民法とは?
原則や契約に適用されるルールを分かりやすく簡単に解説!

この記事のまとめ

民法とは、私人間の日常の生活関係において一般的に適用される法律です。

私人は法令上定義された用語ではありませんが、一般的には、国や行政以外の個人・団体を指し、個人のみならず、法人(事業者)を含みます。

そのため、企業がビジネス上締結する契約についても、民法が適用されます。

詳しくは「民法の全体像」で解説しますが、民法では、契約に関するルールのほか、相続・親族などに関するルールも定めています。

法務担当としては、民法の中でも「契約」に関する部分(契約法・債権法などと言われます。)を学ぶことが大切です。(こちらの部分から読みたい方は、「民法における契約法とは」からお読みください。)

今回は民法の全体像を解説した後、契約に適用される基本的なルールや、民法で定められた契約類型などを解説します。

ヒー

民法を学ぶのにおすすめの本はありますか?

ムートン

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※この記事は、2022年7月8日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。

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民法とは?分かりやすく簡単に解説

民法とは、“私人”間の日常の生活関係において一般的に適用される法律です。

私人は法令上定義された用語ではありませんが、一般的には、国や行政以外の個人・団体を指し、一般市民のみならず、企業(事業者)を含みます。

そのため、企業がビジネスのために締結する契約についても、民法が適用されます。

民法の全体像

民法は、以下の5つの「編」によって構成されています。

✅第1編「総則」
→民法全体に共通して適用される一般的なルールが定められています。
(例)権利能力・意思能力・行為能力・意思表示・代理・時効など

✅第2編「物権」
→物に対する権利(物権)に関するルールが定められています。
(例)占有権・所有権・抵当権など

✅第3編「債権」 ※法務担当として重点的に学びたい部分
→人に対する権利(債権)に関するルールが定められています。
(例)契約・事務管理・不当利得・不法行為など

✅第4編「親族」
→近親者間の法律関係や権利義務に関するルールが定められています。
(例)婚姻・親子・親権・成年後見制度・扶養など

✅第5編「相続」
→人が死亡した場合における財産の承継(相続)に関するルールが定められています。
(例)相続人・遺産分割・相続放棄・遺言・遺留分など
ヒー

いろいろなことが定められているんですね…。勉強するの大変そうです。

ムートン

法務担当としては、全て学ぶ必要はなく、「第3編 債権」の「契約」に関する部分を中心に学べば大丈夫です。

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民法の主な原則

民法を学ぶに当たっては、民法の背景にある、3つの大原則を理解する必要があります。

  1. 権利能力平等の原則
  2. 私的自治の原則
  3. 所有権絶対の原則
ムートン

民法は、これらの3つの原則に基づくかたちで条文が作成されているんです。
以下、それぞれ解説します。

①権利能力平等の原則

「人はすべて平等の権利能力を有する」というのが、現在の民法の大原則です。これを「権利能力平等の原則」と言います。

歴史的には、奴隷に人権が認められていない、外国人の権利能力は制限されているなどの時代がありました。現行民法は「法の下の平等」(日本国憲法14条)の精神を受けて、これらの差別的な取扱いを全て廃し、権利能力の平等を掲げています。

②私的自治の原則

古来のローマ法の時代より、「人は自らの約束(意思)に基づいてのみ拘束される」という思想があります。これを「私的自治の原則」と言います。つまり、国家が市民に対して強制的に権利義務を設定するのは、本来望ましくないという考え方です。

日本の民法も、この私的自治の原則を踏襲し、一部の強行規定を除き、契約によって上書きできる任意規定を中心に構成されています。

強行規定・任意規定とは

✅強行規定
契約で法令と別の内容を定めたとしても、法令が強制的に優先して適用される規定

✅任意規定
契約で法令と異なる内容を任意で定めた場合、法令よりも契約の内容が優先して適用される規定
(ただし契約で別の内容を定めない場合は、自動的に法律のルールが適用される)

