電子帳簿保存法とは?
条文やいつから対応が必要か 分かりやすく解説!

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この記事のまとめ

改正電子帳簿保存法が2022年1月に施行され、電子帳簿等保存制度利用の際の事前承認の廃止や保存要件の緩和など、電子帳簿等保存手続きについての抜本的な見直しがなされました。この機会に併せて電子帳簿保存法について内容を理解しておきましょう。

この記事では、電子帳簿保存法の知識がない方にも基本から分かりやすく解説します。

※この記事では、法令名を次のように記載しています。

  • 電帳法…2022年1月施行後の電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律
  • 旧電帳法…2022年1月施行前の電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律
  • 電帳法規則…2022年1月施行後の電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律施行規則
ヒー

先生、電子帳簿保存法が改正されたと聞きましたが、そもそも電子帳簿保存法についてよく分かりません・・・。法務部に関係があるのでしょうか?

ムートン

電子帳簿保存法は、契約書などの保存に関わってきますよ。

※この記事は、2022年5月27日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。

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電子帳簿保存法とは?意味を分かりやすく解説

電子帳簿保存法は、大きく分けて、2つの制度を定めた法令といえます。

1つ目の制度は、 税法上、保存が義務付けられている紙の帳簿(仕訳帳・総勘定元帳・補助元帳など)や書類(契約書・損益計算書・貸借対照表・請求書・見積書など)について、一定の要件のもとで、電子データやスキャンデータを紙の代わりに保管することを認めている、というものです。

ムートン

ちなみに、税法上、保存が義務付けられている帳簿と書類を併せて「国税関係帳簿書類」といいます。

2つ目の制度は、税法上は保存が義務付けられていない電子取引のデータについて、保存義務を定めている、というものです。

法人税法では、書面でやり取りされた書類のみ保存義務が定められているところ、電子帳簿保存法において、書面ではなく、取引においてデータでこれらの取引情報をやり取りした場合には、取引のデータを保存するべきとしたのです。

ムートン

2022年1月施行の改正(以下「2022年改正」)は、前者について抜本的な見直しが行われているほか、後者についても今まで認められていた紙等による保存が認められなくなるなど、重要な改正が行われています。最近利用が増えている電子契約の保存方法も関係するものです。

電子帳簿保存法の2つの制度

国税関係帳簿書類を電子データで保存・スキャン保存するための制度
電子取引に係るデータの保存義務に関する制度

電子帳簿保存法の改正や対応について分からず困っている方は、以下の資料をダウンロードして活用してみてください。

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電子帳簿保存法に基づく電子帳簿保存制度を導入するメリット

電子帳簿保存制度を導入することのメリットとしては、以下のようなものがあげられます。

  1. 経理業務の効率化
  2. リモートワーク対応
  3. オフィスの省スペース化
  4. コスト削減
  5. セキュリティ強化
  6. 「紙」削減によりSDGsに貢献できる
  7. 優良な電子帳簿の要件を満たす場合、過少申告加算税が5%軽減される

①経理業務の効率化

電子帳簿保存制度を導入すると、紙により受領した請求書・領収書やレシート等のスキャナ保存が可能となります。また、取引先が経理書類の電子化に対応していれば、請求書や領収書のやりとり自体もデジタル化が可能となるため、経理業務の中でも煩雑な作業である「紙」を取り扱う業務が大幅に削減されます。

さらに、国税関係帳簿書類がデジタル化されていることにより検索機能が向上し、書類の紛失や「書類が多すぎて、どこにあるのかわからない」という、紙保管特有の問題が軽減します。また、自動仕訳等を活用した経理の自動化の幅も広がります。

このように、電子帳簿保存制度を導入することにより、経理のデジタル化が進み、経理業務の効率化が図られます。

②リモートワーク対応

従来の経理業務では、請求書や領収書等の経理関係書類が「紙」でやり取りされていたことから、「紙」の処理や内容の確認が必要な場合、出社しなければならず、リモートワークが難しいとされていました。

しかしながら、電子帳簿保存制度導入に伴う経理のデジタル化により、「紙」の取り扱い自体が少なくなり、また、クラウド保存等によりオフィス外からも内容を確認できるようになることから、出社しなければ行えない業務が減り、リモートワークで行える経理業務の幅が大きく広がります。

③オフィスの省スペース化

国税関係帳簿書類については、その事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から7年間又は10年間保存しなければならず、かなりの広さの保存場所が必要となります。

しかしながら、電子帳簿保存制度を導入した場合、これらの帳簿・書類の大部分を電子化して保管することになり、かなりの省スペース化となります。

オフィスのミニマム化を図るには、電子帳簿保存制度の導入は非常に有用といえます。

④コスト削減

帳簿書類を紙で作成している場合、紙代やインク代、切手代、保管のためのファイル代などがかかり、また、保管場所確保のための費用もかさみますが、電子帳簿保存制度を導入することで、これらの費用を削減できます。

また、契約書を電子的記録により作成する「電子契約」では、紙による契約と異なり印紙代がかからないため、電子帳簿保存制度と併せて、電子契約の仕組みも導入すれば、印紙代も削減可能となります。

