契約書の保管期間はいつまで?
法律上の保管期間や効率的な保管方法などを解説!

この記事のまとめ

契約書には、法人税法などで保管期間が定められています。税務署などの行政機関による調査が行われることもあるため、法律で定められた期間は確実に契約書を保管しておきましょう。

特に電子契約を締結した場合(契約書をデータで作成し保存する場合)、電子帳簿保存法に定められた方法に従ってファイルを保管しなければなりません。

今回は契約書の保管について、法人税法その他の法律における保管期間のルールや、契約書の保管方法の種類・注意点などを解説します。

保管期間が過ぎても、契約書を捨てるのは何となく怖いような気がしますね。

確かにそういった心理はありますよね。ただ、契約書を永久に保管していると保管のためのスペース・コストが年々増加していくばかりなので、法律上の保管期間は守った上で、自社にあった契約書の保管ルールを模索していきたいところです。

※この記事では、法令名を次のように記載しています。

  • 電子帳簿保存法…電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律
  • 電子帳簿保存法施行規則…電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律施行規則

※この記事は、2022年8月5日時点の法令等に基づいて作成されています。

契約書の保管期間は何年?

契約書には、法人税法などで保管期間が定められています。税務署などの行政機関による調査が行われることもあるため、法律で定められた期間は確実に契約書を保管しておきましょう。

法人税法が定める保管期間

法人税法は、 契約書の保管期間について、法人は原則として、契約書作成の日が所属する事業年度における、確定申告書の提出期限の翌日から7年間保存しなければならないと定めています。

確定申告書の提出期限って、どうやって決まるんですか?

原則、事業年度終了の日の翌日から2か月以内です。つまり、「12月末決算の会社→2月末まで」「3月末決算の会社→5月末まで」ということです。

そもそも法人税法では、契約書以外にも、作成・保存が義務付けられている書類がたくさんあり、これらの文書をまとめて、「帳簿・書類」と呼びます。(帳簿・書類の具体的な内容については、「契約書以外に保管が義務付けられている書面」にて解説します。)

この「帳簿・書類」について、法人税法は確定申告書の提出期限の翌日から7年間保存する義務を課しています(法人税法126条1項、150条の2第1項、法人税法施行規則59条1項、67条2項)。

契約書は法人税法上の「書類」に含まれるため、法人は原則として、確定申告書の提出期限の翌日から7年間保存しなければならないというわけです。

ただし、以下の事業年度に作成した帳簿・書類については、帳簿・書類の保存期間が10年間(2018年3月31日以前に開始した事業年度については9年間)となりますので、注意が必要です(法人税法施行規則26条の3第1項、第3項)。

帳簿・書類の保存期間が10年間(9年間)となる事業年度

✅  青色申告書を提出し、かつ欠損金額(青色繰越欠損金)が生じた事業年度
✅  青色申告書を提出せず、かつ災害損失欠損金額が生じた事業年度

契約書以外に保管が義務付けられている書面

前述のとおり、法人税法に基づき、法人に保存が義務付けられているのは、「帳簿・書類」です。

契約書は「書類」の一例ですが、それ以外に「帳簿」「書類」に該当する書面としては、以下の例が挙げられます。

「帳簿」の例

✅  総勘定元帳
✅  仕訳帳
✅  現金出納帳
✅  売掛金元帳
✅  買掛金元帳
✅  固定資産台帳
✅  売上帳
✅  仕入帳
など

「書類」の例

✅  棚卸表
✅  貸借対照表
✅  損益計算書
✅  注文書(発注書)
✅  領収書
✅  見積書
など

法人税法以外の法律における書面の保管期間

なお、法人税法以外の法律においても、以下のとおり様々な書面の保存義務・期間が定められています。

その他にも、法律上書類の保存期間が定められている場合がありますので、取引等の内容に応じて確認漏れがないように努めてください。

保存期間書面の内容法律上の根拠規定
2年健康保険・厚生年金保険・雇用保険に関する書類健康保険法施行規則34条など
3年労災保険に関する書類労動者災害補償保険法施行規則51条
3年労災保険の徴収・納付等に関する書類労働保険の保険料の徴収等に関する法律施行規則70条
3年派遣元管理台帳労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律37条
4年雇用保険の被保険者に関する書類雇用保険法施行規則143条
5年会計監査報告会社法442条
5年有価証券届出書
有価証券報告書
金融商品取引法25条
10年仕訳帳・総勘定元帳など会社法432条
10年貸借対照表・損益計算書・附属明細書会社法435条

契約期間との関係で保管すべき期間

なお、法律上の保管期間にかかわらず、契約が存続している期間中は、契約書を必ず保管しておくべきです。また、契約が終了した後であっても、相手方との間で何らかのトラブルが発生する場合に備えて、合理的な期間が経過するまでは契約書を保管しておく必要があります。

