契約書の構成とは?
基本を解説!

この記事のまとめ

契約書とは、契約が締結されたことを証明した文書のことです。法務担当者として、契約書を読めるようになるためには、まず、契約書の構成を知ることが大切です。

一般的に契約書は、大まかに
✅ 表題(タイトル)
✅ 前文
✅ 本文
✅ 後文
✅ 契約締結日
✅ 署名欄
✅ (必要に応じて)別紙
✅ (必要に応じて)収入印紙
という構成になっています。

それぞれの項目の意味と注意点を把握していきましょう。

今回は、契約書の構成について、一から分かりやすく解説します。

契約書には型があるってことですか?

そうです。この記事ではどの契約書にも共通する基本的な構成を勉強していきましょう。

※この記事は、2022年7月1日時点の法令等に基づいて作成されています。

契約書の基本的な構成

契約書とは、契約が締結されたことを証明した文書のことです。法務担当者として、契約書を読めるようになるためには、まず、契約書の構成を知ることが大切です。

一般的な契約書は、以下の構成で成り立っています。

① 表題(タイトル)
契約の内容を端的に表すものです。
② 前文
誰と誰がどのような契約を結んだかや契約書の意義などを書く部分です。
③ 本文
契約書でもっとも重要なパートであり、目的・定義/権利義務の内容/一般条項を書く部分です。
④ 後文
契約書の通数・作成者・契約締結の方法などを記載する部分です。
⑤ 契約締結日
実際に契約書が作成された日を記載します。
⑥ 署名欄
契約を締結する者同士の情報を記載し、署名捺印(記名押印)するための欄です。
⑦ (必要に応じて)別紙
⑧ (必要に応じて)収入印紙

今回は、契約書のメイン部分である①~⑥について、詳しく解説します。

契約書の表題(タイトル)の付け方

表題(タイトル)の付け方について、法令等が定めたルールはなく、基本的にはいかなるタイトルであろうとも問題ありません。

しかし、契約書のタイトルは、取引の内容が端的に分かる記載とすることが望ましいです。

なお、ビジネス上、よく使われる契約書については既に「型」がありますので、基本的にはそうした慣習に従ってタイトルをつけるという運用で問題ありません。

ビジネス上よく使われる契約書の表題(タイトル)の例

✅ 金銭消費貸借契約書
✅ 不動産売買契約書
✅ 株式譲渡契約書
✅ 業務委託契約書
✅ 秘密保持契約書
✅ 株主間契約書
など

ただし、上記のような典型的なタイトルだけでは取引の内容が分かりにくい場合は、補足説明を追加するケースもあります。

(例)商品製造に関する業務委託契約書

契約書を読むときは、まずタイトルから内容を判断しましょう。

契約書の前文に記載すべき事項

契約書の前文には、契約に関する基本的な事項を記載します。

契約書の前文に記載すべき事項

✅ 当事者の氏名(名称)
✅ 当事者が予定している取引の内容(簡潔に)
✅ 契約締結日
✅ 本文の内容にて契約を締結する旨
など

記載例

(前文)
株式会社●●(以下「甲」という。)と株式会社●●(以下「乙」という。)は、甲が乙に対して、顧客を紹介し、もって乙の販売活動の促進を図ることを目的として、2022年●月●日付で、以下のとおり顧客紹介契約(以下「本契約」という。)を締結する。

契約書の本文に記載すべき事項

契約書の本文には、

  • 取引の内容|(業務委託であれば)誰にどんな業務を委託するのかなど
  • 相互の権利義務の内容|報酬や支払条件など
  • 一般条項(紛争を予防する観点から定めておくと有益な事項)|秘密保持/契約の解除/損害賠償など

を正確に記載します。

「取引の具体的な内容」「相互の権利義務の内容」に、具体的に何を記載するかについては、契約類型ごとに異なるため、個別に勉強していく必要があります。

「一般条項」については、必ず記載しなければならないものではありません(※法令に規制がある場合を除く)が、紛争を予防する観点から定めておくと有益な事項であるため、取引の内容に応じて必要なものを定めておくのがよいでしょう。(主な一般条項の種類ついては、「⑥将来の紛争に備えた条項(一般条項)を盛り込む」にて紹介します。)

契約書の本文を作成する際のポイント

前述したとおり、契約書の本文に何を記載するかについては、契約類型毎に異なります。しかし、本文を作成する際に共通するポイントはあるため、ここではそれらを紹介していきます。