⑤セキュリティ強化

経理関係の帳簿書類を紙で保存する場合、施錠により盗難に備えることとなりますが、鍵が物理的に壊され、盗難されてしまうこともあります。

また、火事による消失や、不注意等による紛失リスクもあります。

しかし、帳簿書類を電子化し、強度のセキュリティをかけることにより、情報漏えいを防ぐことができ、データをバックアップすることで、紛失リスクも軽減されます。

⑥「紙」削減によりSDGs達成に貢献できる

電子帳簿保存制度を導入することで、経理分野でのペーパーレス化が図られます。

ペーパーレス化は、SDGsの17のゴールのなかでも特に「12.つくる責任 つかう責任」「13.気候変動に具体的な対策を」「15.陸の豊かさも守ろう」の達成に貢献できるといわれており、企業として環境問題解決への社会的責任を果たすことができます。

⑦優良な電子帳簿の要件を満たす場合、過少申告加算税が5%軽減される

一定の国税関係帳簿について、優良な電子帳簿の要件を満たして電子データによる備付け及び保存を行っている保存義務者については、その国税関係帳簿(優良な電子帳簿)に記録された事項に関し申告漏れがあった場合に課される過少申告加算税が5%軽減されます。(電帳法8条4項)

電子帳簿保存法に基づいて電子帳簿保存制度を導入する効果について、さらに詳しく知りたい方は、無料でダウンロードできる以下の資料を活用してみてください。

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電子帳簿保存法(電帳法)に基づく電子帳簿保存制度を導入するデメリット

電子帳簿保存制度を導入することのデメリットとしては、以下のようなものがあげられます。

  1. システム導入のための時間、費用がかかる
  2. 経理手順を電子帳簿保存制度に対応させるための社内ルールの見直し、社員教育が必要となる
  3. システム障害やセキュリティ対策の不備などが生じた場合、対策を講じる必要がある

①システム導入のための時間、費用がかかる

電子帳簿保存制度を導入するためには、法に定められた保存要件を満たすためのシステムを導入する必要があるため、どうしても、導入当初に時間や費用がかかってしまいます。

しかしながら、電子帳簿保存制度は、長期的にみれば上記のように多くの利点がありますので、初期投資としてシステム導入を行うことは長期的にみればメリットがあるといえるでしょう。

なお、電子帳簿保存制度の広がりとともに、様々な会社が電帳法に対応するシステムを開発していますが、一度システムを導入してしまうと他のシステムへの乗り換えが難しい場合もありますので、導入時には、これらのシステムの内容や費用の違いを把握し、自社の規模や特性にあったものを選ぶ必要があります。

②経理手順を電子帳簿保存制度に対応させるための社内ルールの見直し、社員教育が必要となる

電子帳簿保存制度を導入すると、経理処理の流れが大きく変わることとなります。

特に、請求書や領収書、契約書、レシートなどの国税関係書類を電子データで保存するためには、一定期間内にタイムスタンプを付与する必要があることから、経理分野だけでなくこれらの書類を交付・受領する立場にある営業分野でも今までとは異なる処理手順が求められることとなります。

そこで、経理手順を電子帳簿保存制度に対応させるための社内ルールの見直しや、社員教育が必要となり、これらに対応するための時間、費用が必要となります。

③システム障害やセキュリティ対策の不備などが生じた場合、対策を講じる必要がある

経理をシステム化した場合、システム障害が起こる可能性は避けられません。

また、セキュリティ対策が不十分だった場合、情報漏えい等が生じることもあります。

これらは業務のIT化に伴う不可避のリスクではありますが、システム導入に先立って、システム提供元にこれらの問題に対する対策や実際に問題が起こった場合の対応方法を具体的に確認し、納得できるシステムを導入することで、ある程度は防ぐことができます。

電子帳簿保存法(電帳法)の法改正の流れ|いつから対応が必要?

2005年~2022年の電子帳簿保存法改正まとめ

電子帳簿保存法は、電子データとして作成された国税関係帳簿書類について電子データによる保存を認めることを目的として、1998年に公布・施行されました。

制定当初は、電子データとして作成されたデータの保存を対象とし、紙の書類をスキャンしての保存は考慮されていませんでしたが、経理分野でもデジタル化の要請が進む中、電子帳簿保存制度の活用を促進するため、2005年改正によるスキャン保存制度の導入を皮切りに、数度にわたり、要件緩和等の改正が行われました。

主な改正は以下のとおりです。

①2005年改正
・一定の要件のもと、スキャナ保存が認められる。ただし、金額の上限設定、電子署名要件あり。

②2015年改正
・スキャナ保存についての要件緩和
(金額制限の撤廃・電子署名が不要に・適時入力方式についての要件緩和)

③2016年改正
・スキャナ保存の要件が緩和されスマートフォンによる保存も可能に
・領収書等を受領者等が読み取る場合の要件の整備
・小規模企業者の特例を創設

④2019年改正
・過去分の書類について、一定の要件を満たすことで、スキャナ保存をすることが可能に

⑤2020年改正
・電子取引の電磁的記録の保存要件緩和

⑥2022年改正
・電子帳簿保存制度導入の際の事前承認制度の廃止
・タイムスタンプ要件・検索要件の緩和
・適正事務処理要件廃止
・不正に対するペナルティ強化

2020年10月に施行された電子帳簿保存法の施行規則の改正と2022年1月に施行された電子帳簿保存法の改正については、こちらの記事で解説しています。

電子取引データ保存は2024年1月から対応が必要になる

詳しくは記事の後半で解説しますが、電子取引に関する取引データは、2024年1月以降は電子保存が必須となります。紙に印刷して保存することはできなくなるので注意が必要です。

