【2023年4月施行】民法改正とは?改正点を解説!
(新旧対照表あり)

この記事のまとめ

2023年4月に施行される民法改正は、近年、問題となっている所有者不明土地(所有者が不明な土地・所有者が判明していてもその所在が不明な土地)の問題の解決を目的として、不動産登記法等の改正とともに行われました。

民法では、所有者不明土地の利用・管理を行いやすくするため諸制度(共有制度・財産管理制度など)の見直しが行われ、所有者不明土地を利用しやすくなるような改正がなされています。

所有者不明土地は、今や国土の20%以上(2017年国土交通省調査)といわれており、不動産取引や不動産管理を行う際に問題となる事例も多くなっています。
また、所有者不明土地の中には長期にわたり放置されているものもあり、相続の際、予期せず問題に直面する可能性もあります。

この機会に、今回の改正で、共有制度、財産管理制度、相続制度や相隣関係がどう変わったか、再確認してはいかがでしょうか。

この記事では、2023年施行の民法改正のポイントを分かりやすく解説します。

※この記事では、法令名を次のように記載しています。
・民法…2021年4月公布の「民法等の一部を改正する法律」による改正後の民法
・旧民法…2021年4月公布の「民法等の一部を改正する法律」による改正前の民法

(※この記事は、2022年3月30日時点の法令等に基づいて作成されています。)

改正民法(2023年4月施行)とは?

改正の目的

近年、相続した土地の相続登記を行わないなどの理由から所有者が不明な土地や所有者の所在が不明な土地(以下「所有者不明土地」)が増加し、土地の利用の阻害や隣地への悪影響等が社会問題化しています。

そこで、既に発生している所有者不明土地の利用の円滑化を主な目的として、民法が改正されました。

なお、今回の改正では、所有者不明土地の発生予防を主な目的として、不動産登記法の改正も同時に行われています。

公布日・施行日

改正の根拠となる法令は、「民法等の一部を改正する法律」(令和3年4月28日法律第24号)です。

「民法等の一部を改正する法律」では、所有者不明土地問題解決を目的として、民法、不動産登記法を含めたいくつかの法律が改正されています。

公布日・施行日

公布日│2021年4月28日
施行日│2023年4月1日(民法部分)

民法改正の概要

民法の改正の概要は、以下のとおりです。

これらの改正により、土地利用の円滑化が図られています。

それでは、改正の詳しい内容を見ていきましょう。

相隣関係規定の見直し

「相隣関係」とはそもそも何でしょうか?

相隣関係とは、「隣り合う土地を所有する者同士が、自分が所有する土地を利用しやすいよう調整し合う関係」のことです。なお、民法では“隣り合う土地”のことを「隣地」と言います。

相隣関係規定は、相隣関係にある土地の利用を調節するために定められた民法上の規定です。
今回の改正では、隣地が所有者不明土地等である場合を想定した相隣関係規定の見直しが行われました。

改正された点は、主に以下の3点です。

隣地使用権の見直し

隣地使用権とは、民法で定められた一定の場合(例:所有する土地にある建物の外壁工事をするため、一時的に隣地に入る必要がある場合など)に、隣地の使用を請求することができる権利をいいます。

旧民法で隣地使用権が認められるのは、「境界又はその付近において障壁又は建物を建造し又は修繕するため必要な範囲」に限られています。また、隣地使用権を行使する方法については具体的に定められていません。

今回の改正では、隣地使用権の範囲が拡大され、以下の場合に隣地を使用することが認められました。(民法209条1項)

なお、隣地使用権を行使する際は、隣地の所有者・隣地を現在使用する者のために損害が最も少ないものを選ばなければなりません。(民法209条2項)

また、隣地を使用する際は、あらかじめ、その目的・日時・場所・方法を隣地所有者・隣地を現在使用する者に通知しなければなりません。(民法209条3項本文)

通知から使用までには、隣地使用の目的・日時・場所・方法に鑑み、通知の相手方が準備をするに足りる合理的な期間を置く必要があります。具体的な事情によりますが、緊急性がない場合は通常は2週間程度と解されています。

ただし、あらかじめ通知することが困難なときは、隣地の使用を開始した後、遅滞なく通知すればよいこととなっています。(民法209条3項ただし書)

なお、隣地使用に伴って隣地所有者や隣地使用者に損害が生じた場合には償金を支払う必要があります。(民法209条4項)

