契約書で使われる用語を分かりやすく解説!

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この記事のまとめ

契約書では特有の用語が使われることがあり、馴染みのない方には分かりにくいものも含まれています。

同じ意味に見えて実は違う意味の用語や、一般に知られているものとは異なる意味で用いられる用語もあります。契約書を正しく作成・レビューするために、よく使われる契約書の用語について、基本的な知識を備えておきましょう。

今回は契約書で使われる用語について、頻出用語の意味や、混同しやすい用語の使い分けなどを解説します。

ヒー

契約書を読もうとしても、難しくて何が書いてあるのか分かりません。

ムートン

そういうときは契約書でよく使われる用語の意味を頭に入れておくと、読みやすくなりますよ。

※この記事は、2022年8月9日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。

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条番号に関する契約書用語(条・項・号)

条番号の読み方は、契約書を確認する際のもっとも基本的な知識です。

「第○条」と明記されていれば分かりやすいですが、

前条・本条・次条
前○条

などの表記がなされることもありますので、それぞれの正しい意味を確認しておきましょう。

前条・本条・次条(項・号)

「前条」「本条」「次条」は、それぞれ以下の意味を有します。

用語解説
前条(前項・前号)1つ前の条(項・号)

例|前条の場合、甲は乙に対して……するものとする。
本条(本項・本号)同じ条(項・号)

例|本条に基づく売買代金の支払につき、振込手数料は乙の負担とする。
次条(次項・次号)1つ後の条(項・号)

例|甲乙間の損害賠償については、次条の規定に従う。

契約書における別の文の内容を引用する際に、「前条」「本条」「次条」が用いられます。

なお、2つ以上前又は2つ以上後の条を引用する場合は、「第○条」と条番号を記載します。

前○条(前○項・前○号)

「前○条」(前○項・前○号)とは、「その条(項・号)の前○つの条(項・号)全て」を意味します。

用語解説
前○条(前○項・前○号)その条(項・号)の前○つの条(項・号)全て

例|第10条
……については、前3条の規定に従う。
→第7条・第8条・第9条の規定に従うという意味

引用したい内容が連続して、複数の条(項・号)にまたがっている場合に、「前○条」(前○項・前○号)の表記が用いられます。

契約書で用いられる接続詞

契約書では、さまざまな接続詞が用いられます。似ているようでも厳密な使い分けが行われていますので、各接続詞の意味や使い方を正しく理解しておきましょう。

契約書で用いられる主な接続詞

✅  又は・若しくは
✅  及び・並びに
✅  かつ
✅  ただし
✅  なお

又は・若しくは

「又は」「若しくは」は、いずれも選択肢を示す際に用いられる接続詞で、英語で言う“or”に相当します。

通常は「又は」を用いますが、選択肢が階層的になる(カテゴリを2つ以上もつ)場合には、大きい方のカテゴリの接続に「又は」、小さい方に「若しくは」を用います。

<選択肢が階層的になる(カテゴリを2つ以上もつ)場合のイメージ>

用語解説
又は選択肢を示す際に用いられる接続詞(英語でいう“or”)

2つの選択肢を並べる場合(カテゴリは一つ)
A又はBが発生した場合には、…するものとする。
3つ以上の選択肢を並べる場合(カテゴリは一つ)
A、B又はCが発生した場合には、…するものとする。
※並列する選択肢が終わる直前に「又は」をつける
若しくは選択肢を示す際に用いられる接続詞(英語でいう“or”)

選択肢のカテゴリが2つ以上ある場合
…が発生した場合には、甲は乙に対してA又はB若しくはCをするものとする。
※「A」と「B・C」で、カテゴリが異なることを示す

並びに・及び

「並びに」「及び」は、いずれも単語や文章を列挙する際に用いられる接続詞で、英語で言う“and”に相当します。

通常は「及び」を用いますが、列挙すべき要素が階層的になる(カテゴリを2つ以上もつ)場合には、大きい方の接続に「並びに」、小さい方の接続に「及び」を用います。

<選択肢が階層的になる(カテゴリを2つ以上もつ)場合のイメージ>

用語解説
及び単語や文章要素を列挙する際に用いられる接続詞(英語でいう“and”)

