労働基準法とは?
賃金・残業・休憩・休日・有給休暇などの
ルールを分かりやすく解説!

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10分で読める!2024年施行予定の法改正まとめ
知識ゼロから学ぶ 社内規程の作成・運用のポイント
この記事のまとめ

労働基準法」とは、労働者に適用される労働条件の最低ラインを定めた法律です。使用者による不当な搾取を防ぎ、労働者が人たるに値する生活を営むために必要な収入を確保することを目的としています。

労働基準法には、主に以下の事項に関するルールが定められています。
①労働条件の明示
②解雇の予告・解雇予告手当
③賃金
④労働時間
⑤休憩
⑥休日
⑦時間外労働等
⑧年次有給休暇

会社は労働基準法の内容を正しく理解し、定められたルールを遵守しなければなりません。

この記事では、労働基準法に定められたルールの内容を分かりやすく解説します。

ヒー

わが社は就業規則や雇用契約書で労働条件を定めているので、労働基準法は守っているといえますよね。

ムートン

ちょっと待ってください、その労働条件の内容や実態が、労働基準法の最低ライン以上か、きちんと確認する必要があります。最近は関係する法改正などもありますので、しっかり内容を理解していきましょう。

※この記事は、2023年3月14日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。

労働基準法とは

労働基準法」とは、労働者に適用される労働条件の最低ラインを定めた法律です。

労働基準法の目的

労働基準法の目的は、使用者による不当な搾取を防ぎ、労働者が人たるに値する生活を営むために必要な収入を確保することです。

労働者の多くは、使用者から支払われる給与に生活を依存しているため、使用者に対して弱い立場にあります。立場の強い使用者の言いなりに労働条件を決められてしまうと、労働者の待遇が不当に低くなり、最低限の生活費すら得られない事態になりかねません。

そこで労働基準法では、労働者の生活保障を図るべく、使用者が労働者に与えるべき待遇の最低ラインを定めています。

労働基準法の対象となる労働者

労働基準法は、使用者の指揮命令を受けて働くすべての労働者に適用されます。正社員に限らず、契約社員パートアルバイトなどの非正規労働者も、労働基準法の適用対象です。

ただし労働者の属性によっては、労働基準法の規定の一部が適用除外とされることがあります。

なお会社の役員や業務委託を受けるフリーランスなどは、使用者の指揮命令下で働くわけではないため、労働基準法が適用されません

労働基準法は強行法規

労働基準法は強行法規であり、労働基準法で定める基準に達しない労働条件は無効となります(同法13条)。

もし労働基準法の基準に達しない労働条件を定めた場合、その部分については労働基準法の最低ラインが適用されます。

労働基準法の主なルール

労働基準法では、主に以下の事項に関するルールが定められています。

労働条件の明示
解雇の予告・解雇予告手当
賃金
労働時間
休憩
休日
時間外労働等
年次有給休暇

ムートン

次の項目から、各事項に関するルールの概要を見ていきましょう。

①労働条件の明示に関するルール

労働契約を締結するに当たり、使用者は労働者に対して労働条件を明示することが義務付けられています(労働基準法15条1項)。

特に以下の事項は、労働者に対して書面を交付して明示しなければなりません。ただし、労働者の同意がある場合には、ファクシミリまたは電子メール等による明示も認められています(労働基準法施行規則5条1項・4項)。

<必ず書面で明示すべき事項>
・労働契約の期間
・期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準
・就業の場所・従事すべき業務に関する事項
・始業・終業の時刻、休憩・休日などに関する事項
・賃金の決定方法、昇給などに関する事項
・退職に関する事項(解雇の事由を含む)

<定めがある場合に書面で明示すべき事項>
・退職手当に関する事項
・臨時に支払われる賃金(退職手当を除く)、賞与などに関する事項
・労働者に負担させるべき食費・作業用品その他に関する事項
・安全・衛生に関する事項
・職業訓練に関する事項
・災害補償・業務外の傷病扶助に関する事項
・表彰・制裁に関する事項
・休職に関する事項