ライフライン設備の設置・利用に関する権利の明確化

生活様式の変化や技術の発展に伴い、電気、ガス、水道などの現代的なライフライン設備(生活に不可欠な設備)が生まれましたが、これらの設備を自分の土地で使用するために、他人の土地や設備などを利用しなければならないこともあります。

しかし、旧民法では、排水のための低地の通水(旧民法220条)等の規定はありましたが、電気、ガスなどの現代的なライフラインの設置に関しては明確化されていませんでした。

そこで、今回の改正では、電気、ガス、水道などの現代的なライフラインを念頭に、以下2つの権利が明確化されました。

ライフライン設備設置権は、他の土地に設備を設置しなければ電気・ガス・水道水の供給その他これらに類する継続的給付を受けることができない場合に認められます。(民法213条の2第1項)

ライフライン設備使用権は、他人が所有する設備を使用しなければ電気、ガス又は水道水の供給その他これらに類する継続的給付を引き込むことができない場合に認められます。(民法213条の2第1項)

ライフライン設備設置権・ライフライン設備使用権(以下、併せて「ライフライン設備設置・使用権」)ともに、対象となる設備は、電気・ガス・水道水・これらに類する継続的給付に必要な設備です。
下水道の利用なども、これに該当します。

ライフライン設備の設置・使用の場所及び方法については、他の土地又は他人が所有する設備のために損害が最も少ないものを選ばなければなりません。(民法213条の2第2項)

また、ライフライン設備設置・使用権を行使するときには、あらかじめ、その目的、場所及びその方法を他の土地の所有者及び他の土地を使用しているものに通知しなければなりません。(民法213条の2第3項)

通知からライフライン設備設置・使用までには、通知の相手方が、その目的・場所・方法に鑑みて設備設置・使用権の行使に対する準備をするために必要な合理的な期間を置く必要があります。(事案によるが、2週間~1か月程度)。なお、土地所有者の所在が不明の場合は、公示の方法による通知(民法98条)が必要になります。

土地の所有者がライフライン設備設置・使用権に基づき、他の土地等に設備を設置・接続する場合には、償金・費用を支払う必要があります。

支払義務がある償金・費用は以下のとおりです。

越境した枝を自ら切除できる権利の創設(改正民法233条)

旧民法では、隣地の竹木の枝が越境してきた場合にも自ら切除することはできず、越境した竹木の所有者に切除させる必要がありました。しかしこの規定には、隣地所有者が切除に非協力的な場合や隣地が所有者不明土地の場合などには、隣地所有者に切除させることが非常に困難であるなどの問題点がありました。

そこで、今回の改正では、以下の場合には、越境された土地の所有者は、越境した枝を自ら切除することができるようになりました。(民法233条3項)

また、隣地の竹木が数人の共有であったときには、各共有者は、他の共有者の同意等を得ることなく単独でその枝を切り取ることができることとなりました。(民法233条2項)

これにより、竹木が越境してきて困っている土地の所有者は、竹木の共有者の1人から承諾を得れば、その共有者に代わって枝を切り取ることができます。また、承諾を得られない場合でも、竹木の共有者の1人に対しその枝の切除を求める裁判を提起し、その切除を命ずる判決を得れば、代替執行(民事執行法171条1項、4項)が可能となります。

共有制度の見直し

旧民法では相続登記が義務化されていないため、相続等をきっかけとして所有者不明となる土地が、現在多数存在しています。

過去の所有者の相続人を戸籍資料から辿っていけば、所有者不明土地について現在の所有者(共有者)を特定できます。しかし、多くの所有者不明土地は、相続人が多数であったり、相続人の一部の所在が不明であったりして、所有者(共有者)の特定が困難又は不可能となっている状態です。そのため、所有者不明土地の管理・処分に大きな支障が生じています。

「相続登記」とは何ですか?

土地や建物の所有者が亡くなった場合に、その土地や建物の名義を亡くなった方から遺産を引き継いだ方(相続人)へ変更する手続のことです。

そこで、所在等が不明な共有者がいる場合でも共有地を円滑かつ適正に利用できるようにするため、共有制度の見直しが必要となり、今回の改正では、以下の2つが行われました。

