社内規程とは?
作成や運用のポイントを解説!
- この記事のまとめ
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社内規程の作成や運用のポイントを解説!!
社内規程は会社が独自に定める社内ルールです。
社内規程を作成することで、業務の標準化、リスク防止、といったメリットが生じます。
この記事では社内規程の作成や整備を検討している人のために、社内規程の作成方法や運用上の注意点を紹介します。
(※この記事は、2021年5月19日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。)
目次
社内規程とは
社内規程とは、会社が独自に定める社内ルールです。
就業規則などのように、法律上作成が義務付けられているものもあります。
法律上作成が義務付けられていないものでも、企業の状況や必要に応じて、企業が継続的な活動を安定して行うために設けることが考えられます。
社内の禁止事項を制定することで 秩序を維持したり、業務の統一的な手続きを明文化することで業務を効率化するのに役立ちます。
社内規程には、例えば企業理念や文書取扱規程、ハラスメント防止規程などがあります。
社内規程は企業の上場審査の評価対象にもなります。
社内規程が整備されていれば、組織統制がしっかりとれていることの証拠となります。
社内規程を設けるメリット
社内規程には、「社内の秩序維持」「業務の効率化」「リスク防止」などさまざまなメリットがあります。
ここでは社内規程のメリットについて詳しく解説します。
業務を標準化できる
仕事を各従業員のやり方に任せてしまうと、各従業員が各々異なるやり方で仕事をする、という事態が発生してしまいます。
そこで仕事の統一的な手順を社内規程でマニュアル化(明文化)すれば、業務の標準化が行え、業務の効率化が期待できます。
例えば、社内における文書の管理方法を決めた「文書管理規程」を定めることが考えられます。「文書管理規程」で、文書の保管場所に関して定めることにより、文書の保管場所が一元化され、従業員が文書を探す手間が減少することが期待できます。
リスク防止につながる
リスク防止につながる代表的な規程には、ソーシャルメディア利用規程やハラスメント防止規程などがあります。
ソーシャルメディア利用規程は、従業員のソーシャルメディア利用に関するルールを定めた規程です。
ハラスメント防止規程は「パワーハラスメント」や「セクシュアルハラスメント」の定義や、禁止事項、などを定めた規程です。
インターネット上での炎上などが企業のレピュテーションリスクとなる現代では、従業員の不祥事により企業に経営危機が訪れるケースが多々あります。
これらの規程によって、リスク防止を図ることが非常に重要です。
社内規程に法的効力はあるのか
社内規程が従業員に対して法的効力を持つのかどうかについては、場合分けをして検討しなければなりません。
社内規程が従業員を拘束するのは、社内規程が労働契約の内容となっている場合です。
例えば、労働契約の中で「従業員は、社内規程を遵守する義務を負う」と定められていれば、公序良俗違反等の理由で無効なものを除き、契約締結時点で有効な社内規程を遵守する義務を負います。社内規程の遵守義務が、労働契約の内容に含まれているためです。
その一方で、労働契約の開始(=入社)後に制定され、又は変更された社内規程は、原則として従業員を拘束しません。労働契約の変更には、労働者の同意を要するのが大原則だからです(労働契約法8条)。
ただし、以下のいずれかに該当する場合には、使用者が社内規程を変更することにより、労働契約を一方的に変更できます(同法9条、10条)。
- 社内規程の変更により、労働契約の変更が認められる場合
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①変更内容が労働者の利益となる場合
②変更内容が労働者の不利益となる場合で、以下の要件を両方満たす場合
(a)変更後の社内規程を労働者に周知させたこと
(b)社内規程の変更が、変更に係る事情に照らして合理的なものであること
使用者による労働契約の一方的変更が認められる場合であれば、入社後に制定・変更された社内規程も、従業員に対して拘束力を持ちます。
例えば、細かい服務ルールの変更などは有効と認められる可能性が高いです。これに対して、賞与・退職金・福利厚生など、待遇に関する重大な社内規程の変更については、従業員の同意がない限り、法的効力を持たないと判断される可能性が高いでしょう。
社内規程にはどのようなものがある?