電子取引とは、注文書や契約書などの取引情報を、電子記録の授受によってやり取りする取引です。例えば、相手方と締結した電子契約のファイルや、PDFで受領した請求書などを、電子データの状態のまま保存する必要が生じます。

2024年1月以降、電子取引の取引データを保存する際には、原則として以下の要件をすべて満たさなければなりません。未対応の企業は、遅くとも2023年中に対応を済ませておきましょう。

電子保存の要件

①真実性の確保
→取引データの不正な改ざん等を防ぐための措置を講ずること

②関係書類の備え付け
→取引データを保存したシステム・サービスの利用方法がわかる書類などを備え付けること

③見読可能性の確保
→ディスプレイやプリンタなど、取引データの内容を速やかに確認できる装置を設置すること

④検索機能の確保
取引データをスムーズに検索できるようにしておくこと

各要件の詳細については、記事の後半で解説します。

2024年以降の電子取引データ保存についてどう対応すればよいか分からない方は、以下の資料をダウンロードして活用してみてください。

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令和5年度税制改正大綱の変更点

令和5年度税制改正大綱では、電子帳簿等保存について以下の取り扱いの変更が示されました。

①優良な電子帳簿の範囲の明確化
過少申告加算税の5%軽減、および所得税の青色申告特別控除(65万円)を受けるために必要となる「優良な電子帳簿」の種類が明示されました(仕訳帳・総勘定元帳など)。

②スキャナ保存の要件の緩和
解像度・階調・大きさに関する情報の保存要件が廃止され、さらに入力者等に関する情報の確認要件が廃止されるなど、スキャナ保存の要件がいっそう緩和されました。

③検索要件が不要となる対象者の拡大
検索要件のすべてが不要となる対象者が、判定期間における売上高が5000万円以下である事業者まで拡大されました(従来は1000万円以下)。

④電子取引のデータ保存義務の恒久的猶予措置
電子取引データの電子保存義務については、2023年末までの宥恕措置が設けられていましたが、2024年以降も以下の要件を満たす場合には、電子保存義務が猶予されることになりました。
(a)電子保存ができなかったことにつき相当の理由があると所轄税務署長に認められたこと
(b)質問検査権に基づく電子取引データのダウンロード、および当該データの出力書面の提示・提出の求めに応じることができるようにしていること

国税関係帳簿書類を電子データ保存・スキャナ保存するための制度|電子帳簿保存法4条の条文についても解説

電子データ保存・スキャナ保存とは(電子帳簿保存法4条)

まず、電子データ保存とスキャナ保存について説明します。電子データ保存とは、帳簿・書類等を、最初の記録段階から一貫して電子計算機を使用して作成された場合に、これを電子データとして保存することで、 国税関係帳簿書類の保存義務を果たしたことになるものです(電帳法4条1項)。

スキャナ保存とは、既存の紙媒体の書類等をスキャンして読み取り、この読み取りデータを保存することで、 国税関係帳簿書類の保存義務を果たしたことになるものです(電帳法4条3項)。

電子データ保存・スキャナ保存が認められている帳簿書類(契約書、請求書等)

帳簿については、スキャナ保存は認められていないのに対し、契約書、請求書、領収証等の書類は、スキャナ保存が可能とされています。

これに対して、電子データ保存については、帳簿・書類ともに認められます。

電帳法で規定される電子保存の対象となる国税関係帳簿書類は、以下の書類となります。

①法人税法で規定される帳簿書類
・普通法人等の帳簿・書類
・青色申告法人の帳簿・書類
②消費税法で規定される帳簿書類
③源泉徴収に関する書類
④関税に関する帳簿書類

以下、各書類について具体的にみていきます。

法人税法で規定される帳簿(普通法人等の帳簿)

