2021年(令和3年)に施行される法改正のまとめ!

この記事のまとめ

2021年の法改正を解説!!

この記事では、2021年施行予定の法改正を解説します。

なお、2021年1月14日(木)に開催されましたセミナー「新春契約ウォッチセミナー! 2020年法務ニュースを総復習~2021年の法改正も予習~」を元にした記事となります。

ヒー

法改正のニュースを振り返ると、今の法務のトレンドなどが分かりますよね!

ムートン

そうですね。毎年の法改正を追いかけることは法務部門の大切な仕事です。本記事では2021年の法改正をまとめました。2022年は「2022年に施行される法改正のまとめ!」で解説しています。

※この記事は、2021年2月4日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。

2021年(令和3年)に施行される法改正

2021年に施行される法改正について、いくつか紹介します(2022年以降の施行を予定するものも併せて紹介します)。

2021年~に施行される法改正など

・著作権法改正(2020年10月、2021年1月など施行)

・労働派遣契約の電子化(2021年1月施行)

・育児・介護休業法施行規則改正(2021年1月施行)

・会社法改正(2021年3月など施行)

・改訂コーポレートガバナンス・コード(2021年春、改訂予定)

・高年齢者雇用安定法改正(2021年4月施行)

・労働施策総合推進法改正(2021年4月施行)

・意匠法改正(2020年4月、2021年4月施行)

・個人情報保護法改正(一部2020年12月施行。残りは2022年6月までに施行)

公益通報者保護法改正(2022年6月までに施行)

著作権法改正

2021年1月に、改正著作権法の一部が施行されました。

「著作権法およびプログラムの著作物に係る登録の特例に関する法律の一部を改正する法律」(令和2年法律第48号)により改正された著作権法について、 侵害コンテンツのダウンロード違法化、などが施行されました。
リーチサイト対策規制、写り込みにかかる権利制限規定の対象範囲の拡大、などについては2020年10月に施行済みとなっています。

2021年1月に改正される内容は以下となります。

著作権法の改正(2021年1月施行)

・侵害コンテンツのダウンロード違法化

・著作権侵害訴訟における証拠収集手続の強化

・アクセスコントロールに関する保護の強化

改正によって、音楽、映像のみならず著作物全般について違法ダウンロードが規制されることになりました。 この著作物全般の違法ダウンロード規制については、企業のみならず、個々人にも関係してくるものですので、注目されている改正です。

その他、著作権法改正については、以下の記事で解説しています。

労働派遣契約の電子化

2021年1月に、労働派遣契約の電子化が法令上、明確に認められるようになります。

これまで、派遣元企業と派遣先企業は、労働者派遣契約(労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律)を締結するとき、 労働者派遣法26条1項に定めてある事項を記載する必要がありました。
このとき、労働者派遣法施行規則21条3項には「書面に記載しておかなければならない」と書かれていたため、 労働者派遣契約は書面で作成する必要があると一般的には考えられてきました。

しかし、政府は効率化のために書面のペーパーレス化を推進しており、電子契約の普及も進んでいる、ということで、 労働者派遣法施行規則(労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律施行規則)および、 いわゆるe-文書法令(厚生労働省の所管する法令の規定に基づく民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の 技術の利用に関する省令)が改正されて、労働派遣契約の電子化が、明確に、法令上認められるようになりました。

労働派遣契約の電子化については、以下の記事で解説しています。

育児・介護休業法施行規則改正

2021年1月に、改正された育児・介護休業法施行規則が施行されました。
これによって、子の看護休暇、介護休暇が時間単位で取得できるようになります。

子の看護休暇・介護休暇については、 就業規則に記載する必要がありますので、就業規則でも、時間単位で子の看護休暇・介護休暇を認める、と記載する必要があります。

育児・介護休業法施行規則の改正

・子の看護休暇、介護休暇が時間単位で取得できるようになる

・1日の所定労働時間が4時間以下の労働者も、1日未満の単位(時間単位)で子の看護休暇・介護休暇を取得できるようになる

育児・介護休業法施行規則の改正については、以下の記事で解説しています。

会社法改正

2021年3月に、改正された会社法の一部が施行されます。
これによって、上場会社における社外取締役の設置義務づけ、株式交付制度の新設、などが適用されることになります。