具体的な保管期間はケースバイケースで設定すべきですが、一般債権の消滅時効期間を基準として、契約終了後少なくとも5年間程度は保存しておくのがよいでしょう。

契約書の保管期間まとめ

✅  法人税法のルール
原則、契約書作成の日が所属する事業年度における確定申告書の提出期限の翌日から7年間

※ただし、契約が存続している間は、上記期間を過ぎたとしても保存しておく必要がある。
※終了した契約書について、法人税法上の保管期間を過ぎたとしても、一般債権の消滅時効期間(5年間程度)は保存しておくのがよい。

契約書の保管方法|各方法のメリット・デメリットも解説

契約書を保管する際には、以下の3つの方法が考えられます。

各方法のメリット・デメリットは以下のとおりです。

紙で保管する

紙媒体で契約書を保管するメリット

✅  保管方法がシンプル
→紙の契約書をそのまま保管しておけばよいため、特別なシステムなどを導入する必要がありません。また、保管方法として複雑な点がないため、幅広い従業員が保管業務を担当できます。

✅  契約締結の頻度が少なければ、保管コストを抑えられる
→契約をそれほど頻繁に締結しない零細企業であれば、広い保管スペースを確保する必要がないため、他の保管方法よりも低コストで済む可能性があります。

紙媒体で契約書を保管するデメリット

✅  物理的な保管スペースを確保する必要がある
→紙の契約書を置いておくスペースを要するため、契約書の通数や分量が多い場合には、オフィススペースが圧迫される、賃料を多めに負担する必要が生じるなどのデメリットがあります。

✅  契約書の検索・探索に時間がかかることがある
→検索機能がないため、過去の契約書を参照したい場合に、検索・探索に時間がかかることがあります。

✅  原本を紛失するおそれがある
→持ち出し・破損・消失などにより、契約書の原本そのものが失われてしまうおそれがあります。

✅  経年劣化する
→紙は経年劣化するため、数十年単位で保管する必要がある契約書については、時間の経過とともに判読が困難となるおそれがあります。

マイクロフィルムで保管する

マイクロフィルムで契約書を保管するメリット

✅  紙媒体よりも長期保存が可能となる
→マイクロフィルムは100年を超える耐用年数があるとされており、紙媒体よりも長期保存が可能となります。

✅  紙媒体よりも保管スペースを節約できる
→原版の1/5~1/40程度に縮小してマイクロフィルムに焼き写すため、紙媒体のまま保管する場合よりもスペースを節約できます。

✅  改ざんが難しい
→マイクロフィルムを作り変えるのは難しいため、契約書の改ざんを防止できます。

マイクロフィルムで契約書を保管するデメリット

✅  保存環境が悪いと破損するおそれがある
→高温多湿の環境で保管すると、癒着・ひび割れ・カビ・斑点などの破損が生じるおそれがあります。

✅  専用の機器を導入する必要がある
→マイクロフィルムの作成・判読には専用の機器を用いる必要があるため、定期的に購入・修理などが発生し、保守コストがかかります。

✅  契約書の検索・探索に時間がかかることがある
→検索機能がないため、過去の契約書を参照したい場合に、検索・探索に時間がかかることがあります。

✅  原本を紛失するおそれがある
→持ち出し・破損・消失などにより、契約書の原本そのものが失われてしまうおそれがあります。

電子データで保管する

電子データで契約書を保管するメリット

✅  保管場所を確保する必要がない
→クラウドサーバーなどを契約しておけば、契約書の通数がどんなに増えても、保管場所として確保するスペースを増やす必要がありません。

✅  契約書の検索・探索がしやすい
→検索機能を活用すれば、過去の契約書の内容を容易に検索・探索できます。

✅  原本紛失のリスクを回避できる
→バックアップを取っておくことで、契約書を紛失するリスクを回避できます。

✅  劣化により判読できなくなるおそれがない
→紙やマイクロフィルムなどとは異なり、電子データは劣化のおそれがありません。

✅  印紙税を節約できる
→電子契約を締結する場合は印紙税がかからないため、紙の契約書よりも締結コストを抑えられます。

電子契約で印紙税がかからない理由については、「印紙税法とは? 課税対象となる文書・電子契約における取扱いなどを解説!」の記事で解説しています。

電子データで契約書を保管するデメリット

✅  電子契約サービス・契約書管理システムの導入・維持にコストがかかる
→電子契約サービスや契約書管理システムの利用料などを負担する必要があり、コストがかかる点がデメリットです。

✅  情報漏えいに注意が必要
→誤送信や不正持出しなどによる情報漏えいには十分注意が必要です。最悪の場合、契約書のファイルがweb上に流出して、不特定多数の者に拡散されるおそれがあります。

紙の契約書をスキャンして保管することも可

なお、保管場所の節約や検索のしやすさなどから、電子データによる保存は、当事者にとってメリットの多い契約書の保管方法であり、紙の契約書をスキャンして保存するというのも可能です。

ただし、スキャンして保存する場合は、電子帳簿保存法上の「スキャナ保存」の要件を満たす必要があります(電子帳簿保存法4条3項、電子帳簿保存法施行規則2条5項、6項)。

電帳法上のスキャナ保存って何ですか?