※詳しくは、「任意規定とは」「強行規定とは」の部分で解説します。

③所有権絶対の原則

物の所有者は、何らの制約なく自由にその物を使用・収益・処分できるのが原則です。これを「所有権絶対の原則」と言います。

近代民法典の端緒となったフランス革命は、農民を支配者が土地に縛りつける歴史的な封建支配の打破を目的としていました。当時のスローガンである「所有権の絶対性」が現代の民法典にも受け継がれた形となっています。

民法は私法の「一般法」である|適用範囲を解説

民法は、私法の「一般法」と位置付けられています。

私法とは、市民(法人を含む)相互間の権利義務関係を規律する法律です。契約や不法行為など、市民同士の法律関係に関するルールは、私法によって定められます。

一般法とは、幅広く一般的に適用される法律のことです。民法が私法の一般法であるのは、市民同士の法律関係に関するルールを、非常に広い範囲で定めていることによります。

一般法に対して、特定の分野・事項についてのみ適用される法律を「特別法」といいます。一般法と特別法の両方でルールが定められている分野・事項においては、特別法が優先します。

例えば、私法の一般法である民法に対して、事業者と消費者の契約関係を規律する特別法が「消費者契約法」です。

消費者契約法のルールが当てはまる事柄については、民法よりも消費者契約法が優先されます。その一方で、消費者契約法に定めがない事柄については、事業者と消費者の契約関係においても民法が適用されます。

このように、民法は特別法によって上書きされる場合があるものの、特別法がない分野・事項については、一般法としての民法が幅広く適用されます。民法は、市民相互間の法律関係のベースとなるルールを定める点で、私法の一般法と位置付けられているのです。

民法における契約法とは

現行民法における「契約法」とは、当事者間に権利義務を発生させる合意(契約)に適用されるルールを意味します。

具体的には「第3編 債権」のうち、「第2章 契約」の部分が「契約法」のメインパートです。(なお、第3編 債権のことを「債権法」と呼ぶことがあります。)さらに、その他の編・章に存在する、契約に関連する諸規定も「契約法」の一部と位置付けられます。

ムートン

今回は民法のうち、企業法務担当者が特に知っておくべき契約法の部分を解説しますね。

契約とは|民法の基本的なルール

契約とは、簡単に言うと、「法的な効果が生じる約束」です。契約が締結されると、契約当事者は契約に拘束され、権利と義務が発生します。

まずは、以下の、契約に関する民法の基本的なルール5つを順に見ていきましょう。

  • 契約自由の原則とは
  • 契約の主体(当事者)になれる者とは
  • 契約が成立するための要件とは
  • 契約内容の有効要件とは
  • 契約の解除とは

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契約自由の原則とは

契約法の大原則として、「契約自由の原則」を知っておく必要があります。

契約自由の原則とは、当事者が原則として、自由に契約内容を決められることを意味します。

契約自由の原則は、以下の4つの要素から構成されます。

  • 相手方選択の自由|誰と締結する否かは自由に判断できる
  • 内容決定の自由|「どのような内容で」締結するか自由に判断できる
  • 方式の自由|「どのような形(方式)で」契約を締結するか自由に判断できる
  • 締結の自由|契約を締結する否かは自由に判断できる

これは、前述した近代私法の3大原則の一つである「私的自治の原則(=人は自らの約束(意思)に基づいてのみ拘束される)」を、契約法に落とし込んだものです。

契約自由の原則の考え方は、民法91条に表れています。

(任意規定と異なる意思表示)
第91条 法律行為の当事者が法令中の公の秩序に関しない規定と異なる意思を表示したときは、その意思に従う。

「民法」– e-Gov法令検索 – 電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ
ムートン

民法91条は「法令の中でも、公の秩序に関係のない規定であれば、法律ではなく当事者の意思を優先してよいですよ」と定めているんです。これは、人の意思を最大限尊重している考え方と言えますよね。

ただし、契約自由の原則はあくまでも「法令中の公の秩序に関しない規定」(=任意規定)についてのみ適用されます。これに対して「強行規定」の適用は、契約によって排除することはできない(=当事者の意思よりも法令が優先される)点に注意が必要です。

