【2022年1月施行】
電子帳簿保存法(電帳法)改正とは?
改正ポイントを分かりやすく解説!

この記事のまとめ

改正電子帳簿保存法・施行規則(2022年1月施行)のポイントを解説!!

経済社会のデジタル化を踏まえ、経理の電子化による生産性の向上等に資するため、令和3年度の税制改正において電子帳簿等保存手続について抜本的な見直しがなされました。

この改正により、帳簿書類や電子取引情報を電子的に保存する際の手続や要件が大幅に緩和され、電子帳簿等保存制度が使いやすくなる一方で、電子取引情報を書面に出力する方法で保存する方式は廃止され、また、不正に対するペナルティが強化されています。

既に電子帳簿等保存制度を取り入れている会社も、今後の導入を検討している会社も、この機会に電子帳簿等保存制度とは何か、今回の改正で何が変わったかを再確認してみてはいかがでしょうか。

この記事では、電子帳簿保存法の知識がない方にも分かりやすく改正のポイントを解説します。

(※この記事は、2021年11月26日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。)

※この記事では、法令名を次のように記載しています。
・電帳法…2022年1月施行後の電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律
・旧電帳法…2022年1月施行前の電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律
・電帳法規則…2022年1月施行後の電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律施行規則
・旧電帳法規則…2022年1月施行前の電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律施行規則
・電帳法通達…電子帳簿保存法取扱通達(2021年7月9日改正 2022年1月1日施行分) 

電子保存は義務化まで2年間の猶予がある

2021年12月24日に閣議決定された「令和4年度税制改正の大綱」にて、今回の電帳法改正における重要ポイントの「電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存義務化」につき、2022年1月1日から2023年12月31日までの2年間の宥恕措置(経過措置)が設けられました。

以下のすべての要件を満たす場合に限り、上記の期間中については、電子取引の取引情報を紙媒体で印刷保存することなども認められます。

宥恕措置の適用要件

✅ 保存義務者が行う電子取引につき、納税地等の所轄税務署長が、電帳法の規定に従った電磁的記録の保存ができなかったことについてやむを得ない事情があると認めたこと
✅ 保存義務者が、質問検査権に基づく当該電磁的記録の出力書面(整然とした形式及び明瞭な状態で出力されたものに限る)の提示又は提出の求めに応じることができるようにしていること

宥恕措置の適用を受けるためには、特に税務署への届出等は不要です。各事業者には、宥恕措置が適用される2年間のうちに、電帳法の規定に従った電子帳簿保存ができる体制を整備することが求められます。

電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存義務化の詳細については、本記事の後半で解説しているので、併せてご参照ください。

2022年1月施行の改正電子帳簿保存法(電帳法)とは?

改正の目的

今回の電帳法改正は、令和3年度税制改正の中で、納税環境を整備するための改正の一環として行われるものです。財務省は、令和3年度税制改正の解説において、今回の電帳法改正の目的について、以下のように説明しています。

経済社会のデジタル化を踏まえ、経理の電子化による生産性の向上、テレワークの推進、クラウド会計ソフト等の活用による記帳水準の向上に資するため、国税関係帳簿書類を電子的に保存する際の手続を抜本的に見直しました。

 財務省 令和3年度 税制改正の解説「令和3年度税制改正について」

財務省は、さらに、具体的な改正内容について以下の通りとしています。

具体的には、自己で作成する帳簿書類を電子的に保存するにあたり、税務署長の事前承認を廃止し、モニターや説明書の備付けなど最低限の要件を満たす電子帳簿に関して電子データのまま保存可能(紙での保存を不要)としたほか、検索機能や訂正削除履歴を備えた信頼性の高い電子帳簿に関しては過少申告加算税を5%軽減するなどのインセンティブ措置を適用することとしました。また、取引相手から受領した紙の領収書等について紙原本に代えてスキャナ画像を保存できるスキャナ保存制度については、ペーパーレス化を一層促進する観点から、税務署長の事前承認を廃止し、スキャン後直ちに紙原本を廃棄できるようにするなど手続・要件を大幅に緩和した一方で、電子データに関して改ざん等の不正が把握されたときは重加算税を10%加重する措置を講じました。

 財務省 令和3年度 税制改正の解説「令和3年度税制改正について」

それでは、改正の内容について、詳しく見ていきましょう。

公布日・施行日

改正の根拠となる法令は、以下のとおりです。

所得税法等の一部を改正する法律」(令和3年法律第11号)
電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律施行規則の一部を改正する省令」(令和3年財務省令第25号)

今回の改正では、電子帳簿等保存制度を利用する際の事前承認の廃止や不正利用についてのペナルティの強化を含めた抜本的な見直しがなされているため、令和2年度改正とは異なり、電帳法自体の改正が行われています。なお、今回の電帳法改正は、令和3年度税制改正の一環のため、「所得税法等の一部を改正する法律」により、他の税制関連法とともに改正する形式がとられています。

公布日・施行日

公布日│2021年3月31日

施行日│2022年1月1日

電帳法の概要

改正点を見る前に、電帳法について少し復習しておきましょう。
電帳法は、以下の2つの柱でできています。

  1. 各税法で原則紙での保存が義務づけられている帳簿書類について、一定の要件を満たした場合に電子データによる保存を可能とする規定(紙保存の特例に関する規定)
  2. 日々の取引にかかわる書類を電子データでやり取りしている場合の電子データの保存義務等を定める規定(電子取引に係る情報の保存義務の規定)

