独占禁止法で規制される不公正な取引方法とは?基本を分かりやすく解説!

この記事のまとめ

独占禁止法で禁止される「不公正な取引方法」を解説!!

独占禁止法は、「不公正な取引方法」を禁止しています。独占禁止法は、公正・自由な競争の実現を目指す法律ですが、 「不公正な取引方法」は公正・自由な競争を阻害すると考えられています。独占禁止法で禁止されている「不公正な取引方法」とはどのような行為か、 理解しておきましょう。

この記事では、独占禁止法の知識がない方にも基本から分かりやすく解説します。

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「不公正な取引方法」って、どのような行為を指すのでしょうか?

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「不公正な取引方法」には様々な行為が含まれますよ。具体的にどんな行為が禁止されるのか、見ていきましょう。

※この記事は、2020年11月30日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。

※この記事では、法令名を次のように記載しています。
・独禁法…私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和22年法律第54号)

独占禁止法とは?

独占禁止法の目的

独占禁止法の目的は、公正かつ自由な競争を促進し、 事業者が自主的な判断で自由に活動できるようにすることです。市場メカニズムが正しく 機能していれば、事業者は、自らの創意工夫によって、より安くて優れた商品を提供して 売上高を伸ばそうとしますし、 消費者は、ニーズに合った商品を選択することができ、 事業者間の競争によって、消費者の利益が確保されることになります。 このような考え方に基づいて競争を維持・促進する政策は「競争政策」と呼ばれています。
また、独占禁止法の補完法として、下請事業者に対する親事業者の不当な取扱いを規制する 「下請法」があります。

引用元│ 公正取引委員会「独占禁止法の概要」

独占禁止法の概要については、以下の記事で解説しています。

独占禁止法で禁止される「私的独占」については、以下の記事で解説しています。

不公正な取引方法とは?

独占禁止法では 「不公正な取引方法」が禁止されています。

第19条
事業者は、不公正な取引方法を用いてはならない。

私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律– e-Gov法令検索 – 電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ

「不公正な取引方法」は 独占禁止法2条9項で定義されています。

第2条
1~8 略
9 この法律において「不公正な取引方法」とは、次の各号のいずれかに該当する行為をいう。
⑴ 正当な理由がないのに、競争者と共同して、次のいずれかに該当する行為をすること。
イ ある事業者に対し、供給を拒絶し、又は供給に係る商品若しくは役務の数量若しくは内容を制限すること。
ロ 他の事業者に、ある事業者に対する供給を拒絶させ、又は供給に係る商品若しくは役務の数量若しくは内容を制限させること。
⑵ 不当に、地域又は相手方により差別的な対価をもつて、商品又は役務を継続して供給することであつて、他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがあるもの
⑶ 正当な理由がないのに、商品又は役務をその供給に要する費用を著しく下回る対価で継続して供給することであつて、他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがあるもの
⑷ 自己の供給する商品を購入する相手方に、正当な理由がないのに、次のいずれかに掲げる拘束の条件を付けて、当該商品を供給すること。
イ 相手方に対しその販売する当該商品の販売価格を定めてこれを維持させることその他相手方の当該商品の販売価格の自由な決定を拘束すること。
ロ 相手方の販売する当該商品を購入する事業者の当該商品の販売価格を定めて相手方をして当該事業者にこれを維持させることその他相手方をして当該事業者の当該商品の販売価格の自由な決定を拘束させること。
⑸ 自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して、正常な商慣習に照らして不当に、次のいずれかに該当する行為をすること。
イ 継続して取引する相手方(新たに継続して取引しようとする相手方を含む。ロにおいて同じ。)に対して、当該取引に係る商品又は役務以外の商品又は役務を購入させること。
ロ 継続して取引する相手方に対して、自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させること。
ハ 取引の相手方からの取引に係る商品の受領を拒み、取引の相手方から取引に係る商品を受領した後当該商品を当該取引の相手方に引き取らせ、取引の相手方に対して取引の対価の支払を遅らせ、若しくはその額を減じ、その他取引の相手方に不利益となるように取引の条件を設定し、若しくは変更し、又は取引を実施すること。
⑹ 前各号に掲げるもののほか、次のいずれかに該当する行為であつて、公正な競争を阻害するおそれがあるもののうち、公正取引委員会が指定するもの
イ 不当に他の事業者を差別的に取り扱うこと。
ロ 不当な対価をもつて取引すること。
ハ 不当に競争者の顧客を自己と取引するように誘引し、又は強制すること。
ニ 相手方の事業活動を不当に拘束する条件をもつて取引すること。
ホ 自己の取引上の地位を不当に利用して相手方と取引すること。
ヘ 自己又は自己が株主若しくは役員である会社と国内において競争関係にある他の事業者とその取引の相手方との取引を不当に妨害し、又は当該事業者が会社である場合において、その会社の株主若しくは役員をその会社の不利益となる行為をするように、不当に誘引し、唆し、若しくは強制すること。

