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取締役の善管注意義務とは? 義務を負う人・内容や水準・違反事例などを解説!

契約ウォッチ編集部

契約ウォッチ編集部

2022/03/09 (公開:2022/02/22)
この記事のまとめ

「善管注意義務」とは、その人の社会的な地位から一般的に要求される注意義務を意味します。

善管注意義務の内容や水準は、義務を負う者の地位や状況に応じて異なります。

株式会社の取締役は、善管注意義務を負う職責の典型例です。取締役が善管注意義務に違反した場合は、会社から責任を追及されるリスク、解任されるリスクなどを負います。

善管注意義務に関するトラブルを防ぐには、取締役自身が注意深く業務を行うことに加えて、会社の側でも内部統制システムやリスクマネジメント体制を構築するなど、予防策を講じることが大切です。

この記事では、善管注意義務に関する基礎知識や、取締役の善管注意義務に関する注意点などを解説します。

会社役員の不祥事に関するニュースで「善管注意義務」という言葉をみかけたことがあります。
ヒツジ
ムートン先生
善管注意義務が求められるケースはいろいろありますが、その中でも「取締役の善管注意義務」は典型的な例ですね。企業法務にも関係のある言葉なので、意味を把握しておくといいかもしません。

【目次】

取締役の善管注意義務とは?

取締役は、会社から経営を任され、会社のために職務を行う立場にあります。このような会社と取締役の関係性を、民法上「委任」と呼んでいます。

職務を会社から委任されている取締役は、会社に対して「善管注意義務(その人の社会的な地位から一般的に要求される注意義務)」を負っています(会社法330条、民法644条)。具体的には、取締役は経営者として払うべき注意を怠らずに、会社のために誠実に職務を行わなければなりません。

取締役以外に、善管注意義務を負う場合の例

取締役以外にも、善管注意義務を負うケースがあります。具体的に、どのような人が善管注意義務を負っているのかを見ていきましょう。

他人から物を預かっている場合

留置権者(民法298条1項)や有償寄託の受寄者(有料で物を預かって保管する者、民法400条)は、対象物の保管・管理などについて、所有者に対する善管注意義務を負います。他人の物を預かっている以上は、その物を無事に返すまでの間、壊したりしないように注意する必要があるからです。

「留置権者」とはなんでしょうか?
ヒツジ
ムートン先生
留置権者とは、“他人の物を所有する人がその物に関連して発生した債権をもっている場合、債権の支払がなされるまでは、その物の引渡しを拒否できる権利”をもつ者のことです。例えば、時計屋がお客さまから預かった時計を修理したときは、留置権に基づき、修理代が支払われるまで、修理した時計を渡すことを拒否できます。

ただし、無償寄託の受寄者(無償で物を預かって保管する者)については、「自己の財産と同一の注意義務」「善管注意義務と『自己の財産と同一の注意義務』との違い」にて、後述)を負うにとどまります(民法659条)。

売買契約で引渡しが決まった物を、引渡しまで保管する場合

売買契約を締結した後、実際に物を買主に引き渡すまでの間、売主は物の保管・管理などについて、買主に対する善管注意義務を負います(民法400条)。

約束どおり売買を実行するために、きちんと目的物を管理する必要があるからです。

他人からなんらかの事務を委任された場合

株式会社の取締役を含め、他人から法律上又は事実上の事務を委任されている者は、委任者に対して善管注意義務を負います(民法644条、656条)。

民法では、「事務」という用語がよく使われている気がしますが、どういう意味なのでしょうか。
ヒツジ
ムートン先生
「事務」は、「仕事」とほぼ同じ意味ですね。

信頼関係に基づいて委任を受けている以上は、委任者を裏切らないように、注意深く事務を処理する必要があるからです。

取締役以外の会社の役員・会計監査人や(会社法330条)、組合における業務執行組合員(民法671条)なども善管注意義務を負っています。

後見・保佐・補助に関する事務を行う場合

「成年後見制度」とは、判断能力の低下した本人が、適切に法律行為を行えるようにサポートする制度です。

サポート役となる後見人・保佐人・補助人や、サポート役を監督する後見監督人・保佐監督人・補助監督人は、それぞれ成年後見制度を利用する本人に対して善管注意義務を負います(民法869条、876条の5第2項、876条の10第1項、852条、876条の3第2項、876条の8第2項)。