本文を作成する際には、以下のポイントについて注意・意識しておくのがよいでしょう。

前提:条文の読み方を知る
①取引の背景と目的を理解する
②明確な文言で記載する
③5W1Hを意識する
④取引の内容・手順を具体的に記載する
⑤当事者間のリスク分担を意識する
⑥将来の紛争に備えた条項(一般条項)を盛り込む
⑦引用条文の条ズレがないかをチェックする

それぞれ詳しく解説していきます。

条文の読み方とは?|「条・項・号」と「柱書・ただし書・前段/後段」の意味

条・項・号について

まず、契約書に関する基本的な知識として、条文番号の読み方を理解しておきましょう。

一般的な契約書では、「条」「項」「号」の3段階で条文が構成されています。

<「条・項・号」の例>

なお、条文の内容によっては、項・号が存在しない場合や、項を飛ばして号が記載されるケースもあります。号の下に「ア、イ……」など、さらに細かい項目が設けられることもあります。

柱書・ただし書・前段/後段について

また、「柱書」と「ただし書」、「前段」と「後段」の意味についても知っておきましょう。

柱書の意味

「条」や「項」の中に「号」が設けられる場合に、「号」に当たる部分を除いた記載を「柱書」と言います。

ただし書の意味

条文中に「ただし……」と記載される場合、「ただし」以降を「ただし書」と言います。これに対して、「ただし」以前は「本文」です。

前段、後段の意味

条文中に2つの文がある場合、前半を「前段」、後半を「後段」と言います。

条文の読み方を理解したところで、次からは、契約書の本文を作成する際のポイントについて、一つずつみていきましょう!

①取引の背景と目的を理解する

契約書の条文には、取引の内容・手順・適用ルールなどを網羅的に記載しなければなりません。

そのためには、なぜその取引が行われるに至ったのか(背景)、取引によって何を実現したいのか(目的)を正しく理解することが大切です。

特に契約の目的については、契約書における全ての条文が、その目的を達成するために作成される点を意識しておく必要があります。

ただ、契約審査の依頼を事業部門から受ける際、詳しい説明がないまま「契約書を審査してください」と言われる場面がでてくるかと思います。

そんなときは、「なぜ、この取引をしたいのか? この取引をするに至った経緯はどんなものか?」といったことを法務担当者のほうから積極的にヒアリングしてみましょう。

ヒアリングができたら、最初のうちは、次の事項について、それぞれ整理してから契約審査を行うとよいでしょう。

  • 必ず勝ち取るべき事項
  • 勝ち取ることが望ましい事項
  • 自社が妥協してよい事項

②明確な文言で記載する

契約書の条文は、明確な文言で作成しなければなりません。

不明確な文言で条文を作成すると、2通り以上の解釈が生まれ、契約解釈を巡って当事者間でトラブルになる可能性があります。また、そもそも何を意味しているのか分からない条文については、全体が無効となってしまうリスクもあります。

条文を明確なものにするためには、定義が曖昧な用語を使わないことが大切です。明らかに一般に通用していると思われる用語を除いて、特別な用語を使用する場合には定義条項(人によって異なる解釈ができる用語を定義する条項)を置きましょう。

定義条項の例(秘密保持契約の場合)

(秘密情報の定義)
本契約において秘密情報とは、媒体及び手段(専用回線による通信、光磁気ディスク、印刷物等)の如何を問わず、開示者が受領者に開示、提供した、又は将来において開示、提供される技術、営業、人事、財務、組織その他の事項に関する一切の情報を意味する。

③5W1Hを意識する

条文上のルールを明確化する観点からは、いわゆる「5W1H」をきちんと記載することが効果的です。

一般的な文章に比べると回りくどい印象を受けがちですが、「5W1H」がきちんと書かれていると、契約書の内容に疑義が生じる余地がなくなります。

契約書の5W1H

✅ 主体(「誰が」「誰に」、Who) → 「甲は乙に対して」

✅ 時期(「いつ」、When) → 「売買実行日に」

✅ 場所(「どこで」、Where) → 「X不動産の所在地において」

✅ 条件(「~した場合には」、Why) → 「売買代金全額の支払と引き換えに」

✅ 行為(「何を」、What) → 「X不動産を引き渡す」

✅ 方法(「どのような方法で」、How) → 「X不動産の鍵を交付する方法で」

(例)
「甲は乙に対して、売買実行日に、X不動産の所在地においてX不動産の鍵を交付する方法で、乙の甲に対する売買代金全額の支払と引き換えに、X不動産を引き渡す。」

④取引の内容・手順を具体的に記載する

契約書は、当事者間で行われる取引に適用されるルールに加えて、取引の内容・手順をまとめた「マニュアル」のような側面も持っています。各当事者の取引担当者は、実際に取引を運用するに当たって、何度も契約書を参照することになるでしょう。

