契約における準拠法とは?
決め方や実務上の留意点など 分かりやすく解説!
(条項例あり)

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赤坂山王法律事務所弁護士
慶應義塾大学法科大学院卒業。2013年弁護士登録(第二東京弁護士会)。 企業法務(会社法・コーポレートガバナンス・知的財産法関係)、M&Aその他企業組織再編・企業提携、渉外法務、国際商取引、訴訟・紛争解決を中心として、家事事件など幅広い分野を取り扱う。
この記事のまとめ

国際取引において、契約の準拠法をどのように決めればいいかは、契約交渉において頭を悩ますポイントです。

契約書では1つの国/地域の法律を準拠法と定める必要があります。

なじみのない国の法規制が適用されるとなった場合、当事者にとっては予見できない不測の事態が生じるおそれがあり、のちに外国法の調査を強いられるなど、大きな負担となるケースも少なくありません。

しかし、準拠法については、セミナーなどで取り上げられることも少なく、なかなか知る機会がないのが実際ではないでしょうか。

契約交渉においては、準拠法を取り巻くルールを正しく理解しておくことで、あらかじめ不測の事態を防ぐことができます。

この記事では、契約における準拠法の意味や決め方、ルール、実務上の留意点などを解説します。

※この記事では、法令名を次のように記載しています。

・通則法…法の適用に関する通則法

(※この記事は、2022年3月16日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。)

契約における準拠法とは?

契約における準拠法とは、「その契約上の権利義務について適用される法律」を意味し、主に国境を越えた当事者同士で契約上の紛争が生じた場合に、どの国の法律に従って当該契約が解釈適用されるかという場面において問題となります。

契約書においては、その契約書がどのような法律に従って解釈されるのかという準拠法(英文契約においては“Governing Law”、“Choice of Laws”などと呼ばれます。)やその契約に関する紛争についてどの裁判所で取り扱われるべきかという管轄についての条項(英文契約においては“Jurisdiction”、“Venue”、“Forum Selection”などと呼ばれます。)を定めるのが一般的です。

このような準拠法や管轄についての定めを置く目的は、契約の当事者にとって、適用法令や紛争解決地の予測が立たなくなると、のちのち当事者が予測していない問題や予測していない地での紛争に巻き込まれるリスクが生じ、とりわけ複数の国の当事者が関与する国際取引などで契約取引の安定性が害されるおそれがあるためです。

通常、これらの条項は契約書の最後に置かれる「一般条項」のセクション(英文契約においては“General Provisions”、“Miscellaneous”などと呼ばれるセクションとなります。)に定められることが多く、契約書において見落としがちです。

しかし、特に国際取引などにおいては、事後的に紛争が生じた場合に、準拠法や管轄の定めによっては、外国での訴訟を強いられたり、外国法の調査が必要になったりすることで多額の時間とコストを要し、思わぬ不利益を被るリスクがあります。

そこで本記事では、契約における準拠法条項についてのルールや実務上の留意点を解説していきます。

準拠法のルールや実務上の留意点

準拠法合意とは、対象となる法律関係についてどの地の法が適用されるかを定めるものです。

国際取引において、どの国の法律が適用されるかは、当該取引を巡ってどのような法的リスクが生じるかを予測するうえでとても重要な要素であり、当事者は通常自国の法律を準拠法とすることを望みます

例えば日本企業と米国カリフォルニア州企業との間の取引においては、日本企業は日本法を準拠法とすることを望み、米国カリフォルニア州企業はカリフォルニア州法を準拠法とすることを望むのが通常です。

「国際管轄」のようにクロス式にするなどはできず、1つの国(又は地域)の法律に決定する必要があるため、どの国の法律を準拠法とするかを契約交渉の中で決定することになるのです。

そして、ひとたび準拠法合意が成立すると、その契約に関わるあらゆることがその国の法律によって解釈・運用されることになり、とても大きな影響を受けます。

したがって、準拠法合意に関わるルールと役割を適切に把握し、準拠法を決定することが、契約交渉においてはとても重要な意味を持ちます

契約における準拠法に関するルール

契約における準拠法の原則|当事者自治の原則

契約の準拠法は、法の適用に関する通則法(通称「通則法」)7条に従って、準拠法合意で指定した地の法が第一次的な準拠法となります(当事者自治の原則)。

通則法は様々な法律関係について、どの国の法律を準拠法とするかというルールを定めています。

日本で裁判を行う場合には、通則法が適用されることになるので、当該通則法に従って問題となっている法律関係に適用される準拠法が決まります(手続きは法廷地法によるの原則)。