電子データによる保存の方式は、規定ごとに以下のように区分され、それぞれに利用するために必要な手続や保存要件等が定められています。

  1. 紙保存の特例に関する規定において定められている保存方法
     電子帳簿等保存・・・電子的に作成した帳簿・書類を電子データのまま保存するもの
     スキャナ保存・・・紙で受領・作成した書類を画像データで保存するもの
  2. 電子取引に係る情報の保存義務の規定において定められている保存方法
     電子取引の電子保存・・・電子的に授受した取引情報を電子データで保存するもの

今回の改正では、それぞれの保存方法について、利用手続や保存要件等が改正されています。

電帳法改正のポイント

上記の保存方法それぞれについて、改正のポイントは以下のとおりです。

☆電子帳簿等保存についての改正ポイント
・税務署長の事前承認制度が廃止されました。
・改正前に比べ大幅に緩和された要件での電子帳簿等保存が認められました。
・電子帳簿保存において最低限必要とされる要件に加えていくつかの要件を満たした電子帳簿については、優良な電子帳簿として過少申告加算税が軽減される措置が整備されました。

☆スキャナ保存に関する改正ポイント
・税務署長の事前承認制度が廃止されました。
・タイムスタンプ要件、検索要件等について、要件が緩和されました。
・適正事務処理要件が廃止されました。
・スキャナ保存された電磁的記録に関連した不正があった場合の重加算税の加重措置が整備されました。

☆電子取引の電子保存に関する改正ポイント
・タイムスタンプ要件及び検索要件について要件が緩和されました。
・申告所得税及び法人税関連については、電子取引の取引情報について、紙に出力する方法による保存が認められなくなりました。
・電子取引の取引情報に関して不正があった場合の重加算税の加重措置が整備されました。

それぞれの改正について、詳しく見ていきましょう。

電子帳簿等保存についての改正

電子帳簿等保存についての改正ポイントは、以下の3つです。
 ・税務署長の事前承認制度の廃止
 ・電子帳簿等保存を利用するための最低限の要件が改正前に比べ大幅に緩和
 ・優良な電子帳簿に係る過少申告加算税の軽減措置の整備

税務署長の事前承認制度の廃止

  • この改正は、2022年1月1日以後に備付けを開始する国税関係帳簿又は保存を行う国税関係書類について適用されます。

これまで、電子的に作成した国税関係帳簿や国税関係書類を電子データにより保存する場合には、事前に税務署長の承認が必要でしたが(旧電帳法4条1項、2項)、事業者の事務負担を軽減するため、事前承認は不要になりました。

(旧電帳法)
(国税関係帳簿書類の電磁的記録による保存等)
第4条 保存義務者は、国税関係帳簿の全部又は一部について、自己が最初の記録段階から一貫して電子計算機を使用して作成する場合であって、納税地等の所轄税務署長(財務省令で定める場合にあっては、納税地等の所轄税関長。以下「所轄税務署長等」という。)の承認を受けたときは、財務省令で定めるところにより、当該承認を受けた国税関係帳簿に係る電磁的記録の備付け及び保存をもって当該承認を受けた国税関係帳簿の備付け及び保存に代えることができる。
2 保存義務者は、国税関係書類の全部又は一部について、自己が一貫して電子計算機を使用して作成する場合であって、所轄税務署長等の承認を受けたときは、財務省令で定めるところにより、当該承認を受けた国税関係書類に係る電磁的記録の保存をもって当該承認を受けた国税関係書類の保存に代えることができる。
3 (略)

(電帳法)
(国税関係帳簿書類の電磁的記録による保存等)
第4条 保存義務者は、国税関係帳簿(財務省令で定めるものを除く。以下この項、次条第1項及び第3項並びに第8条第1項及び第4項において同じ。)の全部又は一部について、自己が最初の記録段階から一貫して電子計算機を使用して作成する場合には、財務省令で定めるところにより、当該国税関係帳簿に係る電磁的記録の備付け及び保存をもって当該国税関係帳簿の備付け及び保存に代えることができる。
2 保存義務者は、国税関係書類の全部又は一部について、自己が一貫して電子計算機を使用して作成する場合には、財務省令で定めるところにより、当該国税関係書類に係る電磁的記録の保存をもって当該国税関係書類の保存に代えることができる。
3 (略)
※ 下線部は主な改正点

「電子帳簿保存法」– e-Gov法令検索 – 電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ

なお、2022年1月1日よりも前に受けた承認の効力自体は取りやめの届出書の提出(又は税務当局からの取消処分)がない限り有効ですので、その承認が有効とされる間は、引き続き改正前の要件で保存等を行う必要があります。したがって、承認を受けていた事業者が2022年1月1日以後に備付けを開始する帳簿について、改正後の要件に従って電子帳簿保存を行う場合には、承認の取りやめの届出書を提出する等、承認を取りやめる一定の手続が必要となります。

最低限の要件を満たす電子帳簿の電子データによる保存

  • この改正は、2022年1月1日以後に備付けを開始する国税関係帳簿について適用されます。

今回の改正により、電帳法上認められる電子帳簿が優良な電子帳簿(以下「優良電子帳簿」といいます。)とそれ以外の電子帳簿(以下「一般電子帳簿」といいます。)の2つに区分され、一般電子帳簿については、改正前に必要とされていた要件のうちいくつかが削られたことから、電子帳簿保存において最低限必要とされる要件は、改正前に比べ大幅に緩和されました。(電帳法規則2条)