その他

上記以外にも、事務管理を行う者は、本人に対する善管注意義務を負います(民法698条の反対解釈)。

「事務管理を行う者」とは、具体的にどんな人でしょうか?
ヒツジ
ムートン先生
法律上の義務がないにもかかわらず、他人の事務を処理する者のことです。例えば、頼まれていないのに、代理で荷物を受け取ったり、家を修理したりする人が、事務管理を行う者に該当します。
求められていないのに勝手にそんなことをするなんて、ひどくないですか?
ヒツジ
ムートン先生
たしかに、場合によってはお節介になってしまいますね…。ただ、求められていないのに、他人の事務にかかわるのはダメというルールにすると、よかれと思って行った親切などが不法行為になり、本当に必要なときでも誰も他人にかかわらなくなってしまう可能性があります。そこで民法は、一定の要件で、こうした行為を適法と認めています。

また、配偶者居住権(民法1032条1項)又は配偶者短期居住権(民法1038条1項)に基づき建物に居住する者も、建物の所有者に対して善管注意義務を負います。

善管注意義務と「自己の財産と同一の注意義務」との違い

善管注意義務と対比される概念として、「自己の財産と同一の注意義務」があります。

善管注意義務を負う者は、故意又は過失(重過失・軽過失)により委任者(会社)に損害を与えた場合には、善管注意義務違反の責任を問われ、損害を賠償する義務を負います。

これに対して、「自己の財産と同一の注意義務」を負う者は、故意又は重過失がない限り、相手方に与えた損害を賠償する義務を負いません(=軽過失の場合は、損害賠償責任を負わない)。

「軽過失」と「重過失」、どう違うんですか?
ヒツジ
ムートン先生
それぞれ以下のような意味合いです。
軽過失:結果を予想して回避できるはずだったのに、それを怠ったこと
重過失:ほんの少し注意を払えば結果を予想して回避できるはずだったのに、漫然と怠ったこと

このように、善管注意義務と「自己の財産と同一の注意義務」は、事務を行う者にどの程度の過失があれば違反に該当するかという点に違いがあります。


「自己の財産と同一の注意義務」を負う者の例は、以下のとおりです。

「自己の財産と同一の注意義務」を負う者の例

✅  特定物の引渡しについて、債権者による受領遅滞が発生した後の債務者(民法400条)
✅  無報酬の寄託契約における受寄者(民法659条)
✅  相続財産の管理をしている、相続放棄をした者(民法940条1項)
など

取締役の善管注意義務の内容・水準はどのように決まるのか?

善管注意義務の内容・水準は、義務を負う者の地位や置かれている状況などに応じて異なります。

例えば取締役の場合、以下に挙げる要素などを考慮して、善管注意義務の内容・水準が決まると考えられます。

取締役の善管注意義務の内容・水準を決定する主な要素

✅  過去の経験や実績
✅  専門的知識の程度
✅  どのような役割を期待されて取締役に選任されたか
✅  発生した問題が、担当領域の範囲内かどうか
など

取締役の善管注意義務違反が問題になる主なパターン

取締役の善管注意義務が問題になるケースは、主に以下の3つのいずれかに分類できることが多いです。

・取締役が自ら法令違反に加担した場合
・担当エリアで発生した違法行為等を見逃した場合
・経営判断ミスにより、会社に損害を発生させた場合

取締役が自ら法令違反に加担した場合

取締役自身が違法行為を犯しているケースは、善管注意義務違反の中でも、最も悪質な違反に当たります。
会社資金の横領や粉飾決算などが、取締役の犯しがちな善管注意義務違反の典型例です。