既存の紙媒体の書類をスキャンして読み取ったデータを保存することで、法人税法・電子帳簿保存法上の保存義務を果たしたことになる制度のことです。スキャナ保存の要件は以下のとおりです。

スキャナ保存の要件

✅  書類の受領後(又は業務の処理に係る通常の期間を経過した後)、速やかにスキャンすること
✅  解像度200dpi以上でスキャンすること
✅  カラー画像(赤・緑・青それぞれ256階調(約1677万色)以上)でスキャンすること
✅  タイムスタンプを付与すること
✅  解像度・階調情報を保存すること
✅  大きさに関する情報(A4サイズなど)を保存すること
✅  ヴァージョン管理(訂正・削除の事実や内容の確認等)を行うこと
✅  スキャンした者又はスキャンした者を監督する者の情報を保存すること
✅  スキャン文書とそれに対応する帳簿の関連性を相互に確認できるようにしておくこと
✅  見読可能装置(14インチ以上のカラーディスプレイ、4ポイント文字の認識等)を備え付け、スキャンデータを整然・明瞭に出力できるようにしておくこと
✅  電子計算機処理システム(=スキャナ保存で使用するシステム)のマニュアルなどを備え付けておくこと
✅  検索機能を確保すること

スキャンした原本は捨ててしまってもいいんですか?

電子帳簿保存法上は捨ててしまっても問題ありません。しかし、スキャンしたデータがきちんと上記スキャナ保存の要件を満たしていないケース(手ブレで読めない・カラーになっていないなど)も大いにあります。こうした場合に備え、一定の期間は原本を保管しておく運用にするのが安全ですね。

電子データで作成された契約書の保管方法

前提として、契約書を電子データとして保管する場合、以下の2つの方法でデータが作成されます。

ここで解説するのは、後者の「電子データで作成され電子データのまま保存する契約書の保管方法」についてです。電子帳簿保存法上のルールと併せて解説します。

電子データのまま保存しなければならない

2022年1月1日施行の電子帳簿保存法改正では、電子データで作成される契約書(電子契約)については、原則として電子データのまま保存することを義務付けています。そのため、電子契約で締結した契約書を紙に出力して保存するといったことはできません。

電子取引の取引情報を電子データのまま保存する際は、ただ単にデータをフォルダなどに保存しておくだけでは不十分であり、電子帳簿保存法が求める、

の要件をいずれも満たす必要があります。

「真実性」を確保する

取引情報の「真実性」を確保するため、以下の4つのうちいずれかの措置を講ずることが必要です(電子帳簿保存法施行規則4条1項)。

「真実性」を確保する4つの措置(いずれかでOK)

✅  タイムスタンプが付された状態の取引情報を授受する
✅  取引情報を受領した後、速やかにタイムスタンプを付し、保存者又は保存者を監督する者に関する情報を確認できるようにする
✅  訂正・削除の履歴が確認できるシステム(又は訂正・削除ができないシステム)を通じて取引情報の授受・保存を行う
✅  正当な理由のない訂正・削除の防止に関する事務処理規程を定め、当該規程に沿った取引情報の保存を行い、当該規程を備え付ける

「可視性」を確保する

取引情報の「可視性」を確保するため、原則として以下の3つの措置をいずれも講ずる必要があります(電子帳簿保存法施行規則4条1項)。

「可視性」を確保する3つの措置(原則全て、検索機能については例外あり)

✅  以下の機器等を保存場所に備え付け、データを整然・明瞭な状態で速やかに出力できるようにする(必須)
・電子計算機(パソコンなど)
・プログラム
・ディスプレイ
・プリンタ
・操作マニュアル

✅  電子計算機処理システムのマニュアルなどを備え付ける(必須)

✅  以下の検索機能を確保する
(a) 日付・取引金額・取引先を検索条件として設定できる
(b) 日付・金額については、その範囲を指定して検索条件を設定できる
(c) 二以上の任意の記載項目を組み合わせて、検索条件を設定できる
※税務職員の求めに応じて、取引情報を出力して提示・提出できるようにしておけば、(b)と(c)は不要
※前々年度の売上高が1,000万円以下の場合は、(a)も不要

2023年末までは宥恕措置あり|印刷保存も可

電子データで契約書などの取引情報を保存する義務については、2022年1月1日から2023年12月31日まで、2年間の宥恕措置(経過措置)が設けられました。

以下の要件をいずれも満たす事業者は、2023年12月31日までの間、電子データで契約書などの取引情報を保存する義務が免除されます。

宥恕措置はあくまでも期間限定であるため、各事業者は、電子帳簿保存法に従った電子保存に関する体制整備を早めに完了しましょう。

この記事のまとめ

契約書の保管期間の記事は以上です。最新の記事に関する情報は、契約ウォッチのメルマガで配信しています。ぜひ、メルマガにご登録ください!

参考文献

国税庁ウェブサイト「No.5930 帳簿書類等の保存期間」

国税庁ウェブサイト「確定申告書の提出期限」

国税庁ウェブサイト「電子帳簿保存法一問一答【スキャナ保存関係】」