②解雇の予告・解雇予告手当に関するルール

労働者を解雇する場合に関して、労働基準法は解雇予告と解雇予告手当の支払いのルールを定めています。
なお、解雇に関しては労働基準法以外に、労働契約法で定められる「解雇権濫用の法理」も重要なルールです。

計30日分以上の解雇予告期間+解雇予告手当が必要

使用者が労働者を解雇する場合、原則として以下のいずれかの対応をとる必要があります(労働基準法20条1項・2項)。

① 30日以上前に解雇を予告する
② 30日分の平均賃金に相当する金額以上の解雇予告手当を支払って、即時解雇する
③ 解雇をn日前に予告した上で、(30-n)日分以上の平均賃金に相当する金額以上の解雇予告手当を支払って解雇する

要約すると、解雇予告期間解雇予告手当に対応する日数の合計が30日以上であることが必要です。

ただし、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合、または労働者の責に帰すべき事由に基づいて解雇する場合(懲戒解雇など)には、労働基準監督署の認定を受けることを条件として、解雇予告手当の支払いが不要となります(労働基準法20条1項但し書き・3項・19条2項)。

解雇の際には「解雇権濫用の法理」にも要注意

労働契約法16条には、解雇に関して「解雇権濫用の法理」が定められています。解雇権濫用の法理により、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない解雇は無効です。

解雇権濫用の法理は厳格に運用されているため、実際に行われている解雇の多くは法的に無効と考えられます。会社が従業員を解雇する場合、解雇権濫用の法理に関する検討を慎重に行わなければなりません。

③賃金に関する主なルール

労働基準法では労働者の賃金に関して、賃金支払いの原則や最低賃金などを定めています。

賃金支払いの5原則

賃金の支払いに関して、労働基準法は以下の5原則を定めています(労働基準法24条1項・2項)。

① 通貨払いの原則
賃金は原則として、円通貨で支払わなければなりません。ただし、銀行振込などの例外が認められているほか、2023年4月1日以降はデジタルマネーによる支払いが解禁されます。

② 直接払いの原則
賃金は仲介者を介さず、労働者本人に直接支払わなければなりません。

③ 全額払いの原則
法令または労使協定に基づく控除を除き、賃金は全額を支払わなければなりません。弁償代の天引きなどは不可です。

④ 毎月払いの原則
賃金は毎月1回以上支払わなければなりません。

⑤ 一定期日払いの原則
賃金は一定の期日を定めて支払わなければなりません。

最低賃金

労働者の賃金は、最低賃金以上の額とする必要があります(労働基準法28条)。最低賃金についての詳細は、最低賃金法で定められています。

最低賃金には「地域別最低賃金」と「特定最低賃金」の2つがあり、いずれか高い方が適用されます。

① 地域別最低賃金
都道府県ごとに定められた最低賃金です。

参考:厚生労働省ウェブサイト「地域別最低賃金の全国一覧」

② 特定最低賃金
各都道府県内における特定の業種について定められた最低賃金です。

参考:厚生労働省ウェブサイト「特定最低賃金の全国一覧」

ヒー

最低賃金って毎年変わるんですか?

ムートン

毎年8月頃に発表されて、10月から適用されることが一般的ですね。報道もされています。

④労働時間に関する主なルール

労働時間については「法定労働時間」のほか、いくつかの特殊な労働時間制を認め、そのルールを詳細に定めています。

法定労働時間

法定労働時間」とは、労働時間の上限です。原則として「1日8時間・週40時間」とされています(労働基準法32条1項・2項)。

ただし例外的に、特例措置対象事業場(=以下のいずれかの業種に該当し、かつ常時使用する労働者が10人未満の事業場)では、法定労働時間は「1日8時間・週44時間」です。