任意規定とは

「任意規定」とは、契約で法令と異なる内容を定めた場合、法令よりも契約の内容が優先して適用される規定を意味します。

契約法の規定の大半は、任意規定に該当します。

当事者同士が、契約の中で任意規定と異なる内容で合意をすれば、任意規定よりも契約の内容が優先されます。(その一方で、契約の中で、任意規定について特段の定めをしていない場合は、原則どおり任意規定である法律が適用されます。)

強行規定とは

「強行規定」とは、契約で法令と別の内容を定めたとしても、法令が強制的に優先して適用される規定です。

公序良俗に関する規定(民法90条)
意思表示に関する規定(民法93条以下)

などが強行規定に該当します。

強行規定に当たるかどうかは、規定の趣旨を分析して判断しなければなりません。

強行規定に反する内容の契約の定めは、違法・無効となります。

契約の主体(当事者)になれる者とは

契約の主体(当事者)になることができるのは、権利能力を有する者です。具体的には、

  • 自然人(外国人を含む。民法3条)|個人
  • 法人(民法34条)|会社、一般社団法人など

が契約の当事者になれます。

これに対して、法人でない団体は、契約の当事者になれません。

<契約の主体になれる者>

単独での契約締結には「行為能力」が必要

ただし「自然人」に該当していても、全ての者が自由に契約を締結できるわけではありません。

民法上、自分の判断だけで契約を締結するためには、「行為能力(自分で行った法律行為に対して、法的責任を負う能力)」を有している必要があり、一部の者については、行為能力が制限されています(民法4条以下)。

単独で法律行為を行えない者のことを「制限行為能力者」と言い、具体的には以下の者が該当します。

制限行為能力者

✅ 未成年者(民法5条1項)
→未成年者が契約を締結する場合、原則として法定代理人の同意を得る必要があります。

✅ 成年被後見人(民法9条)
→成年被後見人が締結した契約は、原則として取り消すことができます。

✅ 被保佐人(民法13条1項)
→被保佐人が重要な内容の契約を締結する場合、保佐人の同意を得る必要があります。

✅ 被補助人(民法17条1項)
→被補助人が家庭裁判所の指定した内容の契約を締結する場合、補助人の同意を得る必要があります。

契約が成立するための要件とは

契約が成立するのは、当事者の一方が申込みを行い、相手方が承諾したときです(民法522条1項)。書面による締結は必須ではなく、口頭で申込みや承諾を行うことも認められています(同条2項)。

意思表示は「到達主義」

申込みや承諾の意思表示は、その通知が相手方に到達した時点で効力を生じます(民法97条1項)。これを「到達主義」と言います。

契約締結の申込みが相手方に到達したら、承諾期間が経過するまで(承諾期間がない場合は相当な期間が経過するまで)申込みを撤回することができません(民法523条1項、525条1項。ただし撤回権を留保した場合を除きます。)。

申込みが有効である間に、相手方による承諾の通知が申込者に到達したら、その時点で契約が成立します。

代理人による契約締結も可

契約締結に向けた意思表示(申込み・承諾)は、代理人によっても行うことができます(民法99条以下)。

代理人は、本人によって設定された代理権の範囲内で、契約締結に向けた意思表示を行います。

なお、代理人が権限外の意思表示をした場合には、本人の保護と取引の安全のバランスを考慮し、民法の規定に従って契約の有効・無効が判断されます。

契約内容の有効要件とは

前述したとおり、契約は、「当事者の一方が申込みを行い、相手方が承諾したとき」に成立しますが、形式的には契約の成立要件を満たしていても、その内容によっては契約の全部又は一部が無効となる場合があります。

具体的には、契約の内容は以下の4つの有効要件を全て満たす必要があり、一つでも欠けていれば無効となります。

  • 確定性
  • 実現可能性
  • 適法性
  • 社会的妥当性

それぞれ詳しく解説します。

確定性

権利義務の内容の重要な部分が確定していない契約条項は、「確定性」を欠いているため無効となります。

(例)
乙は甲に対し、デスクを売り渡すことを約し、甲はこれを買い受けることを約する。
→「デスク」の記載のみでは、値段・サイズ・型番などの情報が不明で確定性がないため無効となる

