましょう。

【事業部(博士)と相手方(ひつじ)との紛争の例】

タブレット端末が壊れてしまいました!
壊れたままお返しいたします!

タブレット端末を貸すときに、壊したら、あなたの方で、修理する約束だったでしょう?

いいや、そんな話は聞いてませんよ。
「修理費用は負担してくれる」って、あなたの会社の営業マンが言ってましたよね?

そんなぁ!法務部さんにも相談したのに……

このように、口頭のみの約束ではトラブルの際に交渉が思いどおりに進みません。 このような事態とならないように、あらかじめ、お互いの権利と義務を洗い出し、契約書に定めておくのです。

権利義務を洗い出す方法として、次のように当事者関係図でまとめる方法がおすすめです。

【当事者関係図】

依頼者から聞き出したことが整理されますし、依頼者の方に、これを共有することで、 自分の理解に誤解がないかを確認することもできます。 その際、契約当事者以外の第三者も念頭においておくとよいでしょう。 それらの第三者に損害が生じた場合の責任などを検討する際に役に立ちます

さらに、次のような時系列表を作成してみると、納期やお互いの役割分担が明確になります。

日付内容
2020年8月31日自社の取引先から、タブレット端末を購入する
2020年9月1日自社から、相手方に、タブレット端末を郵送で送付する
2020年9月1日~相手方が、タブレット端末を利用し、利用状況の検証を開始
2020年10月1日相手方から、利用状況を報告してもらう(1回目)
2020年11月1日相手方から、利用状況を報告してもらう(2回目)
2020年12月1日相手方から、利用状況を報告してもらう(3回目)
2020年12月2日~同月30日相手方から、タブレット端末を郵送で返却してもらう
2021年2月1日自社にて、検証状況をふまえ検討
2021年8月31日自社の取引先から購入したタブレット端末の保証期間の終了

ポイント3│想定されるトラブルを洗い出し、予防できないかを考えてみよう

権利義務の洗い出しがおわったら、想定されるトラブルを洗い出してみましょう。 それらのトラブルが現実的である場合や、自社にとって不利益となる場合には、 契約書にあらかじめ防御策を記載しておくようにしましょう。 想定されるトラブルを洗い出すためには、次のような視点で考えてみるとよいでしょう。

トラブルを洗い出すための視点

①時系列で考えてみる

・取引の継続中に、起こり得るトラブルはないか?
・取引が終了した後に、起こり得るトラブルはないか?

②契約当事者かそれ以外かで考えてみる

・契約の相手方との間で起こり得るトラブルはないか?
・第三者との間で起こり得るトラブルはないか?

③損害の性質ごとに考えてみる

・物損が発生する可能性はないか?
・生命、身体への危険はないか?
・営業利益などの逸失利益が失われるおそれはないか?

契約書の作成・レビューを依頼した事業部の方にも聞いてみると、すごく参考になることがありますよ。 また、他の法務部のメンバーに相談すると、過去に問題になった事例などを共有してもらえることもあるので、おすすめです。

ポイント4│法律・判例で、どのような効果となるのかを理解しよう

ここまできたら、ようやく契約書を書き起こす作業にうつります。

契約書に定めなかった場合は、法律の定めが適用されます。 契約書に定めた場合は、基本的には、契約書の定めが適用されます。 もっとも、契約書に定めがあった場合であっても、法律の強行法規(契約で変更できないルール)に反する場合は、 法律の定めが適用されます。

法律にも定めがなかったときは、過去の判例が解決の指針となることがあります。 裁判官は、過去の判例に拘束されるものではありませんが、類似の案件について、まったく異なる判断がなされることは、 公平性に欠けますので、多くは、類似の案件について、過去の判例が踏襲される判断がなされるのです。

そのため、契約書の条文は、次のいずれであるかによって、その重要性や意味合いが異なります。

  • 法律の定めを確認的に定めるもの
  • 法律の定めを修正するもの
  • 過去の判例で解釈されたもの

契約書を作成するときは、これを定めなかったときに法律ではどうなるのか?といった点を理解しておくと、 契約書に必ず記載すべき条文を特定することができます。 これにより、たとえば、比較的、簡易な契約を締結するときは、法律に定めのない事項に限定して、 ライトな契約書を作成することができるようになります。

「ポイント6│取引の重要性やパワーバランスをふまえた妥当な内容かを確認しよう」 のとおり、相手方とのパワーバランス上、あまり契約書に細かく記載すると煙たがられるような取引で役に立つことでしょう。

ポイント5│法令に違反していないかを確認しよう

契約内容が、法令に違反していないかどうかは、法務としては、必ず確認しなければならないことです。
しかしながら、世の中には、数えきれないほどの法令があるため、法令違反を発見することは、並大抵のことではありません。 そこで、法令違反を発見するために、次のような観点で確認することをおすすめします。

  1. 書面の作成が、法令で義務付けられているか?
  2. 契約書に定めるべき事項が、法令に定められているか?
  3. その他、法令で規制されていることはないか?