2つの選択肢を並べる場合(カテゴリは一つ)
A及びBが発生した場合には、…するものとする。
3つ以上の選択肢を並べる場合(カテゴリは一つ)
A、B及びCが発生した場合には、…するものとする。
※並列する選択肢が終わる直前に「及び」をつける
並びに単語や文章要素を列挙する際に用いられる接続詞(英語でいう“and”)

選択肢のカテゴリが2つ以上ある場合
…が発生した場合には、甲は乙に対してA並びにB及びCをするものとする。
※「A」と「B・C」で、カテゴリが異なることを示す

かつ

「かつ」は、その前後両方の要件を満たすべき旨を表す接続詞です。

「並びに」「及び」と同様に、英語で言う”and”に相当し、実際に「並びに」や「及び」と同じ意味で用いられることもあります。ただし「かつ」は、満たすべき条件を示す際に用いられることが多いのが特徴です。

用語解説
かつ前後両方の要件を満たすべき旨を表す接続詞(英語で言う“and”)

例|甲が借入金の返済を怠り、かつ、乙が甲に対して当該借入金の返済を催告した後3日間が経過した場合には~

ただし

「ただし」は逆説の接続詞で、前文の内容に対する条件や例外を示す接続詞で、英語で言う“but”や“however”に相当します。契約書では、同じ条項の一つ前の文(本文)の例外を示す際に「ただし」が用いられます(ただし書)。

用語解説
ただし前文の内容に対する条件や例外を示す接続詞
(英語で言う“but”や“however”)

例|甲は乙に対して…するものとする。ただし、…の場合はこの限りでない。

<ただし書のイメージ>

なお

「なお」は、既に述べられた内容に対して、何らかの事項を付け加えて述べる際に用いられる接続詞です。

「なお」の後に記載される内容は、契約上重要な場合もあれば、あえて記載する必要性は低い場合もあり、ケースバイケースです。

用語解説
なお何らかの事項を付け加えて述べる際に用いられる接続詞

例|甲は乙に対して…を支払う。なお、振込手数料は乙の負担とする。
甲は乙に対して…を支払う。なお本条の規定は、乙の甲に対する別途の損害賠償請求を妨げない。

期間・日時・数量に関する契約書用語

契約書の中で、期間・日時・数量を含む条文は、当事者の権利義務の内容を具体的に決定する重要な規定です。
契約書で定められた権利義務の内容を正しく読み解くため、期間・日時・数量に関して、以下の用語を最低限理解しておきましょう。

期間・日時・数量に関する契約書用語

✅  以下・以上・未満・超える
✅  直ちに・速やかに・遅滞なく
✅  …から(より)起算して○日

以下・以上・未満・超える

「以下」「以上」「超える」「未満」は、それぞれ以下の意味を有します。
特にボーダーライン上に位置する数値の取扱いにつき、用語に応じて正確に判断することが大切です。

用語解説
以下その数値と、その数値より小さい数値

例|10個以下
→~10個(10個を含む
以上その数値と、その数値より大きい数値

例|10個以上
→10個~(10個を含む
未満その数値を含まず、その数値より小さい数値

例|10個未満
→~9個(10個を含まない
超えるその数値を含まず、その数値より大きい数値

例|10個を超える
→11個~(10個を含まない

直ちに・速やかに・遅滞なく

「直ちに」「速やかに」「遅滞なく」は、いずれも当事者に早めの行動を義務付ける表現ですが、緊急性の程度が以下のように異なります。

用語解説
直ちにもっとも緊急性が高い表現で、どのような事情があろうと、最優先で行動することが求められる

例|乙は、甲から目的物を受領した後、直ちにこれを検査しなければならない。
速やかに緊急性の程度としては中間的な表現で、「できるだけ早く」という意味で用いられる
例|甲は、○○の事態が生じた場合は、速やかに乙に連絡しなければならない。
遅滞なくもっとも緊急性が低く、早めの行動が求められるものの、「合理的な理由があれば遅れてもよい」という意味合いが含まれる