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法定類型と指定類型(一般指定・特殊指定)

独占禁止法2条9項によると、不公正な取引方法は、以下のように分類されます。

法定類型独占禁止法2条9項1号ないし5号により直接規定されているもの
指定類型独占禁止法2条9項6号に基づき公正取引委員会が指定するもの
一般指定・・・業種横断的にすべての事業分野に適用されるもの
特殊指定・・・特定の業務分野または特定の取引方法にのみ適用されるもの
※現在、「大規模小売業者が行う不公正な取引方法」、「特定荷主が行う不公正な取引」、及び「新聞業」の3つについて指定されている

不公正な取引方法の類型(事例あり)

「不公正な取引方法」は、おおむね次の6つに分けられます。

  1. 不当な差別的取扱い
  2. 不当対価取引
  3. 不当な顧客誘引・取引強制
  4. 事業活動の不当拘束
  5. 取引上の地位の不当利用
  6. 競争者に対する不当な取引妨害・内部干渉

6つの類型について、それぞれ詳しく見ていきましょう。

①不当な差別的取扱い

不当に他の事業者を差別的に取り扱うことを言います。 特定の事業者との取引を拒絶したり(取引拒絶)、取引する際の条件において差別すること(差別的取扱い)などを指します。

  • 取引拒絶
  • 差別的取扱い

取引拒絶

取引拒絶は、次の2つの類型に分けられます。

  • 共同の取引拒絶
  • その他の取引拒絶

「競争者と共同して」行う取引拒絶は次の通り規制されています。
共同の取引拒絶は、原則として、公正競争を阻害すると考えられています。

第2条
9 この法律において「不公正な取引方法」とは、次の各号のいずれかに該当する行為をいう。
⑴ 正当な理由がないのに、 競争者と共同して、次のいずれかに該当する行為をすること。
イ ある事業者に対し、供給拒絶し、 又は供給に係る商品若しくは役務の数量若しくは内容を制限すること。
ロ 他の事業者に、ある事業者に対する 供給拒絶させ、 又は供給に係る商品若しくは役務の数量若しくは内容を制限させること。
⑵~⑸ 略
⑹ 前各号に掲げるもののほか、次のいずれかに該当する行為であつて、公正な競争を阻害するおそれがあるもののうち、公正取引委員会が指定するもの
イ 不当に他の事業者を差別的に取り扱うこと。
ロ~へ 略

引用元│私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律– e-Gov法令検索 – 電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ

【一般指定】
(共同の取引拒絶)
1  正当な理由がないのに、自己と競争関係にある他の事業者(以下「競争者」という。)と共同して、次の各号のいずれかに掲げる行為をすること。
(1) ある事業者から商品若しくは役務の 供給を受けることを拒絶し、 又は供給を受ける商品若しくは役務の数量若しくは内容を制限すること。
(2) 他の事業者に、ある事業者から商品若しくは役務の供給を受けることを 拒絶させ、又は供給を受ける商品若しくは 役務の数量若しくは内容を制限させること。

公正取引委員会「不公正な取引方法(昭和五十七年六月十八日公正取引委員会告示第十五号)」
事例

勧告審決平成12年10月31日
特定の土木工法に不可欠なロックマン機械の独占的販売業者AとAからこれを購入して同工法を施工する土木工事業者17社が共同して次の取引拒絶を行った。
A:他の施工業者(上記17社にとっての競争者)にロックマン機械を貸与・販売すること
17社:他の施工業者にロックマン機械を貸与・転売すること
→特段の正当化事由なく新規参入を阻止したと判断された。

その他の取引拒絶は、次の通り規制されています。
「競争者以外の者」と共同して取引拒絶する場合も規制対象となります。

【一般指定】
(その他の取引拒絶)
2  不当に、ある事業者に対し取引を拒絶し若しくは 取引に係る商品若しくは役務の数量若しくは内容を制限し、又は他の事業者にこれらに該当する行為をさせること。

公正取引委員会「不公正な取引方法(昭和五十七年六月十八日公正取引委員会告示第十五号)」
事例

勧告審決平成13年7月27日
多くの電化製品において有力な事業者であるYが、廉売店に対する自社製品の流通経路を調査し、代理店等に対して、 廉売店への自社製品の直接または間接の販売を拒絶させていたことは旧一般指定2項(=現一般指定2項)に当たると判断された。