上場会社における社外取締役の設置義務づけといった更なるコーポレート・ガバナンスの強化を目指す改正となっています。

会社法の改正

株主総会資料の電子提供制度

・社外取締役の設置義務付け

・株式交付制度の新設

・取締役会による報酬の決定方針の策定の義務化

・株主提案権の濫用的な行使を制限するための措置

etc・・・

会社法の改正については、以下の記事で解説しています。

高年齢者雇用安定法改正

2021年4月に、改正された高年齢者雇用安定法が施行されます。

これは、「雇用保険などの一部を改正する法律(令和2年法律第14号)」による改正となります。
「雇用保険などの一部を改正する法律」によって、高年齢者雇用安定法、雇用保険法、労働保険徴収法などが改正されて、高齢者、 複数就業者に対するセーフティネットの整備、就業機会の確保などを目指します。

この中で、高年齢者雇用安定法が改正され、65歳から70歳までの高年齢者の就業確保措置を講じることが、企業の努力義務とされます。就業確保措置として、以下のいずれかを講じる努力義務があります。

高年齢者就業確保措置

✅70歳までの定年引上げ
✅70歳までの継続雇用制度の導入
✅定年廃止
✅高年齢者が希望するときは、70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
✅高年齢者が希望するときは、70歳まで継続的に、事業主が実施する社会貢献事業、事業主が委託・出資などをする団体の社会貢献事業に従事できる制度の導入

また、厚生労働大臣は、必要に応じて、事業主に対して、高年齢者就業確保措置の実施について 必要な指導・助言を行うこと、また、措置の実施に関する計画の作成を勧告すること、ができる、といった改正もされています。

改正法に基づいて、「高年齢者就業確保措置の実施及び運用に関する指針」(令和2年厚生労働省告示第351号)も公表されています。
企業が、高年齢者就業確保措置の実施、運用に関する具体的な留意点などが記載されています。

労働施策総合推進法改正

2021年4月に、改正された労働施策総合推進法が施行されます。
これは、高年齢者雇用安定法改正と同じく、「雇用保険などの一部を改正する法律(令和2年法律第14号)」による改正となります。

中途採用に関する環境整備を進めるため、中途採用に関する情報の公開を促進する改正です。

大企業(労働者数301名以上)に対して、正規雇用労働者の採用者数に占める、 中途採用者数の割合の定期的な公表を義務付けます

意匠法改正

2021年4月に、改正された意匠法の一部が施行されます。
「特許法等の一部を改正する法律」(令和元年5月17日法律第3号)によって改正された意匠法について、その一部である損害賠償算定方法の見直し、画像・建築物・内装も意匠登録の対象へ、関連意匠制度の見直し、などについては2020年4月に既に施行済みとなっています。

2021年4月に施行される改正内容は以下となります。

意匠法の改正(2021年4月施行)

・複数意匠の一括出願制度の導入と物品区分の扱いの見直し

・手続救済規定の拡充

改正によって、一つの願書によって、複数の意匠の意匠登録出願ができるようになります。

その他、意匠法の改正については、以下の記事で解説しています。

個人情報保護法改正

2022年6月までに、改正された個人情報保護法が全面施行される予定となっています。

個人情報保護法については、2015(平成27)年の改正の際に、情報通信技術の発展のスピードが早いことから、 技術の発展にあわせて法律も短いスパンで見直す必要があるということで、 3年ごとに見直しを行うという規定(平成27年改正法附則12条)が定められました(「3年ごと見直し」)。

そして、この見直し規定に基づいて、2020年6月12日に改正法が公布されました。
個人情報保護と情報の利活用とのバランスの観点などから改正されたということですが、基本的に、企業に対してより一層厳格な個人情報の保護、管理を求めるものとなっています。

2020年12月に施行された、法令違反に対するペナルティの強化については、法人に対する罰金の金額が大幅に引き上げられており、企業にとってはインパクトが大きいものとなっています。

また、個人情報保護委員会が公表している「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン」もあわせて改正されています。さらに、個人情報保護法施行令、個人情報保護法施行規則も改正される予定です。