いずれも、関連する法令が判明してしまえば、条文を参照することで解決できます。 また、関係省庁のサイトに、分かりやすいパンフレットなどを用意していることがあります。 それらを参照するのもよいでしょう。

ポイント6│取引の重要性やパワーバランスをふまえた妥当な内容かを確認しよう

最後に、 この取引の重要性や相手方とのパワーバランスをふまえて妥当な内容であるか を確認します。 このような事項をふまえて、契約で定めるべき条項かどうかを精査するのです。

これは、冒頭で解説した契約書の機能にてらすと、必ずしもやらなければならない作業ではありません。この作業をしたからといって、紛争が減るわけでも、訴訟で有利になるわけでもないからです。 ですが、この工程を経ることで、契約交渉が格段に早く進むことがあります。 もちろん、取り扱っている商品・サービスの種別や業界によって、企業ごとに求められるスピード感は異なってくることと思います。 多くのビジネスでは、IT化に伴いスピード感をもって決断・交渉することが重要になっています。

 

一般的な契約書の全体構成とチェックポイント

一般的な契約書の全体構成と確認すべきポイントをご紹介します。

タイトル

冒頭に、「●●契約」といったタイトルをつけます。 タイトルの付け方に決まりはなく、いかなるタイトルにしようとも、契約の締結に影響を及ぼすものではありません。 たとえば、「契約」ではなく「 覚書 」「確認書」といったタイトルであっても、権利義務を発生させる内容となっていれば、契約書として契約の効力を生じるものとなります。

契約書のタイトルは、締結日と締結相手と紐づけることで、契約を特定することができます。 たとえば、契約内容を変更・解除するときには、どの契約について変更・解除するのかを明らかにする必要があります。その際に、「2020年4月1日に、●●株式会社と締結した売買契約」といった方式で契約を特定することができるのです。

そのため、タイトルは、その契約内容を端的にあらわす分かりやすいものとするのがよいでしょう。

 

前文

誰と誰との間で、どのような契約を締結するのかを記載します。 これに加えて、契約の目的を明らかにするために、目的を記載することもあります。 たとえば、次のような記載例となります。

記載例

(前文)
株式会社●●(以下「甲」という。)と株式会社●●(以下「乙」という。)は、甲が乙に対して、顧客を紹介し、 もって乙の販売活動の促進を図ることを目的として、以下のとおり顧客紹介契約(以下「本契約」という。)を 締結する

取引・権利義務の内容

取引の内容と、相互の権利義務の内容を正確に記載します。モノやサービスの取引であれば、対象となる目的物やサービス(業務)の内容を、できる限り特定して記載します。 また、報酬や支払い条件を明らかにすることも重要です。 たとえば、次のような記載例となります。

記載例

(顧客の紹介)
1. 甲は、顧客の名称、所在地、代表者及び担当者の氏名、連絡先を、乙に対して通知するものとする。
2. 甲は、本契約の目的の範囲内で、乙の商標及び社名を使用することができるものとする。

(紹介手数料)
乙は、甲が前条に基づき乙に紹介した顧客との間で契約を締結した場合、、紹介手数料として、次条に定める額 を支払う。

一般条項

解除や損害賠償など、契約一般に定められる条項を記載します。 法令に規制がない限りは、これらは必ず記載しなければならないものではありませんが、紛争を予防する観点から 定めておくと有益な事項となります。一般条項には、次のようなものがあります。

主な一般条項

・守秘義務に関する条項

・個人情報の取り扱いに関する条項

・譲渡禁止に関する条項

・期限の利益喪失条項

・不可抗力条項

・存続条項

・通知義務に関する条項

・契約期間に関する条項

・合意管轄・準拠法に関する条項

後文

一般的には、契約書を作成する部数と契約書の所持者を記載します。 紛争に発展し訴訟において、契約書が証拠として提出される可能性が高くなります。その際、契約書を何部作成したのか、誰が原本を所持しているのかといった点が重要となることがあるため、このような記載をするのが通常です。

