パワーハラスメント(パワハラ)とは?
定義と6つの類型を解説!

この記事のまとめ

パワーハラスメントの定義と6つの類型について解説!

様々なハラスメントの防止が叫ばれる中、特に問題となることも多い「パワーハラスメント」。
パワハラが起こると、被害者、加害者だけではなく、企業にも大きな影響が及びます。

この記事では、パワーハラスメントとはどのような行為を指すのか、また、その影響について解説します。

法務部でコンプライアンスを推進していますが、その中でもハラスメントは近年企業が特に注意するようになっていると感じています。

そうですね。職場では地位的な上下関係が存在するため、それに基づくハラスメントが起こりやすいので、注意が必要ですね。

パワーハラスメント(パワハラ)の定義

まず、
・そもそもハラスメントとは何か?
・パワーハラスメントとは何か?
・パワーハラスメントとは、具体的にどのような行為を指すのか?
について解説していきます。

ハラスメントとは

「ハラスメント(Harassment)」とは、

・悩ます(悩まされる)こと
・いやがらせ

といった意味の英単語です。

日本で職場におけるハラスメントとして代表的なのは、以下の3つです。

日本における代表的なハラスメント

① パワーハラスメント(パワハラ)
② セクシャルハラスメント(セクハラ)
③ マタニティーハラスメント(マタハラ)

セクハラマタハラについては、「男女雇用機会均等法、育児・介護休業法」により、企業に対して、防止義務が課せられています。さらに、パワハラについても、2019年に改正された「労働施策総合推進法」により、防止措置義務が定められています。

パワーハラスメントとは

パワーハラスメントについては、2019年に改正された「労働施策総合推進法」30条の2第1項において、事業主(企業)に対してその防止措置義務が新たに定められました。

職場におけるパワーハラスメントについて、労働施策総合推進法30条の2第1項に定義が定められています。

(雇用管理上の措置)
第30条の2
1 事業主は、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であつて、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。
2~6 (略)

労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」e-gov法令検索 電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ

以下の3つの要件を満たすものは、パワーハラスメントといえます。

パワーハラスメントの3要件
① 優位的な関係に基づいて(優位性を背景に)行われること
具体例:・職務上の地位が上位の者による行為
    ・同僚又は部下による行為で、当該行為を行う者が業務上必要な知識や豊富な経験を有しており、当該者の協力を得なければ業務の円滑な遂行を行うことが困難であるもの
② 業務の適正な範囲を超えて行われること
具体例:・業務上明らかに必要性のない行為
    ・業務の目的を大きく逸脱した行為
③ 身体的若しくは精神的な苦痛を与えること、又は就業環境を害すること
具体例:・暴力により傷害を負わせる行為
    ・著しい暴言を吐く等により人格を否定する行為

参照元│「パワーハラスメントの定義について」雇用環境・均等局

実際にパワーハラスメントが疑われる事象が発生した場合には、上記の定義に基づき、3要件に該当するかを検討していく必要があります。

特に問題となりやすいのは②の要件であり、客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、パワーハラスメントには該当しません。

なお、パワーハラスメントというと、上司・部下の上下関係の中で行われる行為が典型例ですが、①のとおり、同僚同士のいじめ、同僚や部下から上司の「逆パワハラ」といわれるものも、法律上はパワーハラスメントに該当する可能性があることに注意しましょう。

「職場」の定義

パワハラに該当するのは「職場」でなされる行為です。「職場」とは、事業主が雇用する労働者が業務を遂行する場所を意味します。

労働者が普段勤務しているオフィス・工場・作業現場などが「職場」の典型例です。それ以外にも、出張先・業務用車両の中・取引先との打ち合わせ場所・接待の席などが「職場」に該当します。

勤務時間外に滞在している場所であっても、実質的に会社の業務の延長であると評価される場合には「職場」に該当する可能性があります。「職場」に該当するかどうかの判断に当たっては、以下の要素などが総合的に考慮されます。

  • その場でなされた行為と業務との関連性
  • その場でなされた会合の参加者の顔ぶれ・人数
  • 参加・対応が強制的かどうか など

「労働者」の定義

パワハラに該当するのは「労働者」に対する行為です。「労働者」には、会社と雇用契約を締結しているすべての者が含まれます。

「労働者」に当たる者の例

✅ 正社員
✅ 契約社員
✅ パート・アルバイト
✅ 派遣労働者(派遣社員)
など

なお派遣労働者については、雇用主となるのは派遣元事業主ですが、実際に指揮命令を行う派遣先も、派遣労働者に対するパワハラ防止措置を講ずる必要があります(労働者派遣法47条の4)。

