不可効力条項とは?
意味や例文、不可抗力条項がない場合の
取り扱いなどについて分かりやすく解説!

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東京八丁堀法律事務所弁護士
企業法務(コーポレート・スタートアップ支援)、M&A、不動産・建築、訴訟・紛争解決を中心として、一般民事事件(債権回収、離婚、相続など)や刑事事件・犯罪被害者支援など幅広い分野を取り扱う。

(※この記事は、2022年11月15日時点の法令等に基づいて作成されています。)

この記事のまとめ

不可抗力条項とは、契約当事者にはどうしようもない(不可抗力といえる)事情によって、債務の履行ができなくなってしまった場合には、債務不履行責任を負わないことを定めた条項です。

不可抗力事由として規定されることが多い事由は、以下のとおりです。

① 天災地変(地震、津波、洪水、台風、火山噴火、感染症、伝染病など)
② 社会的事変(戦争、暴動、内乱、テロなど)
③ 争議行為(ストライキ、ロックアウト、ボイコットなど)
④ 法令の改廃・制定
⑤ 公権力による命令・処分
⑥ 火災
⑦輸送機関や倉庫業者の保管中事故

債務者側(売買契約の場合は売主)におけるレビューのポイントは、以下の2点です。

①可能な限り広く不可効力事由を記載する
②可能な限り具体的に不可効力事由を記載する

債権者側(売買契約の場合は買主)におけるレビューのポイントは、以下の2点です。

①不可抗力事由が広くなり過ぎないように限定する
②売主の会社における争議行為や輸送機関・倉庫業者の事故などは削除を検討する

今回は「不可抗力条項」について、意味や例文、不可抗力条項がない場合の取り扱いなどを分かりやすく解説します。

新型コロナウイルス感染症の流行やロシアのウクライナ侵攻など、予測できないことが次々と起きていますよね。

そうですね。そのような事情によって納期の遅延など取引に影響が生じるケースも増加していますし、リスクマネジメントの観点から、不可抗力条項の重要性が高まっているように思います。

※この記事は、2022年10月31日時点の法令等に基づいて作成されています。

不可効力条項とは

不可抗力条項とは、契約当事者にはどうしようもない(不可抗力といえる)事情によって、債務の履行ができなくなってしまった場合には、「債務不履行責任」を負わないことを定めた条項です。

「債務不履行責任」って何ですか?

債務者の落ち度により、債務不履行(契約違反)となった場合に負う法的責任のことです。

契約書に不可抗力条項がない場合の取り扱いとリスク

契約書に不可抗力条項を設けていないからといって、不可抗力による免責が一切なされないわけではありません。

具体的には、以下のとおり、民法の規定(民法415条1項ただし書、567条1項)によって、不可抗力の場合の免責について一定の解決が図られます。

① 民法415条1項ただし書による免責

民法415条1項ただし書では、「債務の不履行」が、「契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるとき」には、債務者の損害賠償義務が免責されることになっています。

(債務不履行による損害賠償)
民法第415条
債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。
ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。

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② 民法567条1項による免責

また、売買契約については、民法567条(目的物の滅失等についての危険の移転)により、目的物を引き渡した後に、目的物が当事者双方の責めに帰することのできない事由によって滅失」「損傷」した場合について、売主は免責される(買主は代金を支払わなければならない)と定められています。

(目的物の滅失等についての危険の移転)
民法第567条
売主が買主に目的物(売買の目的として特定したものに限る。以下この条において同じ。)を引き渡した場合において、その引渡しがあった時以後にその目的物が当事者双方の責めに帰することができない事由によって滅失し、又は損傷したときは、買主は、その滅失又は損傷を理由として、履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。この場合において、買主は、代金の支払を拒むことができない。
2 (略)

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しかし、民法の規定だけでは、例えば、戦争などといった具体的な事由が挙げられておらず、どのような場合であれば、

・債務者の責めに帰することができない事由(民法415条1項)
・当事者双方の責めに帰すことのできない事由(民法567条1項)

に該当するのかが不明確です。

そして、どのような場合に免責となるのかが不明確だと、契約当事者は、債務者の免責がなされるのか否か等の予測をできず、将来、契約当事者のいずれかに債務不履行が発生したときに、思わぬ責任を負ってしまうリスクがあります。

そのため、契約書の作成・レビューの際は、債務者(売主)においても、債権者(買主)においても、不可抗力条項はなるべく明確に定めるようにしましょう。

「不可効力」とは

「不可抗力」について、法律上の定義はありません。

一般的には、「外部からくる事実であって、取引上要求できる注意や予防方法を講じても防止できないもの」「単に過失がないというだけではなく、よりいっそう外部的な事情」(我妻栄ほか著『第7版 我妻・有泉コンメンタール民法』803頁、日本評論社、2021年)などと説明されています。

