e-文書法とは?
電子帳簿保存法との違いや
保存のための要件を分かりやすく解説!

この記事のまとめ

e-文書法とは、民間分野において法律によって保存が義務付けられている様々な文書に対して、電子文書による保存を容認し、書面の保存等に係る負担の軽減等を通じて国民の利便性の向上を図ることを目的とする法律です。

「e-文書法」は通称であり、正式には、2005年4月に施行された「民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律」と「民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」の2つの法律を指します。

この記事では「e-文書法」について、電子帳簿保存法との違い、制定経緯、適用範囲、要件などを解説します。

電子帳簿保存法はよく耳にしますが、e-文書法はあまり聞いたことがありませんね。

電子帳簿保存法は2022年に大きな改正があったので、よくニュースにもなっていましたね。e-文書法も、“書面の電子保存を認める”という点では電子帳簿保存法と似ていますが、異なる点も当然あります。この記事で違いを勉強していきましょう!

※この記事では、法令名を次のように記載しています。

  • e-文書法…民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律及び民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律の2つの法律
  • 通則法…民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律
  • 整備法…民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律
  • 電帳法…電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律
  • 電帳法規則…2020年10月施行後の電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律施行規則

(※この記事は、2022年4月4日時点の法令等に基づいて作成されています。)

e-文書法とは?

e-文書法全体の概要

「e-文書法」は、法令により民間に義務付けられている書面の保存について、紙に代えて、原則すべて電磁的記録による保存(紙の文書をスキャナで読み取りイメージ化して保存することも含む)を容認する法律です。

「e-文書法」は通称であり、正式には、2005年4月に施行された「民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律」(以下「通則法」)と「民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」(以下「整備法」)の2つの法律を指し、本記事でも、通則法と整備法の2つの法律をあわせて「e-文書法」と表記します。

通則法は、電子保存の容認に関する一般的なルールを定めています。整備法は、通則法のみではカバーしきれない場合等について、個別法の一部改正によりルールの整備を行っています。

e-文書法制定の経緯

1980年代から1990年代にかけて、我が国でもインターネットが誕生し、パソコンの普及とともに爆発的に広まりました。これらの流れを受け、1990年代後半、企業や団体における国税関係帳簿書類の電子化が認められ、その保管方法を定めた電帳法という法律によって、税務関連帳簿の電子化が促進されてきました。

2000年には、政府が5年以内に日本を世界最先端のIT国家にするとして「e-Japan構想」を掲げ、様々な分野について電子化が進められました。

例えば、書面の交付等に関する情報通信の技術の利用のための関係法律の整備に関する法律(IT書面一括法)ではこれまで書面で交付等を行わなければならなかったものについて、電磁的記録で行うことが可能になりました。

また、商法改正により、従来紙での保存が義務付けられている貸借対照表や損益計算書等の書類について、はじめから電磁的記録で作成した場合に限り電磁的記録による保存が容認されました。さらに、株主総会における議決権行使等も、電磁的記録を活用して行えるようになりました。

しかし、これらの改正によっても、一定の書類については「紙」で保存することが義務付けられているものや、はじめに「紙」で作成したものについてスキャナで読み込み電磁的記録として保存することはできない等の問題がありました。

このように、法令で義務付けられている紙での保存が、民間の効率的な企業活動の阻害要因となっているとして、日本経団連をはじめとする民間企業等から政府に対して、早期に電子保存を可能とするよう数度にわたり強い要望がなされました。また、技術的にも情報通信技術の進展により、紙での保存に代えて、電子的に保存することが基本的に可能となっていました。

そこで、政府は更なる電子化を進めるべく検討を進め、2004年、法令により紙での保存を義務付けられているものについて、電磁的記録による保存等を行うことを原則的に容認する法律すなわちe-文書法の立案方針を策定し、同法が成立するに至りました。

電子帳簿保存法(電帳法)とe-文書法の違い

ここでは、電帳法とe-文書法の違いを解説します。

対象とする文書の違い

電帳法は、財務省と国税庁が管轄する法律に関する文書の電子保存に関するルールを定める法律です。総勘定元帳や仕訳帳といった帳簿類、貸借対照表や損益計算書などの決算関係の書類、納品書や請求書といった取引関係の書類に加え、電子契約などの電子取引で授受した書類について保存要件を定めています。

他方で、e-文書法は、会社法や商法などに基づき、民間企業において保存義務のある法定文書が対象となります。具体的には、各種帳簿類、議事録、注文書、見積書、契約申込書、報告書、名簿、個人情報、各種記録文書、領収書等多岐にわたります。

