2023年(令和5年)に
施行される法改正のまとめ!

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この記事のまとめ

2023年にも、企業法務に関連する改正法施行がいくつか予定されています。

企業の法務担当者は、自社の事業に関連する法改正について、その内容を正しく理解しておきましょう。

今回は、2023年中の施行が予定されている主な法改正の概要を解説します。

2023年は、どのような法改正があるのでしょうか。

労働基準法改正(月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が、大企業・中小企業を問わず一律「50%」へ)は、多くの企業に関係がありそうですね。他の法改正も見ていきましょう。

※この記事は、2022年12月1日時点の法令等に基づいて作成されています。
※この記事では、法令名を次のように記載しています。
・相続土地国庫帰属法…相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律
・育児・介護休業法…育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律
・個人情報保護法…個人情報の保護に関する法律
・行政機関個人情報保護法…行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律
・独立行政法人等個人情報保護法…独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律
・消費者裁判手続特例法…消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律

2023年(令和5年)施行予定の主な法改正一覧

2023年にも、企業法務に関連する各種の改正法の施行などが予定されています。

2023年に改正法施行が予定されている主な法律

・労働基準法(2023年4月1日施行)
・育児・介護休業法(2023年4月1日施行)
・民法(2023年4月1日施行)
・不動産登記法(2023年4月1日施行)
・相続土地国庫帰属法(2023年4月27日施行)
・食品表示基準(2023年4月1日施行)
・個人情報保護法(2023年4月1日施行)
・道路交通法(2023年4月1日施行)
・消費者契約法(2023年6月1日施行)
・消費者裁判手続特例法(2023年6月1日までに施行)
・電気通信事業法(2023年6月17日までに施行)
・消費税法(2023年10月1日施行)

それでは、一つずつ詳細に解説していきますね。

労働基準法改正|月60時間超の時間外労働の割増賃金率が引き上げなど

①月60時間超の時間外労働の割増賃金率の引き上げ

2023年4月1日に施行予定の改正労働基準法では、月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が、大企業・中小企業を問わず一律「50%」となります。

そもそも、「時間外労働」とは何でしょうか。

時間外労働とは「法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超える労働」のことです。

月60時間を超える時間外労働の割増賃金率について、大企業は、2010年4月から既に50%となっていました。一方、中小企業は、割増賃金率を50%とする改正の適用が猶予され、月60時間を超える時間外労働についても25%の割増賃金を支払えばよいとされていました。

しかし、2023年4月1日以降は、中小企業も、月60時間超の時間外労働については、割増賃金率が50%に統一されます。

改正法施行後の割増賃金率の考え方

・1カ月の時間外労働が60時間以下の場合→25%でOK
・60時間を超えた部分→50%になる

なお、中小企業に該当するかは、以下の表に記載の①または②を満たすかどうかで判断されます。

厚生労働省「月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が引き上げられます」

②デジタルマネーによる賃金の支払いが解禁

また、2023年4月1日より、デジタルマネーによる賃金の支払いも解禁されます。

前提として、賃金の支払いについては、労働基準法24条で、

(1)通貨(現金)で
(2)直接労働者に
(3)全額を
(4)毎月1回以上
(5)一定の期日を定めて

支払わなければならないと定められています。つまり、現金を手渡しで支払うというのが原則になっています。

あれ? でも、今時手渡しでなんてほとんどないですよね?

そうですね。銀行口座への振り込みがほとんどだと思います。しかしこれは、例外的な扱いで、労働者の同意を得た場合に限り認められた支払い方法なんです(労働基準法施行規則7条の2第1項)。

2023年4月1日からは、

①現金手渡し
②銀行口座・証券総合口座への振り込み

に加え、

労働者の同意を得た上で、一定の要件を満たした場合に限って、デジタルマネー(PayPayなど)による給与の支払いが可能

となります。

育児・介護休業法改正|育児休業の取得状況の公表を義務付け

2023年4月1日に施行予定の改正育児・介護休業法により、育児休業の取得状況の公表が義務付けられる企業の範囲が拡大されます。

これまでは、厚生労働大臣によって「プラチナくるみん認定」を受けている企業のみが、育児休業の取得状況の公表を義務付けられていました。

改正後は、「プラチナくるみん認定」の有無にかかわらず、常時雇用する労働者の数が1,000人を超える事業主については、毎年1回以上育児休業の取得状況を公表することが義務付けられます(改正育児・介護休業法22条の2)。

