コンプライアンスとは?基本を分かりやすく解説!

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この記事のまとめ

コンプライアンスは「法令遵守」を意味する言葉ですが、現代では、社会規範・社会道徳、ステークホルダーの利益・要請に従うことなども含む広い概念となっており、会社において、適切な体制のもと実現するものだと考えられています。

本記事では、コンプライアンスの概念に関する基礎知識からその最新情勢までを分かりやすく解説します。

コンプライアンスって、企業倫理や、社会道徳の問題も含んでいて、法令遵守だけでは十分ではないと言われますよね。でも、どこまで何をやればいいのか、正直に言うとわからなくなることがあります。

会社ごとに、どこまで何をするかは違います。基本的には、経営陣が方針を決めて、法務部やその他専門部署などがコンプライアンスの体制構築を実際に進めていくことになります。 法務部などが集めたステークホルダーに関する情報や、法令改正に関する情報から、経営陣が経営戦略を立てることも考えられますね。

(※この記事は、2021年7月5日時点の法令等に基づいて作成されています。)

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コンプライアンスとは?正しい意味を分かりやすく解説

まずはコンプライアンスの概念を正しく理解するために、その定義や歴史的背景、具体的な違反事例などを紹介していきます。

コンプライアンスの定義・意義

コンプラアンスは、直訳すると 法令遵守 のことですが、近年その意味するところは多様になりつつあります。例えば現在では、社会規範や社会道徳、会社のステークホルダー(利害関係者。株主、経営者、従業員、顧客、取引先など)の利益や要請にかなうことも、コンプライアンスの意味に含まれるようになってきました。

コンプライアンスが重要視されている背景

企業におけるコンプライアンスが重要視されるに至ったのは、バブル経済崩壊後の1990年代から2000年代に相次いだ大規模な企業不祥事の発生と、近年のインターネットの普及が背景にあると考えられます。

1990年代の初頭にバブル経済が崩壊し、日本企業は全体的に不況に苦しむようになりました。その中で、粉飾決算や不正融資などが秘密裏に行われ、企業の業績が外見的に取り繕われる一方で、実態としては腐敗する企業が相次ぎました。

このような企業の隠ぺい体質が大きな問題となって顕在化したのが、1997年に発生した山一證券の経営破綻です。山一證券は1897年創業の大手証券会社でしたが、バブル経済の崩壊によって経営が極端に悪化しました。経営悪化の主な理由としては、優良顧客に対して株価下落時の損失補填を行っていたことなどが挙げられます。

山一證券は、巨額の損失が発生していることを株主などに対して隠ぺいするために不正会計処理を行い、膨大な簿外債務(貸借対照表に計上されない債務)を作っていきました。しかし、最終的には資金繰りに窮してしまい、1997年には経営破綻に至ったのです。

山一證券の事例に代表されるように、不透明なマネジメントを行った結果として経営破綻に至るケースが相次いだため、透明性のある経営を行うことが企業に強く要請されるようになりました。

加えて、インターネット(特にSNS)が発展したことにより、社会の企業に対する監視の目が強化されています。企業不祥事はインターネットを通じて、いつ社会に暴露されるかわからない状況になりました。そのため近年では、企業コンプライアンスの重要性がさらに強調されるに至っています。

コーポレートガバナンスとの違い

コンプライアンスと関連する用語として、「コーポレート・ガバナンス」があります。

コーポレート・ガバナンスは経営者を監視・監督する仕組みを指し、企業統治とも訳されます。企業内の不正を未然に防止し、効率的な業務遂行を促すことで、会社の所有者たる株主の利益最大化を目指すものです。 コンプライアンスも、コーポレート・ガバナンスも、会社がより健全な存在であることを目指す点では同じですが、それぞれ視点が異なります。

コンプライアンスは、経営者から見た従業員などを含む会社業務全般に着目した概念であり、コーポレート・ガバナンスは、取締役会などから見た代表取締役などの業務執行者に着目した概念です。

両者はそれぞれの視点から会社の改善点を見出し、会社の健全化を目指していきます。

コンプライアンスとコーポレートガバナンスの違い
コンプライアンスとコーポレートガバナンスの違い

内部統制とは何か

また、コンプライアンスと関連する用語として、「内部統制」があります。

ここでは内部統制について紹介します。

コンプライアンスと内部統制

内部統制 とは、 業務の適正を確保するための体制を構築していくシステム のことです。

内部統制は、コンプライアンスをはじめとして会社における業務全般の適正確保体制を構築するための手段と考えられます。手段=内部統制、目的=コンプライアンスというように整理ができます。