そして、「天災」「戦争」などの不可効力に該当する具体的な事情を「不可抗力事由」といいます。

不可抗力条項を定める目的

不可抗力条項を定める目的は、主に以下の2点にあります。

①契約締結時点における予見可能性を確保する
②不可抗力該当性についての将来の紛争を予防する

①当事者の予見可能性を確保する

どのような場合に不可抗力によって免責となるのかということを契約書に具体的に記載しておくことで、債務不履行が発生した場合の責任関係について、契約の締結時点から予見しておくことが可能になります。

②不可抗力該当性についての将来の紛争を予防する

将来、何らかの外部的事情によって債務不履行が発生した場合に、それが不可抗力に該当するのか否かという紛争が生じることを予防できます。

不可効力による免責の例外(金銭債務の場合)

なお、不可抗力による免責の例外として、金銭債務(金銭を支払う債務)があります。

金銭債務については、外部からの借り入れなどで調達することが可能であることから、履行不能になることが通常想定されませんので、仮に不可抗力が生じたことで支払い遅延などの債務不履行が生じたとしても、免責されません。

そのため、例えば「支払いが遅れた場合に利息を払う」と契約で定めていた場合は、その定めに従い支払う必要があります(民法419条3項)。

(金銭債務の特則)
第419条
金銭の給付を目的とする債務の不履行については、その損害賠償の額は、債務者が遅滞の責任を負った最初の時点における法定利率によって定める。ただし、約定利率が法定利率を超えるときは、約定利率による。
2 前項の損害賠償については、債権者は、損害の証明をすることを要しない。
3 第1項の損害賠償については、債務者は、不可抗力をもって抗弁とすることができない。

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不可抗力条項の例文と書き方

不可抗力条項については、以下の2パターンの書き方があります。

①契約当事者の双方が債務(ただし、金銭の支払債務を除きます。)を負うケース
②一方のみが債務(同上)を負うケース

それぞれのケースに分けて例文をご紹介します。

①契約当事者の双方が債務(金銭の支払債務を除く)を負うケース

記載例

第●条(不可抗力)

1.甲および乙は、地震、台風、津波、暴風雨、洪水、疫病、感染症その他の天変地異、戦争、暴動、内乱、テロ、争議行為、ストライキ、法令の制定・改廃、公権力による命令・処分、甲および乙の責めによらない火災、その他の不可抗力による本契約の全部または一部の履行遅滞または履行不能については、相手方に対してその責任を負わないものとする。

2.甲および乙は、前項に定める事由が生じた場合は、ただちに相手方に通知をするとともに、当該事由による影響の軽減・回復のために最善の努力を尽くさなければならない。

3.第1項に定める事由が生じ、本契約の目的を達することが困難である場合、甲および乙は、協議の上で本契約を解除することができる。

契約当事者の双方が債務(金銭の支払債務を除く)を負う場合は、甲と乙のいずれの債務についても、不可抗力による免責の可能性があることから、条項の主語を「甲および乙は…」と記載します。

第1項のように、事案に応じた不可抗力事由を具体的に列挙した上で、「その他の不可抗力」と包括的な条項を設けるのが一般的です。

また、第2項のように、不可抗力事由が発生した場合は、当該不可抗力(を原因とする債務不履行)による被害(影響)を最小限にとどめられるように、相手方に対して直ちに通知をすることや、影響の軽減・回復のための最善努力義務を設けるのがよいでしょう。

さらに、第3項のように、不可抗力事由が生じ、契約の目的が達成できない場合には、契約の解除ができることも規定しておくのがよいでしょう。

②契約当事者の一方のみが債務(金銭の支払債務を除く)を負うケース

売買契約のように、一方(売主)は目的物の引渡債務を負うのに対して、他方(買主)は代金の支払債務しか負っていない場合は、上述のとおり、代金の支払債務については不可抗力による免責がないので、売主側の目的物の引渡債務についてのみ、不可抗力による免責が発生します。

この場合は、不可抗力条項の主語を「甲(売主)」のみとしましょう。

記載例

第●条(不可抗力)

1.甲(売主)は、地震、台風、津波、暴風雨、洪水、疫病、感染症その他の天変地異、戦争、暴動、内乱、テロ、争議行為、ストライキ、法令の制定・改廃、公権力による命令・処分、甲の責めによらない火災、その他の不可抗力による本契約の全部または一部の履行遅滞または履行不能については、乙(買主)に対してその責任を負わないものとする。