特例措置対象事業場

① 商業
→卸売業、小売業、理美容業、倉庫業、その他の商業

② 映画・演劇業
→映画の映写、演劇、その他の興業の事業

③ 保健衛生業
→病院、診療所、社会福祉施設、浴場業、その他の保健衛生業

④ 接客娯楽業
→旅館、飲食店、ゴルフ場、公園・遊園地、その他の接客娯楽業

特殊な労働時間制

労働者の多様な働き方を認めるため、労働基準法では、以下の特殊な労働時間制が認められています。

① 変形労働時間制(労働基準法32条の2・32条の4)
法定労働時間を適用するに当たり、月単位または年単位で労働時間を平均することを認める制度です。業務の繁閑に対応しやすくなるメリットがあります。

② フレックスタイム制(同法32条の3)
始業・終業の時刻を労働者が自由に決められる制度です。労働者の生活スタイルに合わせた働き方が可能となります。

③ 事業場外みなし労働時間制(同法38条の2)
事業場外で労働した労働者の労働時間を算定し難い場合に、所定労働時間働いたものとみなす制度です。外回りの仕事(営業など)をしている労働者に適用できます。

④ 裁量労働制(同法38条の3・38条の4)
業務の進め方や時間配分などを労働者の裁量に委ねる一方で、みなし労働時間を適用する制度です。一部の職種についてのみ認められており、「専門業務型裁量労働制」と「企画業務型裁量労働制」の2種類があります。

⑤ 高度プロフェッショナル制度(同法41条の2)
専門性が高い一部の職種につき、労働時間等の規制を適用除外とする制度です。見込み年収1075万円以上であることなど、厳格な要件が設けられています。

⑤休憩に関するルール

使用者は労働者に対して、労働時間に応じた以下の休憩を与えなければなりません(労働基準法34条1項)。

・労働時間が6時間を超える場合
45分以上

・労働時間が8時間を超える場合
1時間以上

休憩時間は一斉に与えるのが原則ですが、労使協定を締結すれば分散付与も認められます(同条2項)。
休憩時間は、労働者の自由に利用させなければなりません(同条3項)。

ムートン

例えば、電話番をしながらの昼食や、強制的なランチミーティングなどは、指揮監督下にあるとして休憩時間には該当しない場合があります。

⑥休日に関するルール

使用者は労働者に対して、毎週1回以上または4週間に4日以上の休日を与えなければなりません(労働基準法35条1項・2項)。

上記の労働基準法の規定に基づいて付与される休日を「法定休日」といい、休日労働の割増賃金(割増率35%以上)が適用されます。

これに対して、法定休日以外の休日を「法定外休日」といいます。法定外休日は休日労働ではなく、法定内残業(割増なし)または時間外労働(割増率25%以上)として取り扱われます。

⑦時間外労働等に関する主なルール

基本給に含まれない時間外労働・休日労働については労使協定(36協定)の締結を、さらに時間外労働・休日労働・深夜労働については割増賃金の支払いを、それぞれ使用者に義務付けています。

時間外労働・休日労働に必須となる「36協定」

基本給に含まれない労働には、法定内残業時間外労働休日労働の3種類があります。

① 法定内残業
会社が定める所定労働時間を超え、法定労働時間の範囲内の労働です。

② 時間外労働
法定労働時間を超える労働です。

③ 休日労働
法定休日における労働です。なお、法定休日以外の休日における労働は、法定内残業または時間外労働となります。

このうち、労働者に時間外労働または休日労働をさせるためには、労使協定を締結してルールを定めることが必須とされています(労働基準法36条1項)。
時間外労働・休日労働に関する労使協定は、一般に36(サブロク)協定と呼ばれています。

時間外労働・休日労働・深夜労働の割増賃金

時間外労働休日労働および深夜労働(=午後10時から午前5時までに行われる労働)には、それぞれ以下の割増賃金を支払わなければなりません(労働基準法37条)。

① 時間外労働
割増率25%以上(月60時間を超える部分は50%以上)