通則法7条には、法律行為(法律効果に向けた意思表示を要素とする行為)の成立及び効力は、当事者が選択した地の法=準拠法合意で指定した国の法によることとされています。

(当事者による準拠法の選択)

第7条 法律行為の成立及び効力は、当事者が当該法律行為の当時に選択した地の法による。

「法の適用に関する通則法」– e-Gov法令検索 – 電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ

法律行為の代表的なものが、「契約」です。

不法行為請求における準拠法の考え方

例えば契約上の債務不履行が問題となる場合、上記のとおり、準拠法は当事者自治の原則から、第一次的には契約の準拠法合意によって指定される地の法になります。他方で、同じ契約上の義務違反に基づいて不法行為が問題となる場合もあります。

不法行為に基づく請求の場合、元となる事実関係は同一だとしても、通則法7条は適用されず、通則法17条以下の不法行為に関する準拠法のルールが適用されることになります。

通則法17条は、原則として不法行為によって生じる債権の成立及び効力について、以下のとおりとしています。

そうだとすると、例えば日本企業と米国カリフォルニア州企業の間の取引において米国企業に損害が発生したとする契約紛争において、契約書で合意した準拠法が日本法であった場合、「債務不履行に基づく請求か」「不法行為に基づく請求か」の違いにより、以下のような異なる準拠法が適用されるという不安定な状態が生じてしまいます。

契約紛争における不安定な状態

<債務不履行に基づく請求とした場合>
米国カリフォルニア州企業 → 債務不履行に基づく請求 → 日本企業
=準拠法が日本法になる(通則法7条)

<不法行為に基づく請求とした場合>
米国カリフォルニア州企業 → 不法行為に基づく請求 → 日本企業
=準拠法がカリフォルニア州法になる(通則法17条)

そこで、通則法20条は、例外規定として、「当事者間の契約に基づく義務に違反して不法行為が行われたこと」などの事情を考慮して、通則法17条で指定される準拠法より明らかに密接な関係がある地の法がある場合には、その地の法を準拠法とすると定めることで、この問題を解決しています。

したがって、たとえ不法行為に基づく請求であったとしても、それが契約違反に基づき17条で指定される準拠法よりも密接な関係のある地があるには、通則法20条に従い、契約書で合意した準拠法の適用が認められることになるのです

ただし、通則法20条は、契約違反に基づく不法行為請求であることに加え「その他の事情に照らして」という記述になっており、例えば、外国企業と日本人の間の雇用契約を前提として、就労中の事故が問題となった場合で、当該雇用契約の準拠法が外国法になっていたとしても、就労地や事故があった地が日本であることや、日本の労働法の強行法規部分が争点となることなどの事情を考慮した結果、日本法が準拠法になるといった判断がなされる場合があります。

契約違反に基づく不法行為請求であったとしても、必ずしも契約書で合意した準拠法が適用されるとは限らないという点にも注意が必要です。

契約に準拠法合意がない場合の処理

契約上準拠法合意がない場合はどのようになるのでしょうか。

その場合、まず、当事者間で黙示の合意がないかを検討することになります。なぜなら、通則法7条の合意には明示的な合意のみならず、黙示の合意も含まれると考えられているためです。

そして、その際には当事者の属性のみならず、契約交渉の過程や契約自体の内容等あらゆる事情を考慮して、当事者間で黙示の合意がなかったかが模索されることになります。

仮に黙示の合意も存在しないとなった場合には、通則法8条に従い、契約に最も密接な関係のある地(いわゆる「最密接関連地」)の法によることになります(通則法8条1項)。

最密接関連地についても、契約に関わるあらゆる事情を考慮して判断されることになりますが、当事者がいかなる地が最密接関連地となるかを予測しやすいよう、2つの推定規定が存在します。