※e-文書法の対象文書の詳細については後述の「e-文書法により、文書を電子保存するための要件」を参照ください。

対象とする文書の違い
電帳法財務省と国税庁が管轄する法律に関する国税関係文書が対象。
e-文書法民間企業において保存義務のある法定文書が対象。

税務署長による承認の要否

電帳法では、これまで電子的に作成した国税関係帳簿書類を電磁的記録による保存をする際は、事前に税務署長から承認を受ける必要がありました。

しかし、2021年の電子帳簿保存法改正により、2022年4月1日以後に保存する国税関係の電子帳簿保存やスキャナ保存について、税務署長の事前承認が不要となりました。(参考|国税庁「電子帳簿保存法が改正されました(令和3年12月改訂)」

電子帳簿保存法改正については、以下の関連記事で解説しています。

e-文書法に基づいて文書を電子化する場合には、電子化の申請や税務署長の承認などは不要です。

電磁的記録による保存について税務署長の事前承認の要否
電帳法必要。
ただし、電帳法改正により2022年4月1日から施行される電帳法改正により不要になる。
e-文書法不要。

文書保存のための要件の違い

電帳法は、大きく以下の2つの制度を定めた法令です。

  1. 税法上紙での保存が義務付けられている国税関係帳簿書類を、電子データで保存・スキャン保存する際のルールを定める制度(「電子帳簿等保存」「スキャナ保存」)
  2. 電子取引のデータについて、保存義務や保存方法等を定める制度(電子取引に関する文書等電子保存)

電子帳簿等保存・スキャナ保存・電子取引に関する文書等の電子保存の各要件は、主に真実性の確保、関係書類の備付け、見読可能性の確保、検索機能の確保という観点から、電帳法規則において詳細に定められています。

電帳法の基本については、「電子帳簿保存法とは? 基本を解説!」の記事をご参照ください!

e-文書法における文書の電子保存の要件は、各府省の主務省令などによって異なりますが、おおむね①見読性、②完全性、③機密性、④検索性の4要件が共通して適用されます。もっとも、4要件すべてを満たすことが求められるわけではなく、①見読性以外は対象文書の種類によって必ず満たすべき要件とはされていません。

※e-文書法の保存要件の詳細については後述の「e-文書法により、文書を電子保存するための要件」を参照ください。

文書保存のための要件の違い
電帳法真実性の確保、関係書類の備付け、見読可能性の確保、検索機能の確保という観点から電帳法規則によって定められている。
e-文書法おおむね①見読性、②完全性、③機密性、④検索性の4要件が挙げられる。
もっとも、対象文書ごとに、保存要件が主務省令により定められており、①見読性のみ求められていることが多い。

e-文書法の対象となる法律・文書

e-文書法の電子保存が適用される法律と文書

通則法が適用される対象は、通則法2条の定義規定によりその範囲が定められています。通則法は、「民間事業者」が法令により書面(紙)で「保存等」(保存、作成、縦覧、交付等)をするよう規制されているものを原則として電子的に可能とする法律であり、これにより基本的にほぼすべての書類の電磁的記録による保存が認められます。

そのため、対象となる法律は商法、会社法、地方税法、所得税法、法人税法などの税法以外にも、銀行法、保険業法、労働基準法、学校教育法など約250本にもわたります。

もっとも、電子保存が認められる文書の範囲及び細目については各府省の主務省令に委ねられており、詳しくは内閣官房 情報通信技術(IT)総合戦略室「e-文書法によって電磁的記録による保存が可能となった規定」で確認することができます。

e-文書法が適用されない場合の例

e-文書法の適用外とされている文書についても、個別の法令ごとに文書保存の目的や電子化に際しての考慮事項が異なるという事情から、主務省令で定められています。

例えば、緊急時に即座に見ることを要する書面(例:船舶に備える安全手引書)、条約により保存が義務付けられ現に書面での保存が実施されている書面、第三者へ提示して法的地位を表すような極めて現物性が高い書面(例:免許証・許可証)などが適用外とされています。

e-文書法により、文書を電子保存するための要件

書面による保存に代えて電磁的記録による保存を行う場合は、書面と電磁的記録の性質の違い等から、各府省の主務省令において保存のための要件を定めることとなっています(通則法3条1項)。

この要件については、おおむね以下①~④に分類されていますが、②~④の要件については書面による保存と比して著しく重い要件を課すことになるため、あまり課されていません。電磁的記録を保存する際にこれらの要件を義務として課しているものは、病院のカルテや国税関係帳簿書類等に限られています。

e-文書法による文書保存のための要件

①見読性…情報を即座に読み取ることが可能であること
②完全性…改ざん・消失等の防止
③機密性…第三者による不正アクセスや情報漏えい等の防止
④検索性…大量の情報から必要な情報を効率的に選別できること

以下これらの要件について、詳しく解説します。

①見読性…情報を即座に読み取ることが可能であること

電子化された文書は、電子化された状態(データの状態)では記録された情報を視覚的に確認することができません。そのため、保存されている情報をパソコンのディスプレイに表示させる・紙に印刷をするなどして、文書の内容が必要に応じて直ちに表示できる「見読性」の確保が求められます。

