【2022年5月公布】民事訴訟法改正とは?
民事訴訟(裁判)のIT化を解説!

この記事のまとめ

2022年5月18日に国会で可決・成立した改正民事訴訟法には、民事訴訟のIT化に関する大幅な改正が盛り込まれました。

IT化により、
訴状の提出
訴訟記録の閲覧や複写
口頭弁論を含む各種手続
などがオンライン化され、民事訴訟の大幅な利便性向上が期待されます。

改正のポイントを急ぎ把握したい方は、「民事訴訟法改正によるIT化のポイント」からお読みください。

今回は、民事訴訟法改正による裁判のIT化について、改正の背景・改正のポイントなどを分かりやすく解説します。

先生、民事訴訟法が改正され、民事訴訟(裁判)のIT化が進むと聞きました。

日本における民事訴訟IT化の遅れはこれまで指摘されてきましたが、ついに日本でもIT化が進みますね。日本の民事訴訟がどう変わるのか、この記事で勉強していきましょう。

※この記事では、法令名を次のように記載しています。

  • 新民事訴訟法…2022年5月公布の「民事訴訟法等の一部を改正する法律」による改正後の民事訴訟法
  • 旧民事訴訟法…2022年5月公布の「民事訴訟法等の一部を改正する法律」による改正前の民事訴訟法

※この記事は、2022年8月1日時点の法令等に基づいて作成されています。

【2022年5月公布】民事訴訟法改正の概要

2022年5月18日に国会で可決・成立した改正民事訴訟法には、民事訴訟のIT化に関する大幅な改正が盛り込まれました。

民事訴訟とは

民事訴訟とは、裁判官が、法廷で双方の言い分を聴いたり、証拠を調べたりして、最終的に判決によって紛争の解決を図る手続のことです。

一般的に、民事訴訟は以下のような流れで進行します。

裁判所ウェブサイト|「民事訴訟」

このような民事訴訟の一連の流れをIT化することで、利便性向上が期待されます。

公布日・施行日

公布日・施行日

公布日|2022年5月25日
施行日|公布日から起算して4年を超えない範囲内において政令で定める日
※弁論準備手続の完全オンライン実施、ウェブ会議等による和解期日に関する規定は、公布日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日
※口頭弁論のオンライン実施に関する規定は、公布日から起算して2年を超えない範囲内において政令で定める日

民事訴訟のIT化が行われる背景

日本の民事訴訟手続は、諸外国と比べてもIT化が遅れている状況です。裁判所へ提出する書類は依然として紙ベースであり、口頭弁論のオンライン実施も認められていません。

そもそも口頭弁論って何ですか?

裁判所が、法廷で当事者双方の主張・立証を聞く民事訴訟上の手続のことです。日本では、口頭弁論の際、当事者は法廷に足を運ばないといけないんです。

IT化の遅れにより、日本の民事訴訟は当事者にとって不便な手続であり、そのことが利用を敬遠される一因となっています。こうした状況を改善するため、今回の民事訴訟法改正では、民事訴訟のIT化を推進すべく、様々な改正が行われました。

民事訴訟のIT化における課題|「3つのe」とは

政府が設置した「裁判手続等のIT化検討会」では、2018年3月に、民事訴訟における「3つのe」の実現を掲げる報告書を公表しました。今回の民事訴訟法改正でも、同報告書で提唱された「3つのe」の精神を踏まえたルール変更が盛り込まれています。

「3つのe」は、

で構成されています。以下それぞれ詳しく解説します。

e提出(e-Filing)

民事訴訟の際は、

など、様々な書面が用いられますが、紙ベースでの提出が原則とされている現在の民事訴訟は、訴状を提出するためにわざわざ裁判所へ行かなければならないなど、当事者にとって不便な部分が非常に多い状況です。

検討会報告書では、24時間365日利用できる書面のオンライン提出(e提出)を可能とし、紙媒体による提出から全面的に移行・一本化することが望ましいとの指摘がなされています。

e事件管理(e-Case Management)

訴状・答弁書・準備書面などの閲覧・複写は、裁判所に足を運んで行う必要があるのが現状です。これでは従前の訴訟経過を確認するだけでも一苦労であり、当事者にとって不便でしかありません。

検討会報告書では、訴訟利用者の利便性を考慮して、訴訟記録にオンラインで随時・容易にアクセスできることが望ましいと提唱されています。

e法廷(e-Court)

現状の民事訴訟は、当事者双方が裁判所に出席して行うことが大原則とされています。

口頭弁論のオンライン実施は一切認められず、争点整理を行う弁論準備手続のオンライン実施についても、ごく一部に限られている状況です。このような状況は、遠方から民事訴訟に参加する当事者にとっては大きな負担となっています。