これに対して、会社との間で雇用契約を締結していない者は、原則として「労働者」に該当しません。

「労働者」に当たらない者の例

✅ 会社と業務委託契約を締結する者(フリーランス、一人親方など)
✅ 会社と請負契約を締結する者(工事請負業者など)
✅ 会社と委任契約を締結する者(弁護士、税理士など)
✅ 会社と準委任契約を締結する者(SESなど)
など

ただし、会社が上記の者に対して、仕事の進め方や時間配分などについて具体的な指示を行っている場合は「偽装請負」に該当し、「労働者」に当たると評価される可能性があるので注意が必要です。もしこれらの者が労働者と評価される場合、会社はパワハラ防止措置を講じる義務を負います。

「優越的な関係」の定義

パワハラの3要件の1つ目は、「優越的な関係」を背景とした言動であることです。

「優越的な関係」とは、会社の業務を遂行するに当たって、労働者が行為者の言動・指示などにつき抵抗・拒絶できない蓋然性(可能性)が高い関係を意味します。よりかみ砕いて言えば、加害者の方が被害者よりも立場が強く、被害者が加害者に逆らいにくい場合に「優越的な関係」が認められます。

「優越的な関係」の例

✅ 上司と部下の関係
→上司の部下に対する言動が、「優越的な関係」を背景としたものに当たります。

✅ 集団と個人の関係
→労働者の集団が数に物を言わせて、一人の労働者に対して行う言動が「優越的な関係」を背景としたものに当たります。たとえば、部下が集団で上司に対して行う言動などが例に挙げられます。

✅ 知識・経験が豊富な労働者とそうでない労働者の関係
→知識・経験が豊富な労働者のそうでない労働者に対する言動は、「優越的な関係」を背景としたものに当たることがあります。知識・経験が豊富な労働者の協力を得なければ、業務を円滑に遂行することが困難なケースがあるからです。
知識・経験が豊富な労働者が部下、そうでない労働者が上司の場合にも、「優越的な関係」が認められる可能性があります。

「業務上必要かつ相当な範囲」の定義

パワハラの3要件の2つ目は、「業務上必要かつ相当な範囲を超えた」言動であることです。

「業務上必要かつ相当な範囲を超えた」言動とは、社会通念に照らして業務上の必要性がなく、又はその態様が相当でない言動を意味します。客観的に見て適正な業務指示や指導を、パワハラから除外する目的で設けられた要件です。

業務上明らかに不必要な言動に加えて、業務指示や指導の目的自体は正当であっても、過剰な叱責・侮辱などが見られる場合には「業務上必要かつ相当な範囲」を超えていると評価される可能性があります。

なお、言動が「業務上必要かつ相当な範囲」を超えているかどうかを判断するためには、以下の要素を総合的に考慮すべきと考えられます。

  • 言動の目的
  • 言動を受けた労働者の問題行動の有無・内容・程度など、言動が行われた経緯・状況
  • 業種・業態
  • 業務の内容・性質
  • 言動の態様・頻度・継続性
  • 労働者の属性(経験年数・年齢・障害の有無・日本人か外国人かなど)
  • 心身の状況(精神的・身体的な状況、疾患の有無など)
  • 行為者と労働者の関係性 など

「労働者の就業環境が害されること」の定義

パワハラの3要件の3つ目は、「労働者の就業環境が害される」言動であることです。「就業環境が害される」とは、労働者が身体的・精神的な苦痛を受け、就業環境が不快なものとなったために能力の発揮に重大な悪影響が生じるなど、就業上看過できない程度の支障が生じることを意味します。

たった1度であっても強い身体的・精神的苦痛を受けた場合には、それだけで「就業環境が害される」言動と認められる可能性があります。これに対して、1回当たりの身体的・精神的苦痛は小さいとしても、それが執拗に何度も長期間にわたって繰り返された場合には、やはり「就業環境が害される」と評価されることがあります。

なお、言動によって「労働者の就業環境が害される」かどうかは、「平均的な労働者の感じ方」を基準に判断すべきと解されています。

「平均的な労働者の感じ方」とは、同様の状況で同じ言動を受けた場合に、社会一般の労働者が、就業上看過できない程度の支障が生じるほどの苦痛を受けるかどうかということです。つまり、言動を受けた労働者の主観によって判断されるのではなく、あくまでも言動の内容・性質を客観的に考慮して判断される点に留意しましょう。