内部統制については、以下の関連記事でより詳しく解説しています。

内部統制と取締役の責任

内部統制システムの構築義務を主に負っているのは、企業においては取締役です。

以下では取締役と内部統制システムの関係について紹介します。

取締役の善管注意義務と内部統制

取締役は、 善管注意義務 (会社法330条、644条) として、会社が健全な会社経営を行うためのリスク管理体制(内部統制システム)の整備・運用義務を負う と解されています(大阪地判平成12年9月20日)。

大阪地判平成12年9月20日判決(大和銀行事件判決)の事件は、銀行のニューヨーク支店の証券業務を担当していた行員が、簿外取引を行って巨額の損失を出したことにつき、代表取締役らが行員の不正行為を直ちに米国連邦司法省に通知などしなかったため、多額の罰金を支払うことになり、取締役の責任が問われた株主代表訴訟です。

この事件で、大阪地裁は以下のように判示しています。

「 健全な会社経営を行うためには 、目的とする事業の種類、性質等に応じて生じる各種のリスク、例えば、信用リスク、市場リスク、流動性リスク、事務リスク、システムリスク等の状況を正確に把握し、適切に制御すること、すなわちリスク管理が欠かせず、会社が営む事業の規模、特性等に応じた リスク管理体制(いわゆる内部統制システム)を整備することを要する 。そして、重要な業務執行については、取締役会が決定することを要するから(商法260条2項)、会社経営の根幹に係わるリスク管理体制の大綱については、取締役会で決定することを要し、業務執行を担当する代表取締役及び業務担当取締役は、大綱を踏まえ、担当する部門におけるリスク管理体制を具体的に決定するべき職務を負う。この意味において、 取締役は、取締役会の構成員として、また、代表取締役又は業務担当取締役として、リスク管理体制を構築すべき義務を負い 、さらに、 代表取締役及び業務担当取締役がリスク管理体制を構築すべき義務を履行しているか否かを監視する義務を負う のであり、これもまた、 取締役としての善管注意義務及び忠実義務の内容をなす ものと言うべきである。」

取締役または取締役会の業務として、「取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の業務並びに当該株式会社及びその子会社から成る企業集団の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制の整備」、つまり内部統制システムの整備が定められており(会社法362条4項6号、348条3項4号)大会社では、その決定が義務付けられています(同法362条5項、348条4項)。

第362条
1~3 略
4 取締役会は、次に掲げる事項その他の重要な業務執行の決定を取締役に委任することができない。
(1)~(5) 略
(6)取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の業務並びに当該株式会社及びその子会社から成る企業集団の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制の整備
(7) 略
5 大会社である取締役会設置会社においては、取締役会は、前項第六号に掲げる事項を決定しなければならない。

会社法– e-Gov法令検索 – 電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ

第348条
1 取締役は、定款に別段の定めがある場合を除き、株式会社(取締役会設置会社を除く。以下この条において同じ。)の業務を執行する。
2 取締役が2人以上ある場合には、株式会社の業務は、定款に別段の定めがある場合を除き、取締役の過半数をもって決定する。
3 前項の場合には、取締役は、次に掲げる事項についての決定を各取締役に委任することができない。
(1)~(3) 略
(4) 取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の業務並びに当該株式会社及びその子会社から成る企業集団の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制の整備
4 大会社においては、取締役は、前項第4号に掲げる事項を決定しなければならない。

会社法– e-Gov法令検索 – 電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ

取締役の善管注意義務については、以下の関連記事で解説しています。

コンプライアンスリスク

会社が事業活動を行う中には、様々なリスクが存在します。近年は、特にコンプライアンス・リスクの重要性が高まっています。

「コンプライアンス・リスクは、ビジネスと不可分一体で、往々にしてビジネスモデル・ 経営戦略自体に内在する場合が多く、その管理は、まさに経営の根幹をなすものである。」