社内規程には多種多様なものが存在します。
以下は一般的な社内規程の例です。
例 | 内容 |
---|---|
就業規則 | 労働時間、休日、休暇、賃金、退職や各種の手当などを定める |
育児・介護休業規程 | 従業員の育児・介護休業の手続きについて定める |
賃金規程 | 従業員の賃金について定める |
賞与規程 | 社内の賞与制度について定める |
職務発明規程 | 従業員が業務上発明をした場合の、発明の取り扱いについて定める |
稟議規程 | 稟議事項の基準および稟議の手続き、決裁者などを定める |
取締役会規程 | 取締役会の開催、運営について定める |
監査役会規程 | 監査役会の開催、運営について定める |
ハラスメント防止規程 | 職場におけるセクシャルハラスメントやパワーハラスメントの定義や禁止事項を定める |
内部通報規程 | 社内の内部通報制度の運用について定める |
ソーシャルメディア利用規程 | 従業員のソーシャルメディア利用に関するルールを定める |
テレワーク勤務規程 | 従業員がテレワークを行う場合のルールを定める |
個人情報管理規程 | 社内における個人情報の取り扱いについて定める |
文書管理規程 | 社内における文書の管理方法を定める |
経理規程 | 社内の経理に関する方針や手続き、処理方法を定める |
社内規程の作り方(書き方)
ここでは社内規程の作成方法を紹介していきます。
社内規程は、一般的には以下のステップに沿って作成します。
責任者の決定
社内規程を作成する際は、社内規程の作成に関する責任者を選出するとその後の作成がスムーズです。
また、一般的には、社内規程を作成する際は、社内規程の内容を管轄する部署(所管部門)と改廃権限者(取締役会や代表取締役など)を定めます。
作成するべき社内規程を洗い出す
社内規程として作成すべき規程の洗い出しを行います。
会社の規模や業務内容、会社の現在の状況などによっても、作成すべき規程が異なってきます。
就業規則など、法令によって作成が義務付けられているものもあります。
作成すべき規程の洗い出しのため、社内で仕事の手順が属人的になっている業務や社内でリスクとなっている要因をピックアップしていきましょう。
効果的な方法としては、各部門の代表者からのヒアリングなどが挙げられます。
各部門内にいる人間にしかわからない問題や非効率性を把握することで、作成すべき社内規程のヒントになります。
規程の草案を作成・共有する
規程は他社の規程や、書籍などを参考にして作成することが多いです。
また弁護士などの専門家に社内規程の作成を依頼する、アウトソーシングも1つの方法です。
作成した規程の草案は各部署と共有し、問題がないか、検討を行いましょう。
社員への周知
社内規程が完成したら、規程集を作成して社員が閲覧できる場所へ備え置く、社内ポータルサイトへ掲載する、などして規程を配布、周知しましょう。
社員が社内規程の内容を十分に理解する必要がありますので、常時社員が社内規程を確認できる状態にする必要があります。
社内規程を運用する際の注意点
社内規程は作成して周知して終わり、ではありません。
適正に運用されなければ社内規程の作成は意味がありません。
ここでは社内規程を運用するにあたっての注意点を紹介していきます。
定期的な点検を行う
社内規程は法律や時代の変化に会わせて、適宜変えていく必要があります。
社会倫理などの変化や、法改正、その他社内外の環境の変化により、一度作成した規程が時代にそぐわなくなる場合があるためです。
また、社内外の環境の変化により、必要な社内規程が増えることもあります。
例えば、新型コロナウイルスの流行によって、テレワーク、在宅勤務を導入する会社が増えたため、「テレワーク勤務規程」を定めるニーズが増しています。
社内外の環境の変化に合わせて適宜既存の社内規程を見直し、また新しい社内規程の作成を検討する必要があります。
年に1回あるいは半年に1回など、定期的に社内規程を点検するのが望ましいです。
各規程間の整合性を保つ
各規程間での矛盾を防止するため、整合性を保つように注意しましょう。
例えば文書取扱規程における文書の保存期間が10年である一方、経理規程における経理関連書類の保存期間が7年といった矛盾があれば、社内ルールが統一されず、組織の混乱を招くおそれがあります。
法律に抵触しないようにする
会社法、労働基準法、個人情報保護法など社内規程に関連する各種法令に抵触しないように社内規程を作成する必要があります。各種法令に違反すると、当該規程が無効となったり、会社が行政処分を受けるなどのおそれがあります。
社内規程は法律に抵触しないよう作成し、また、法令は改正されることがありますので、法改正も確認しておきましょう。
各種法令への抵触の有無や、法改正への対応については、弁護士へ確認を依頼することが考えられます。
社内規程における就業規則の扱い方に注意
就業規則も広い意味では社内規程の1つですが、性質がやや特殊であることから、社内規程とは分けて考えられることもあります。
就業規則と社内規程の違いは、以下の通りとなります。
就業規則 | 社内規程 | |
---|---|---|
労使間の合意 | 常時10人以上の従業員を使用する場合はあり | なし |
必要記載事項 | あり | なし |
届出義務 | あり | 原則なし* |
就業規則は労働時間関連、休日、休暇、賃金などを会社のルールを幅広く定めるものであり、従業員が常時10名以上の会社に作成の義務が課されています(労働基準法89条)。
第89条
労働基準法 e-gov法令検索 電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ
常時十人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。次に掲げる事項を変更した場合においても、同様とする。
なお、作成義務に違反した場合は30万円以下の罰金が課されます(労働基準法120条第1号)。
第120条
労働基準法 e-gov法令検索 電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ
次の各号のいずれかに該当する者は、30万円以下の罰金に処する。
一 第14条、(略)、第89条、(略)又は第106条から第109条までの規定に違反した者
就業規則の記載事項には絶対的必要記載事項、相対的必要記載事項、任意的記載事項の3種類があり、特に絶対的必要記載事項は必ず記載する必要がある事項です。
記載事項の種類 | 記載の必要性 | 主な記載事項 |
---|---|---|
絶対的必要記載事項 | 必ず記載する必要 | 始業・終業時刻、休憩時間、休日、休暇など |
相対的必要記載事項 | 定めをおく場合は記載する必要 | 退職手当、安全衛生、表彰、制裁など |
任意的記載事項 | 任意 | 用語の定義、会社の理念、従業員の心得など |
他にも就業規則の作成・運用においてには意見聴取義務や周知義務といった諸々の義務が伴うため、作成や変更にあたっては、他の社内規程に比べて、慎重な取り扱いが求められます。