記載例

(後文)
本契約の成立を証するため、本書2通を作成し、本契約当事者双方署名又は記名押印の上各1通を保有する。

最近では、電子契約を採用するケースも増えています。 その場合は、電子契約書ファイルの保管方法と原本の考え方について記載するとよいでしょう。

記載例

(後文)
本契約の締結を証するため、本電子契約書ファイルを作成し、それぞれ電子署名を行った上で保管する。 なお、本契約においては、電子データである本電子契約書ファイルを原本とし、同ファイルを印刷した文書はその写しとする。

なお、契約書を作成する部数と契約書の所持者を定めることは必須ではありません。また、契約書のどこに定めても問題ありません。一般的には後文に定められていますが、契約書の前文に記載されていることもあります。
お好きな記載方法で定めていただいて問題ありません。

 

契約書の作成日

契約書が作成された日を記載します。厳密には、署名押印を行った日と考えられます。 そのため、企業によっては、署名捺印・記名押印をするときに、あわせて日付を記入する運用をとっている場合があります。

もっとも、契約書の作成日を記載する必要があるのは、後日、契約を特定するためです。 すなわち、証拠として提出したり、後から契約を変更したりするときに、どの契約を指すものであるかを示すため、 契約書の作成日・当事者名・タイトルなどを用いて、契約を特定します。

同じ時期に、同じ当事者間で、同じタイトルの契約書を締結することは稀であることから、 およそ合意がなされる日をあらかじめ印字したうえで、署名捺印・記名押印する運用をとっている例も多くあります。

 

当事者の署名捺印・記名押印

契約書には、契約の当事者が、署名捺印または記名押印をします。 たとえば、このような記載です。

※注意│署名・捺印押印は本物ではありません

署名・記名とは?

それぞれ次のように区別します。

  • 「署名」│手書きで名前を書くこと
  • 「記名」│手書き以外で名前を書くこと

よく企業で使われる社長さんのゴム印は、「記名」ですね。 企業間で取引する場合は、署名欄には、法人名に加えて、役職ある方の氏名とその肩書を記載することが通常です。

なぜ、法人名だけではなく、役職者の氏名と肩書も記載するのでしょうか?

それは、法人は実態がない存在なので、契約を締結するという行為ができないからです

法人が契約を締結することができるのは、その法人において契約締結権限をもっている人(自然人)が、 法人に代わって契約を締結しているからなのです。 そのため、企業間の取引では、法人にいわば代理人である、契約締結権限がある人を記載することで、 確実に契約が締結されるようにしているのです。 企業において、誰が契約締結権をもっているのかは、社内規程で定められていることが通常です。

押印・捺印とは?

押印・捺印とは、印鑑(ハンコ)をおすことをいいます。 署名に対して押すことを「捺印」、記名に対して押すことを「押印」というように使い分ける方もいます。 基本的には同じ意味となります。 押印・捺印で用いる印鑑は、実印でも認印でもかまいせん。一般的には、重要な書類には、実印を使用します。

印紙(1号文書・2号文書・7号文書)

契約の内容によっては、契約書に収入印紙を貼付する必要があります。

収入印紙の貼付を要するのは、印紙税法で定められる第1号文書から第20号文書までのいずれかに該当する書類です。契約書の場合、主に第1号文書・第2号文書・第7号文書に該当することがあります。

第1号文書・第2号文書・第7号文書の契約内容及び印紙税額は、以下のとおりです。

文書の種類契約内容印紙税額
第1号文書・不動産等の譲渡に関する契約書
(例)不動産売買契約書

・地上権又は土地賃借権の設定又は譲渡に関する契約書
(例)土地賃貸借契約書

・消費貸借に関する契約書
(例)金銭消費貸借契約書、金銭借用証書

・運送に関する契約書
記載された契約金額に応じて以下の金額

1万円未満:非課税
10万円以下:200円
10万円を超え50万円以下:400円
50万円を超え100万円以下:1,000円
100万円を超え500万円以下:2,000円
500万円を超え1,000万円以下:1万円
1,000万円を超え5,000万円以下:2万円
5,000万円を超え1億円以下:6万円
1億円を超え5億円以下:10万円
5億円を超え10億円以下:20万円
10億円を超え50億円以下:40万円
50億円を超えるもの:60万円
契約金額の記載のないもの:200円
第2号文書・請負に関する契約書
(例)工事請負契約書
記載された契約金額に応じて以下の金額