金融庁「コンプライアンス・リスク管理に関する 検査・監督の考え方と進め方(コンプライアンス・リスク管理基本方針)」平成30年10月

リスクマネジメントについては、以下の関連記事で解説しています。

ここでは代表的なコンプライアンス・リスクを紹介します。

労務リスク

政府は近年働き方改革を進めており、その一環として、2018年7月6日に「 働き方改革関連法 」が公布され、順次施行されています。

そのような中で、労務リスクの重要性は増しています。

代表的な労務リスクとしては、以下のようなものが挙げられます。

  • 長時間の時間外労働による労働基準法違反
  • ハラスメント(パワハラセクハラなど)
  • 非正規社員に対する差別的な取扱いや不合理な待遇差

時間外労働の上限規制、非正規雇用労働者に対する不合理な待遇差の禁止などは、「働き方改革関連法」でより厳しい規制が定められています。

労働基準法などの法令に違反すると、罰則が課される可能性があります。

また、ハラスメントが起こると、会社内の雰囲気の悪化・生産性の低下などの悪影響が出るのはもちろん、会社がハラスメントを受けた従業員から、使用者責任(民法715条)、使用者固有の不法行為責任(民法709条)、安全配慮義務違反としての債務不履行責任(民法415条)などを問われ、損害賠償請求を受ける可能性もあります。

特にハラスメントについてはセクハラやパワハラのみならず、マタニティハラスメント(マタハラ)、SOGIハラスメントなどにも注意が必要です。

働き方改革関連法については、以下の関連記事で解説しています。

契約リスク

会社がビジネスをする上で契約は必ず発生するものですが、その内容が法令に違反していたり、自社に不利な条文が含まれていたりすると大きな損失を被るリスクも存在します。

契約が法律に違反していないか、自社に大きな不利益となる条文が含まれていないかなどをチェックする体制を構築することが、予防法務の観点から重要になります。

また契約書は紛失、漏えいといったリスクもあるため、所管部門や管理体制を決め、契約書の管理体制を構築することも重要です。

契約書の管理を効率化するために、契約書の電子化などを検討していくことも考えられます。

情報漏えいリスク

営業秘密

まだ世に出ていない新製品の情報や顧客情報、製品の製造方法などのノウハウなど、社内の重要な情報が紛失・漏えいすることは自社に大きな不利益をもたらします。

不正競争防止法 上の営業秘密として保護されるためには、①秘密管理性、②有用性、③非公知性、という3つの要件があります。

この要件も考慮した上で、企業情報を適切に管理する体制を構築することが必要となります。

また、従業員からの情報漏えいを防ぐために、就業規則、秘密保持誓約書、社内規程などにおいて秘密保持を定めることが大切です。

更に、取引先や業務委託先からの情報漏えいを防ぐために、契約において秘密保持条項を定める、 秘密保持契約 を締結する、といったことも大切です。

不正競争防止法の営業秘密については、以下の関連記事で解説しています。

秘密保持契約については、以下の関連記事で解説しています。

個人情報

企業が有する個人情報を紛失・漏えいさせてしまうと、多数の消費者に不利益を与え、企業の信用を一気に低下させるおそれがあります。

個人情報の取扱いについては、 個人情報保護法 に事業者が守るべきルールが定められています。

このルールに違反すると、個人情報保護委員会より指導、助言、勧告、命令などを受けたり、罰則が課されることもあります。

また、個人情報の紛失・漏えいが起こると、本人から損害賠償請求を受ける可能性もあります。

個人情報保護法のルールに従った個人情報の取得・利用がなされ、また管理されているかを確認すると共に、個人情報が漏えいしないための個人情報の管理体制を整備する必要があります。

具体的には、情報のアクセス制限、セキュリティソフトウェアの導入、個人情報取扱規程の策定、プライバシーポリシーの策定、などの方策を進める必要があります。

個人情報保護法は、改正が多い法律ですので、法改正をキャッチアップすることも重要です。

2022年4月に施行された個人情報保護法改正については、以下の関連記事で解説しています。

法令違反リスク

コンプライアンスの基本が「法令遵守」である以上、個々の法令違反には当然気を付ける必要があります。企業において法令遵守が問題になることが多い法令は以下のようなものがあります。

  • 消費者契約法
  • 独占禁止法
  • 下請法
  • 景品表示法

消費者契約法は、事業者が、消費者との間にある情報の量・質の格差などを利用し、消費者から不当に利益を搾取することを防止する法律です。不要な勧誘による契約の取消しや不当な契約条項の無効などを定めています。