共有物の変更・管理に関する規律の見直し

今回行われた共有物の変更・管理に関する規律の見直しは主に以下5点です。

共有物の変更・管理の内容に関する規律の見直し

旧民法では、共有物の変更や管理について、行為の類型毎に以下のような規律としていました。

管理(最広義)の種類根拠条文同意要件
変更旧251条共有者全員の同意
(狭義の)管理旧252条本文持分の価格の過半数
保存旧252条ただし書共有者単独

しかし、旧民法の規定では、共有物に軽微な変更を加える場合であっても、共有者全員の同意を得なければならないなど、円滑な利用・管理が阻害されていました。

そこで、今回の改正では、共有物に変更を加える行為であっても、形状又は効用の著しい変更を伴わないもの(軽微変更)については、持分の価格の過半数で決定できることが定められました。(民法251条1項、252条1項)

なお、「形状の変更」とは、その外観、構造等を変更することをいい、「効用の変更」とは、その機能や用途を変更することをいいます。例えば、砂利道のアスファルト舗装や、建物の外壁・屋上防水等の大規模修繕工事は、基本的に共有物の形状又は効用の著しい変更を伴わないものに当たると考えられます。

<改正民法における共有物の変更・管理・保存概念の整理>

管理(最広義)の種類 根拠条文 同意要件
変更(軽微以外) 新251条1項 共有者全員
管理
(広義)
変更(軽微) 新251条1項・252条1項 持分の価格の過半数
管理(狭義) 新252条1項
保存 新252条5項 共有者単独

法務省民事局「令和3年民法・不動産登記法改正、相続土地国庫帰属法のポイント」30頁、2021年12月

また、賃借権等の設定については、全員同意が必要な「長期間の賃貸借」の判断基準が明確でなかったことから、実務上、慎重を期して全員同意を得ることが多く、円滑な土地利用を阻害していました。

そこで、今回の改正では、持分の過半数で決定することができる、短期の賃借権等の範囲を明確にしました。(民法252条4項)

持分の過半数で決定できる短期の賃借権等の範囲は以下のとおりです。

なお、借地借家法の適用のある賃借権の設定は、約定された期間内での終了が確保されないため、原則として基本的に共有者全員の同意がなければ無効となります。

ただし、一時使用目的(借地借家法25条、40条)や存続期間が3年以内の定期建物賃貸借(借地借家法38条1項)については、契約において更新がないことなどを明記し、所定の期間内に賃貸借が終了することを明確にした場合、持分の価格の過半数の決定で設定することができます。

賛否を明らかにしない共有者がいる場合の管理に関するルールの合理化

旧民法下では、共有物の管理に関心を持たず、連絡をとっても明確な返答をしない共有者がいる場合には、共有物の管理が困難となる問題がありました。

そこで、今回の改正では、賛否を明らかにしない共有者がいる場合に、裁判所の決定を得て、その共有者以外の共有者の持分の過半数により、管理に関する事項を決定できる制度が創設されました。(民法252条2項2号)

なお、この制度は、変更行為や賛否を明らかにしない共有者が共有持分を失うことになる行為(抵当権の設定等)には、利用できません。

また、賛否を明らかにしない共有者に加えて所在等不明共有者がいるときは、この手続と併せて次に説明する所在等不明共有者がいる場合の制度を利用することで、それ以外の共有者の決定で不動産の管理行為をすることが可能です。

所在等不明共有者がいる場合の変更・管理に関するルールの合理化

旧民法下では、所在等不明共有者(必要な調査を尽くしても氏名等や所在が不明な共有者)がいる場合には、その所在等不明共有者の同意を得ることができないため、共有物に変更を加えることができず、また、所在等不明共有者以外の共有者の持分が過半数に及ばないケースなどでは、管理についての決定もできませんでした。

そこで、今回の改正により、所在等不明共有者がいる場合には、裁判所の決定を得て

ができる制度が創設されました。(民法251条2項、252条2項1号)

なお、この制度は、所在等不明共有者が共有持分を失うことになる行為(抵当権の設定等)には、利用できません。

共有物の管理者制度の創設

旧民法では、共有物の管理者に関する明文規定がなく、選任の要件や権限の内容が明らかではありませんでした。

そこで、今回の改正では、共有物の管理者制度が創設されました。

共有物の管理者の選任・解任は、共有物の管理のルールに従い、共有者の持分の価格の過半数で決定されます。(民法252条1項)
共有者以外の者を管理者とすることも可能です。

管理者は、個々の行為について共有者の過半数の同意を得ることなく管理に関する行為(軽微変更を含む)をすることができますが、軽微でない変更を加える場合には、共有者全員の同意を得なければなりません。(民法252条の2第1項)

なお、所在等不明共有者がいる場合には、管理者の申立てにより裁判所の決定を得た上で、所在等不明共有者以外の共有者の同意を得て、変更を加えることができます。(民法252条の2第2項)

また、共有者が共有物の管理に関する事項を決定した場合には、これに従って職務を行わなければなりません。(民法252条の2第3項、4項)
決定に違反して行った管理者の行為は、共有者に対しては効力がありませんが、決定に反することを知らない第三者に対しては無効を対抗できません。(民法252条の2第4項)

「無効を対抗できない」とはどういうことですか?