パワーハラスメントに該当する6つの類型

職場のパワーハラスメントに該当する行為としては、以下の6つの類型が挙げられます。

パワーハラスメントに該当する6つの類型

①身体的な攻撃(暴行・傷害)
②精神的な攻撃(脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言)
③人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)
④過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制・仕事の妨害)
⑤過小な要求(業務上の合理性なく能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じること・仕事を与えないこと)
⑥個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)

身体的な攻撃(暴行・傷害)

「身体的な攻撃」とは、文字どおり、殴る・蹴るなどの暴行行為を指します。また、物を投げつけたがあたらなかった場合のように、身体に直接危害を加えない間接的な暴力もその対象となりえます。

指導に熱が入り手を出してしまう、繰り返しミスをする部下に対し腹が立って叩くなど、指導目的であっても直接的な暴行行為をすると、業務の適正の範囲を超えているとされ、パワハラの類型である身体的な攻撃に該当する可能性が高くなります。

精神的な攻撃(脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言)

「精神的な攻撃」とは、人格を否定するような発言をするといった名誉毀損・侮辱・ひどい暴言・脅迫などの行為を指します。

大勢の前で叱責する行為、大勢を宛先に入れたメールで暴言を吐くなど他の従業員の面前で中傷するような行為、「給料泥棒」「役立たず」など人格を否定するような侮辱行為、などは精神的な攻撃に該当する可能性があります。

1回でも強い打撃を与えるような精神的な攻撃があれば、パワハラに該当する可能性もありますが、暴言などを繰り返し行っていれば、パワハラに該当する可能性はより高くなります。

人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)

「人間関係からの切り離し」とは、自身の意に沿わない社員に対して、仕事を外したり、長期間にわたり別室に隔離したり、自宅研修させたりするなどの意図的な隔離や無視を指します。

退職に追い込むために、配転命令を出すこと・懲罰的な隔離をすること・孤立させることなどは、人間関係からの切り離しに該当する可能性があります。

過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制・仕事の妨害)

「過大な要求」とは、上司が部下に対して、長期間にわたる肉体的苦痛を伴う過酷な環境下での、勤務に直接関係のない作業を命ずるといった、達成困難な課題やノルマを課すなどの行為を指します。

長期にわたり他の従業員より高いノルマを課すなどの過大な業務・ノルマの強制、業務上の必要がない業務を行う命令は、過大な要求に該当する可能性があります。

過小な要求(業務上の合理性なく能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じること・仕事を与えないこと)

「過小な要求」とは、管理職である部下を退職させるため、その上司が誰でも遂行可能な業務を行わせるといった、客観的に見て過小な役割、生産性のない仕事を振るなどの行為を指します。

管理職に対して、退職させるために受付窓口業務に配置転換するなどの恣意的な降格や、合理的な理由もなく自宅待機を命じる行為、「もう仕事はするな」と言い放置する行為などは、過小な要求に該当する可能性があります。

個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)

「個の侵害」とは、集団で同僚1人に対して、職場内外で継続的に監視する、他の従業員に接触しないよう働きかける、私物の写真撮影をするといった、私的な生活・プライバシーに過剰に立ち入る行為を指します。

特定の思想・信条であることを理由とした監視などの嫌がらせや、交際関係などのプライバシーを過度に詮索したり口出ししたりするといったプライバシーへの過剰な立ち入りは、個の侵害に該当する可能性があります。

パワーハラスメントを防止すべき理由

パワーハラスメントは、被害者に対して、身体的・精神的に大きなダメージを与えることはもちろん、行為者(加害者)および企業にも、大きな影響があります。

損害賠償請求を受ける

民法上、行為者、企業それぞれが、被害者から損害賠償請求を受ける可能性があります。

賠償額は高額になることがあります。会社の役員等が、被害者に暴行・暴言、謝罪強要等を行ったことと被害者の自殺に因果関係を認めて、裁判所が会社および行為者に5,400万円の支払いを命じた事例(名古屋地裁2014年1月15日判決判例時報2216号109頁)等は、会社ヘの経済的なインパクトも大きくなることを示しています。