1万円未満:非課税
100万円以下:200円
100万円を超え200万円以下:400円
200万円を超え300万円以下:1,000円
300万円を超え500万円以下:2,000円
500万円を超え1,000万円以下:1万円
1,000万円を超え5,000万円以下:2万円
5,000万円を超え1億円以下:6万円
1億円を超え5億円以下:10万円
5億円を超え10億円以下:20万円
10億円を超え50億円以下:40万円
50億円を超えるもの:60万円
契約金額の記載のないもの:200円
第7号文書・継続的取引の基本となる契約書(契約期間が3か月以内で、かつ更新の定めのないものを除く)
(例)売買取引基本契約書、特約店契約書、代理店契約書、業務委託契約書、銀行取引約定書
4,000円

法律に反する内容の契約書の有効性

契約書の中では、民法などの法律の規定に反する内容が定められることがあります。

法律の規定は、強行規定・任意規定・取締規定の3つに分類され、それぞれ法律に反する契約条項が有効かどうかの結論が異なるので注意が必要です。

強行規定

「強行規定」とは、契約によって適用を排除することができない法律の規定を意味します。したがって契約書において、強行規定に反する内容の条項を定めたとしても、当該契約条項は無効となります。

強行規定の例

・借地権者・借家権者を保護する規定(借地借家法9条、16条、21条、30条、37条)

・消費者契約において消費者を保護する規定(消費者契約法8条、8条の2、8条の3、9条、10条)

・契約による宅地建物取引業者の契約不適合責任の限定を制限する規定(宅地建物取引業法40条)

・新築住宅に関する請負人・売主の瑕疵担保責任に関する規定(品確法94条、95条)

強行規定違反により、契約内容の一部が無効になると、当事者にとって予期せぬ事態が生じるおそれがあります。契約書の内容をチェックする際には、強行規定に違反する条項が含まれていないかどうかを必ず確認しましょう。

任意規定

「任意規定」とは、契約によって別段の定めをすることが認められている法律の規定を意味します。「契約自由の原則」に基づき、取引に関連する法律の規定は、その多くが任意規定であると解されています。

任意規定の例

・法定利率(民法404条。ただし、利息制限法等による上限あり)

・(通常の)契約不適合責任(民法562条以下。ただし、事業者・宅地建物取引業者等については一部強行規定)

・同時履行の抗弁(民法533条)

・危険負担(民法536条)

当事者同士が契約により、任意規定とは異なる内容を合意すれば、契約内容によって任意規定の内容が置き換えられます。その一方で、契約の定めがない事柄については、原則どおり任意規定である法律が適用されます。

契約交渉を行う際には、上記の点を踏まえて、「契約による任意規定の置き換えが適切に行われているか」「置き換えに必要な契約条項に漏れがないか」といったポイントをチェックすることが大切です。

取締規定

「取締規定」とは、特定の事業・活動などを規制するために設けられた法律の規定です。「業法」と呼ばれることもあります。

取締規定の例

・免許・登録などの許認可に関する規定(銀行法・金融商品取引法・資金決済に関する法律・貸金業法・道路運送法など)

・就業規則の届出義務(労働基準法89条)

取締規定は、私法上の法律行為(契約など)の効力を変更することではなく、あくまでも事業者等の行為を適正化することを目的としています。そのため、取締規定に違反する条項を契約で定めたとしても、当該条項が直ちに無効となるわけではありません。

ただし、取締規定に違反した当事者は、刑事罰や過料の対象となる可能性があります。また、違反当事者の相手方である当事者としても、取締規定に違反する違法業者と取引を行うことは、コンプライアンス上大いに問題があるでしょう。

したがって、契約条項の有効性に影響しないとはいえ、取締規定に違反する内容が含まれていないかどうかは、契約書を確認する際に必須となるチェックポイントと言えます。

まとめ

この記事では、契約書の書き方を解説しました。 その後、製本・署名・捺印といった工程をへて、契約書が出来上がります。作成方法ついては、またの機会に解説いたしますね。

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参考文献