管理者の行為は、共有者の間では無効になるが、決定に反することを知らない第三者に対してはその無効を主張できないということです。その結果、第三者との間では、管理者の行為は有効なものとして取り扱われます。

共有物を使用する共有者がいる場合の規律の整備

旧民法では、共有物を使用する共有者がいる場合に、その共有者の同意がなくても、持分の価格の過半数で共有物の管理に関する事項を決定できるかが明確でなく、無断で共有物を使用している共有者がいる場合には、他の共有者が共有物を使用することは事実上困難でした。

そこで、今回の改正では、共有物を使用する共有者がいても、持分の過半数で管理に関する事項を決定できることが明記されました。(民法252条1項後段)
これにより、共有物を使用する共有者がいる場合でも、持分の過半数の同意でそれ以外の共有者に使用させることを決定することも可能となります。

ただし、管理に関する事項の決定が、共有者間の決定に基づいて共有物を使用する共有者に特別の影響を及ぼすべきときは、その共有者の承諾を得なければなりません。(民法252条3項)。

また、旧民法では、共有物を使用する者が他の共有者に対してどのような義務を負うかについての規定はありませんでした。

そこで、今回の改正では、共有物を使用する共有者は、他の共有者に対し、自己の持分を超える使用の対価を支払う義務を負うとする規定が設けられました(ただし、共有者間において無償とするなどの合意があれば、支払う必要はありません)。(民法249条2項)

さらに、改正により、共有者は善良な管理者の注意をもって共有物を使用する義務を負うことも明記されました。(民法249条3項)
この結果、共有物を使用する共有者が自己の責めに帰すべき事由によって共有物を失ったり壊したりした場合、他の共有者に対し、善管注意義務違反等を理由とした損害賠償義務を負います。

共有関係を解消しやすくする仕組みの創設

共有関係を解消しやすくするための改正点は、主に以下の2点です。

裁判による共有物分割手続の整備

旧民法では、裁判による共有物分割の方法として現物分割と競売分割(換価分割)が定められており、代償分割(賠償分割)は判例により許容されているにすぎませんでした。

「現物分割」「競売分割(換価分割)」「代償分割(賠償分割)」の意味を教えてください。

それぞれ以下のような意味です。
現物分割:共有物の現物を分割する方法
競売分割(換価分割):共有物を競売にかけ、売却代金を分割する方法
代償分割(賠償分割):共有物をある共有者1人の単独所有(又は数人の共有)とし、他の共有者に対して持分の価格を金銭で支払わせて分割する方法

そこで、新民法では、裁判による共有物分割の方法として、代償分割(賠償分割)が可能であることを明記するとともに、(1)現物分割・代償分割(賠償分割)のいずれもできない場合、又は(2)分割によって共有物の価格を著しく減少させるおそれがある場合(現物分割によって共有物の価格を著しく減少させるおそれがあり、代償分割(賠償分割)もできない場合)に、競売分割(換価分割)を行うこととし、分割の検討順序を明確にしました。(258条2項、3項)

また、裁判所は、共有物の分割の裁判において、当事者に対して、金銭の支払、物の引渡し、登記義務の履行その他の給付を命ずることができることも明文化されました。(258条4項)

所在等不明共有者の不動産の共有持分を取得・処分する制度の創設

旧民法では、共有者の中に所在等不明共有者がいる場合、共有物分割訴訟等の裁判手続を行えない場合もあり、共有を解消することが非常に困難でした。

そこで今回の改正では、共有者が他の共有者を知ることができないとき・その所在を知ることができないときは、裁判所に申し立てた共有者(以下「申立共有者」)に所在等不明共有者の持分を取得させられる裁判をすることができる制度が創設されました。
申立共有者が2人以上の場合は、各共有者に所在不明等共有者の持ち分を、共有者の持ち分に応じて分割して取得させることとなります(262条の2)