まず、普通法人等(法人税法150条の2)の帳簿については、法人税法施行規則別表23に、その記録方法とともに定められています。

区分記録方法
(1)現金の出納に関する事項取引の年月日、事由、出納先及び金額並びに日々の残高を記載する。ただし、少額な取引については、 その科目ごとに、日々の合計金額を一括記載することができる。
(2)当座預金の預入れ及び引出しに関する事項預金の口座別に、取引の年月日、事由、支払先及び金額を記載する。
(3)手形(融通手形を除く。)上の債権債務に関する事項受取手形、支払手形別に、取引の年月日、事由、相手方及び金額を記載する。
(4)売掛金(未収加工料その他売掛金と同様の性質を有するものを含む。)に関する事項売上先その他取引の相手方別に、取引の年月日、品名その他給付の内容、数量、単価及び金額を記載する。ただし、保存している納品書控、請求書控等によりその内容を確認できる取引については、その相手方別に、日々の合計金額のみを一括記載することができる。
(5)買掛金(未払加工料その他買掛金と同様の性質を有するものを含む。)に関する事項仕入先その他取引の相手方別に、取引の年月日、品名その他受けた給付の内容、数量、単価及び金額を記載する。 ただし、保存している納品書、請求書等によりその内容を確認できる取引については、その相手方別に、日々の合計金額のみを一括記載することができる。
(6)(2)から(5)までに掲げるもの以外の債権債務に関する事項貸付金、借入金、預け金、預り金、仮払金、仮受金、未収入金、未払金等に、 それぞれ適当な名称を付して区分し、それぞれ、その取引の年月日、事由、相手方及び金額を記載する。
(7)有価証券(商品であるものを除く。)に関する事項取引の年月日、事由、相手方、銘柄、数量、単価及び金額を記載する。
(8)減価償却資産に関する事項取引の年月日、事由、相手方、種類(その種類につき耐用年数省令別表(第19条第2項(種類等を同じくする減価償却資産の償却限度額) の規定の適用を受ける場合には、減価償却資産の耐用年数等に関する省令の一部を改正する省令(平成20年財務省令第32号)による改正前の 耐用年数省令別表)において構造若しくは用途又は細目が定められているものについては、構造若しくは用途又は細目を含む。)、数量及び金額を記載する。
(9)繰延資産に関する事項取引の年月日、事由及び金額を記載する。
(10)(1)から(4)まで及び(6)から(9)までに掲げるもの以外の資産(商品、製品、消耗品その他棚卸しにより整理するものを除く。)に関する事項取引の年月日、事由、相手方、数量及び金額を記載する。
(11)売上げ(加工その他の役務の給付等売上げと同様の性質を有するものを含む。)に関する事項取引の年月日、売上先、品名その他給付の内容、数量、単価及び金額並びに日々の売上総額を記載する。ただし、次に掲げるところによることができる。
(1)保存している納品書控、請求書控等によりその内容を確認できる取引については、その相手方別に、日々の合計金額のみを一括記載する。
(2)小売その他これに類するものを行う法人の現金売上げについては、日々の現金売上げの総額のみを記載する。
(3)二以上の事業所を有する法人の売上げで日々の売上総額を記載し難いものについては、一事業所ごとに、その事業所における売上総額を記載する。
(12)(11)に掲げるもの以外の収入に関する事項受取利息、雑収入等に、それぞれ適当な名称を付して区分し、それぞれ、その取引の年月日、事由、 相手方及び金額を記載する。ただし、少額な雑収入等については、それぞれ、その日々の合計金額のみを一括記載することができる。
(13)仕入れに関する事項取引の年月日、仕入先その他の相手方、品名その他給付の内容、数量、単価及び金額並びに日々の仕入総額を記載する。ただし、次に掲げるところによることができる。
(1)保存している納品書、請求書等によりその内容を確認できる取引については、その相手方別に、日々の合計金額のみを一括記載する。
(2)少額な現金仕入れについては、日々の合計金額のみを一括記載する。
(3)二以上の事業所を有する法人の仕入れで日々の仕入総額を記載し難いものについては、一事業所ごとに、その事業所における仕入総額を記載する。
(14)(13)に掲げるもの以外の経費に関する事項賃金、給料手当、法定福利費、厚生費、外注工賃、動力費、消耗品費、修繕費、減価償却費、 繰延資産の償却費、地代家賃、保険料、旅費交通費、通信費、水道光熱費、手数料、倉敷料、荷造包装費、 運搬費、広告宣伝費、公租公課、機密費、接待交際費、寄附金、利子割引料、雑費等に、それぞれ適当な名称を付して区分し、 それぞれ、その取引の年月日、支払先、事由及び金額を記載する。 ただし、少額の経費については、それぞれ、その日々の合計金額のみを一括記載することができる。

法人税法で規定される帳簿(青色申告法人の帳簿)

また、青色申告法人の帳簿については、法人税法施行規則第53条以下にその規定があります。

53条
※法人税法施行規則(以下この表について同じ)
その資産、負債及び資本に影響を及ぼす一切の取引につき、複式簿記の原則に従い、整然と、かつ、明瞭に記録。
54条全ての取引を借方及び貸方に仕訳する帳簿(次条において「仕訳帳」という。)、 全ての取引を勘定科目の種類別に分類して整理計算する帳簿(次条において「総勘定元帳」という。)その他必要な帳簿
55条1項:仕訳帳  取引の発生順に、取引の年月日、内容、勘定科目及び金額を記載

2項:総勘定元帳  その勘定ごとに記載の年月日、相手方勘定科目及び金額を記載
56条各事業年度終了の日において、商品又は製品(副産物及び作業くずを含む。)、半製品、仕掛品(半成工事を含む。)、 主要原材料、補助原材料、消耗品で貯蔵中のものその他これらの資産に準ずる資産のたな卸その他決算のために必要な事項の整理を行ない、その事績を明瞭に記録。 ここにいうたな卸については、たな卸表を作成し、たな卸資産の種類、品質及び型の異なるごとに数量、単価及び金額を記載。
57条各事業年度終了の日現在において、その業種、業態及び規模等の実情により、おおむね別表22に掲げる科目に従い貸借対照表及び損益計算書を作成

法人税法で規定される書類

国税関係帳簿書類のうちの「書類」については、普通法人等、青色申告法人に違いはありません。次の各書類については、スキャナ保存が可能です。

取引関係書類
定義取引に関して、相手方から受け取った注文書、契約書、送り状、領収書、 見積書その他これらに準ずる書類及び自己の作成したこれらの書類でその写しのあるものはその写し
該当するもの取引の相手方に交付している取引関係の証憑書類。又は取引の相手方から受領した取引関係の証憑書類。
決算関係書類
定義棚卸表、貸借対照表及び損益計算書並びに決算に関して作成されたその他の書類
該当するもの決算に関して作成される残高試算表や精算表、実地棚卸表など。

消費税法に規定される帳簿書類

【帳簿】※スキャナ保存不可
消費税の課税業者は、帳簿を備え付けてこれに資産の譲渡等又は課税仕入れ若しくは課税貨物の保税地域からの引き取りに関する財務省令で定める事項を整然と、かつ、明瞭に記録しなければなりません(消費税法施行令71条1項)。
帳簿に記載すべき具体的事項については、消費税法施行規則27条1項に、次のように定められています。

