振替休日とは?
代休との違いや企業はいつまでに
取得させるべきかを分かりやすく解説!

無料で資料をダウンロード
 人事・労務部門ですぐに使えるChatGPTプロンプト集 >
✅ 副業解禁のために企業が知っておくべき就業規則の見直しポイント >
この記事のまとめ

振替休日とは、法定休日や所定の休日に働き、あらかじめ指定した別の日に休みを与える制度を指します。

・振替休日は出勤前日までに休日と労働日を入れ替える仕組みで、事前に承認と通知を済ませる必要があります。
代休は休日労働をさせた場合に、事後に与える休みのことです。
・振替休日は就業規則に基づき、労働日とする日からできるだけ近い日に取得させることが望ましいです。

本記事では、振替休日について、基本から詳しく解説します。

ヒー

振替休日制度を設定したいのですが、どのように運用するべきか知りたいです。

ムートン

振替休日は、就業規則へ規定したうえで、事前に労働者へ承認と通知を行う必要があります。振替休日ついて、代休との違いや、いつまでに取得させるべきかなどを詳しく見ていきましょう。

※この記事は、2025年9月19日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。

振替休日とは

振替休日の基本概念と要件について解説します。

振替休日の定義

振替休日とは、法定休日や所定の休日に働き、あらかじめ指定した別の日に休みを与える制度を指します。労働基準法35条では最低でも「1週間に1日、または4週に4日の休日」を与えることが明記されています。これが法定休日と呼ばれます。

例えば、日曜を法定休日としている場合、業務の都合である日曜日に出勤させる必要があるとき、事前に「翌週の金曜日を休日に振り替える」と指定すれば、日曜は勤務日、金曜は休日として扱われます。

振替休日の要件

振替休日を適正に成立させるには、以下の4つの条件を満たす必要があります。

①就業規則に規定すること
②振替日を特定すること
③振替休日はできるだけ近接した日とすること
④前日までに通知すること

参考:厚生労働省「モデル就業規則」

振替休日と代休の違い

振替休日と代休の違いについて、タイミング・割増賃金の取り扱いの観点から解説します。

手続きのタイミングの違い

振替休日と代休の大きな違いは手続きのタイミングです。

振替休日は出勤前日までに休日と労働日を入れ替える仕組みで、事前に承認と通知を済ませる必要があります。

一方、代休は休日労働をさせた場合に、事後与える休みのことです。つまり、振替休日は事前に設定し、代休は事後に設定する点が両者の違いです。

例えば「日曜出勤予定のため翌週金曜を休日とする」と振替出勤日がある週の木曜までに決めれば振替休日ですが、「日曜に出勤したから次の金曜を休みにする」とする場合は代休となります。

就業規則には会社からの通知期限等を明確に定め、休日の振替のルールを明示することで混乱を防ぐことが可能です。

割増賃金の取り扱いの違い

割増賃金の計算方法も振替休日と代休で異なります。

休日労働には35%の休日割増が発生しますが、振替休日が適正に行われれば、休日労働そのものが発生しないため休日割増は不要です。ただし、週40時間を超えた部分については、時間外労働として25%の割増が必要です。

代休の場合は、前提となる出勤日が法定休日(週1回または4週4日の法定休日)の場合は35%以上、所定休日の場合は25%以上の割増賃金を支払わなければなりません。さらに深夜労働があれば追加で25%が加算されます。

振替休日を正しく運用すれば、人件費の削減にもつながるため、給与計算ルールを明確に整備することが欠かせません。

振替休日はいつまでに取得させるべきか

振替休日をいつまでに取得させるべきかについて解説します。

就業規則に基づいて取得させる

振替休日の取得期限については労働基準法に明確な規定がないため、企業ごとに就業規則で期限を定め、そのルールに沿って取得させるのが基本です。

例えば「振替労働日から○週間以内に取得すること」と明文化しておけば、従業員は期限を意識して休暇を取りやすくなり、企業側も管理がしやすくなります。

振替休日の法的な取得期限は直接定められていませんが、労働基準法第115条に定められている「賃金その他の請求権の時効」によって、取得する権利を「2年間行わない場合は、時効によって消滅する」とされています。

曖昧な運用では、いつまでに休ませるべきか判断が分かれてしまい、労使間でのトラブルにつながりかねません。就業規則に沿って取得させる仕組みを整えることが、振替休日の適正な運用に直結します。