そのため契約書では、取引の内容・手順を具体的に記載することが求められます。仮に契約書そのものでは細かい事項まで定めないとしても、参照すべき関連規程やマニュアルの名称などを契約書に明記しておくことが大切です。

契約書に記載すべき取引の内容・手順の例

✅ 業務の内容|どのような内容の業務を行うか
✅ 業務の実施手順|どのような手順で業務を行うか(細目は別の書面などで定めてもよい)
✅ 報酬の発生条件|何を基準に、どの時点で報酬が発生するか
✅ 報酬金額の計算方法|契約書にて定めるか、別途発注書などで定めるか
✅ 支払方法|報酬をどのような方法で支払うか
✅ (成果物がある場合)検収の方法|検収はいつまでにどのような方法で行うか、不合格の場合のやり直しを認めるか

⑤当事者間のリスク分担を意識する

契約書を作成する大きな目的の一つとして、トラブルが発生した際における、当事者間のリスク分担のルールを定めることが挙げられます。

契約書によるリスク分担の例

✅ 損害賠償の金額に上限はあるか|「本契約の違反に基づく損害賠償の上限は○万円とする。」
→○万円までの損害については違反者がリスクを負い、○万円を超える部分の損害については相手方がリスクを負います。

✅ 損害賠償をするのはどのような場合か|「本契約に違反した当事者は、故意又は重過失がある場合に限り、相手方に生じた損害を賠償する。」
→故意又は重過失による契約違反については違反者がリスクを負い、軽過失による契約違反については相手方がリスクを負います。

✅ 表明保証に違反した場合はどうなるか|「Aという事実を表明し、保証する。表明保証に違反した当事者は、相手方に生じた損害を賠償する。」
→Aが真実でなかったことにより発生する損害のリスクは、違反者が負担します。これに対して、上記のような表明保証条項がなく、かつAが真実でないことが債務不履行に当たらない場合には、当該リスクを相手方が負担します。

契約審査を行う際には、自社がどのようなリスクを負っているか、そのリスクは過大なものでないか、相手方に転嫁すべきではないかといった視点を意識することが大切です。

⑥将来の紛争に備えた条項(一般条項)を盛り込む

取引を続けていく中で、相手方とトラブルになるリスクは常に存在します。リスク分担に関する条項以外にも、将来的に紛争に発展した場合に備え、一般条項を盛り込んでおきましょう。

主な一般条項

✅ 守秘義務に関する条項
取引にあたり、相手方に秘密情報を開示する可能性があるときに定める条項

✅ 個人情報の取扱いに関する条項
取引にあたり、相手方に個人情報を提供する(個人情報の取扱いを委託する)可能性があるときに定める条項

✅ 譲渡禁止に関する条項
契約上の権利、義務、地位を第三者に譲渡することを禁止する条項

✅ 損害賠償条項
契約上の義務に違反し、一方当事者が他方当事者に損害を負わせた場合に行う損害賠償について定める条項

✅ 契約の解除条項
契約を解除できる(契約関係を解消する)要件や手続を定める条項

✅期限の利益喪失条項
借金の返済義務などについて、債務者が返済を滞納した、信用状態の悪化などの事情があった場合、返済期限が到来していない部分についても一括で返済させる(期限の利益を喪失させる)条項

✅ 不可抗力条項
地震・台風などの天災、隣家からの延焼、戦争など、当事者に責任がない事情(不可抗力)により債務が履行不能となった場合に、当該債務が免除されることなどを定める条項

✅ 通知義務に関する条項
契約の当事者について、組織変更、事業内容の変更、登記事項の変更などがあった場合に、相手方へ通知する義務を定めた条項

✅ 反社会的勢力の排除に関する条項
相手方が暴力団関係者ではないことを確認して、暴力団関係者であることが判明した場合には契約を解除できることなどを定める条項

✅ 契約期間に関する条項
契約の有効期間を定める条項

✅ 存続条項
契約の有効期間が終了した後も、効果を存続させる条項について定める条項(秘密保持条項、損害賠償条項、競業避止義務条項、合意管轄条項、準拠法条項などについて存続すると定められることがある。)

✅合意管轄・準拠法に関する条項
合意管轄:契約に関して当事者間で紛争が生じた場合に、どこの裁判所で紛争を解決するかを定める条項(参照:民事訴訟法11条)
準拠法:契約についてどこの国(地域)の法律を適用するかを定める条項