差別対価・取引条件などの差別的取扱い

「差別対価・取引条件などの差別的取扱い」は、次の3つの類型に分けられます。

  • 差別対価
  • 取引条件などの差別取扱い
  • 事業者団体における差別取扱いなど

特定の商品・役務について個別の状況により対価やその他の取引条件に格差が生じることは当然で、直ちに公正競争を阻害するものではありません。

例外的に、有力な事業者が差別的な対価その他の取引条件を設定することに、 反競争的な目的・効果が生じる場合があり、それは規制の対象となります。

第2条
1~8 略
9 この法律において「不公正な取引方法」とは、次の各号のいずれかに該当する行為をいう。
⑴ 略
⑵ 不当に、地域又は相手方により 差別的な対価をもって、 商品又は役務を継続して供給することであって、他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがあるもの
⑶~⑸ 略
⑹ 前各号に掲げるもののほか、次のいずれかに該当する行為であって、公正な競争を阻害するおそれがあるもののうち、公正取引委員会が指定するもの
イ 不当に他の事業者を差別的に取り扱うこと。
ロ 不当な対価をもつて取引すること。
ハ~へ 略

引用元│私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律– e-Gov法令検索 – 電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ

【一般指定】
(差別対価)
3 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和二十二年法律第五十四号。以下「法」という。) 第二条第九項第二号に該当する行為のほか、不当に、地域又は相手方により 差別的な対価をもつて、商品若しくは役務を供給し、 又はこれらの供給を受けること。
(取引条件等の差別取扱い)
4 不当に、ある事業者に対し 取引の条件又は実施について有利な又は不利な取扱いをすること。
(事業者団体における差別取扱い等)
5 事業者団体若しくは共同行為からある事業者を 不当に排斥し、又は事業者団体の内部若しくは共同行為においてある事業者を 不当に差別的に取り扱い、その事業者の事業活動を困難にさせること。

公正取引委員会「不公正な取引方法(昭和五十七年六月十八日公正取引委員会告示第十五号)」
事例

勧告審決昭55年2月7日
ビニルタイル(市況品)の総販売数量の大部分を占めるYら製造4社は、ビニルタイルの価格カルテルを実施するとともに、カルテル価格を維持する目的で、取引相手方である工事店を組合員とする共同組合の設立を援助し、非組合員に対して、組合員向け価格よりも1枚あたり4~5円高い価格を設定した。 正当な理由がないのに、相手方により差別的な対価をもって市況品を供給していると判断された。

②不当対価取引

「不当対価取引」は、次の2つの類型に分けられます。

  • 不当に安価で供給して競争者を排除する「不当廉売」
  • 不当に高価で購入して競争者を排除する「不当高価購入」

以下では「不当廉売」について見ていきます。
公正取引委員会において、不当廉売に関する独占禁止法上の考え方(不当廉売ガイドライン)が定められています。

第2条
1~8 略
9 この法律において「不公正な取引方法」とは、次の各号のいずれかに該当する行為をいう。
⑴~⑵ 略
⑶ 正当な理由がないのに、商品又は役務をその 供給に要する費用を著しく下回る対価継続して供給することであつて、 他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがあるもの
⑷~⑸ 略
⑹ 前各号に掲げるもののほか、次のいずれかに該当する行為であつて、公正な競争を阻害するおそれがあるもののうち、 公正取引委員会が指定するもの
イ 不当に他の事業者を差別的に取り扱うこと。
ロ 不当な対価をもつて取引すること。
ハ~へ 略

引用元│私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律– e-Gov法令検索 – 電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ

【一般指定】
(不当廉売)
6 法第二条第九項第三号に該当する行為のほか、 不当に商品又は役務を低い対価供給し、他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがあること。

公正取引委員会「不公正な取引方法(昭和五十七年六月十八日公正取引委員会告示第十五号)」

「供給に要する費用を著しく下回る対価と」は、 廉売対象商品を供給しなければ発生しない費用を下回る対価、例えば、原材料費や仕入費用を下回る対価をいいます。

事例

東京高決昭和50年4月30日
Y新聞社が東海3県を販売地域とするY新聞を発行するにあたり、紙面のほとんどについて業務提携先のA新聞社から提供を受け、1か月の購読料を500円と設定した。
東京高裁は、原価を形成する要因が企業努力によるものではなく当該事業者にのみ妥当する特殊な事情によるものであるときは、 これを考慮の外におき、そのような事情のない一般の独立の事業者が自らの責任において、 その規模の企業を維持するために経済上通常計上すべき費目を基準としなければならないとして、業務提携による援助という特殊事情を除外した原価を812円と計算し、 原価を下回る対価に当たると判断した。