できるだけ近接した日に取得させるのが望ましい

振替休日は、休日労働をする予定の日から、できるだけ近い日に取得させることが望ましいです。その理由について解説します。

労働者の健康維持のため

企業には、労働者が安全に働けるように配慮する安全配慮義務があります(労働契約法5条)。労働者の長期連勤による過労を避けるために、休日労働をする予定の日から、できるだけ近い日に取得させることが望ましいとされています。

例えば、日曜出勤をした場合、同一週の火曜に振替休日を設定すれば最大5日勤務で収まり、健康管理にも適しています。反対に3週間後に振替を取ると、間に別の休日出勤が入るなどして長期連勤のリスクが生じます。

休日労働の疲労を早めに回復させるためにも、近接日での休息が効果的です。

週またぎは割増賃金が発生する可能性があるため

振替休日を翌週に取ると、その週の労働時間が40時間を超えれば時間外割増が必要になります。

例えば、月~金に8時間ずつ勤務し、日曜に休日出勤した場合、合計48時間となり、超過8時間分に25%の割増を支払う必要があります。

一方、週内で調整して40時間以内なら割増は不要です。

割増賃金の発生を避け、また労働時間管理が煩雑になるのを避けるためには、できる限り同一週内で振替え休日を取得させることが推奨されます。

振替休日を与えるメリット

振替休日制度を導入・活用する主なメリットは、以下のとおりです。

  • 法定休日労働の割増を回避できる
  • 事前にスケジュールや人員調整ができる
  • 従業員の健康維持につながる

それぞれのメリットについて解説します。

法定休日労働の割増を回避できる

振替休日を事前に設定すれば、振り替えたことで週40時間を超えない限り割増賃金を支払う必要がありません。同じ労働時間でも人件費を削減でき、経営面でのメリットが大きいといえます。

反対に代休の場合は前提としてすでに休日労働をしたという事実があるため、必ず休日出勤に対する割増(25%または35%)を支払わなければなりません。

つまり、適切に振替休日を運用することで、余分な人件費の発生を防ぎつつ、法令に基づいた労務管理を実現できます。企業にとっては、コスト削減とコンプライアンス確保を同時に達成できる重要な制度です。

事前にスケジュールや人員調整ができる

振替休日を導入すると、休日出勤が必要な場合でも前もって振替日を設定できるため、人員配置の計画が立てやすくなります。

例えば、シフト制で休日として設定している日曜の出勤が避けられない場合でも、事前に同じ週の火曜を休日に設定し、シフトに代替要員を確保すれば、労働基準法の休日確保義務を守りつつ業務の継続性を担保できます。

代休は事後対応になるため突発的な人員不足が起きやすいのに対し、振替休日は計画的に調整できる点がメリットです。

従業員の健康維持につながる

振替休日を近接した日に取得すれば、従業員は疲労を早めに回復でき、長期的な健康維持や生産性の向上につながります。

また、法定休日に働いた場合でも、事前に休日の振り替えが保証されているため、心身のリフレッシュやプライベートの充実が確保されます。これにより、休日出勤への精神的な負担を軽減でき、ワークライフバランスを保つことも可能です。

従業員の健康は企業にとって大切な資産であり、振替休日制度は人材定着や安全管理の面でも有効な仕組みといえます。

振替休日の運用ポイント

振替休日制度の適切な運用方法は、以下のとおりです。

  • 就業規則に規定する
  • 36協定に規定する
  • あらかじめ労働日と休日を入れ替える

それぞれのポイントについて解説します。

就業規則に規定する

振替休日制度を適正に運用するには、就業規則に明文化しておく必要があります。労働基準法89条により休日に関する事項は必ず記載が必要で、振替休日も例外ではありません。

具体的には、以下のような内容を盛り込むことが望ましいです。

  • 事前申請の期限
  • 取得期限
  • 期限超過時の割増処理
  • 再振替の可否

記載がなければ代休との区別が曖昧になり、労使トラブルや給与計算ミスにつながる可能性があります。

就業規則での規定例

就業規則に振替休日について明記する場合の規定例を紹介します。

第◯条(振替休日)