個人情報保護法の改正

・利用停止・消去請求権、第三者への提供禁止請求権の要件緩和

・個人データの第三者提供記録の開示請求権

・個人情報漏えい時の報告義務

・不適正な個人情報の利用の禁止

・「仮名加工情報」について、事業者の義務を緩和

・「個人関連情報」に関する規制の強化

・法令違反に対するペナルティの強化(2020年12月に施行済み)

etc…

個人情報保護法の改正については、以下の記事で解説しています。

公益通報者保護法改正

消費者庁の「改正法Q&A」 によりますと、企業に準備期間を確保してもらうために、2022年の施行を予定している、とのことです。

会社の不祥事が定期的に発生し、社会問題となっていることから、企業の不祥事を未然に防ぐために、公益通報者保護法が改正されました。

通報者の保護の範囲を拡大してより安心して通報できるようにして、 また行政機関への通報も要件を緩和するなどより通報しやすくしています。
そして、企業に対して、内部通報に適切に対応する体制を整備する義務を課すなど、 企業により厳格な対応を求めるものとなっています。

公益通報者保護法の改正

・内部通報に適切に対応するために必要な体制の整備義務(窓口の設置など)
※中小企業(従業員300人以下)は努力義務

・内部調査に従事する者の情報の守秘義務

・行政機関への通報の要件緩和

・保護される通報者の範囲を拡大(労働者のみならず退職者、役員も保護される)

・保護される通報の範囲を拡大(行政罰の対象となる通報のみならず、刑事罰の対象も含む)

・保護の内容を拡大(通報に伴う損害賠償責任の免除)

内部通報に適切に対応するために必要な体制の整備義務、について企業が具体的に何をすればいいのか、 などについては、今後消費者庁が 指針を作成して公表する予定とのことですので、この指針に具体的に記載されると思われます。

また、現在消費者庁が公表している「内部通報制度の整備・ 運用に関する民間事業者向けガイドライン」や 「国の行政機関向けガイドライン」などがありますが、 法改正に合わせてこれらのガイドラインも見直しがされるものと思われます。

ヒー

内部通報制度など、企業として準備しなくてはいけない法改正もいくつかありますね。

ムートン

そうですね。今年も、契約や法改正について「契約ウォッチ」で勉強していきましょう!

参考文献

【著作権法改正】
文化庁ウェブサイト「令和2年通常国会 著作権法改正について」


【労働派遣契約の電子化】
労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律施行規則及び厚生労働省の所管する法令の規定に基づく民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に省令の一部を改正する省令(令和2年10月9日厚生労働省令第170号)

「厚生労働省の所管する法令の規定に基づく民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する省令」の概要


【育児介護休業法施行規則改正】
厚生労働省ウェブサイト「育児・介護休業法について」

厚生労働省ウェブサイト「男女雇用機会均等法、育児・介護休業法のあらまし」

厚生労働省ウェブサイト「育児・介護休業法のあらまし」

厚生労働省ウェブサイト「子の看護休暇・介護休暇の時間単位での取得に関するQ&A」


【会社法改正】
法務省ウェブサイト「会社法の一部を改正する法律について」

法務省ウェブサイト「法制審議会―会社法制(企業統治等関係)部会」

経済産業省ウェブサイト「コーポレート・ガバナンスの在り方」


【高年齢者雇用安定法改正】
厚生労働省ウェブサイト「高年齢者雇用安定法の改正~70歳までの就業機会確保~」


【労働施策総合推進法改正】
厚生労働省ウェブサイト「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律 関係資料」


【意匠法改正】
特許庁ウェブサイト「令和元年意匠法改正特設サイト」

特許庁ウェブサイト「特許法等の一部を改正する法律(令和元年5月17日法律第3号)」


【個人情報保護法改正】
個人情報保護委員会ウェブサイト「令和2年改正個人情報保護法について」


【公益通報者保護法改正】
消費者庁ウェブサイト「公益通報者保護法と制度の概要 令和2年改正について」


【その他】
JPX 日本取引所グループウェブサイト「コーポレート・ガバナンス」

JPX 日本取引所 東京証券取引所「市場区分の見直しにおけるコーポレート・ガバナンスに関する議論の状況について」