資産の譲渡等に関する事項資産の譲渡等の相手方の氏名又は名称
資産の譲渡等を行った年月日
資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容
資産の譲渡等の対価の額
資産の譲渡等に係る対価の返還等に係る事項資産の譲渡等に係る対価の返還等を受けた者の氏名又は名称
資産の譲渡等に係る対価の返還等をした年月日
資産の譲渡等に係る対価の返還等の内容
資産の譲渡等に係る対価の返還等をした金額
仕入れにかかる対価の返還に係る事項仕入に係る対価の返還等をした者の氏名又は名称
仕入に係る対価の返還等を受けた年月日
仕入れに係る対価の返還等の内容(当該仕入れに係る対価等の返還等が他の者から受けた軽減対象課税資産である場合には、 仕入れに係る対価の返還等の内容及び軽減対象課税資産の譲渡等にかかるものである旨)
仕入に係る対価の返還等を受けた金額
保税地域からの引取り課税貨物に係る消費税額が還付される当該課税貨物に係る事項保税地域の所在地を管轄する税関の名称
当該還付を受けた年月日
課税貨物の内容
当該還付を受けた消費税額
貸倒れに係る事項貸倒れの相手方の氏名又は名称
貸倒れがあった年月日
貸倒れに係る課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容
貸倒れにより領収することができなくなった金額

【仕入税額控除】
仕入税額控除の適用を受けるためには、課税仕入れ等の事実を記載した請求書や領収証等を保存する必要があります。
これらは、国税関係帳簿書類にいうところの書類にあたり、スキャナ保存が可能となります。

源泉徴収に関する書類

源泉徴収に関する計算は、企業によって、給与台帳等の給与計算書類で一体的に行われている場合と、独立した源泉徴収簿が作成されている場合があります。

前者の場合には、給与台帳自体が、法人税法で保存義務が課され、国税関係帳簿書類にいうところの書類に該当します。

後者の場合は、保存義務等が課される具体的法令が存在せず、国税関係帳簿書類にいうところの書類に該当しません。

他に、従業員から提出された扶養控除等申告書も、国税関係帳簿書類にいうところの書類に該当します。よって、これらの書類について、スキャナ保存が可能となります。

関税に関する帳簿書類

関税に関する帳簿書類については、税関により、次のように例示がされています。

輸出者
帳簿
※スキャナ保存不可
品名、数量、価格、仕向人の氏名(名称)、輸出許可年月日、許可番号を記載した帳簿 (必要事項が網羅されている既存帳簿等、仕入書等に必要項目を追記したものでも可)
書類
※スキャナ保存可
輸出許可物の契約書、仕入書、包装明細書、価格表、製造者又は売渡人の作成した仕向人との間の取引についての 書類、その他税関長に対して輸出の許可に関する申告の内容を明らかにすることができる書類
輸入者
帳簿
※スキャナ保存不可
品名、数量、価格、仕出人の氏名(名称)、輸入許可年月日、許可番号を記載した帳簿 (必要事項が網羅されている既存帳簿、仕入書等に必要項目を追記したものでも可)
書類
※スキャナ保存可
輸入許可貨物の仕入書、契約書、運賃明細書、保険料明細書、包装明細書、価格表、製造者又は売渡人の作成した仕出人との間の取引についての書類、 その他税関長に対して輸入の許可に関する申告の内容を明らかにすることができる書類

電子データ保存の要件・手続

帳簿書類の電子データ保存の要件

【所轄税務署の承認手続】
旧電帳法では、帳簿書類のデータ保存を行うには、所轄税務署への届出を行い、その承認を受けることが必要でした(旧電帳法4条1項)。

しかし、2022年改正により、この事前承認は不要となりました

なお、2022年1月1日よりも前に受けた承認の効力自体は取りやめの届出書の提出(又は税務当局からの取消処分)がない限り有効ですので、その承認が有効とされる間は、引き続き改正前の要件で保存等を行う必要があります。

したがって、事前承認を受けていた事業者が2022年1月1日以後に備付けを開始する帳簿について、改正後の要件に従って電子帳簿保存を行う場合には、承認の取りやめの届出書を提出する等、承認を取りやめる一定の手続が必要となります。

【具体的要件】
電帳法4条1項が、国税関係帳簿書類を電子データで保存するための要件を定めています。

2022年改正により、電子帳簿が優良な電子帳簿(以下「優良電子帳簿」)とそれ以外の電子帳簿(以下「一般電子帳簿」)の2つに区分され、一般電子帳簿については、改正前に必要とされていた要件のうちいくつかが削られたことから、電子帳簿保存において最低限必要とされる要件は、改正前に比べ大幅に緩和されました。(電帳法規則2条)

その具体的な内容は、電帳法施行規則に定められていますが、一般電子帳簿としてであれば、正規の簿記の原則(一般的には複式簿記)に従って記録し、かつ、以下の要件のみを満たしていれば電磁的保存が認められます。(電帳法規則2条1項、2項)

ルール根拠条文
1  関係書類等の備付け
帳簿に係る電磁的記録の保存等に併せて、システム関係書類等(システム概要書、システム仕様書、操作説明書、事務処理マニュアル等)の備付けを行うこと。