より詳しく知りたい方は、以下の記事を参照ください。

民法改正|相隣関係規定の改正など

2023年4月1日に施行予定の改正民法により、以下の各種ルール変更などが行われます。

この改正は、近年、問題となっている所有者不明土地(所有者が不明な土地・所有者が判明していてもその所在が不明な土地)の問題の解決などを目的として行われるものです。

① 相隣関係規定の見直し

・隣地使用権の範囲が拡大され、建物の築造・境界標の調査・境界の測量・枝の切除などを行う際、隣地を使用できるようになります(改正民法209条)。

・必要な範囲で他人の土地にライフライン設備を設置する権利や他人が所有するライフライン設備を使用する権利などが明文化されます(同法213条の2)。

・一定の場合に、越境した枝を自ら切除できるようになります(同法233条)。

② 共有制度の見直し

・共有物の変更のうち、軽微なものは共有持分の過半数で決定できるようになるなど(同法251条1項、252条1項)、共有者間における意思決定のルールが変更、整備されました。併せて、共有物の管理者制度の創設など(同法252条1項、252条の2)、共有物の管理や使用についての制度やルールも整備されます。

・裁判による共有物分割手続(同法258条)、所在がわからない共有者の不動産共有持分を取得、処分する制度(同法262条の2、262条の3)など、共有関係を解消する手続きや制度が整備されます。

③ 所有者不明土地管理制度などの創設

・所有者がわからない土地や建物について、裁判所が管理人を選任する制度が新設されます(同法264条の2~264条の8)。

・所有者による管理が適切に行われていない土地や建物について、裁判所が管理人を選任する制度が新設されます(同法264条の9~264条の14)。

④ 相続制度の見直し

・早期の遺産分割を促進するため、相続開始から10年経過後は、具体的相続分(介護など個別の事情を考慮した遺産の取り分)による遺産分割が原則として適用されなくなります(同法904条の3)。

・遺産共有持分が含まれる共有物の分割手続きが見直されます(同法258条の2第2項)。

・相続財産の管理に関する制度が整備されます(同法897条の2)。

・相続人が不明な場合等における公告手続きが合理化され、短期間で手続きを完了できるようになります(同法952条2項、957条1項)。

より詳しく知りたい方は、以下の記事を参照ください。

不動産登記法改正|形骸化した登記の抹消手続きの簡略化など

2023年4月1日に施行予定の改正不動産登記法により、形骸化した不動産登記の抹消手続きが、以下のとおり簡略化されます。

・買い戻しの特約がされた売買契約の日から10年を経過したときは、登記権利者(売買契約の買い主)単独での抹消登記手続きが可能となります(改正不動産登記法69条の2)。

・登記された存続期間または買い戻しの期間が既に満了している場合、所定の調査方法によっても権利者(登記義務者)の所在が判明しないときは、登記権利者単独での抹消登記手続きが可能となります(同法70条2項)。

・法人の解散後30年が経過し、かつ被担保債権の弁済期から30年を経過した場合、所定の調査方法によっても清算人の所在が判明しないときには、登記権利者(不動産所有者)が単独で担保権の抹消登記手続きが可能となります(同法70条の2)。

なお、相続登記の義務化に関する改正は、2024年4月1日から施行される予定です。

より詳しく知りたい方は、以下の記事を参照ください。

相続土地国庫帰属法施行|相続土地国庫帰属制度が開始

2023年4月27日に、相続土地国庫帰属法という新法が施行される予定です。

この法律は、相続等で土地を取得した相続人が、その土地を国に引き継ぐことができる制度(相続土地国庫帰属制度)を定めた法律です。

これまでは、優良な資産を相続しつつ要らない土地だけを手放すには、土地を譲り受けてくれる人を自分で探さなければなりませんでした。

しかし、相続土地国庫帰属法の施行により、国の審査に合格した土地については、負担金を納付することで国に引き取ってもらえるようになります。

より詳しく知りたい方は、以下の記事を参照ください。

食品表示基準改正|遺伝子組み換え表示制度の改正

2023年4月1日に施行予定の改正食品表示基準により、遺伝子組み換え食品に関する表示ルールが変更されます。

前提として、遺伝子組み換え表示には、

・義務表示:遺伝子組み換え農作物を使用している場合は、「遺伝子組み換え」などの表示をする義務
・任意表示:遺伝子組み換え農作物を使用していない場合に、「遺伝子組み換えでない」などの表示が可能