一般電子帳簿としてであれば、正規の簿記の原則(一般的には複式簿記)に従って記録されたもののうち、下表「電子帳簿の保存要件の概要」の“その他”の要件のみを満たしていれば電磁的保存が認められます。

※1 保存義務者が、税務職員による質問検査権に基づく電磁的記録のダウンロードの求めに応じることができるようにしている場合には、検索要件のうち②③の要件が不要となります(後述のスキャナ保存及び電子取引についても同様です。)。

※2 “優良”の要件を全て満たしているときは、ダウンロード要件は不要となります。

 「国税庁ウェブサイト「電子帳簿保存法が改正されました」

優良電子帳簿に係る過少申告加算税の軽減措置

  •  この改正は、2022年1月1日以後に法定申告期限が到来する国税について適用されます。

一般電子帳簿を認めることにより、電子帳簿保存のために最低限必要な要件を緩和する一方、一般電子帳簿要件に加えいくつかの保存要件を満たした電子帳簿については優良な電子帳簿とされ、これに対する過少申告加算税の軽減措置が設けられました。(電帳法8条4項)

(電帳法)
(他の国税に関する法律の規定の適用)
第8条
1~3(略)
4 次に掲げる国税関係帳簿であって財務省令で定めるものに係る電磁的記録の備付け及び保存又は当該電磁的記録の備付け及び当該電磁的記録の電子計算機出力マイクロフィルムによる保存が、国税の納税義務の適正な履行に資するものとして財務省令で定める要件を満たしている場合における当該電磁的記録又は当該電子計算機出力マイクロフィルム(政令で定める日以後引き続き当該要件を満たしてこれらの備付け及び保存が行われているものに限る。以下この項において同じ。)に記録された事項に関し国税通則法第19条第3項(修正申告)に規定する修正申告書(次項において「修正申告書」という。)の提出又は同法第24条(更正)若しくは第26条(再更正)の規定による更正(次項において「更正」という。)(以下この項において「修正申告等」という。)があった場合において、同法第65条(過少申告加算税)の規定の適用があるときは、同条の過少申告加算税の額は、同条の規定にかかわらず、同条の規定により計算した金額から当該過少申告加算税の額の計算の基礎となるべき税額(その税額の計算の基礎となるべき事実で当該修正申告等の基因となる当該電磁的記録又は当該電子計算機出力マイクロフィルムに記録された事項に係るもの以外のもの(以下この項において「電磁的記録等に記録された事項に係るもの以外の事実」という。)があるときは、当該電磁的記録等に記録された事項に係るもの以外の事実に基づく税額として政令で定めるところにより計算した金額を控除した税額)に100分の5の割合を乗じて計算した金額を控除した金額とする。ただし、その税額の計算の基礎となるべき事実で隠蔽し、又は仮装されたものがあるときは、この限りでない。
(1) 第4条第1項の規定により国税関係帳簿に係る電磁的記録の備付け及び保存をもって当該国税関係帳簿の備付け及び保存に代えている保存義務者の当該国税関係帳簿
(2) 第5条第1項又は第3項の規定により国税関係帳簿に係る電磁的記録の備付け及び当該電磁的記録の電子計算機出力マイクロフィルムによる保存をもって当該国税関係帳簿の備付け及び保存に代えている保存義務者の当該国税関係帳簿

「電子帳簿保存法」– e-Gov法令検索 – 電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ

この措置は、一定の国税関係帳簿(注1)について優良な電子帳簿の要件を満たして電子データによる備付け及び保存を行っている保存義務者については、その国税関係帳簿(優良な電子帳簿)に記録された事項に関し申告漏れがあった場合に課される過少申告加算税が5%軽減されるというものです。

(注1)一定の国税関係帳簿とは、所得税法・法人税法に基づき青色申告者(青色申告法人)が保存しなければならないこととされる総勘定元帳、仕訳帳その他必要な帳簿(売掛帳や固定資産台帳等)又は消費税法に基づき事業者が保存しなければならないこととされている帳簿をいいます。

過少申告加算税の軽減措置を受けるためには、あらかじめ、所轄税務署長に届出書を提出する必要があります。また、申告漏れについて、隠蔽し、又は仮装された事実がある場合には、この措置の適用はありません。

優良な電子帳簿の要件は、旧電帳法において電子帳簿保存要件として定められていたものとほぼ同等ですが、検索要件で求められる検索項目が一部緩和されています。
※ 詳しくは、上の表に記載した「電子帳簿の保存要件の概要」をご確認ください。

改正前に税務署長の承認を受けて電子帳簿保存等していた場合、優良電子帳簿の要件を満たすため、過少申告加算税軽減の対象となりえます。ただし適用を受けるためには届出書の提出が必要です。

スキャナ保存についての改正

スキャナ保存についての改正ポイントは、以下の4つです。

・ 税務署長の事前承認制度の廃止
・ タイムスタンプ要件、検索要件等の緩和
・ 適正事務処理要件の廃止
・ 重加算税の加重措置の整備

税務署長の事前承認制度の廃止

  •  この改正は、2022年1月1日以後に行うスキャナ保存について適用されます。

スキャナ保存についても電子帳簿等保存と同様に税務署長の事前承認が必要でしたが(旧電帳法4条3項、6条)、今回の改正により廃止されました。

(旧電帳法)
(国税関係帳簿書類の電磁的記録による保存等)
第4条
1~2(略)
3 前項に規定するもののほか、保存義務者は、国税関係書類(財務省令で定めるものを除く。)の全部又は一部について、当該国税関係書類に記載されている事項を財務省令で定める装置により電磁的記録に記録する場合であって、所轄税務署長等の承認を受けたときは、財務省令で定めるところにより、当該承認を受けた国税関係書類に係る電磁的記録の保存をもって当該承認を受けた国税関係書類の保存に代えることができる。