実現可能性

契約成立の時点で履行(実際に行うこと)が不可能な権利義務を定める契約条項は、「実現可能性」を欠いているため無効となります。

(例)
中古車の売買契約締結時点で、すでに目的物の中古車が焼失してしまっていた場合など
→焼失した中古車を引き渡すのは不可能なので、実現可能性がなく無効となる

適法性

強行規定に反する内容の契約条項は、「適法性」を欠いているため無効となります。

(例)
乙は甲に対し、覚せい剤10gを売り渡すことを約し、甲はこれを50万円で買い受けることを約する。
→覚せい剤の売買は違法なので、適法性がなく無効となる

社会的妥当性

公序良俗に反する内容の契約条項は、「社会的妥当性」を欠いているため無効となります。

(例)
チラシのデザイン業務を委託する契約で「受託者が期限までに納品しなかった場合、1億円を支払わなければならない」と定める。
→チラシのデザイン業務が履行されなかった場合の損害賠償として、1億円は不相当に高額であるため、社会的妥当性がなく無効となる

契約の解除とは

契約の締結が当事者の合意によるのと同様に、契約の終了(解除)も当事者の合意によるのが原則です。

ただし、当事者の一方が契約に違反した場合には、相手方は契約を解除できる場合があります(民法541条、542条)。民法における契約解除の要件や手続については、以下の記事を参照ください。

【民法改正(2020年4月施行)に対応】契約の解除について契約書のレビューポイントを解説!

2023年4月に実行された民法改正の内容について知りたい方は、無料ダウンロードできる以下の資料を活用してみてください。

民法における契約の基本的なルールまとめ

✅契約自由の原則
「誰と」「どのような内容で」「どのような方式で」契約を締結するか、「そもそも契約を締結する否か」については、契約当事者の自由

✅契約の主体(当事者)になれる者
契約の主体になれるのは、以下のとおり
・自然人(外国人を含む。民法3条)
・法人(民法34条)

✅契約が成立するための要件
当事者の一方が申込みを行い、相手方が承諾した場合に契約は成立する

✅契約内容の有効要件とは
契約成立の要件を満たしていても、契約内容に「確定性・実現可能性・適法性・社会的妥当性」がない場合は無効になる

✅契約の解除とは
契約は当事者の合意により解除(終了)できる
※ただし当事者の一方が契約に違反した場合には、一方的に契約を解除できる場合がある

民法に基づき契約が無効・取消しとなる場合

契約締結の申込み・承諾は、民法の意思能力又は意思表示に関する規定に基づき、無効になったり、取り消されたりすることがあります。

無効と取消しの違い

✅無効
契約は有効に成立せず、効力も生じないこと

✅取消し
契約は一度有効に成立したが、過去に遡って当初から効力がなかったものとされること

契約が無効・取消しとなるのは、以下の場合です。

無効となる場合

✅契約者が意思能力を有しない場合(意思無能力)
✅嘘の意思表示がなされた場合(心裡留保)
✅架空の契約を偽装した場合(虚偽表示)

取消しとなる場合

✅重大な勘違いによる場合(錯誤)
✅騙された場合(詐欺)
✅脅された場合(強迫)

以下、それぞれ詳しく解説します。

契約者が意思能力を有しない場合(意思無能力)

契約締結時点で、当事者のいずれかが意思能力(自然人が自分で判断して選択し、選択に対して法的責任を負うことができる能力)を有しなかった場合、契約は無効となります(民法3条の2)。

意思能力のボーダーラインは6~7歳程度の知能とされていますが、取引の内容によっても前後します。

真意ではない意思表示がなされた場合(心裡留保)

当事者の一方が真意ではない契約締結の意思表示を行い、そのことについて相手方が知った場合・知ることができた場合には、契約が無効となります(民法93条ただし書)。

(例)
「100万円くれたら、この時計を売ってあげるよ(本当は売るつもりがない)」
「買うよ(相手が本気でないことはわかっているが、冗談で応じた)」
→心裡留保により売買は無効となる

架空の契約を偽装した場合(虚偽表示)

相手と共謀して架空の契約を偽装した場合、その契約は無効となります(民法94条1項)。

(例)
「強制執行を回避するため、X不動産を私から君に贈与したことにしてくれないか、後で返してほしい」
「わかりました」
→虚偽表示により贈与は無効となる

重大な勘違いによる場合(錯誤)