担当エリアで発生した違法行為等を見逃した場合

取締役自身が積極的に違法行為をしていなくても、自らの担当エリアで違法行為等が発生し、取締役に監督上の過失が認められれば、善管注意義務違反の責任を負います。 取締役は、違法行為・不適切行為等が発生しないよう、内部統制システムやリスクマネジメント体制の構築・運用をする義務も負っているためです。

現場での違法行為等の発生を防ぐためには、取締役自身が従業員とコミュニケーションを取り、日頃から現場の状況を把握しておくことが重要になるでしょう。

経営判断ミスにより、会社に損害を発生させた場合

経営判断ミスによって、会社に損害が発生した場合にも、取締役は善管注意義務違反の責任を負う場合があります。

ただし、経営判断は不確定な要素があり、常に一定のリスクが存在するものです。経営判断に関して過大な責任を課すと、取締役が萎縮してしまい、適切なリスクを取る判断ができなくなってしまいかねません。そのため経営判断については、その決定の過程や内容に著しく不合理な点があった場合に限り、善管注意義務違反に当たると解されています(「経営判断の原則」。最高裁平成22年7月15日判決)。

取締役が善管注意義務に違反したらどうなる?

取締役が善管注意義務に違反すると、会社や株主に対して損害賠償責任を負うほか、取締役を解任されるおそれがあります。

会社から任務懈怠による損害賠償責任を追及される

善管注意義務に違反した取締役は、会社から任務懈怠責任を追及される可能性があります(会社法423条1項)。売上・利益の減少分や、追徴課税・罰金などによって被った損害についても、すべて損害賠償の対象となるので要注意です。

「任務懈怠責任」とはなんでしょうか?
ヒツジ
ムートン先生
「本来やるべき任務を怠った責任」という意味です。

ただし、総株主の同意があれば、取締役の損害賠償責任を免除することが認められます(会社法424条)。
また、株主総会決議(会社法425条)や責任限定契約(会社法427条)により、最低責任限度額を超える部分の損害賠償責任の免除が認められることもあります。

株主などに対しても責任を負う場合がある

善管注意義務違反について、取締役に悪意又は重大な過失が認められる場合には、株主や債権者など会社以外の第三者に対しても、損害賠償責任を負います(会社法429条1項)。

この場合、多数の者から集団訴訟を提起される可能性も高く、収集困難な事態といえるでしょう。

株主代表訴訟を提起される可能性がある

取締役は、株主代表訴訟を提起される可能性もあります。

株主代表訴訟とは、会社役員の経営判断により会社に損害を与えたにもかかわらず、会社がその責任を追及しない場合に、株主が損害を発生させた役員に対して訴訟を提起できる制度です(会社法847条)。

株主代表訴訟では、高額の損害賠償を請求される場合があり、数百億円もの損害賠償を命じる判決などもあります。株主が勝訴しても、損害賠償金を得るのは会社ですが、取締役個人にとっては、非常に大きなリスクといえます。

取締役を解任される可能性がある

善管注意義務に違反した取締役は、株主総会決議により、取締役の地位を解任される可能性があります(会社法339条1項、341条)。

不祥事を起こした取締役を追放し、会社のイメージを回復したいという思惑が働くケースが多いため、極めて高確率で解任が行われることになるでしょう。

取締役の善管注意義務違反が発生した場合の対応フロー

取締役の善管注意義務違反により、会社に損害が発生した場合、速やかに事態の収拾を図ることが大切です。具体的には、以下のフローに従って迅速な対応を行いましょう。

対応方針について経営陣・顧問弁護士の間で協議する

プレスリリースなどを通じて、株主等に対する説明を行う

違反した取締役を解任する

再発防止策を実施する

対応方針について経営陣・顧問弁護士の間で協議する

取締役の不祥事に関する対応は、会社の業務や評判に対するダメージを最小限に抑えるため、緊急を要します。

取締役の善管注意義務違反を把握した場合には、すぐに経営会議を招集して、その後の対応方針を話し合いましょう。

また、違反した取締役の責任追及や解任、株主等からのクレームなどについては、法的な観点からの対応が要求されます。そのため、経営陣の間で話し合うことに加えて、顧問弁護士にアドバイスを求めるのも効果的です。