引用元│ 「電子帳簿保存法」– e-Gov法令検索 – 電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ

(電帳法)
(国税関係帳簿書類の電磁的記録による保存等)
第3条
1~2(略)
3 前項に規定するもののほか、保存義務者は、国税関係書類(財務省令で定めるものを除く。以下この項において同じ。)の全部又は一部について、当該国税関係書類に記載されている事項を財務省令で定める装置により電磁的記録に記録する場合には、財務省令で定めるところにより、当該国税関係書類に係る電磁的記録の保存をもって当該国税関係書類の保存に代えることができる。この場合において、当該国税関係書類に係る電磁的記録の保存が当該財務省令で定めるところに従って行われていないとき(当該国税関係書類の保存が行われている場合を除く。)は、当該保存義務者は、当該電磁的記録を保存すべき期間その他の財務省令で定める要件を満たして当該電磁的記録を保存しなければならない。
※下線部は主な改正点

 「電子帳簿保存法」– e-Gov法令検索 – 電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ

なお、改正までに行われた税務署長の承認は、電子帳簿等保存と同様、施行日(2022年1月1日)以後についても引き続き有効であり、取りやめの届出書を提出する(又は税務当局から取消処分を受ける)までは、引き続き改正前の要件でスキャナ保存を行う必要があります。したがって、承認を受けていた事業者が施行日以降緩和された要件の下で保存を行う場合には、承認の取りやめの届出書の提出等の承認を取りやめる一定の手続が必要となります。

タイムスタンプ要件、検索要件等の緩和

  •  この改正は、2022年1月1日以後に行うスキャナ保存について適用されます。

タイムスタンプ要件、検索要件等について、電帳法規則が次のとおりに改正され、要件が緩和されました。ハイライト部分が主な改正点にかかわる部分です。

(旧電帳法規則)
(国税関係帳簿書類の電磁的記録による保存等)
第3条
第4条第1項の承認を受けている保存義務者は、次に掲げる要件に従って当該承認を受けている国税関係帳簿に係る電磁的記録の備付け及び保存をしなければならない。
①~④(略)
⑤当該国税関係帳簿に係る電磁的記録の記録事項の検索をすることができる機能(次に掲げる要件を満たすものに限る。)を確保しておくこと。
イ 取引年月日、勘定科目、取引金額その他の国税関係帳簿の種類に応じた主要な記録項目(以下この号において「記録項目」という。)を検索の条件として設定することができること。
ロ 日付又は金額に係る記録項目については、その範囲を指定して条件を設定することができること。
ハ 二以上の任意の記録項目を組み合わせて条件を設定することができること。
2~4(略)
5 法第4条第3項の承認を受けている保存義務者は、次に掲げる要件に従って当該承認を受けている国税関係書類に係る電磁的記録の保存をしなければならない。
①(略)
②前号の入力に当たっては、次に掲げる要件を満たす電子計算機処理システムを使用すること。
イ スキャナ(次に掲げる要件を満たすものに限る。)を使用する電子計算機処理システムであること。
(1)(2)(略)
ロ 当該国税関係書類をスキャナで読み取る際に(当該国税関係書類の作成又は受領をする者が当該国税関係書類をスキャナで読み取る場合にあっては、その作成又は受領後その者が署名した当該国税関係書類について特に速やかに)、一の入力単位ごとの電磁的記録の記録事項に一般財団法人日本データ通信協会が認定する業務に係るタイムスタンプ(次に掲げる要件を満たすものに限る。第8条第1項第1号及び第2号において「タイムスタンプ」という。)を付すこと。
(1) 当該記録事項が変更されていないことについて、当該国税関係書類の保存期間(国税に関する法律の規定により国税関係書類の保存をしなければならないこととされている期間をいう。)を通じ、当該業務を行う者に対して確認する方法その他の方法により確認することができること。
(2) 課税期間(国税通則法(昭和37年法律第66号)第2条第9号(定義)に規定する課税期間をいう。)中の任意の期間を指定し、当該期間内に付したタイムスタンプについて、一括して検証することができること。
ハ 当該国税関係書類をスキャナで読み取った際の次に掲げる情報(当該国税関係書類の作成又は受領をする者が当該国税関係書類をスキャナで読み取る場合において、当該国税関係書類の大きさが日本産業規格A列四番以下であるときは、(1)に掲げる情報に限る。)を保存すること。
(1)(2)(略)
ニ 当該国税関係書類に係る電磁的記録の記録事項について訂正又は削除を行った場合には、これらの事実及び内容を確認することができること。
③ 当該国税関係書類に係る記録事項の入力を行う者又はその者を直接監督する者に関する情報を確認することができるようにしておくこと。
④ 当該国税関係書類の作成又は受領から当該国税関係書類に係る記録事項の入力までの各事務について、その適正な実施を確保するために必要なものとして次に掲げる事項(当該保存義務者が中小企業基本法(昭和38年法律第154号)第2条第5項(中小企業者の範囲及び用語の定義)に規定する小規模企業者である場合であって、ロに規定する定期的な検査を国税通則法第74条の9第3項第3号(納税義務者に対する調査の事前通知等)に規定する税務代理人が行うこととしているときは、イに掲げる事項を除く。)に関する規程を定めるとともに、これに基づき当該各事務を処理すること。
イ 相互に関連する当該各事務(当該国税関係書類の作成又は受領をする者が当該国税関係書類をスキャナで読み取る場合にあっては、その作成又は受領に関する事務を除き、当該国税関係書類に係る電磁的記録の記録事項の確認を行う事務を含むものに限る。)について、それぞれ別の者が行う体制
ロ 当該各事務に係る処理の内容を確認するための定期的な検査を行う体制及び手続
ハ 当該各事務に係る処理に不備があると認められた場合において、その報告、原因究明及び改善のための方策の検討を行う体制