2.甲は、前項に定める事由が生じた場合は、ただちに乙に通知をするとともに、当該事由による影響の軽減・回復のために最善の努力を尽くさなければならない。

3.第1項に定める事由が生じ、本契約の目的を達することが困難である場合、甲及び乙は、協議の上で本契約を解除することができる。

不可効力の事由として列挙すべき内容

どのような事由を不可抗力事由とするかはケースバイケースですが、一般的に記載されることが多い事由を解説します。

天災地変

天災地変の具体例として、地震、津波、洪水、台風、ハリケーン、火山噴火、感染症・伝染病などがあります。

<戦争、暴動、内乱、テロ等の社会的事変

社会的事変の具体例として、戦争、暴動、内乱、テロなどがあります。

争議行為(ストライキ、ロックアウト、ボイコット等)

争議行為として、ストライキやロックアウト、ボイコットなどが起きた場合を不可抗力事由として定めるケースもあります。

もっとも、ストライキやロックアウト、ボイコットなどは、債務者に帰責事由がある場合も多く、また、代替手段を利用して債務不履行の発生を回避することが期待できる場合も多いため、必ずしも不可抗力とはいえない場合も多いです。

したがって、争議行為を不可抗力事由として規定すべきかどうかは、それぞれの立場・事案に応じて検討しましょう。また、自社が買主側である場合は、曖昧な記載になり、判断でもめることがないように注意をしましょう。

法令の改廃・制定

契約締結後に、法令の改廃・制定などが発生したことにより債務の履行ができなくなった場合についても、不可抗力事由と定められる例が多いです。

公権力による命令・処分

公権力による命令・処分の具体例として、裁判所による差し押えなどにより債務の履行ができなくなった場合などがあります。

火災

火災も不可抗力事由として定められるケースが多いですが、火災の原因が当該契約当事者にある場合は不可抗力とはいえないため、当事者の「責めによらない火災」という記載をしておくとよいでしょう。

輸送機関や倉庫業者の保管中の事故

輸送機関や倉庫業者の保管中の事故については、代替手段を用意することが期待できる場合もあることから、必ずしも不可抗力とはいえません。

また、買主とすれば、輸送機関や倉庫業者における事故などは、売主側の責任範囲の事項として免責しない方がメリットであることから、具体的な契約交渉において、記載の有無を検討しましょう。

包括的な条項

不可抗力条項では、具体的な不可抗力事由を列挙した上で、最後に「その他の不可抗力」と包括的な条項を設けるのが通常です。

「その他の不可抗力」とは、

・その前に列挙された具体的な不可抗力事由が、「不可抗力」の例示であること、
・それ以外の記載がない事由であっても、これに類する事由は不可抗力となること

を明確にする意義をもちます。

【債務者(売主)側】不可効力条項のレビューポイント

債務者(売買契約における売主)側のレビューポイントは、以下の2点です。

①可能な限り広く不可効力事由を記載する
②可能な限り具体的に不可効力を記載する

【債権者(買主)側】不可効力条項のレビューポイント

債権者(売買契約における買主)側のレビューのポイントは、以下の2点です。

①不可抗力事由が広くなり過ぎないように限定する
②売主会社における争議行為や輸送機関・倉庫業者の事故などは削除を検討する

その他、債権者としては、不可抗力事由には該当しないことを明確にしておくことで、債務者が免責されて債権者が損をすることを防止できますので、以下の例文の第2項のように、積極的に不可抗力に該当しない事由を列挙することも考えられます。

記載例

第●条(不可抗力)

1.甲(売主)は、地震、台風、津波、暴風雨、洪水、疫病、感染症その他の天変地異、戦争、暴動、内乱、テロ、争議行為、ストライキ、法令の制定・改廃、公権力による命令・処分、甲の責めによらない火災、その他の不可抗力による本契約の全部または一部の履行遅滞または履行不能については、乙(買主)に対してその責任を負わないものとする。

2.目的物の輸送や倉庫業者の保管中の事故については、前項の不可抗力には該当しないものとする。

3.甲は、前項に定める事由が生じた場合は、ただちに乙に通知をするとともに、当該事由による影響の軽減・回復のために最善の努力を尽くさなければならない。 4 第1項に定める事由が生じ、本契約の目的を達することが困難である場合、甲及び乙は、協議の上で本契約を解除することができる。

この記事のまとめ

契約における不可抗力条項は以上です。最新の記事に関する情報は、契約ウォッチのメルマガで配信しています。ぜひ、メルマガにご登録ください!

参考文献

我妻栄ほか著『第7版 我妻・有泉コンメンタール民法―総則・物権・債権―』日本評論社、2021年