民事上の責任

行為者:民法709条の不法行為責任

企 業:民法415条の債務不履行責任(安全配慮義務違反)
    民法715条の不法行為責任(使用者責任)

刑事罰を科せられる

パワーハラスメントが刑法上の犯罪に該当すると、当然罪を問われる可能性があります。 身体的な攻撃が暴行罪・傷害罪に該当する可能性があるほか、暴言が名誉棄損罪・侮辱罪・脅迫罪に該当することがあります。

また、義務のないことを行わせる行為(例:行ってもいないことに対し、謝罪文の提出を命じる行為)には、強要罪が成立する可能性があります。

被害者が刑事告訴するなどして、行為者が起訴されれば、刑事罰の対象となります。

刑事上の責任

名誉棄損罪
侮辱罪
脅迫罪
暴行罪
傷害罪
強要罪
etc…

社会的信用・職場の安定性を失う

企業でパワーハラスメントが発生した場合、行為者個人はもちろん、企業が著しく社会的信用を失う恐れ、職場全体の安定性を失う恐れがあります。

例えば、インターネットでパワーハラスメントを起こした企業という事実が拡散されると、企業が保有しているSNSが炎上する、消費者が商品を購入しなくなり売り上げが低下するなど、大きなダメージを受ける可能性があります。B to Bビジネスの場合であっても、取引先からの信用を失い、失注するなどの不利益が生じかねません。

また、内部から企業の収益性を害するような結果にもなります。職場の雰囲気が悪くなると、生産性の低下をもたらします。その結果、計画通りに事業活動が進まない・人材流出が起こるなど、短期~中期での企業活動に深刻な影響が出ることがあります。

また、人事面でも影響があります。従業員の離職・人材流出は典型的な悪影響ですが、パワーハラスメントが明るみに出た企業では採用活動に支障が出ることもあります。少子高齢化が進む昨今においては、採用活動は長期の経営戦略の重要課題であり、無視できない悪影響が生じる可能性があります。

厚生労働省の調査でも、下記のグラフの通り、パワーハラスメントが企業に損失をもたらすことが示されています。下記のグラフの損失が複数組み合わさり、さらに大きな損失を生む可能性があることも踏まえると、企業はパワーハラスメント対策をすべきといえるでしょう。

平成26年版厚生労働白書 ~健康・予防元年~」厚生労働省

パワーハラスメント予防のために求められる措置

最後に、労働施策総合推進法で会社の義務とされ、パワーハラスメントを予防・防止するための「労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置」の具体的内容とそのポイントについてご紹介します。

「措置」には、次のようなものがあります。

  • 事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発
  • 相談(苦情を含む。以下同じ。)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
  • 職場におけるパワーハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応
  • 相談等をしたことを原因とする不利益取り扱い禁止
  • 相談等の際のプライバシー保護

研修などで、どんな行為がパワーハラスメントに該当するのか、パワーハラスメントが起こるとどういう影響があるのかといった知識や相談窓口の使い方について啓発すること、規定を強化することなどは基本的なコンプライアンス施策です。

また、相談・通報窓口の設置においては、パワハラを相談したことや通報したことだけを理由に人事上の不利益を受けることはないことや相談・通報をしてもプライバシーが守られることを就業規則やパワハラ防止規定等で定め、周知しておきましょう。

実際にパワハラ事案が発生したときには、迅速・適切に対応できるようにするために対応のためのフローをつくっておくこと・事実確認と情報共有のルールなどをあらかじめ定めておくことなどが役に立ちます。パワハラ事案は人事部・法務部などの複数部署にまたがることが多いので、文書化・窓口の一本化などが体制整備のポイントです。

加えて職場環境の改善を目指したコミュニケーションに取り組むこと、困ったときにはメンタルヘルス相談などの窓口も使えるようにしておくことなどは、予防だけでなくパワハラによる悪影響を最小限にするのに役立ちます。義務とされる措置と併せて取り組むと、企業のリスク低減策として有効です。

この記事のまとめ

パワーハラスメントの記事は以上です。
最新の記事に関する情報は、契約ウォッチのメルマガで配信しています。ぜひ、メルマガにご登録ください!

参考文献

石嵜 信憲ほか著『ハラスメント防止の基本と実務』中央経済社、2020年

パワーハラスメント対策導入マニュアル(第4版) 予防から事後対応までサポートガイド 」厚生労働省

事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針 」厚生労働省(2020年厚生労働省告示第5号)