⑤~⑦(略)
6~8(略)

引用元│ 「電子帳簿保存法施行規則」– e-Gov法令検索 – 電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ

(電帳法規則)
(国税関係帳簿書類の電磁的記録による保存等)
第2条
1~5(略)
6 法第4条第3項の規定により国税関係書類(同項に規定する国税関係書類に限る。以下この条において同じ。)に係る電磁的記録の保存をもって当該国税関係書類の保存に代えようとする保存義務者は、次に掲げる要件(当該保存義務者が国税に関する法律の規定による当該電磁的記録の提示又は提出の要求に応じることができるようにしている場合には、第6号(ロ及びハに係る部分に限る。)に掲げる要件を除く。)に従って当該電磁的記録の保存をしなければならない。
①(略)
② 前号の入力に当たっては、次に掲げる要件(当該保存義務者が同号イ又はロに掲げる方法により当該国税関係書類に係る記録事項を入力したことを確認することができる場合にあっては、ロに掲げる要件を除く。)を満たす電子計算機処理システムを使用すること。
イ スキャナ(次に掲げる要件を満たすものに限る。)を使用する電子計算機処理システムであること。
(1)(2)(略)
ロ 当該国税関係書類の作成又は受領後、速やかに一の入力単位ごとの電磁的記録の記録事項に一般財団法人日本データ通信協会が認定する業務に係るタイムスタンプ(次に掲げる要件を満たすものに限る。以下この号並びに第4条第1項第1号及び第2号において「タイムスタンプ」という。)を付すこと(当該国税関係書類の作成又は受領から当該タイムスタンプを付すまでの各事務の処理に関する規程を定めている場合にあっては、その業務の処理に係る通常の期間を経過した後、速やかに当該記録事項に当該タイムスタンプを付すこと)。
(1) 当該記録事項が変更されていないことについて、当該国税関係書類の保存期間(国税に関する法律の規定により国税関係書類の保存をしなければならないこととされている期間をいう。)を通じ、当該業務を行う者に対して確認する方法その他の方法により確認することができること。
(2) 課税期間(国税通則法第2条第9号(定義)に規定する課税期間をいう。第5条第2項において同じ。)中の任意の期間を指定し、当該期間内に付したタイムスタンプについて、一括して検証することができること。
ハ 当該国税関係書類をスキャナで読み取った際の次に掲げる情報(当該国税関係書類の作成又は受領をする者が当該国税関係書類をスキャナで読み取る場合において、当該国税関係書類の大きさが日本産業規格A列四番以下であるときは、(1)に掲げる情報に限る。)を保存すること。
(1)(2)(略)
ニ 当該国税関係書類に係る電磁的記録の記録事項について、次に掲げる要件のいずれかを満たす電子計算機処理システムであること。
(1) 当該国税関係書類に係る電磁的記録の記録事項について訂正又は削除を行った場合には、これらの事実及び内容を確認することができること。
(2) 当該国税関係書類に係る電磁的記録の記録事項について訂正又は削除を行うことができないこと。
③当該国税関係書類に係る記録事項の入力を行う者又はその者を直接監督する者に関する情報を確認することができるようにしておくこと。
④~⑤(略)
⑥ 当該国税関係書類に係る電磁的記録の記録事項の検索をすることができる機能(次に掲げる要件を満たすものに限る。)を確保しておくこと。
イ 取引年月日その他の日付、取引金額及び取引先(ロ及びハにおいて「記録項目」という。)を検索の条件として設定することができること。
ロ 日付又は金額に係る記録項目については、その範囲を指定して条件を設定することができること。
ハ 2以上の任意の記録項目を組み合わせて条件を設定することができること。
⑦(略)
7~12(略)
※下線部は主な改正点

「電子帳簿保存法施行規則」– e-Gov法令検索 – 電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ

主な改正点は以下のとおりです。

①受領者等がスキャナで読み取る際の国税関係書類への自署が不要とされました。(電帳法規則2条6項2号ロ)

②受領者本人がタイムスタンプの付与を行う場合の付与期間について、改正前は「特に速やかに」との文言が使用され、おおむね3営業日以内と解されていました。今回の改正により、「速やかに」「当該国税関係書類の作成又は受領から当該タイムスタンプを付すまでの各事務の処理に関する規程を定めている場合にあっては、その業務の処理に係る通常の期間を経過した後、速やかに」との文言に改正され、具体的な付与期間としては最長約2か月と概ね7営業日以内に延長されました。(電帳法規則2条6項2号ロ、電帳法通達4-17、同4-18。なお、付与期間を2か月と概ね7営業日以内とするためには、国税関係書類の作成又は受領から当該タイムスタンプを付すまでの各事務の処理に関する規程を定めておく必要があります。)