また、独占禁止法は、公正・自由な競争の実現を目指す法律です。公正・自由な競争を妨げる行為を規制しています。特に独占禁止法については、以下の関連記事で解説しています。

景品表示法は、一般消費者の利益を保護するため、広告における不当表示を禁止したり、企業が行う景品類の額などを制限しています。企業が、広告を出すときや、製品・サービスを売るために懸賞などを行うときには、景品表示法違反にならないように注意が必要です。

その他、会社法、労働基準法、労働契約法、不正競争防止法、個人情報保護法、製造物責任法などの法令にも注意が必要です。

コンプライアンス遵守のための対策

企業に求められるコンプライアンス体制は、時代とともに変わるものであり、常に改善・進化が期待されています。

法務担当者は、現在及び将来におけるコンプライアンスの要請に応えるため、以下のポイントに留意しながら、自社のコンプライアンス強化に努めましょう。

法改正などの情報をキャッチアップする

法務担当者には、コンプライアンスに関連する法令改正などの情報をキャッチアップすることが求められます。

年々行われる法改正に合わせて、自社のコンプライアンス体制をアップデートすることは、法務担当者の重要な役割です。政府が発表する資料を随時確認したり、外部のセミナーに参加したりして、法令改正に関する情報収集を積極的に行いましょう。

また、日頃の業務を行う中で、隠れた法務リスクが存在しないかを注意深く監視することも大切です。所管部などとコミュニケーションをとる中で、法令に照らして少しでも怪しいポイントを見つけた場合には、法務担当者の間で速やかに検討を行うように習慣づけることをお勧めいたします。

社内規程やマニュアルを作成・刷新する

社内規程や業務マニュアルの整備は、会社の業務が法令等に沿った形で行われることを確保するために重要です。まだ社内規程や業務マニュアルが十分に揃っていない会社では、法務担当者が主導して早めの整備を図りましょう。

大まかな方針としては、まずコンプライアンスに関する一般的な遵守事項を「コンプライアンス規程」等に定めます。そのうえで、各所管部に適用される社内規程や業務マニュアルにも、個別の業務フローにおいて問題となるコンプライアンス上の注意点や対処について規定するのがよいでしょう。社内規程や業務マニュアルの整備に当たっては、外部弁護士のサポートを受けることも有力な選択肢です。

さらに法務担当者は、法令等のアップデートに合わせて、社内規程や業務マニュアルの内容を刷新する必要があります。所管部などから問題提起がなされることもありますが、それだけでなく、法務担当者の側から積極的に社内規程や業務マニュアルの刷新を提案しましょう。

社内規程や業務マニュアルを制定・刷新した際には、その内容を社内に周知することも大切です。社内向けのアナウンス資料を作成したり、従業員研修を実施したりして、社内全体への浸透を図りましょう。

ハラスメント相談窓口や内部通報窓口を設置する

社内で違法行為が発生・深刻化するリスクを防ぐには、従業員に通報を促し、早い段階で違法行為の端緒を把握することが大切です。ハラスメント相談窓口や内部通報窓口を設置すると、社内における違法行為の芽を早期に摘むために効果を発揮します。

ハラスメント相談窓口や内部通報窓口に関する制度設計を行う際には、従業員が通報しやすい体制を整えることが重要になります。例えば窓口担当者には中立的な立場の従業員や外部専門家を配置し、通報によって不利益に取り扱われることはない旨を明示するなどの方法が有効です。

ハラスメント相談窓口や内部通報窓口の整備を効果的に行うためには、法務担当者によるバランスのよい検討が求められます。社内において防止すべき違法行為は何なのか、どのような仕組みを作れば従業員が通報しやすいのかなど、様々な観点に留意しながら、より良い窓口体制の整備を目指しましょう。

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参考文献

金融庁サイト「コンプライアンス・リスク管理に関する 検査・監督の考え方と進め方」(平成30年10月)

会社法実務研究会ほか「会社法実務マニュアル 第2版 第5巻 コンプライアンス・リスク対策」ぎょうせい

阿部・井窪・片山法律事務所「法務リスク・コンプライアンスリスク管理実務マニュアル」民事法研究会

伊藤真「会社コンプライアンス 内部統制の条件」講談社

結城智里「企業不祥事事典II: ケーススタディ2007-2017」日外アソシエーツ

花崎正晴「コーポレート・ガバナンス」岩波書店

浜辺陽一郎「内部統制 (図解雑学)」ナツメ社