例|甲及び乙は、次の各号のいずれかに該当する事項が生じたときは、相手方に対し、遅滞なくその旨を通知しなければならない。
ムートン

なお、具体的に何日以内に行動しなければならないかについては、行動の内容や通常の所要時間などに照らして、ケースバイケースで判断すべき事項です。

…から(より)起算して○日

「…から(より)起算して」とは、「その日から数えて」という意味です。「その日」を含むという点が重要になります。

これに対して、単に「…から○日」と記載した場合は、初日不算入となります(民法140条)。

なお、「より」という表現は、比較を表す際に用いられることもあります。

用語解説
…から(より)起算してその日から数えて(=「その日」を含む)

例|本契約締結日(2022年7月1日)から起算して10日以内に
→「2022年7月10日までに」という意味
…から○日その日の翌日から数えて(=「その日」を含まない)

例|本契約締結日(2022年7月1日)から10日以内に
→「2022年7月11日までに」という意味
より比較を表す

例|返済期日時点における借入金元本の額が○円より大きい場合には

当事者の主観に関する契約書用語

損害賠償を定める契約条項などでは、当事者の主観に関して「善意」「悪意」「過失」などの用語が用いられることがあります。日常用語とは異なる意味で使われているものもありますので、各用語の意味を正しく理解しておきましょう。

善意・悪意

「善意」「悪意」は、それぞれ以下の意味を有します。日常用語とは異なる点にご注意ください。

用語解説
善意「知らない」という主観的状態を意味する

例|甲が本契約締結日の時点で善意であった事実については
→甲が本契約締結日の時点で知らなかった事実については
悪意「知っている」という主観的状態を意味する

例|甲が本契約締結日の時点で悪意であった事実については
→甲が本契約締結日の時点で知っていた事実については

無過失・軽過失・重過失

「過失」とは、「予見・回避できたにもかかわらず、悪い結果を回避しなかった注意義務違反」を意味します。過失の有無や程度については、「無過失」「軽過失」「重過失」の3つが用いられます。

用語解説
無過失注意義務違反がないことを意味する

例|Aであることについて、甲が本契約締結日の時点で善意無過失であった場合には
→A(何らかの都合が悪い事実)であることについて、本契約締結日の時点で甲が知らず、かつ注意義務違反がなかった場合には
軽過失通常の注意を払っていれば結果を回避できたにもかかわらず、結果の回避を怠った注意義務違反を意味する

例|Aの発生について、甲に軽過失がある場合には
→甲が通常の注意を払っていればAを回避できたにもかかわらず、回避を怠った場合には
重過失ほんのわずかな注意を払っていれば結果を回避できたにもかかわらず、結果の回避を怠った注意義務違反を意味する

例|Aの発生について、甲に重過失がある場合には
→甲がほんのわずかな注意を払っていればAを回避できたにもかかわらず、回避を怠った場合には

意味を混同されがちな契約書用語

最後に、意味を混同されることが多い、互いに似ている契約書用語の使い分けについて解説します。

意味を混同されがちな契約書用語

✅  とき・時
✅  係る・関する
✅  者・物・もの
✅  その他・その他の
✅  みなす・推定する
✅  取消し・無効・不成立・撤回
✅  解除・解約
✅  停止条件・解除条件
✅  違約金・損害賠償

とき・時

「とき」は条件を表します。「場合には」などと置き換えることもできます。

これに対して、「時」は時点を表します。「時点で」などと置き換えることが可能です。

用語解説
とき条件を表す(「場合には」と置き換え可能)

例|甲が…したとき
→甲が…した場合には
時点を表す(「時点で」と置き換え可能)

例|甲が…したにおいて
→甲が…した時点で

係る・関する

「係る」と「関する」は、いずれも前後の事項が関連していることを表す用語です。厳密な使い分けはありませんが、「係る」は直接的な関連性を示し、「関する」は緩やかな関連性を示すケースが多いです。

用語解説
係る前後の事項が関連していることを表す用語(直接的な関連性を示すケースが多い)

例|当該借入金に係る返済期限
→その借入金の返済期限
関する前後の事項が関連していることを表す用語(緩やかな関連性を示すケースが多い)