いずれかの当事者が、契約の要素について重大な勘違いをしていた場合、その契約は取り消すことができます(民法95条1項)。

(例)
「この美術品を1万円で売ってあげよう(本当は「1万ドル」で売るつもりだったが言い間違えた)」
「買います」
→売主は、錯誤により売買の意思表示を取り消すことができる

騙された場合(詐欺)

いずれかの当事者が騙されて契約締結の意思表示をした場合、その契約は取り消すことができます(民法96条1項)。

(例)
「近隣でリゾート開発が予定されているから、間違いなくX不動産の価値は上がるよ。X不動産を1億円で買ってくれないか(リゾート開発の予定がないことを知っている)」
「今後価値が上がるなら、ぜひ買います」
→買主は、詐欺により売買の意思表示を取り消すことができる

脅された場合(強迫)

いずれかの当事者が脅されて契約締結の意思表示をした場合、その契約は取り消すことができます(民法96条1項)。

(例)
「このドリンク剤を1本1万円で20本買え。買わなかったらどうなるかわかってるのか」
「買います」
→買主は、強迫により売買の意思表示を取り消すことができる

民法上の契約(典型契約)の種類

民法では、歴史的によく見られる以下の13の契約について、明文の規定を置いています。これらの13の契約を「典型契約」と言います。

13の典型契約

✅ 贈与(民法549条)
→当事者の一方が相手方に対して、財産を無償で譲渡する契約です。

✅ 売買(民法555条)
→当事者の一方が相手方に対して、代金の支払いと引換えに財産を譲渡する契約です。

✅ 交換(民法586条)
→当事者同士が、金銭以外の財産を交換する契約です。

✅ 消費貸借(民法587条)
→当事者の一方が相手方に対して、金銭その他の物を交付し、種類・品質・数量の同じ物を後日返してもらう契約です。お金の貸し借りなどに用いられます。

✅ 使用貸借(民法593条)
→当事者の一方が相手方に対して、無償で物を貸す契約です。

✅ 賃貸借(民法601条)
→当事者の一方が相手方に対して、有償で物を貸す契約です。

✅ 雇用(民法623条)
→当事者の一方が相手方の指揮命令下で働き、その対価として賃金を得る契約です。

✅ 請負(民法632条)
→当事者の一方が、相手方のために仕事を完成し、その対価として報酬を得る契約です。

✅ 委任(民法643条)
→当事者の一方が、相手方の委託を受けて法律行為をする契約です。法律上は、有償・無償を問いません(実務上は有償が大半)。
なお、法律行為でない事務の委託は「準委任」と呼ばれ、委任に準じて取り扱われます(民法656条)。

✅ 寄託(民法657条)
→当事者の一方が、相手方の委託を受けて物を預かり保管する契約です。有償・無償を問いません。

✅ 組合(民法667条)
→各当事者が出資をして、共同の事業を営む契約です。

✅ 終身定期金(民法689条)
→当事者の一方が相手方や第三者のために、定期的に金銭その他の物を給付する契約です。実務上、終身定期金契約はほとんど活用されていません。

✅ 和解(民法695条)
→当事者が互いに譲歩をして、争いをやめることを約束する契約です。

民法で定められていない契約(非典型契約)の例

契約自由の原則により、民法に定められている典型契約でなくても、当事者の合意により自由に契約を締結できます。典型契約以外の契約を「非典型契約」と言います。

以下は、非典型契約の一例です。具体的な契約内容は、当事者間の契約交渉によって決めます。

非典型契約の例

✅ 業務委託契約
✅ 秘密保持契約
✅ ライセンス契約(特許・商標・著作物など)
✅ サービスの利用契約
✅ 物流委託契約
✅ 人材紹介契約
など

この記事のまとめ

民法の記事は以上です。最新の記事に関する情報は、契約ウォッチのメルマガで配信しています。ぜひ、メルマガにご登録ください!

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参考文献

独立行政法人国民生活センター「消費生活相談に役立つ改正民法の基礎知識」シリーズ

中田裕康著『契約法 新版』有斐閣、2021年