解説:帳簿を事後的に調査する際に、適正・効率的な調査を行うために、帳簿に係る電磁的記録の処理方法・具体的な操作手順を明らかにした書面を備え付けておく必要があります。
施行規則2条2項1号
2  見読可能性の確保
帳簿に係る電磁的記録の保存等をする場所に、その電磁的記録の電子計算機処理の用に供することができる電子計算機、プログラム、ディスプレイ及びプリンタ並びにこれらの操作説明書を備え付け、その電磁的記録をディスプレイの画面及び書面に、整然とした形式及び明瞭な状態で、速やかに出力できるようにしておくこと。

解説:紙媒体と異なり、電磁的記録を確認するためには、コンピューターのディスプレイ等に判読可能な形で表示される必要がありますので、その表示を確保する為の要件です。なお、「整然とした形式及び明瞭な状態」とは、紙媒体で作成される場合の帳簿書類に準じた規則性を有する形式で出力され、かつ、出力される文字を容易に識別できる状態をいうとされています。
施行規則2条2項2号
3  税務調査時のデータ提供
税務職員による質問検査権に基づく電磁的記録のダウンロードの求めに応じることができるようにしていること

解説:データのダウンロードを求める際には、通常出力が可能な範囲で税務職員が出力形式を指定することもあります。出力可能な形式でダウンロードを求めたにもかかわらず、検索性等に劣るそれ以外の形式で提出された場合は、そのダウンロードの求めに応じることができるようにしていたことにはなりません。
施行規則2条2項3号

また、優良電子帳簿として認められるためには、一般電子帳簿の要件に加え、以下の要件が必要となります。(電帳法規則5条5項)

なお、“優良”の要件を全て満たしているときは、一般電子帳簿の要件のうちダウンロード要件は不要となります。

一定の国税関係帳簿について優良な電子帳簿の要件を満たして電子データによる備付け及び保存を行っている保存義務者は、過少申告加算税の5%軽減措置を受けることができます。なお、この措置を受けるためには、あらかじめ、所轄税務署長に届出書を提出する必要があります。

ルール根拠条文
1  訂正・削除履歴の確保
帳簿を作成する際に、次の条件を満たす処理システムを使用すること。
⑴帳簿に係る電磁的記録に係る記録事項について訂正又は削除を行った場合には、これらの事実及び内容を確認することができること。
⑵帳簿に係る記録事項の入力をその業務の処理に係る通常の期間を経過した後に行った場合には、その事実を確認することができること。

解説:これらの要件は、帳簿の不正改ざんを防ぐため、削除・訂正履歴機能を有したシステムないしソフトウェアを使用しなければならないことを定めています。なお、「その業務の処理に係る通常の期間」とは、2か月間を最長として、各企業の事務処理規程等で任意に定めることができます。
施行規則5条5項1号イ
2  相互関連性の確保
帳簿に係る電磁的記録の記録事項とその帳簿に関連する他の帳簿の記録事項との間において、相互にその関連性を確認できるようにしておくこと。

解説:電磁的記録によって保存している国税関係帳簿と、その他の国税関係帳簿とが存在している場合には、 その両者の関連性が確認できるようにしておく必要があります。例えば、一方の帳簿の内容を、他の一方に転記する場合には、一連番号等を振り、これを双方の国税関係帳簿に係る記録事項として記録する必要があります。
施行規則5条5項1号ロ
3  検索機能の確保
帳簿に係る電磁的記録について、次の要件を満たす検索機能を確保しておくこと。
⑴取引年月日、勘定科目、取引先を検索条件として設定できること
⑵日付又は金額に係る記録項目については、その範囲を指定して条件を設定することができること
⑶2つ以上の任意の記録項目を組み合わせて条件を設定することができること
なお、保存義務者が、税務職員による質問検査権に基づく電磁的記録のダウンロードの求めに応じることができるようにしている場合には、検索要件のうち(2)(3)の要件が不要となります(後述のスキャナ保存及び電子取引についても同様です。)。

解説:まず、⑴については、2022年改正前は、「取引年月日、勘定科目、取引金額その他のその帳簿の種類に応じた主要な記録項目」とされていましたが、改正により「取引年月日、取引金額、取引先」に限定されました。
次に、⑵については、「その範囲を指定して条件を設定することができる」とは、課税期間ごとの国税関係帳簿書類別に日付又は金額の任意の範囲を指定して条件設定を行い検索ができることをいいます。ここでいう課税期間ごととは、最大1年間ごとの区切りを指します。よってこの課税期間ごとは、横断的に検索できるよう、1つの記録媒体に保存することが望ましいといえます。
⑶については、国税関係帳簿書類にかかる、⑴で解説した主要な記録項目から少なくとも2つの記録項目を任意に選択して検索をかけることができることをいいます。
施行規則5条5項1号ハ

書類の電子データ保存方法

【所轄税務署の承認手続】
2022年改正により、書類の電子データ保存についても、所轄税務署の承認が不要となりました(電帳法4条2項)。

【具体的要件】
書類の電子データ保存要件については、施行規則2条3項により、一般電子帳簿の保存要件が準用されています。

ただし、取引年月日その他の日付を検索の条件として設定すること及びその範囲を指定して条件を設定することができる検索機能が確保されている場合には、「税務調査時のデータ提供」に応じる必要はありません。