検討会報告書では、テレビ会議やウェブ会議の活用を大幅に拡大することで、民事訴訟の当事者の負担軽減、及び審理の充実を図るべきと提唱されています。

民事訴訟法改正によるIT化のポイント

今回の民事訴訟法改正において、民事訴訟のIT化に関するどのような変更が盛り込まれたのかを具体的に見ていきましょう。大きくは以下の6点です。

民事訴訟法改正によるIT化のポイント

①オンラインでの訴状提出が可能に
②訴訟記録の閲覧・複写がオンラインで可能に
③口頭弁論のオンライン実施が可能に
④弁論準備手続の完全オンライン実施が可能に
⑤その他の各種手続もオンライン実施が可能に
⑥証人尋問のオンライン実施要件が緩和

それぞれ詳しく解説していきます。

①オンラインでの訴状提出が可能に

訴訟を提起する際に裁判所に提出する訴状は、従来、紙媒体での提出(窓口に持参or郵送)が必須とされていました(旧民事訴訟法133条1項)。

今回の民事訴訟法改正では、訴状のオンライン提出に関する詳細な規定が設けられました(新民事訴訟法132条の10)。オンライン提出が可能となることで、訴訟提起のためにわざわざ遠方の裁判所へ足を運ぶ必要がなくなるため、当事者にとっては大変便利になるでしょう。

なお、弁護士や司法書士が訴訟代理人となる場合には、必ず訴状をオンラインで提出しなければなりません(新民事訴訟法132条の11第1項1号)。多くの民事訴訟は、弁護士が訴訟代理人となって提起されているため、今後は訴状のオンライン提出が主流になるものと思われます。

改正点の要約

旧法|訴状の提出は、紙媒体での提出が必須
新法|本人が訴訟を提起する場合:オンライン提出・紙媒体での提出、両方が可能
弁護士や司法書士が訴訟代理人となる場合:オンライン提出のみ可能

②訴訟記録の閲覧・複写がオンラインで可能に

従来の民事訴訟でも、訴訟記録(訴状・答弁書・準備書面など)の閲覧・謄写は認められていますが(旧民事訴訟法91条2項)、裁判所に足を運んで手続を行わなければなりません。

今回の民事訴訟法改正では、訴訟記録の閲覧・複写をオンライン上でできるようになることが定められました(新民事訴訟法91条の2)。訴訟記録の閲覧・複写は、裁判所に設置された端末を用いて行うほか、システムを通じて裁判所外からも行うことができるようになる予定です。

訴訟記録のオンライン化により、訴訟の進捗状況を随時確認できるほか、弁護士が紙媒体で訴訟記録を持ち運ぶ手間も省けるようになるでしょう。

また、判決書については完全に電子化され(新民事訴訟法252条)、裁判所のシステムを通じてどこからでも閲覧できるようになります。当事者の届出があれば、判決書のオンライン送達も認められます(新民事訴訟法255条1項、2項)。

改正点の要約

旧法|訴訟記録の閲覧・謄写をする場合、裁判所に足を運ぶことが必須
新法|訴訟記録の閲覧・複写をする場合、オンライン上でも実施可能に

③口頭弁論のオンライン実施が可能に

口頭弁論は、当事者が主張・立証を行う民事訴訟の「本体」とも呼ぶべき手続ですが、これまでオンライン参加が一切認められていませんでした(旧民事訴訟法87条1項)。

しかし、今回の民事訴訟法改正により、ウェブ会議による口頭弁論の実施が認められました(新民事訴訟法87条の2第1項)。

オンラインでの口頭弁論は、裁判所が相当と認める場合に、当事者の意見を聴いて実施されます。実施要件が比較的緩やかであるため、幅広く口頭弁論がオンラインで実施され、民事訴訟の利便性向上に寄与することが期待されます。

改正点の要約

旧法|口頭弁論に参加する際は、裁判所へ足を運ぶことが必須
新法|(裁判所が相当と認める場合)オンラインでの参加が可能に

④弁論準備手続の完全オンライン実施が可能に

口頭弁論の前に争点整理を行う「弁論準備手続」は、現状でもウェブ会議により実施することが認められています。しかし、当事者の一方は裁判所に出頭しなければならず、両者が出頭しない完全オンライン実施は認められていませんでした(旧民事訴訟法170条3項)。

しかし、今回の民事訴訟法改正により、弁論準備手続の完全オンライン実施が認められました(新民事訴訟法170条3項)。口頭弁論とともに、民事訴訟における審理の大部分がオンライン化されることにより、当事者のとっての利便性は大幅に向上するでしょう。

改正点の要約

旧法|弁論準備手続をオンラインで行う際は、当事者の一方が裁判所に出頭することが必須
新法|弁論準備手続の完全オンライン実施が可能に(どちらか一方の裁判所への出頭は不要に)