また、スキャナによる保存を行う場合には、スキャナで読み込んだ電磁的記録が判読できない場合も想定されるため、書面の内容が見読可能な解像度で読み込みを行うことも求められます。

②完全性…改ざん・消失等の防止

電磁的記録による保存を行う場合には、外部からのハッキングなどにより保存している情報が滅失(無くなること)、毀損(壊れること)される可能性が高くなります。そのため、滅失、毀損、改変、消去、改ざん等を未然に防ぐとともに、かつ改ざん等の事実の有無が検証できる状態で保存されることが求められます

具体的には、保存している電磁的記録へのアクセス、修正、改ざんの記録のログなどが残るような措置を取ること、ライトワンス媒体(一度書き込んだデータの書換えや消去ができない記録媒体)に保存すること、当該文書を誰がいつ作成したかを明確にする電子署名、時刻認証(タイムスタンプ)を用いることが想定されます。

③機密性…第三者による不正アクセスや情報漏えい等の防止

本要件も、②完全性の要件と同様に電磁的記録という特性から生じるハッキング等の危険性から求められる要件です。本要件では、保存している電磁的記録にアクセスできる人間を限定して、パスワード管理を徹底するなどの運用規定を設けることが想定されます。

④検索性…大量の情報から必要な情報を効率的に選別できること

書面による保存を行う場合には、例えば帳簿などのようにある一定の決まりに従って情報を保存しているものですが、電磁的記録による保存によっても、書面による保存と同様に一定の決まりに従って情報を保存し、保存された情報を検索できるように体系化することが求められます。

各省庁のe-文書法に関連する施行規則やガイドライン

前述のとおり、e-文書法は、民間企業等に原則紙での保存が義務付けられていた文書について、電磁的記録による保存を認める法律ですが、これに関連する法律は約250本あり、e-文書法はその基本的な目的と趣旨を定めた憲法のような位置付けといえます。

したがって、電磁的記録による保存が可能となる対象の文書が何か、また、その導入要件は何かについては、各省庁が個別に発令した省令や告示、通達等を参照し確認する必要があります。
ここでは、代表的な各省庁のガイドライン等を簡単に紹介します。

国税庁

厚生労働省

文部科学省

国土交通省

建築確認手続に関連する電子申請や図書の電子保存に関する規定が定められています。

電子署名とタイムスタンプ

電子署名とタイムスタンプは、「e-文書法により、文書を電子保存するための要件」で述べた4要件のうち完全性・機密性を確保する手段として利用されます。電子署名やタイムスタンプの利用自体は、必ずしも法的に義務付けられているわけではありませんが、情報セキュリティ等の観点からも有用な仕組みであるため、今後も積極的に活用されていくことが考えられます。

電子署名の効果

電子署名とは、電子文書の本人性と内容の真正性を保証するものです。2001年4月に施行された電子署名及び認証業務に関する法律(電子署名法)により、適正に管理された電子署名が付与された電子文書については、真正な成立の推定が働くルールが制定されました(電子署名法3条)。

これにより、一定の要件を満たす電子署名を付した電磁的記録は、本人が作成し、かつ内容が改ざんされていないという主張をすることが可能となりました。

タイムスタンプの効果

タイムスタンプとは、電子データが“ある日時に存在していたこと(存在証明)”及び“その日時以降に改ざんされていないこと(非改ざん証明)”を証明できるものであり、時刻認証局によって付与されます。

このタイムスタンプを電子文書に付与することで、電子文書がタイムスタンプの付与時点で存在したことと、タイムスタンプの付与以降に内容が改ざんされていないことを証明する効果が期待できます。

この記事のまとめ

e-文書法の記事は以上です。最新の記事に関する情報は、契約ウォッチのメルマガで配信しています。ぜひ、メルマガにご登録ください!

参考文献

電子認証局会議ウェブサイト「関連法令とガイドライン」

首相官邸ウェブサイト「e-文書法の施行について」

国税庁ウェブサイト「制度創設等の背景」

国税庁ウェブサイト「電子帳簿保存法上の電子データの保存要件」

厚労省ウェブサイト「第9回医療情報ネットワーク基盤検討会 議事次第・資料e[e-文書イニシアティブについて-e-文書法の立案方針-【ポイント】]」

公益社団法人日本文書情報マネジメント協会ウェブサイト「政策提言・ガイドライン」

デジタル庁ウェブサイト「電子署名」

総務省ウェブサイト「タイムスタンプについて」

タイムビジネス推進協議会著『概説 e-文書法』NTT出版株式会社、2005年

日本文書情報マネジメント協会法務委員会編『令和元年度税制改正対応 効率とコンプライアンスを高めるe-文書法電子化早わかり』(日本文書情報マネジメント協会、2019年

日本画像情報マネジメント協会法務委員会 編『増補改訂e-文書法入門』日本画像情報マネジメント協会、2013年

ビジネス機械・情報システム産業協会著『実践e-文書法 対応システム導入の手引き』東洋経済新報社、2005年