書類のスキャナ保存の要件・手続

【所轄税務署の承認手続】
書類のスキャナ保存についても、2022年改正により所轄税務署の承認が不要となりました(電帳法4条3項)。

なお、改正までに行われた税務署長の承認は、電子帳簿等保存と同様、施行日(2022年1月1日)以後についても引き続き有効であり、取りやめの届出書を提出する(又は税務当局から取消処分を受ける)までは、引き続き改正前の要件でスキャナ保存を行う必要があります。

したがって、承認を受けていた事業者が施行日以降緩和された要件の下で保存を行う場合には、承認の取りやめの届出書の提出等の承認を取りやめる一定の手続きが必要となります。

【具体的要件】
スキャナ保存については、電帳法4条3項にその根拠があり、その具体的要件については、施行規則2条4項以下等に定められています。

まず、スキャナ保存の対象となる書類は、以下の2つに分類されます。

  • 重要書類…契約書、請求書・領収書のように資金や物の流れに直結・連動する書類
  • 一般書類…見積書・注文書のように資金や物の流れに直結しない書類

スキャナ機器・システムの機能に関する要件が、施行規則2条6項2号等に詳細に規定されています。
帳簿の電子データ保存と同様、記録事項について訂正又は削除を行った場合には、これらの事実及び内容を確認することができること等が求められます。

その他解像度等についても詳細な規定がありますが、この点についての詳細は国税庁ウェブサイト( 電子帳簿保存法一問一答【スキャナ保存関係】問10)をご参照ください。なお、スキャナ機器については、デジタルカメラやスマートフォンのカメラ機能でも可とされています。

ルール根拠条文
重要書類1  記録事項入力時期
スキャナ保存に係る書類が重要書類にあたる場合には、書類の作成又は受領後、「速やかに」(おおむね7営業日以内)、又は、「当該国税関係書類の作成又は受領から当該入力までの各事務の処理に関する規程を定めている場合にあっては、その業務の処理に係る通常の期間を経過した後、速やかに」行うことが求められます。ここでいう業務の処理に係る通常の期間は、各企業において2か月を最長として任意に定めることができます。

※ここにいう記録事項の入力とは、スキャナで読み取るだけでなく、後述するタイムスタンプの付与及び電磁的記録の訂正又は削除の履歴の確保の要件を備えることをいいます。
施行規則2条6項1号
2  タイムスタンプの付与
改ざん等防止の観点から、書類をスキャナで読み取る際、一般財団法人日本データ通信協会が認定するタイムスタンプを付与することが求められています。
なお、タイムスタンプの付与期間については、2022年改正により、「作成又は受領後速やかに」又は「当該国税関係書類の作成又は受領から当該タイムスタンプを付すまでの各事務の処理に関する規程を定めている場合にあっては、その業務の処理に係る通常の期間を経過した後、速やかに」との文言に改正され、付与期間が作成又は受領から最長約2か月とおおむね7営業日以内とされました。
また、電子データについて訂正又は削除を行った場合に、これらの事実及び内容を確認することができるクラウド等において、入力期間内にその電子データの保存を行ったことを確認することができるときは、タイムスタンプの付与に代えることができることとされました。
施行規則2条6項2号
3  検索機能要件
スキャナ保存にかかる書類について、次の要件を満たす検索機能を確保することが必要です。
⑴取引年月日その他の日付、取引金額及び取引先を検索条件として設定できること
⑵日付又は金額に係る記録項目については、その範囲を指定して条件を設定することができること
⑶2つ以上の任意の記録項目を組み合わせて条件を設定することができること
※税務職員による質問検査権に基づく電子データのダウンロードの求めに応じる場合には、(2)(3)が不要です。
施行規則2条6項6号
4  その他
その他、帳簿との相互関連性の確保(施行規則2条6項4号)、システムのマニュアル等の備え付け等が求められます。
施行規則2条6項4号など
一般書類1  記録事項入力時期
重要書類のような厳格な期間制限はなく、適時に入力すればよいとされています。
施行規則2条7項
2  タイムスタンプの付与
一般書類についても、国税関係書類の受領者がスキャナで読み取る場合には、タイムスタンプを付与することは要求されています。ただし、タイムスタンプの付与期間は重要書類より緩和されており、スキャナでの読み取り時に付与することも可能です。
施行規則2条7項
3  検索機能要件
一般書類のスキャナ保存についても、重要書類と同様の検索機能要件があります。
施行規則2条7項

電子取引に係るデータの保存義務に関する制度

電子取引に係るデータの保存のルールを解説します。

電子取引の電子保存とは

「電子取引」とは、注文書や契約書などの取引情報を電子記録の授受によって行われる取引をいいます(電帳法2条5号)。企業は、このような「電子取引」を行った場合、「一定のルール」に従って、電子取引の情報を保存しなければなりません(電帳法7条)。

なお、2022年改正により、電子取引の情報を書面に出力する方法で保存する方式は廃止されました。

ただし、この改正には、2022年1月1日から2023年12月31日までの2年間の宥恕措置(経過措置)が設けられ、以下の全ての要件を満たす場合に限り、上記の期間中については、電子取引の情報を紙媒体で印刷保存することなども認められます。

宥恕措置の適用要件

✅  保存義務者が行う電子取引につき、納税地等の所轄税務署長が、電帳法の規定に従った電磁的記録の保存ができなかったことについてやむを得ない事情があると認めたこと

✅  保存義務者が、質問検査権に基づく当該電磁的記録の出力書面(整然とした形式及び明瞭な状態で出力されたものに限る)の提示又は提出の求めに応じることができるようにしていること