② 休日労働
割増率35%以上

③ 深夜労働
割増率25%以上

※時間外労働かつ深夜労働の場合は割増率50%以上(月60時間を超える部分は75%以上)
※休日労働かつ深夜労働の場合は割増率60%以上

ムートン

2023年4月から、中小企業でも、月60時間を超える時間外労働について、割増賃金率が50%に統一されます。注意しておきましょう。

⑧年次有給休暇に関する主なルール

労働者が休んだ日には賃金が支払われないのが原則ですが(ノーワーク・ノーペイの原則)、一定の要件を満たす労働者には、労働基準法に基づき有給の休暇が付与されます(労働基準法39条)。これを「年次有給休暇」といいます。

年次有給休暇が付与される要件

年次有給休暇が付与されるのは、以下の2つの要件を満たす労働者です。

① 6カ月以上継続勤務したこと
② 基準期間※の全労働日の8割以上出勤したこと

※基準期間:継続勤務期間が6カ月以上1年6カ月未満の場合は、雇入れから6カ月間。それ以降は1年間。

年次有給休暇の付与日数

1週間の所定労働日数が5日以上、または1年間の所定労働日数が217日以上の労働者(=フルタイム)の場合、継続勤務期間に応じて以下の日数の年次有給休暇が付与されます。

継続勤務期間年次有給休暇の日数
6カ月以上1年6カ月未満10日以上
1年6カ月以上2年6カ月未満11日以上
2年6カ月以上3年6カ月未満12日以上
3年6カ月以上4年6カ月未満14日以上
4年6カ月以上5年6カ月未満16日以上
5年6カ月以上6年6カ月未満18日以上
6年6カ月以上20日以上

また、1週間の所定労働日数が4日以下かつ1年間の所定労働日数が216日以下の労働者(=パートタイム)にも、継続勤務期間・所定労働日数に応じて年次有給休暇が付与されます。

年次有給休暇の取得時期は原則自由|ただし時季変更権あり

年次有給休暇の取得時期(時季)は、原則として労働者が自由に決められます

ただし、請求された時期(時季)に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合、使用者は他の時期(時季)に有給休暇を与えることができます(労働基準法39条5項)。
これを使用者の「時季変更権」といいます。

労働基準法のルールが適用されない労働者

以下の労働者については、労働基準法の一部規定が適用除外とされています。

・日雇い労働者
・2カ月以内の期間を定めて使用される労働者
・季節的業務に4カ月以内の期間を定めて使用される労働者
・試用期間中の労働者(雇入れ後14日以内に限る)
→解雇予告・解雇予告手当の規定が適用されません(労働基準法21条)。

・農林、水産関係の事業に従事する労働者
・管理監督者、機密の事務を取り扱う者
・監視または断続的業務に従事する労働者(使用者が労働基準監督署の許可を受けた場合に限る)
→労働時間・休憩・休日に関する規定が適用されません(同法41条)。

・高度プロフェッショナル制度が適用される労働者
→労働時間・休憩・休日・割増賃金の規定が適用されません(同法41条の2)。

・18歳未満の者
→変形労働時間制・フレックスタイム制・36協定・高度プロフェッショナル制度の規定等が適用されません(同法60条1項)。

・船員
→一部規定を除き、労働基準法は適用されません(船員法が適用されるため。労働基準法116条1項)。

・同居の親族のみを使用する事業および家事使用人
→労働基準法は適用されません(同条2項)。

労働基準法違反の罰則

労働基準法に違反する行為の一部は犯罪とされており、違反すると刑事罰を受ける可能性があります。

刑事罰の対象とされている主な違反行為は、以下のとおりです。

・強制労働をさせる行為1年以上10年以下の懲役または20万円以上300万円以下の罰金(労働基準法117条)
・労働者からの中間搾取
・最低年齢未満の児童を労働させる行為
・坑内労働の禁止、制限違反
1年以下の懲役または50万円以下の罰金(同法118条)
・解雇予告義務違反
・解雇予告手当の支払義務違反
・違法な時間外労働をさせる行為
・賃金(残業代)の不払い
・休日の付与義務違反
・休憩の付与義務違反
・有給休暇の付与義務違反
など
6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金(同法119条)
・労働条件の明示義務違反
・休業手当の不支給
・就業規則の作成、届出義務違反
など
30万円以下の罰金(同法120条)
ムートン

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