1.会社は業務の都合により必要がある場合、所定の休日または法定休日を他の労働日と振り替えることができる。

2.振替休日を指定し、振替対象日の前日までに労働者へ通知するものとする。

3.振替休日は、振替労働日から4週間以内に取得させるものとする。

4.前項の期限内に振替休日を取得できなかった場合、その労働は時間外労働として取り扱い、所定の割増賃金を支払う。

5.振替休日の再振替は認めない。

上記の条文例はあくまでひな形です。自社の勤務形態や実態にあわせて内容を編集し、必要に応じて専門家へ確認してください。

36協定に規定する

振替休日は正しく運用されていれば休日労働には当たらないため、36協定(労使協定)に規定する必要はありませんが、振替によって1日8時間もしくは週40時間を超える労働が発生した場合は、時間外労働として扱われます。この場合は36協定を締結する必要があり、あわせて割増賃金を支払わなければなりません。

なお、月に45時間(年360時間)を超えるの時間外労働が発生する場合は、特別条項付き36協定の締結が必要です。

あらかじめ労働日と休日を入れ替える

振替休日を成立させるには、あらかじめ休日と労働日を入れ替えることが条件です。

振替日を明確に定め、遅くても前日までには従業員への通知を行うことが推奨されます。また、振替日はできるだけ近接した日に設定する必要があり、労働日とした日の同一週内に設けるのが望ましいです。

事後に振替日を指定した場合は代休扱いとなり、割増賃金が発生します。

振替休日の取得を証明する申請書や通知書は、労働関係に関する重要な書類として、労働基準法第109条に基づき5年間保存することが義務付けられています。ただし、経過措置として当分の間は3年間の保存が認められています。

振替休日に関するよくある質問

振替休日制度の運用に関するよくある質問について回答します。

時間単位・半日単位の取得はできる?

振替休日は原則1日(暦日)単位で取得します。

法定休日は連続24時間を確保する考え方のため、半日・時間単位での振替は要件を満たしにくく、実務上は代休扱いとなって休日割増が必要になるリスクがあります。

交替制で連続24時間同士を入れ替える特殊な運用を除き、就業規則に「振替は1日単位」と明記するのが安全です。

振替休日は会社が指定してもよい?

就業規則に根拠があれば、振替休日を会社指定することが可能です。

振替は使用者の業務命令として有効ですが、前日までの通知、振替日の特定などの要件は必ず満たす必要があります。

もっとも、生活影響や家庭都合を無視した一方的指定はトラブルにつながりかねません。

実務では「原則は事前協議・合意、やむを得ない場合のみ会社指定」という運用が推奨されます。
なお、会社主導で振替休日を指定する場合の規定例は次の通りです。

  1. 業務上必要がある場合は、法定休日、所定休日をあらかじめ他の日に振り替えることがある。この場合、原則として当該休日と同一週内の所定勤務日に振り替えるものとするが、やむを得ない場合は、別途会社が指定する日に振り替えるものとする。なお、振替により指定した休日に関しては無給とする。
  2. 前項の場合、前日までに振替による休日を指定して社員に通知する。
  3. 社員が、前項の通知を受けたにもかかわらず、正当な理由なく、振替により勤務日となった日に勤務しないときは、欠勤として扱う。

月またぎの取得はできる?

月またぎでの取得は可能ですが、給与処理と時間管理が複雑になります。

賃金全額払いの原則により、休日労働(または振替出勤)分は発生月に支払い、取得月は所定内賃金から相当時間を控除するのが基本です。

例えば、固定時間制の場合、週40時間を超えたかどうかの判定は週ごとに行い、36協定で定める上限時間の管理は月ごとに行うため、週単位と月単位の両方で勤怠と賃金を管理し処理することが重要です。

注意点として、振替によって出勤した週の労働時間が40時間を超えた場合、その超過分については時間外労働として割増賃金の支払いが必要です。この割増賃金は、翌月に振替休日を取得したとしても消滅せず、労働が発生した月の給与として支払わなければなりません。

したがって、月またぎの運用では勤怠システムで週単位・月単位の両方を正しく管理する仕組みが求められます。

ムートン

最新の記事に関する情報は、契約ウォッチのメルマガで配信しています。ぜひ、メルマガにご登録ください!

無料で資料をダウンロード
 人事・労務部門ですぐに使えるChatGPTプロンプト集 >
✅ 副業解禁のために企業が知っておくべき就業規則の見直しポイント >

参考文献

労働基準法

監修者

アバター画像
遠藤良介 社会保険労務士(愛知社労士会所属)
Reメンバー労務オフィス
労務相談、社会保険・労働保険手続き、社内規定類作成、ライフプランニング相談ほか