があります。

今回の改正で変わるのは、後者の「任意表示」のほうです。

具体的には、大豆、とうもろこしおよびこれらを原材料とする加工食品について、表示レベルを以下のように2段階に分けて、消費者に対して正しい情報を提供することが求められるようになります。

【旧制度】
分別生産流通管理(※)をして、意図しない混入を5%以下に抑えているもの
→「遺伝子組み換えでないものを分別」「遺伝子組み換えでない」などの表示が可能

※遺伝子組み換え農産物と遺伝子組み換えではない農産物を生産・流通・加工の各段階で相互に混入が起こらないよう管理すること(そのことが書類等により証明されていることを要します)

【新制度】
(1)分別生産流通管理をして、意図しない混入を5%以下に抑えているもの
→「適切に分別生産流通管理された」旨の表示が可能

(2)分別生産流通管理をして、遺伝子組み換えの混入がないと認められるもの
→「遺伝子組み換えでない」「非遺伝子組み換え」などの表示が可能

つまり、大豆、とうもろこしおよびこれらを原材料とする加工食品については、「確実に遺伝子組み換えの混入がないもの」と「5%以下に抑えているもの」で、違う表示をする必要があるということですか?

そのとおりです。企業は施行までに、きちんと対応しておく必要があります。

個人情報保護法改正|個人情報保護委員会が一元的に制度を所管

2023年4月1日に施行予定の改正個人情報保護法により、地方公共団体等の個人情報保護制度について、全国的な共通ルールが定められます。

従来は、個人情報の保護に関して、以下のとおり、民間と行政機関等で異なる法律等が制定され、適用されていました。

・民間企業:個人情報保護法
・国の行政機関:行政機関個人情報保護法
・独立行政法人等:独立行政法人等個人情報保護法
・地方公共団体等:地方公共団体ごとに定める個人情報保護条例

このうち、国の行政機関と独立行政法人等については、2022年4月1日施行の改正で3つの法律が個人情報保護法に統合されたことにより、統合後の個人情報保護法が適用されています。

そして、2023年4月1日以降は、これらに加えて地方公共団体や地方独立行政法人についても個人情報保護法が適用されることとなります。

これにより、これまで独自に制定した個人情報保護条例を適用していた各地方公共団体等について全国的な共通ルールが定められ、個人情報保護委員会が一元的に制度を所管することとなり、個人情報の保護に関する質の確保などが期待されています。

道路交通法改正|自動運転「レベル4」の解禁

2023年4月1日に施行予定の改正道路交通法により、いわゆる「レベル4」の自動運転が一定の条件下で解禁されます。

自動運転のレベル

【レベル1】
システムが、前後・左右のうち、いずれかの運転操作を支援する。
例:自動ブレーキ、前の車に付いて走る、車線からはみ出さないなど

【レベル2】
システムが、前後・左右の両方の運転操作を支援する。
例:自動追い越し支援、自動合流支援など

【レベル3】
過疎地域や高速道路などの特定条件下で、システムが全ての運転制御を行う。ただし、システムの継続が困難な場合には、運転者が適切に介入する必要がある。

【レベル4】
過疎地域や高速道路などの特定条件下で、システムによる完全自動運転がなされる(運転者の介入不要)。

【レベル5】
あらゆる条件下において、システムによる完全自動運転がなされる(運転者の介入不要)。

これまで実用化され、法律上認められているのはレベル3までですが、改正道路交通法によってレベル4の公道走行が解禁となります。

消費者契約法改正|契約取消事由の追加など

2023年6月1日に施行予定の改正消費者契約法により、消費者保護に関する以下のルール変更が行われます。

契約の取消事由を追加
勧誘する旨を告げずに退去困難な場所へ同行して勧誘した場合や第三者に相談しようとする消費者を脅して妨害した場合などが、新たに契約の取消事由に追加されます。

②免責の範囲が不明確な条項が無効に
事業者の債務不履行・不法行為に基づく責任を免除する条項のうち、損害賠償責任の免除が軽過失の場合のみを対象としていることを明らかにしていない条項は無効となります。