例|甲と乙の業務提携に関する検討
→甲と乙の業務提携に(幅広く)関係する検討

者・物・もの

「者」「物」「もの」は読み方が共通していますが、以下のように使い分けられています。

用語解説
主体(人)を表す

例|本契約の規定に違反した者は
財産などの対象物を表す

例|本契約の規定に従い、相手方から引き渡された物
もの「こと」などと同じ意味で使われる。(なお、「…するものとする」は「…しなければならない」という意味)

例|甲は乙に対し、本契約終了後速やかにAを返却するものとする。

その他・その他の

「その他」「その他の」は、いずれも例示を行う際に用いられますが、以下のように使い分けます。

用語解説
その他前段に掲げられた事項+後段に掲げられた事項を指す

例|Aその他甲の重要な使用人
→Aと、A以外の甲の重要な使用人
その他の後段に掲げられた事項を指す(前段はあくまでも例示)

例|Aその他の甲の重要な使用人」
→甲の重要な使用人(例えばAなど)

みなす・推定する

「みなす」と「推定する」は、いずれも「そのように取り扱う」という意味ですが、反証を許すかどうかに違いがあります。

用語解説
みなす反証を認めず、必ずそのように取り扱うということを意味する

例|Aとみなす
→(仮にAでなくても)必ずAとする
推定する暫定的にそのように取り扱うが、反証があれば別段の取扱いもあり得るということを意味する

例|Aと推定する
→暫定的にAと扱うが、「Aではない」という反証があれば、Aではないものとして取り扱う

取消し・無効・不成立・撤回

「取消し」「無効」「不成立」「撤回」は、いずれも法律効果を打ち消す表現ですが、以下のように使い分けます。

用語解説
取消し一度は発生した法律効果を、当初に遡って無効とする

例|採用内定者が次の各号のいずれかに該当する場合は、内定を取り消し採用しない。
無効法律効果が最初から発生しなかったことを意味する

例|前項に違反して組合員がなした処分は無効とする。
不成立そもそも法律効果が発生する要件(契約における申込みと承諾など)を満たしていないことを意味する

例|前項に定める知財調停が不成立となった場合
撤回意思表示を将来に向けて取り下げることを意味する
※過去に発生した法律効果については、維持されるのが原則

例|育児休業の申出を撤回することができる。

解除・解約

「解除」「解約」は、いずれも将来に向けて契約を消滅させることを意味しますが、以下のように使い分けます。

用語解説
解除契約について、過去に遡り、最初からなかったことにすることを意味する(原状回復義務を負う)

例|○○することができないときは本契約の全部を解除することができる。
→契約が遡ってなかったことになるので、原状回復をしなければならない(商品を受け取っていたら返還するなど)
解約将来にむかって契約を終了させることを意味する(原状回復義務は負わない)

例|○○することにより、本契約を解約することができる。
→契約が解消されるのみで、原状回復をする必要はない

停止条件・解除条件

「停止条件」「解除条件」は、いずれも法律関係を変動させる何らかの条件を意味しますが、以下のように異なる意味を持ちます。

用語解説
停止条件その条件が成就した場合、法律効果が発生する

例|Aの発生を停止条件として、甲の乙に対する返済義務が発生する。
→Aが発生して初めて、甲は乙に対して返済義務を負う
解除条件その条件が成就した場合、既に発生していた法律効果が消滅する

例|Aの発生を解除条件として、甲の乙に対する返済義務が発生する。
→甲は乙に対して(とりあえず)返済義務を負うが、Aが発生したら返済義務が消滅する

違約金・損害賠償

「違約金」「損害賠償」は、いずれも契約違反によって相手方に生じた損害を補填する金銭を意味しますが、以下のように使い分けます。

用語解説
違約金あらかじめ当事者で合意した、損害賠償の予定額を意味する。違約金を請求するには、契約の定めが必要になる。
なお、別途追加で損害賠償を請求できるかどうかは、契約内容による。
損害賠償契約違反に基づく損害の賠償全般を意味する。特に契約に定めがなくても、民法415条の規定に基づき損害賠償を請求できる。

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