1つ目は、特徴的給付(契約を特徴づける給付があること)の場合です。
具体的には、片務契約(当事者の一方のみが債務を負う契約)においては、唯一の義務を負う者の給付が特徴的給付とされ、双務契約(当事者双方が債務を負う契約)においては通常、金銭給付の反対給付が特徴的給付とされます。

このような特徴的給付を当事者の一方が行う場合には、その給付を行う当事者の常居所地法が、最密接関連地法と推定されることとされています(通則法8条2項)。

2つ目は、不動産取引の場合です。その場合は、対象となる不動産の所在地の法が最密接関連地法と推定されることとされています(通則法8条3項)。

このように、通則法は当事者間で契約上明確に準拠法を定めていない場合についてのルールを定めています。
しかしながら、様々な事情を考慮して黙示の合意や最密接関連地が決定されることとなるので、当事者の予期しない地の法律が適用されるリスクは拭いきれません。

したがって、あらかじめ契約書において準拠法を明確に定めておき、どの国の法律が適用されるかについて予測可能性を担保することが大切となるのです。

(当事者による準拠法の選択がない場合)

第8条 前条の規定による選択がないときは、法律行為の成立及び効力は、当該法律行為の当時において当該法律行為に最も密接な関係がある地の法による。

2 前項の場合において、法律行為において特徴的な給付を当事者の一方のみが行うものであるときは、その給付を行う当事者の常居所地法(その当事者が当該法律行為に関係する事業所を有する場合にあっては当該事業所の所在地の法、その当事者が当該法律行為に関係する2以上の事業所で法を異にする地に所在するものを有する場合にあってはその主たる事業所の所在地の法)を当該法律行為に最も密接な関係がある地の法と推定する。

3 第1項の場合において、不動産を目的物とする法律行為については、前項の規定にかかわらず、その不動産の所在地法を当該法律行為に最も密接な関係がある地の法と推定する。

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準拠法合意がある場合の例外

このように原則として、契約上準拠法合意がなされている場合、当該準拠法が適用され、契約上の債権関係はそれに従って判断されることになります。

しかし、通則法は消費者契約と労働契約については、弱者保護の観点から一定の例外を設けていることには注意が必要です。代表的なものとして、消費者契約(消費者と事業者の間で締結される契約)及び労働契約があります。

これらの契約については、仮に当事者間で準拠法についての合意があった場合でも、当該準拠法が消費者の常居地法又は労働契約の最密接関連地法でない場合であって、消費者又は使用者が当該地の特定の強行法規を適用すべき旨の意思を表示した場合、当該強行法規が適用されることとされています(通則法11条1項、12条1項)。

(消費者契約の特例)

第11条 消費者(個人(事業として又は事業のために契約の当事者となる場合におけるものを除く。)をいう。以下この条において同じ。)と事業者(法人その他の社団又は財団及び事業として又は事業のために契約の当事者となる場合における個人をいう。以下この条において同じ。)との間で締結される契約(労働契約を除く。以下この条において「消費者契約」という。)の成立及び効力について第7条又は第9条の規定による選択又は変更により適用すべき法が消費者の常居所地法以外の法である場合であっても、消費者がその常居所地法中の特定の強行規定を適用すべき旨の意思を事業者に対し表示したときは、当該消費者契約の成立及び効力に関しその強行規定の定める事項については、その強行規定をも適用する。

(中略)

(労働契約の特例)

第12条 労働契約の成立及び効力について第7条又は第9条の規定による選択又は変更により適用すべき法が当該労働契約に最も密接な関係がある地の法以外の法である場合であっても、労働者が当該労働契約に最も密接な関係がある地の法中の特定の強行規定を適用すべき旨の意思を使用者に対し表示したときは、当該労働契約の成立及び効力に関しその強行規定の定める事項については、その強行規定をも適用する。

(後略)

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また、強行法規の中でも、その法規を遵守することが、政治的、社会的、経済的構造という公的利益を保護するために、決定的に重要なものについては「絶対的強行法規」とされます。

当事者間の準拠法選択にかかわらず、また当事者の意思表示を待たずに、適用されると解されていることにも注意が必要です。例えば、労働組合法7条1号などがそのような絶対的強行法規であると考えられています(東京地決昭和40年4月26日参照)。