⑦引用条文の条ズレがないかをチェックする

契約交渉を行う過程で、ドラフト(案文)へのコメント・修正を繰り返していると、条文が追加・削除されることに伴い、引用条文の条ズレが発生することがあります。

<契約書における条ズレの例>

条ズレが発生していると、内容が不明確になる可能性があります。そのため、契約書の内容を確定させる段階で、必ず全体を読み通し、条ズレが残っていないかをチェックしましょう。

なお、条文の削除に伴う条ズレの発生を防止するため、「意図的に削除」と記載して、あえて旧条文番号を残すケースもあります。

<旧条文番号を残すケースの例>

契約書の後文に記載すべき事項

契約書の後文には、以下の事項を記載します。

契約書の後文に記載すべき事項(書面の場合)

✅ 契約書作成の目的
→「本契約の成立を証するため」

✅ 契約書の通数
→「本書○通を作成し」(当事者の数と同じ通数を作成するのが一般的)

✅ 作成者・契約締結の方法
→「甲乙それぞれ記名押印(署名捺印)の上」

✅ 保管者
→「各自1通ずつを保管する」

(例)
「本契約の成立を証するため、本書2通を作成し、甲乙それぞれ記名押印の上、各自1通ずつを保管する。」

契約書の後文に記載すべき事項(電子契約の場合)

✅ 契約書作成の目的
→「本契約の成立を証するため」

✅ 電磁的記録で契約書を作成する旨
→「本書の電磁的記録を作成し」

✅ 作成者・契約締結の方法
→「甲乙それぞれ電子署名を施し」

✅ 保管者
→「各自その電磁的記録を保管する」

(例)
「本契約の成立を証するため、本書の電磁的記録を作成し、甲乙それぞれ電子署名を施し、各自その電磁的記録を保管する。」

契約締結日に関する注意点

「契約締結日欄」には、実際に契約書が作成された日を記載するのが原則です。厳密には、署名捺印を行った日と考えられます。 そのため、企業によっては、署名捺印・記名押印をするときに、あわせて日付を記入する運用をとっている場合があります。

契約締結日を記載する必要がある理由の一つは、後日、契約を特定するためです。例えば、

  •  裁判に発展した際の証拠として提出したい場合
  •  後から契約を変更したい場合

などにおいて、どの契約書を指すかを示すため、当事者名・タイトル・契約締結日を用いて、契約を特定します。

例:「2022年●月●日付で締結した○○株式会社との業務委託契約書」など

なお、契約締結日の記載を忘れたとしても、その契約書は無効になるわけではありませんが、契約成立の日を証明することが難しくなる点に注意が必要です。

契約書の署名欄に関する注意点

署名欄に全ての当事者が調印することにより、契約は成立します。

ただし、署名欄以外にも押印が必要となる場合があります。また、海外企業が当事者の場合には、サイン方式が用いられることが多い点にご注意ください。

署名捺印と記名押印の違い

署名と記名の定義は、以下のとおりです。

「署名」│手書きで名前を書くこと
「記名」│手書き以外で名前を書くこと

なお、押印・捺印はともに、「印鑑(ハンコ)を押すこと」を指します。署名に対して押すことを「捺印」、記名に対して押すことを「押印」というように使い分けるのが一般的です。

日本の個人又は法人が契約を締結する場合、署名捺印方式と記名押印方式のいずれかが用いられるのが一般的です。

  • 署名捺印方式
    →当事者が氏名を自署(サイン)し、その箇所に印鑑を押す締結方式です。個人が締結者の場合によく用いられます。
  • 記名押印方式
    →あらかじめ当事者の名称(氏名)を印字し、その箇所に印鑑を押す締結方式です。法人が締結者の場合によく用いられます。

<署名捺印・記名押印のイメージ>

契印・割印について

契約書が複数ページにわたる場合は「契印」を、契約書を複数部作成する場合には「割印」をそれぞれ行います。

契印

ページが重なっている見開き部分に、全当事者が1ページずつ印鑑を押します。ページ数が多い場合には、袋とじをしたテープの部分に契印することも可能です。
契印は、署名欄への押印と同じ印鑑で行います。

割印

契約書の各部を互いに重ね合わせた部分に、全当事者が印鑑を押します。
割印は、署名欄への押印とは違う印鑑で行っても構いません。

海外企業が当事者の場合における調印の方法

海外には印鑑の文化がないため、海外企業が契約を締結する場合には、署名欄にサインをする方式を採るのが一般的です。

当事者の自署によることを確認するため、サイン証明書の提出を求めるケースもあります。

この記事のまとめ

契約書の構成の記事は以上です。最新の記事に関する情報は、契約ウォッチのメルマガで配信しています。ぜひ、メルマガにご登録ください!