③事業者の努力義務を拡充
解約料の説明、契約に関する情報提供などの努力義務が新たに明文化されます。

消費者裁判手続特例法改正|消費者団体訴訟制度の改善など

2023年6月1日までに施行予定の改正消費者裁判手続特例法により、内閣総理大臣の認定を受けた特定適格消費者団体による、消費者団体訴訟制度が改善されます。

消費者団体訴訟制度とは

消費者団体訴訟制度とは、内閣総理大臣が認定した消費者団体が、消費者のために事業者に対して訴訟などをできる制度です。

差止請求」と「被害回復」の2つを行うことができます。
・差止請求:適格消費者団体が、消費者に代わり、事業者の不当な行為をやめるよう求めること
・被害回復:事業者の不当な行為によって被害が生じている場合に、特定適格消費者団体が、消費者に代わって被害の集団的な回復を求めること

参考元|独立行政法人国民生活センター「消費者団体訴訟制度(団体訴権)の紹介」

消費者団体訴訟制度における「被害回復」では、従来は、「財産的な被害の回復」しか請求することができませんでした。

しかし、今回の改正により、「精神的な被害の回復」として慰謝料も請求できるようになります。

そのほか、

・消費者に対する情報提供方法の充実化
・和解の早期柔軟化

なども行われる予定です。

電気通信事業法改正|届け出制の対象拡大・Cookie規制など

2023年6月17日までに施行予定の改正電気通信事業法により、インターネット事業などを中心的な対象として、以下の規制変更などが行われます。

① 届け出制の対象が拡大される
以下のいずれかに該当する事業を行っている(行う)場合、一定の条件に該当する事業者は総務大臣へ届け出等を行う必要があり、また、「電気通信事業者」として、さまざまなルールが適用されることになる。
・検索情報電気通信役務
・媒介相当電気通信役務

② 特定利用者情報の取り扱いに関する義務が新設される
「特定利用者情報」という概念が新設され、「特定利用者情報を適正に取り扱うべき電気通信事業者」として総務大臣に指定された事業者には、「特定利用者情報」の取り扱いに関する義務が課される。

③Cookie規制が新設される
Cookie規制(利用者に関する情報の外部送信に対する規制)が新設され、この規制が適用される事業者は、以下のいずれかの措置を講じる必要がある。
・総務省令で定める事項を利用者に通知する
・総務省令で定める事項を利用者の知り得る状態に置く

より詳しく知りたい方は、以下の記事を参照ください。

消費税法改正|インボイス制度の導入

2023年10月1日施行予定改正消費税法により、いわゆる「インボイス制度」が新たに導入されます。

インボイス制度とは

インボイス制度とは、商品などに課されている消費税率や消費税額など、法令が定めた内容を明記した書面(適格請求書=インボイス)を交付する制度です。

インボイス制度は、2019年10月の消費税率の引き上げに伴い、一部、軽減税率が導入され、10%と8%の2つの税率が混在することになったことを受け、検討された制度です。

正しく消費税の納税額を算出するには、どの商品に、どちらの税率が適用されているかを明確にする必要があり、インボイスはそのために発行されます。

商品を売った側=インボイス発行事業者は、

・商品を買った側から求められたときは、インボイスを交付すること
・交付したインボイスの写しを保存しておくこと

が必要です。なお、インボイスを交付するためには、事前に、税務署にインボイス発行事業者の登録申請書を提出し、「適格請求書発行事業者」として登録を受ける必要があります。

また、買った側が仕入税額控除の適用を受けるためには、原則として、商品を売った側=インボイス発行事業者から交付を受けたインボイスの保存などが必要となります。

仕入税額控除って、何ですか?

企業が消費税を納付する際は、原則として、課税対象となる売上の消費税額から課税対象となる仕入れの消費税額を差し引いた額を納付します。この仕組みを「仕入税額控除」といいます。

この記事のまとめ

2023年の法改正まとめの記事は以上です。最新の記事に関する情報は、契約ウォッチのメルマガで配信しています。ぜひ、メルマガにご登録ください!

参考文献

厚生労働省ウェブサイト「くるみんマーク・プラチナくるみんマーク・トライくるみんマークについて」

消費者庁「知っていますか? 遺伝子組換え表示制度-消費者が正しく理解できる情報発信を目指して」

個人情報保護委員会ウェブサイト「令和3年 改正個人情報保護法について(官民を通じた個人情報保護制度の見直し)」

警察庁ウェブサイト「自動運転」

消費者庁ウェブサイト「消費者契約法及び消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律の一部を改正する法律(令和4年法律第59号)(消費者契約法関係)」

国税庁ウェブサイト「インボイス制度の概要」

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