③不当な顧客誘引・取引強制

「不当な顧客誘引・取引強制」は、次の3つの類型に分けられます。

  • ぎまん的顧客誘引
  • 不当な利益による顧客誘引
  • 抱き合わせ販売その他の取引強制

ぎまん的顧客誘引

マルチ商法、無限連鎖講、過大な売り上げ予測によるフランチャイズ加盟店の募集など、 ぎまん的行為全般が規制されています。

第2条
1~8 略
9 この法律において「不公正な取引方法」とは、次の各号のいずれかに該当する行為をいう。
⑴~⑸ 略
⑹ 前各号に掲げるもののほか、次のいずれかに該当する行為であつて、公正な競争を阻害するおそれがあるもののうち、公正取引委員会が指定するもの
イ~ロ 略 
ハ 不当に競争者の顧客を自己と取引するように誘引し、又は強制すること
ヒ~へ 略

引用元│私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律– e-Gov法令検索 – 電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ

【一般指定】
(ぎまん的顧客誘引)
8 自己の供給する商品又は役務の内容又は取引条件その他これらの取引に関する事項について、 実際のもの又は競争者に係るものよりも著しく優良又は有利であると顧客に誤認させることにより、 競争者の顧客を自己と取引するように不当に誘引すること。

公正取引委員会「不公正な取引方法(昭和五十七年六月十八日公正取引委員会告示第十五号)」

不当な利益による顧客誘引

不当な景品、供応、融資、損失補填などによる誘引行為一般が規制されています。

第2条
1~8 略
9 この法律において「不公正な取引方法」とは、次の各号のいずれかに該当する行為をいう。
⑴~⑸ 略
⑹ 前各号に掲げるもののほか、次のいずれかに該当する行為であつて、公正な競争を阻害するおそれがあるもののうち、公正取引委員会が指定するもの
イ~ロ 略 
ハ 不当に競争者の顧客を自己と取引するように誘引し、又は強制すること
ヒ~へ 略

引用元│私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律– e-Gov法令検索 – 電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ

【一般指定】
(不当な利益による顧客誘引)
9 正常な商慣習に照らして不当な利益をもつて、 競争者の顧客を自己と取引するように誘引すること。

公正取引委員会「不公正な取引方法(昭和五十七年六月十八日公正取引委員会告示第十五号)」
事例

勧告審決平成3年12月2日
証券会社が、顧客に対し有価証券の売買その他の取引等につき、当該有価証券について生じた顧客の損失の全部もしくは一部を補填し、 またはこれらについて生じた顧客の利益に追加するため、当該顧客等に財産上の利益を提供する行為は、投資家が自己の判断と責任で 投資するという証券投資における自己責任原則に反し、証券取引の公正性を阻害するものであって、 証券業における正常な商慣習に反するものと判断された。

抱き合わせ販売その他の取引強制

不当にある商品に別の商品を抱き合わせて販売することにより、 取引先や顧客に対し、別の商品の購入を強要することなどが規制されています。

第2条
1~8 略
9 この法律において「不公正な取引方法」とは、次の各号のいずれかに該当する行為をいう。
⑴~⑸ 略
⑹ 前各号に掲げるもののほか、次のいずれかに該当する行為であつて、公正な競争を阻害するおそれがあるもののうち、公正取引委員会が指定するもの
イ~ロ 略 
ハ 不当に競争者の顧客を自己と取引するように誘引し、又は強制すること
二~へ 略

引用元│私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律– e-Gov法令検索 – 電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ

【一般指定】
(抱き合わせ販売等)
10 相手方に対し、不当に、商品又は役務の供給に併せて他の商品又は役務を自己又は自己の指定する事業者から 購入させ、 その他自己又は自己の指定する事業者と取引するように強制すること。

公正取引委員会「不公正な取引方法(昭和五十七年六月十八日公正取引委員会告示第十五号)」
事例

勧告審決平成10年12月14日
Y社が当時計算ソフトでシェア第1位の「エクセル」とシェアの小さかった「ワード」を併せてライセンスする契約を締結した結果、 「ワード」は「一太郎」に代わってシェア第1位になった。
この行為は一般指定10項に当たると判断された。

④事業活動の不当拘束

「事業活動の不当拘束」は、次の3つの類型に分けられます。

  • 再販売価格の拘束
  • 排他的条件付取引
  • 拘束条件付取引

再販売価格の拘束

再販売価格を直接または間接に拘束する行為が規制されています。
例えば、メーカーが自己の商品を購入する卸売業者に販売価格を指示してその価格で販売させる行為、 自己の商品を卸売業者から購入する小売業者の販売価格を指示して当該卸売業者をして小売業者に 指示価格で販売させる行為、などが規制されます。