ムートン

多くの企業では、紙で出力して保存するという方法をとっているようですが、宥恕措置が適用される2年間のうちに、電帳法の規定に従った電子帳簿保存ができる体制を整備することが求められます。

電子取引に係るデータを電子保存するためのルール

では、電子取引の情報を電子保存するため具体的にどのようなルールを遵守しなければならないのでしょうか?具体的には、①真実性の確保、②関係書類の備え付け、③見読可能性の確保、④検索機能の確保という4つの観点から、ルールが定められています。

すなわち、電子データは、容易に改変することができることから、その内容が真実であることを担保しうるものでなければなりません(①真実性の確保)。

また、電子データが保存されているシステムが、信頼がおける適切なものであるかを把握することができるように、システムのマニュアルを備えておく必要があります(②関係書類の備え付け)。

さらに、人間が解読することが難しい数値やタグなどに置き換えて保存されてしまったり、どこに保存されているのか容易に把握できない方法で保存されたりしてしまうと、税務調査を的確に実施できません(③見読可能性の確保、④検索機能の確保)。

このような観点から、電子取引の情報を電子保存するためのルールが定められているのです。

電子取引の情報をデータのまま保存するときの観点

真実性の確保
関係書類の備付け
見読可能性の確保
検索機能の確保

ルールの詳細は、電子帳簿保存法施行規則の2条・4条に記載されています。要点をまとめると、次の表のとおりです。

ルール根拠条文
真実性の確保以下のいずれかの措置をとること
①電子データにタイムスタンプが付された後、取引情報の授受を行うこと
②取引情報の授受後速やかに、又は、その業務の処理に係る通常の期間を経過した後速やかに(当該取引情報の授受から当該記録事項にタイムスタンプを付すまでの各事務の処理に関する規程を定めている場合)、電子データにタイムスタンプを付すとともに、電子データを保存する者かその監督者に関する情報を確認することができるようにすること
③受領者がいずれかを満たすシステムを使用して、取引情報のやりとりと保存を行うこと。
イ 電子データの記録事項を訂正・削除をする場合、これらの事実・内容を確認することができること。
ロ 電子データの記録事項について訂正・削除をすることができないこと。
④正当な理由のない訂正削除の防止に関する事務処理規程(ルール)を定めて運用すること
施行規則4条1項
関係書類の備え付け利用する電子契約システム・サービスの利用方法が誰にでも分かるよう、その概要を記載した書類(マニュアル)を備え付けておくこと施行規則2条2項1号、施行規則4条1項
見読可能性の確保ディスプレイやプリンタを使って電子契約の内容が速やかに画面又は書面で確認できるようにしておくこと施行規則2条2項2号、施行規則4条1項
検索機能の確保以下の全ての方法によりデータを絞り込んで検索できるようにすること
①取引年月日その他の日付、取引金額及び取引先が検索条件として設定できる
②日付と金額については範囲指定して検索できる
③2つ以上の項目を任意に組み合わせて検索できる
※税務職員による質問検査権に基づく電子データのダウンロードの求めに応じる場合には、②③が不要
※基準期間の売上高が1,000万円以下である事業者(小規模な事業者)について、税務職員による質問検査権に基づく電子データのダウンロードの求めに応じることができるようにしている場合には、検索要件の全てが不要
施行規則2条6項6号、施行規則4条1項

※こちらの表は、法令の文言を簡易にしてまとめています。正確な文言は、根拠条文を参照して確認するようにしてください。

電子帳簿保存法(電帳法)に違反した場合のペナルティ(罰則)

2022年改正により、帳簿書類や電子取引情報を電子的に保存する際の手続や要件が大幅に緩和されたことから、不正行為防止のため、不正に対するペナルティが強化されています。

電子帳簿保存法に違反した場合のペナルティは以下のとおりです。(電帳法8条5項)

  • スキャナ保存について
    スキャナ保存が行われた国税関係書類に係る電子データに関して、隠蔽し、又は仮装された事実があった場合には、その事実に関し生じた申告漏れ等に課される重加算税が10%加重(電帳法8条5項)
  • 電子取引の情報の保存について
    電子保存された電子取引の情報に関して、隠蔽し、又は仮装された事実があった場合には、その事実に関し生じた申告漏れ等に課される重加算税が10%加重(電帳法8条5項)

電子帳簿保存法にスムーズに対応するためにも、電帳法の詳細や契約書の取扱いについて解説した以下の資料を活用してみてください。

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参考文献

内閣府「令和4年度税制改正の大綱」

財務省「令和3年度税制改正の大綱」(令和2年12月21日閣議決定)

財務省 令和3年度 税制改正の解説「令和3年度税制改正について」

国税庁ウェブサイト「電子帳簿保存法が改正されました」

国税庁「電子帳簿保存法取扱通達」(令和3年7月9日改正)

国税庁「電子帳簿保存法取扱通達解説(趣旨説明)」(令和3年7月9日)

国税庁ウェブサイト「電子帳簿保存法Q&A(一問一答)~令和4年1月1日以後に保存等を開始する方~」

豊森照信「図解 電子申告・電子帳簿―税務手続の完全デジタル化への対応―」(株式会社ぎょうせい)

袖山喜久造「改正電子帳簿保存法 完全ガイド」(税務研究会出版局)

税理士法人山田&パートナーズ/山田&パートナーズアカウンティング(株)編著 『改正電子帳簿保存法ハンドブック」大蔵財務協会』

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