③電子データについて訂正又は削除を行った場合に、これらの事実及び内容を確認することができるクラウド等において、入力期間内(最長2か月と概ね7営業日以内)にその電子データの保存を行ったことを確認することができるときは、タイムスタンプの付与に代えることができることとされました。(電帳法規則2条6項2号)

④スキャナ保存が認められるための「検索要件」の記録項目が削減され、取引年月日その他の日付、取引金額及び取引先に限定されました(電帳法規則2条6項6号イ)。また税務職員による質問検査権に基づく電子データのダウンロードの求めに応じる場合には、範囲指定及び項目を組み合わせて検索条件を設定できる機能の確保(上記「電子帳簿の保存要件の概要」中の電子帳簿の検索要件②及び③に相当する要件)が不要となりました。(電帳法規則2条6項)

適正事務処理要件の廃止

  •  この改正は、2022年1月1日以後に行うスキャナ保存について適用されます。

適正事務処理要件とは、相互けん制、定期的な検査及び再発防止策の社内規程整備等のことをいいます(旧電帳法規則第3条5項4号)。

従来の適正事務処理要件を満たすためには、複数人が関与する体制の構築が必要で、定期検査実施のために必要な紙原本の保存期間が長くなるなどの事情があってスキャナ保存利用の障害となっていました。

今回の改正により、この要件は廃止されることとなりました。

重加算税の加重措置の整備

  •  この改正は、2022年1月1日以後に法定申告期限等が到来する国税について適用されます。

上記のようにスキャナ保存に必要な要件が緩和され、導入しやすい形とする代わりに、適正な保存を担保するための措置として、スキャナ保存が行われた国税関係書類に係る電子データに関して、隠蔽し、又は仮装された事実があった場合には、その事実に関し生じた申告漏れ等に課される重加算税が10%加重される措置が整備されました。(電帳法8条5項)

(電帳法)
(他の国税に関する法律の規定の適用)
第8条
1~4(略)
5 第4条第3項前段に規定する財務省令で定めるところに従って保存が行われている同項に規定する国税関係書類に係る電磁的記録若しくは同項後段の規定により保存が行われている当該電磁的記録又は前条の保存義務者により行われた電子取引の取引情報に係る電磁的記録に記録された事項に関し国税通則法第18条第2項(期限後申告)に規定する期限後申告書若しくは修正申告書の提出、更正若しくは同法第25条(決定)の規定による決定又は納税の告知(同法第36条第1項(第2号に係る部分に限る。)(納税の告知)の規定による納税の告知をいう。以下この項において同じ。)若しくは納税の告知を受けることなくされた納付(以下この項において「期限後申告等」という。)があった場合において、同法第68条第1項から第3項まで(重加算税)の規定に該当するときは、同条第1項から第3項までの重加算税の額は、これらの規定にかかわらず、これらの規定により計算した金額に、これらの規定に規定する基礎となるべき税額(その税額の計算の基礎となるべき事実で当該期限後申告等の基因となるこれらの電磁的記録に記録された事項に係るもの(隠蔽し、又は仮装された事実に係るものに限る。以下この項において「電磁的記録に記録された事項に係る事実」という。)以外のものがあるときは、当該電磁的記録に記録された事項に係る事実に基づく税額として政令で定めるところにより計算した金額に限る。)に100分の10の割合を乗じて計算した金額を加算した金額とする。

「電子帳簿保存法」– e-Gov法令検索 – 電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ

電子取引の電子保存についての改正

電子取引の電子保存についての改正ポイントは、以下の3つです。

・タイムスタンプ要件、検索要件の緩和
・電子取引の取引情報の保存方法について、紙への出力による保存の方式の廃止
・重加算税の加重措置の整備

タイムスタンプ要件及び検索要件の緩和

  •  この改正は、2022年1月1日以後行う電子取引について適用されます。

タイムスタンプ要件に係るタイムスタンプの付与期間及び検索要件に係る検索項目について、スキャン保存と同様、以下の改正が行われました。

(旧電帳法規則)
(電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存)
第8条 法第10条に規定する保存義務者は、電子取引を行った場合には、次項又は第3項に定めるところにより同条ただし書の書面又は電子計算機出力マイクロフィルムを保存する場合を除き、当該電子取引の取引情報(法第2条第6号に規定する取引情報をいう。)に係る電磁的記録を、当該取引情報の受領が書面により行われたとした場合又は当該取引情報の送付が書面により行われその写しが作成されたとした場合に、国税に関する法律の規定により、当該書面を保存すべきこととなる場所に、当該書面を保存すべきこととなる期間、次に掲げる措置のいずれかを行い、第3条第1項第4号並びに同条第5項第7号において準用する同条第1項第3号(同号イに係る部分に限る。)及び第5号に掲げる要件に従って保存しなければならない。
①当該電磁的記録の記録事項にタイムスタンプが付された後、当該取引情報の授受を行うこと。
②当該取引情報の授受後遅滞なく、当該電磁的記録の記録事項にタイムスタンプを付すとともに、当該電磁的記録の保存を行う者又はその者を直接監督する者に関する情報を確認することができるようにしておくこと。
③~④(略)
2~3(略)

引用元│ 「電子帳簿保存法施行規則」– e-Gov法令検索 – 電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ

(電帳法規則)
(電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存)
第4条 法第7条に規定する保存義務者は、電子取引を行った場合には、当該電子取引の取引情報(法第2条第5号に規定する取引情報をいう。以下この項及び第3項において同じ。)に係る電磁的記録を、当該取引情報の受領が書面により行われたとした場合又は当該取引情報の送付が書面により行われその写しが作成されたとした場合に、国税に関する法律の規定により、当該書面を保存すべきこととなる場所に、当該書面を保存すべきこととなる期間、次に掲げる措置のいずれかを行い、第2条第2項第2号及び第6項第6号並びに同項第7号において準用する同条第2項第1号(同号イに係る部分に限る。)に掲げる要件(当該保存義務者が国税に関する法律の規定による当該電磁的記録の提示又は提出の要求に応じることができるようにしている場合には、同条第6項第6号(ロ及びハに係る部分に限る。)に掲げる要件(当該保存義務者が、その判定期間に係る基準期間における売上高が千万円以下である事業者である場合であって、当該要求に応じることができるようにしているときは、同号に掲げる要件)を除く。)に従って保存しなければならない。
①当該電磁的記録の記録事項にタイムスタンプが付された後、当該取引情報の授受を行うこと。
②次に掲げる方法のいずれかにより、当該電磁的記録の記録事項にタイムスタンプを付すとともに、当該電磁的記録の保存を行う者又はその者を直接監督する者に関する情報を確認することができるようにしておくこと。
イ 当該電磁的記録の記録事項にタイムスタンプを付すことを当該取引情報の授受後、速やかに行うこと。
ロ 当該電磁的記録の記録事項にタイムスタンプを付すことをその業務の処理に係る通常の期間を経過した後、速やかに行うこと(当該取引情報の授受から当該記録事項にタイムスタンプを付すまでの各事務の処理に関する規程を定めている場合に限る。)。
③~④(略)
2~3(略)
※下線部は主な改正点

「電子帳簿保存法施行規則」– e-Gov法令検索 – 電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ

① 受領者がタイムスタンプの付与を行う場合の付与期間について、改正前は「遅滞なく」とされていました。
このたび「速やかに」「その業務の処理に係る通常の期間を経過した後、速やかに」との文言に改正され、付与期間が最長約2か月と概ね7営業日以内へ延長されました。(旧電帳法規則8条1項2号、電帳法規則4条1項2号、電帳法通達4-17、4-18。なお、付与期間を2か月と7営業日とするためには、取引情報の授受から当該記録事項にタイムスタンプを付すまでの各事務の処理に関する規程を定めておく必要があります。)

② 電子取引の保存要件の1つである「検索要件」の記録項目も、スキャナ保存と同様に削減されました。取引年月日その他の日付、取引金額及び取引先に限定されるとともに(電帳法規則4条1項、2条6項6号イ)、税務職員による質問検査権に基づく電子データのダウンロードの求めに応じる場合には、範囲指定及び項目を組み合わせて条件を設定できる機能の確保(上記「電子帳簿の保存要件の概要」中の電子帳簿の検索要件②及び③に相当する要件)が不要となりました(電帳法規則4条1項)。

また、基準期間の売上高が1,000万円以下である事業者(小規模な事業者)の場合、税務職員による質問検査権に基づく電子データのダウンロードの求めに応じることができるようにしていれば検索要件の全てが不要とされました。(電帳法規則4条1項)
なお、「基準期間」とは、個人事業者については電子取引が行われた日の属する年の前々年の1月1日から12月31日までの期間をいい、法人については電子取引が行われた日の属する事業年度の前々事業年度をいいます。(電帳法規則4条2項)

今回の改正の結果、電子取引の電子保存において必要とされる要件は、おおまかに以下のとおりとなります。

電子取引の保存要件 ※太字の部分が、今回の改正により変更があった箇所

<真実性の要件>
以下の措置のいずれかを行うこと
① タイムスタンプが付された後、取引情報の授受を行う
② 取引情報の授受後、速やかに(又はその業務の処理に係る通常の期間を経過した後、速やかに)タイムスタンプを付すとともに、保存を行う者又は監督者に関する情報を確認できるようにしておく
③ 記録事項の訂正・削除を行った場合に、これらの事実及び内容を確認できるシステム又は記録事項の訂正・削除を行うことができないシステムで取引情報の授受及び保存を行う
④ 正当な理由がない訂正・削除の防止に関する事務処理規程を定め、その規定に沿った運用を行う

<可視性の要件>
・保存場所に、電子計算機(パソコン等)、プログラム、ディスプレイ、プリンタ及びこれらの操作マニュアルを備え付け、画面・書面に整然とした形式及び明瞭な状態で速やかに出力できるようにしておくこと
・電子計算機処理システムの概要書を備え付けること
・検索機能※を確保すること

※ 帳簿の検索要件①~③に相当する要件(ダウンロードの求めに応じることができるようにしている場合には②③不要)
  保存義務者が小規模な事業者でダウンロードの求めに応じることができるようにしている場合には、検索機能不要

引用元│ 国税庁ウェブサイト「電子帳簿保存法が改正されました」

電子取引の取引情報の保存方法について、紙への出力による保存の方式の廃止

  • この改正は、2022年1月1日以後行う電子取引について適用されます。

申告所得税及び法人税関連については、改正前においては、電子取引の取引情報の保存方法について、紙へ出力し、出力した書面を保存する方式が認められていましたが、その方式は廃止されました。

(旧電帳法)
(電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存)
第10条 所得税(源泉徴収に係る所得税を除く。)及び法人税に係る保存義務者は、電子取引を行った場合には、財務省令で定めるところにより、当該電子取引の取引情報に係る電磁的記録を保存しなければならない。ただし、財務省令で定めるところにより、当該電磁的記録を出力することにより作成した書面又は電子計算機出力マイクロフィルムを保存する場合は、この限りでない