また、共有者の中に所在等不明共有者がいる場合、他の共有者が共有物件の売却等の処分を希望するときには、裁判所が申立共有者に所在等不明共有者の持分を譲渡する権限を付与できる制度も創設されました。(民法262条の3)

この制度による譲渡権限は、所在等不明共有者以外の共有者全員が持分の全部を譲渡することを条件とするものであり、不動産全体を特定の第三者に譲渡するケースでのみ行使可能です。

なお、これらの制度は、共有の形態が遺産共有(相続開始後遺産分割前までの共有状態)の場合には、相続開始から10年を経過しなければ利用できません。(民法262の2第3項、262条の3第2項)

所有者不明土地管理制度等の創設

旧民法では、財産を管理する人が不在の場合の財産管理制度として、不在者財産管理人制度や相続財産管理人制度が設けられていました。

しかし、これらの制度は人単位で財産全般を管理することから、個々の不動産の管理にまで目が行き届かない場合があり、また、所有者が管理を放置しているような事案には適用されないため、土地・建物が管理されないまま放置されることによって危険な状態になることもありました。

そこで、今回の改正では、以下の制度を創設し、裁判所により選任された管理人が管理されていない土地や建物を管理することを可能としました。

所有者不明土地管理制度・所有者不明建物管理制度

新設された所有者不明土地管理制度・所有者不明建物管理制度(以下、併せて「所有者不明土地等管理制度」)は、所有者不明(所有者の所在が不明)の土地・建物(以下「土地等」)について、管理の必要があると認められる場合に、裁判所が管理人を選任する制度です。(民法264条の2~264条の8)

選任を請求できるのは、所有者不明土地等の管理について利害関係を有する「利害関係人」であり、具体的には、以下に該当する者などです。(264条の2第1項)

選任された管理人の管理の対象となる範囲は、所有者不明土地等のほか、土地等にある所有者の動産、売却代金等です。対象が建物の場合は、借地権等の敷地権も対象となります。(264条の2第2項、264条の3第1項、264条の8第2項)

選任された管理人は、対象の土地等の管理処分権を専属的に有し、例えば以下のような行為を行うことができます。(民法264条の3、264条の8第5項)

管理不全土地管理制度・管理不全建物管理制度

新設された管理不全土地管理制度・管理不全建物管理制度(以下併せて「管理不全土地等管理制度」)は、所有者による管理が適切に行われず、他者への権利侵害があるかそのおそれがある土地について、裁判所が管理人を選任する制度です。(民法264条の9~264の14)

選任を請求できる「利害関係人」は、管理不全土地等の管理に利害関係を有する「利害関係人」をいい、具体的には、以下などが該当します。(民法264条の9第1項、264条の14第1項)

選任された管理人の管理の対象となる範囲は、管理不全土地等のほか、土地等にある所有者の動産、売却代金等です。対象が建物の場合は、借地権等の敷地権も対象となります。(民法264条の9第2項、264条の10第1項、264条の14第2項)

選任された管理人は、対象の土地等の管理処分権を有し、以下のような行為を行うことができます。(民法264条の10、264条の14第4項)

なお、管理不全土地管理人・管理不全建物管理人の管理処分権限は、専属的ではないので、対象の土地等の所有者は、従来どおり管理や処分を行うことができます。

相続制度の見直し

今回の改正では、相続制度について、以下のような改正が行われました。

長期間経過後の遺産分割の見直し

所有者不明土地の中には、遺産分割がなされないまま長期間経過し、再度の相続が生じたり、相続に関する証拠等が散逸したりすることで遺産分割がより困難になり、そのまま放置されているものも数多くあります。

そのため、今回の改正では、相続開始から10年を一つの契機として、遺産分割を促進する仕組みを創設しています。

具体的には、原則として、相続開始時から10年経過した後は、法定相続分又は指定相続分を分割の基準とし、具体的相続分を適用しないこととなりました。(民法904条の3)

「法定相続分」「指定相続分」「具体的相続分」の意味を教えてください。

それぞれ以下のような意味合いです。
法定相続分 :法律が定めた遺産の取り分
指定相続分 :遺言によって指定された遺産の取り分
具体的相続分:個別の事情(亡くなるまで介護をしたなど)を考慮した遺産の取り分

ただし、以下の場合には、引き続き、具体的相続分により分割されます。(民法904条の3第1項1~2号)