準拠法の決め方

準拠法は当事者間の交渉の中で決定されますが、例えば日本の企業間の契約であれば、日本法と定めるのが通常です。これに対して、日本企業間の契約であっても、シンガポールに所在する不動産に関する契約であれば、第三国であるシンガポール法にすることも考えられます。

他方で、国際取引においては、一方の当事者の所在地国法にする又は契約の目的物に関連する第三国法にすることが通常でしょう。

どの国の法律を指定しなければならないというルールはないので、当事者間で自由に決定できますが、全く知らない国の法律を指定した場合、自国との法体系が大きく異なり予測できない不利益が生おそれ恐れがあるため、慎重に決する必要があります。

仮に他国の法律を準拠法とする場合、その国の法律について一定程度調査を行うことが望ましいでしょう。

また、管轄合意との関係性についても注意が必要です。

仮に日本の裁判所であれば、外国法についての適用能力があるとされていますが、国によっては外国法について自国の裁判所に適用能力を認めていない場合があります。

また、たとえ外国法の適用ができたとしても、(本来日本においては外国法の内容については裁判所が調査すべきとされているものの)実務上は、外国法の内容について当事者において必要な範囲で調査・主張することを求められることも少なくありません。

したがって、外国法について日本で裁判を行う場合には、日本の裁判所に十分に内容を理解してもらえるよう、現地の弁護士や学者等を用いて当事者で法律の内容について調査を行う必要が生じる場合があり、日本法で裁判を行う場合と比べて多大な負担が生じます。

さらに言えば、他国の法律について適切な解釈・適用をすること自体が、裁判所にとって簡単なことではありません。

このように、管轄合意と準拠法合意で指定する国に差異が生じた場合、通常に比べて当事者の負担が増える可能性があることも考慮に入れておく必要があります。

なお、紛争解決手段として仲裁を選択する場合、適用される仲裁法に準拠法の決定の仕方が定められている場合が多いため、その内容を確認したうえで、適切な準拠法合意を行っておくことが必要となります。

準拠法合意の有効性の判断

では、準拠法合意の有効性自体が問題となった場合(例えば、錯誤や詐欺など)どのように扱われるのでしょうか。この点、準拠法合意自体の有効性の判断は、多数の見解として、国際私法独自の立場から行われるべきと考えられています。

もっとも、日本の国際私法上それを明確に規定するものは存在しないことから、結果的には、日本の国際私法の合理的解釈として、日本の民法を参照しつつ、重大な錯誤、詐欺又は強迫に基づくときは取り消される場合があるものと解釈されています。

このように、日本で準拠法合意の有効性を判断するにあたっては、準拠法で指定される法律が適用されるのではなく(なぜなら、準拠法の選択そのものが問題であるため)国際私法独自の立場から検討することとしつつ、日本の民法を参照して判断されるという枠組みが取られているのです。

したがって、日本の民法の規定に即した判断がなされる可能性が高いですが、必ずしもそうではない場合があることには注意が必要でしょう。

特殊な取引における留意点

準拠法の選択とは別に、特定の取引においては民間の統一規則の活用や国際条約での統一的規定の適用がなされる場合があるため、それらの内容を知り、取引に予期しない規定が適用されるのを防ぐ必要があります。

ここでは代表的なものとして、国際物品売買取引において適用されるウィーン売買条約、インコタームズ及びヘーグ・ルールをご紹介します。

ウィーン売買条約の適用

「国際物品売買契約に関する国際連合条約」(United Nations Convention on Contracts for the International Sale of Goods)(通称「CISG」、「ウィーン売買条約」)は、国境を越えて行われる物品の売買に関して契約や当事者の権利義務の基本的な原則を定めた国際条約であり、国際連合国際商取引法委員会が起草し、1980年に採択され、1988年に発効しました。

日本をはじめとして、米国、カナダ、中国、韓国等日本の主要な貿易相手国が締約しており、2019年9月時点において92か国の加盟国が存在しています。

国際物品取引において、当事者の所在国がいずれもウィーン売買条約の締結国である場合には自動的に同条約が適用されるとされ(ウィーン売買条約1条1項)、一方の当事者が非締結国であっても、国際私法により締結国の法を適用するとされている場合には、同条約が適用されます(同条約1条2項)。