引用元│ 「電子帳簿保存法」– e-Gov法令検索 – 電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ

(電帳法)
(電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存)
第7条 所得税(源泉徴収に係る所得税を除く。)及び法人税に係る保存義務者は、電子取引を行った場合には、財務省令で定めるところにより、当該電子取引の取引情報に係る電磁的記録を保存しなければならない。
※下線部は主な改正点

「電子帳簿保存法」– e-Gov法令検索 – 電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ

これは、出力に際し、人の手が介在することにより不正が生じるリスクを防止するためのものと考えられます。

この改正に従い、電子取引の取引情報を紙に出力して保存をしている事業者は電子取引データの保存要件を満たすための対応をしなければなりません。(なお、消費税関連については、引き続き出力書面による保存が可能です。)

請求書や領収書等を電子メールによりやり取りし、紙に印刷の上保存していたような場合、自社の体制が今回の改正後の法要件を満たしているか、確認したほうがよいでしょう。

重加算税の加重措置の整備

  • この改正は、2022年1月1日以後に法定申告期限が到来する国税について適用されます。

電子取引の取引情報に関して、隠蔽し、又は仮装された事実があった場合には、スキャン保存の場合と同様、その事実に関し生じた申告漏れ等に課される重加算税が10%加重される措置が整備されました。(電帳法8条5項)

改正後の帳簿書類保存方法まとめ

電帳法の規定に従うと、企業が取り扱う帳簿書類の保存方法は、「紙又は電子データで保存する」場合と、「電子データによる保存のみが認められる」場合の2通りに分かれます。

各帳簿書類がどちらのパターンに属するのか、具体例を挙げてまとめました。

紙又は電子データで保存する帳簿書類

紙・電子データのどちらで保存してもよいとされる帳簿書類の例は、以下のとおりです。

紙・電子データのどちらで保存してもよい帳簿書類

✅ 国税関係帳簿
(例)仕訳帳、総勘定元帳、補助元帳、売上台帳、現金出納帳、買掛金元帳など
✅ 決算関係書類(紙ベースで作成等したものに限る)
(例)貸借対照表、損益計算書、棚卸表など
✅ 取引関係書類(紙ベースで締結・受領等したものに限る)
(例)契約書、納品書、請求書、領収書、見積書、注文書、送り状など

事業者が自分で作成する帳簿書類(国税関係帳簿・決算関係書類)や、紙ベースで行われる取引に関する書類は、紙・電子データのどちらで保存しても構いません。

なお前述のとおり、電子データによる保存を行う場合における税務署の事前承認制は、今回の改正によって廃止されました。したがって、事業者の判断により、紙・電子データのいずれかから自由に保存方法を選択することができます。

電子データによる保存のみが認められる帳簿書類

電子データによる保存のみが認められる帳簿書類の例は、以下のとおりです。

電子データによる保存のみが認められる帳簿書類

✅ 決算関係書類(電子データにより作成等したものに限る)
(例)貸借対照表、損益計算書、棚卸表など
✅ 取引関係書類(電子データにより締結・受領等したものに限る)
(例)契約書、納品書、請求書、領収書、見積書、注文書、送り状など

なお、電帳法において、「電子取引」は以下のとおり定義されています。

(定義)
第2条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
(1)~(4)略
(5) 電子取引 取引情報(取引に関して受領し、又は交付する注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類に通常記載される事項をいう。以下同じ。)の授受を電磁的方式により行う取引をいう。

 「電子帳簿保存法」– e-Gov法令検索 – 電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ

オンライン上で行われる取引に関する書類は、すべて電子データによる保存のみが認められ、紙媒体による印刷保存は認められない点に注意しましょう。

ただし冒頭で紹介したように、2022年1月1日から2023年12月31日までの2年間については、電子データによる保存義務の宥恕措置が設けられています。電子データによる保存体制をすぐに整えられない事業者は、2年間の宥恕措置期間中に、電子データ保存のシステム導入などを進めましょう。

実務への影響

今回の改正により、電子帳簿等の保存方法についての要件が大幅に緩和され、電子帳簿等保存制度を導入しやすくなった一方、電子取引情報の紙による保存が一部認められなくなるなど、経済社会における「紙離れ」をさらに促進させることが予想されます。在宅ワークの普及も一因となり、実務上もデジタル化が求められていることから、ペーパーレス化の波は、今後も引き続き進んでいくでしょう。

今回の電帳法改正を契機に、自社の業務フローにおけるデジタル化、ペーパーレス化の現状を再確認し、今後のペーパーレス化に対応できるような体制の導入を検討していく必要があります。

参考文献

内閣府「令和4年度税制改正の大綱」

財務省「令和3年度税制改正の大綱」(令和2年12月21日閣議決定)

財務省 令和3年度 税制改正の解説「令和3年度税制改正について」

国税庁ウェブサイト「電子帳簿保存法が改正されました」

国税庁「電子帳簿保存法取扱通達」(令和3年7月9日改正)

国税庁「電子帳簿保存法取扱通達解説(趣旨説明)」(令和3年7月9日)

国税庁ウェブサイト「電子帳簿保存法Q&A(一問一答)~令和4年1月1日以後に保存等を開始する方~」

税理士法人山田&パートナーズ/山田&パートナーズアカウンティング(株)編著 『改正電子帳簿保存法ハンドブック」大蔵財務協会』