また、相続人全員が具体的相続分による遺産分割をすることに合意した場合にも、具体的相続分による遺産分割が可能です。

この規定は、改正民法の施行日(2023年4月1日)より前に被相続人が死亡した場合の遺産分割にも適用されますが、経過措置により、民法904条の3第1項1号、2号の基準時について、5年の猶予期間を設けています。(民法等の一部を改正する法律 附則3条)

遺産共有持分が含まれる共有物の分割手続の見直し

相続が発生した場合、相続開始から遺産分割が終了するまでは、遺産は相続人間での共有となります(遺産共有)。

そこで、例えば、ある物件を兄弟間で共有していたが(通常共有)、兄弟のうち1人が死亡した場合、死亡者の財産についての遺産分割が終わるまでは、死亡者の共有持分は相続人間の共有(遺産共有)となるため、その物件については、通常共有と遺産共有が併存することになります。

このように通常共有と遺産共有が併存する場合、旧民法では、共有物分割と遺産分割の両方を行わなければ遺産共有持分の分割ができませんでした。

そこで、今回の改正では、相続開始から10年が経過した場合、相続人から異議等がなければ共有物分割訴訟のみで遺産共有持分の分割ができるようになりました。(民法258条の2第2項)

なお、共有物分割をする際の遺産共有持分の解消は、具体的相続分ではなく法定相続分又は指定相続分が基準となります。(民法898条2項)

相続財産の管理に関する規律の見直し

旧民法では、相続人が不明の場合や、相続人が判明している場合でも単純承認後から遺産分割前までの期間は保存型の財産管理制度を利用できなかったため、相続人にかわって保存行為を行う管理人を選任できず、相続人が適切な保存行為を行わないことで近隣不動産の所有者等が被害を受けることがありました。

そこで、今回の改正では、相続の発生から相続に関する手続が終了するまでのすべての場面で利用できる統一的な保存型相続財産管理制度が創設されました。(民法897条の2)

また、相続放棄者が放棄時に相続財産を占有しているときには、相続人又は相続財産精算人に対してその財産を引き渡すまでは自己の財産におけるのと同一の注意をもってその財産を保存しなければならないことも明記されました。(民法940条1項)

相続財産の精算に関する規律の見直し

旧民法でも、相続人不明の場合の清算型相続財産管理制度の定めがありました。しかし、旧民法での手続では、清算までの間に3回の公告手続が必要であり、権利関係の確定までに10か月以上必要でした。

そこで、今回の改正では公告手続を合理化し、清算人選任から6か月程度で権利を確定することが可能となりました。(民法952条2項、957条1項)

実務への影響

今回の改正は、所有者不明土地の円滑な利用に主眼が置かれており、新設された所有者不明土地等管理制度や所在等不明共有者の持分取得・譲渡制度等、今回整備された様々な手段を適切に活用することで、所有者不明土地を利用できる可能性が格段に広がりました。

相隣関係も整備され、隣地が所有者不明土地であっても自己の所有地を有効に利用できるような手段が整えられています。

また、共有制度や相隣関係についての一般的な規律も一部変更されたことから、不動産の開発や管理・運用を行う部門では、所有者不明土地か否かにかかわりなく、いままでの運用が改正民法に照らして妥当か、確認する必要があります。

さらに、相続関係では、長期にわたり遺産分割未了が続くと遺産分割基準が変わるため、相続発生後10年を経過するか否かで相続人の取り分が大きく変わる可能性もあり、相続実務に大きな影響を与えます。 

共有制度や相隣関係は、不動産開発や不動産管理・運用業務を行う際に、検討することが多い分野です。
また、遺産分割は誰にでも起こりうる問題です。

この機会に、今回の改正を十分に理解しておきましょう。

今回の改正では、民法に併せて、不動産登記法も改正され、相続登記や移転登記の義務化が定められております。
こちらについても、併せてご確認ください。

【解説つき】改正前と改正後の条文を新旧対照表で比較

今回の改正点について、解説つきの新旧対照表をご用意しました。 以下のページからダウンロードできます。

ぜひ、業務のお供に! ご活用いただけると嬉しいです!

〈サンプル〉

参考文献

法務省民事局「令和3年民法・不動産登記法改正、相続土地国庫帰属法のポイント」2021年12月

法務省「民法等の一部を改正する法律新旧対照条文」

法務省「民法等の一部を改正する法律・理由」

法務省民事局「所有者不明土地関連法の施行期日について」2021年12月

荒井達也著『Q&A 令和3年民法・不動産登記法改正の要点と実務への影響』日本加除出版、2021年