⑤その他の各種手続もオンライン実施が可能に

口頭弁論・弁論準備手続のほかにも、以下の手続についてオンライン実施が可能となります。

⑥証人尋問のオンライン実施要件が緩和

事件の参考人に対して証言を求める「証人尋問」は、民事訴訟の判決内容を左右し得る重要な手続です。

証人尋問をオンラインで実施できるのは、以下の場合に限られていました(旧民事訴訟法204条)。

旧民事訴訟法における証人尋問のオンライン実施要件

✅ 証人が遠隔の地に居住するとき
✅ 裁判長・当事者在席の場所において尋問を行った場合、証人が圧迫を受け、精神の平穏を著しく害されるおそれがあると認める場合で、裁判所が相当と認めるとき

しかし今回の民事訴訟法改正では、証人尋問をウェブ会議によって実施できる場合が、以下のとおり大幅に拡大されました(新民事訴訟法204条)。

新民事訴訟法における証人尋問のオンライン実施要件

✅ 証人の住所・年齢・心身の状態その他の事情により、証人の出頭が困難であると裁判所が認める場合
✅ 裁判長・当事者在席の場所において尋問を行った場合、証人が圧迫を受け、精神の平穏を著しく害されるおそれがあると裁判所が認める場合
✅ 当事者に異議がない場合

特に、「当事者に異議がない場合」には幅広く証人尋問のオンライン実施が認められるようになった点が大きな特徴です。これまでは健康上の理由・時間の都合などから証言を求めることが難しかった者についても、オンラインで証人尋問を実施できるようになり、民事訴訟の審理の充実化が期待されます。

改正点の要約

旧法|証人尋問のオンライン実施は限られた場合のみ
新法|証人尋問のオンライン実施要件が大幅に緩和

民事訴訟のIT化によって期待される主なメリット

民事訴訟のIT化に関する改正が全面施行されれば、利便性向上・手続の合理化・審理の充実などの観点から、以下のようなメリットが期待されます。

遠方からも訴訟に参加しやすくなる

今回の民事訴訟法改正では、口頭弁論・弁論準備手続・証人尋問をはじめとして、オンラインで実施できる手続の範囲が大幅に拡大されました。

手続のオンライン化により、遠方からでも訴訟に参加しやすくなることは大きなメリットでしょう。

訴訟記録の閲覧・複写が容易になる

訴訟記録(訴状・答弁書・準備書面など)の閲覧・複写がオンライン上でできるようになることは、当事者にとって大幅な利便性向上に繋がります。

過去の口頭弁論や弁論準備手続で何が審理されたのかにつき、いつでもどこでも裁判所外から確認できるため、スムーズに訴訟準備を行うことができるようになるでしょう。

また、現在は代理人弁護士が紙ベースで大量の訴訟記録を持ち歩く光景をよく見ますが、訴訟記録をオンラインで閲覧できるようになれば、そうした手間も省けます。

紙媒体資料の削減|裁判所の事務負担が軽減される

民事訴訟のIT化によってペーパーレス化が大幅に進展すれば、裁判所職員の事務負担の軽減も期待されます。

弁護士や司法書士が訴訟代理人となる場合、訴状などの書面提出は全てオンラインで行うことが義務付けられます。さらに判決書も完全電子化されるため、訴訟記録は一挙にペーパーレス化が進むことになるでしょう。

職員の事務負担が軽減されれば、労働環境の改善や経費節減など、裁判所の運営上も多くのメリットが生じると考えられます。

民事訴訟の審理が充実する

民事訴訟の利便性が向上することで、当事者が訴訟準備に避ける時間が増え、審理の充実化が期待されます。

特に遠方からでもオンライン参加ができるようになるため、移動の時間・費用が大幅に削減される点は大きなメリットです。例えば、代理人弁護士の多忙さが緩和されることにより、余裕を持って準備書面を提出できるようになるなどの効果が期待できるでしょう。

証人尋問のオンライン実施が拡大されることも、審理の充実化に寄与すると考えられます。有益な証言を得られそうな者については、積極的にオンラインで証人尋問を行うことで、裁判官がより多角的な観点から事案を分析・検討できるようになることが期待されます。

この記事のまとめ

【2022年5月公布】民事訴訟法改正(民事訴訟のIT化)の記事は以上です。最新の記事に関する情報は、契約ウォッチのメルマガで配信しています。ぜひ、メルマガにご登録ください!

参考文献

裁判手続等のIT化検討会「裁判手続等のIT化に向けた取りまとめ ―「3つのe」の実現に向けて―」

法務省「民事訴訟法(IT化関係)等の改正に 関する要綱案」

愛知県弁護士会ウェブサイト「訴状が届いたら」

裁判所「民事訴訟の相手方(被告)となった方へ」