このようにウィーン売買条約は国際物品取引において当事者の所在地国によって自動的に適用されるため、仮に適用を望まない場合には、契約上明確に当該条約の適用を廃除することを規定しておく必要があります(同条約6条)。

インコタームズの活用

国際貿易においては、国際商業会議所(ICC)が貿易取引条件の解釈を統一するために策定した民間統一規則であるインコタームズ(Incoterms)が活用されています。

インコタームズは、物品の引渡地、危険の移転時期、運送・保険の手配、通関手続などの契約条件に着目して、様々な貿易条件を定めているものです。

貿易取引において、貿易条件を合意する際には、契約上インコタームズを指定し、かつインコタームズが定める貿易条件の内どの貿易条件を遵守するかを明示することで、貿易条件についての明確な合意を図ることが行われているのです。

インコタームズは、商慣習の変化に伴って頻繁に改訂が行われているため、インコタームズを用いた貿易取引を行う場合には、最新版のインコタームズを参照する必要がある点にも留意が必要です。

世界における船主責任のルール

国際海上物品運送(荷主が運送人に物品の運送を委託し、運送人がそれを請け負う取引)において、船荷証券に関するルールを統一するための試みとして、1924年、「船荷証券統一条約」(船荷証券に関するある規則の統一のための国際条約)(通称「ヘーグ・ルール」)が制定されました。

その後、1968年、ヘーグ・ルールの改正議定書としてヘーグ・ヴィスビー・ルールが制定され、日本は、1992年にこの国際条約を批准し、1993年、国内法として改正国際海上物品運送法が施行されています。
したがって、日本法を準拠法とした場合、国際海上物品運送取引には当該国際海上物品運送法が適用されることになります。

他方で、1978年、開発途上国を中心として、ヘーグ・ヴィスビー・ルールより船会社の責任を重く定める「国連海上物品運送条約」(通称「ハンブルグ・ルール」)も制定されています。

このように、国際海上物品運送取引においては、条約が複数存在し、国によって批准している条約が異なることから、国内法の定めも異なっており、どの国の法律を準拠法とするかによって規律に違いが生じているのが現状です。

したがって、国際海上物品運送取引において準拠法を決定する際には、その国がどの条約を批准し、どのような国内法を制定しているかを吟味することが必要となっているのです。

世界における国際海上物品運送に係る条約批准の概要

● ヘーグ・ルール(米国など)
● ヘーグ・ヴィスビー・ルール(日本を含む先進国)
● ハンブルグ・ルール(途上国が多い)
● 上記いずれの条約にも参加しない独自の国内法(中国、台湾、韓国、ブラジルなど)

引用元|独立行政法人日本貿易振興機構(ジェトロ)「「国際海上物品運送法」と船荷証券に関する国際条約(ヘーグ・ルール等):日本」

この記事のまとめ

準拠法合意は、見落とされがちではありますが、実は契約内容全体に関わる問題であり、当事者に予期しない不利益を防ぐという、とても大きな役割があります。

さらに、合意自体はシンプルですが、その裏にはあまり知られていない様々なルールが存在し、それらを理解しないで準拠法を合意してしまうのちのち後々契約当事者にとって不測の事態を巻き起おそれ恐れがあるのです。

契約交渉を行う際には、準拠法のルールと役割を理解し、不測の事態が生じないよう、慎重に準拠法合意や適用される法律の内容を吟味することをおすすめします。その際に、本記事が参考になれば幸いです。

参考文献

松岡博編『国際関係私法入門 国際私法・国際民事手続法・国際取引法 第4版補訂』有斐閣、2021年

澤木敬郎、道垣内正人著『国際私法入門 第8版』有斐閣、2018年

中西康、北澤安紀、横溝大、林貴美著『国際私法 第2版』有斐閣、2018年

独立行政法人日本貿易振興機構(ジェトロ)ウェブサイト「ウィーン売買条約の概要:日本」(ウィーン売買条約の概要を掲載)

独立行政法人日本貿易振興機構(ジェトロ)ウェブサイト「「国際海上物品運送法」と船荷証券に関する国際条約(ヘーグ・ルール等):日本」(世界の条約批准状況や日本の国際海上物品運送法の概要を掲載)