プレスリリースなどを通じて、株主等に対する説明を行う

取締役の善管注意義務違反が発生した場合、同族会社を除けば、株主が会社に対して不信感を抱くことは間違いありません。株主からの信頼を失った状態では、会社経営は困難を極めますので、いち早く信頼回復に向けた取り組みを行いましょう。

株主からの信頼を回復するには、取締役の不祥事に関する対応方針を、公式なメッセージとして迅速に発信することが大切です。経営会議で事後対応を決定したら、プレスリリースなどを通じて、速やかにその内容を株主に伝えましょう。

違反した取締役を解任する

不祥事によって傷ついた会社のイメージを刷新するには、当事者となった取締役を解任することも有力な選択肢です。

会社にとって重要な役割を果たしていた取締役でも、会社の生まれ変わりをアピールするために、解任した方がよい場合もあります。
経営陣の間で解任がベストだと判断した場合には、臨時株主総会を招集して、株主に解任の可否を諮りましょう。

再発防止策を実施する

取締役による不祥事は、会社に対して大きなダメージを与えるため、同じ事態を二度と繰り返さないことが大切です。

次の項目で挙げる内容も参考にして、取締役による不祥事を効果的に防止できる体制の構築を目指しましょう。

取締役の善管注意義務違反を防ぐため、会社がとり得る対策

取締役の善管注意義務違反による不祥事は、未然に防げるに越したことはありません。
次の内容を含む対策を講じて、不祥事に強い会社を作り上げる必要があります。

取締役間の相互監視を強化する

各取締役の職務執行を監視することは、取締役会に課された重要な役割です(会社法362条2項2号)。
取締役会の構成員である取締役は、自分の担当エリアばかり注意を払うのではなく、他の取締役がなにをしているのかについても、常日頃から気を配っておきましょう。

取締役会の運営方法としても、各取締役に対して定期的に業務報告を求めるなど、取締役間の情報共有が十分に行われるようなやり方を検討する必要があります。

内部監査・外部監査を実施する

取締役同士の監視だけでは、細かい部分を見落とす可能性が高く、場合によってはなれ合いが生じてしまうおそれがあります。そこで、客観的な視点からの監査を定期的に実施することが、不祥事の予防策としては効果的です。

監査には大きく分けて、社内の監査部門による「内部監査」と、外部の監査法人などによる「外部監査」の2種類があります。大企業の場合は内部監査と外部監査を併用し、中小企業の場合は外部監査を依頼することが多いです。

監査には多額の費用がかかりますが、会社の健全性を維持するための必要経費ととらえることもできます。一定以上の規模の会社は、費用対効果も考慮しつつ、監査の実施をご検討ください。

社内全体のコンプライアンス意識を高める

社内で発生する違法行為を、取締役自ら阻止することには限界があります。
そのため、従業員それぞれに対してコンプライアンス意識を浸透させ、そもそも違法行為が発生しにくい環境を整えておくことが大切です。

具体的には、コンプライアンスに関する従業員研修を行ったり、各部署にコンプライアンス担当者を常駐させて啓蒙したりすることが考えられます。

トップダウンで従業員をコントロールするだけでなく、従業員側の自発的な姿勢・取組みにより、社内の不祥事を防止することを目指しましょう。

この記事のまとめ

取締役の善管注意義務の記事は以上です。最新の記事に関する情報は、契約ウォッチのメルマガで配信しています。ぜひ、メルマガにご登録ください!

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