第2条
1~8 略
9 この法律において「不公正な取引方法」とは、次の各号のいずれかに該当する行為をいう。
⑴~⑶ 略
⑷自己の供給する商品を購入する相手方に、正当な理由がないのに、次のいずれかに掲げる 拘束の条件を付けて、当該商品を供給すること。
イ 相手方に対しその販売する当該商品の販売価格を定めてこれを維持させることその他 相手方の当該商品の販売価格の自由な決定を拘束すること。
ロ 相手方の販売する当該商品を購入する事業者の当該商品の販売価格を定めて相手方をして当該事業者にこれを維持させることその他 相手方をして当該事業者の当該商品の販売価格の自由な決定を拘束させること。
⑸~⑹ 略

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排他的条件付取引

「相手方が競争者と取引しないこと」を条件として取引することについて規制されています。 例えば、全量購入契約、一手販売契約、などが規制されます。

第2条
1~8 略
9 この法律において「不公正な取引方法」とは、次の各号のいずれかに該当する行為をいう。
⑴~⑸ 略
⑹ 前各号に掲げるもののほか、次のいずれかに該当する行為であつて、公正な競争を阻害するおそれがあるもののうち、公正取引委員会が指定するもの
イ~ハ 略 
二 相手方の事業活動を不当に拘束する条件をもつて取引すること
ホ~へ 略

引用元│私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律– e-Gov法令検索 – 電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ

【一般指定】
(排他条件付取引)
11 不当に、 相手方が競争者と取引しないことを条件として当該相手方と取引し、 競争者の取引の機会を減少させるおそれがあること。

公正取引委員会「不公正な取引方法(昭和五十七年六月十八日公正取引委員会告示第十五号)」

拘束条件付取引

再販売価格の拘束、排他的条件付取引、以外のさまざまな拘束条件付きの取引を規制します。
例えば、自己の供給する商品以外の価格の拘束、販売先の拘束、販売地域の制限、販売方法の制限、競争品取扱い制限、などが規制されます。

第2条
1~8 略
9 この法律において「不公正な取引方法」とは、次の各号のいずれかに該当する行為をいう。
⑴~⑸ 略
⑹ 前各号に掲げるもののほか、次のいずれかに該当する行為であつて、公正な競争を阻害するおそれがあるもののうち、公正取引委員会が指定するもの
イ~ハ 略 
二 相手方の事業活動を不当に拘束する条件をもつて取引すること
ホ~へ 略

引用元│私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律– e-Gov法令検索 – 電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ

【一般指定】
(拘束条件付取引)
12 法第2条第9項第4号又は前項に該当する行為のほか、 相手方とその取引の相手方との取引その他相手方の事業活動を不当に拘束する条件をつけて、当該相手方と取引すること。

公正取引委員会「不公正な取引方法(昭和五十七年六月十八日公正取引委員会告示第十五号)」
事例

福岡地裁平成23年9月15日
フランチャイジーにデイリー商品の値下げ販売をやめるよう強く指導するとともに、応じない場合にはフランチャイズ契約を 解除する等の不利益を示唆した行為は不当な拘束条件付取引であると判断された。

⑤取引上の地位の不当利用

「取引上の地位の不当利用」は、次の2つの類型に分けられます。

  • 取引上の優越的地位の濫用
  • 取引の相手方の役員選任への不当干渉

取引上の優越的地位の濫用

自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して、 正常な商慣習に照らして不当に次の行為を行うことが規制されています。

  1. 購入強制
  2. 経済上の利益を提供させる
  3. 相手方に不利益となるような取引条件の設定、変更または取引の実施

第2条
1~8 略
9 この法律において「不公正な取引方法」とは、次の各号のいずれかに該当する行為をいう。
⑴~⑷ 略
⑸  自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して、正常な商慣習に照らして不当に、次のいずれかに該当する行為をすること。
イ 継続して取引する相手方(新たに継続して取引しようとする相手方を含む。ロにおいて同じ。)に対して、 当該取引に係る商品又は役務以外の商品又は役務を購入させること。
ロ 継続して取引する相手方に対して、自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させること。
ハ 取引の相手方からの取引に係る商品の受領を拒み、取引の相手方から取引に係る商品を受領した後当該商品を当該取引の 相手方に引き取らせ、取引の相手方に対して取引の対価の支払を遅らせ、若しくはその額を減じ、その他 取引の相手方に不利益となるように取引の条件を設定し、若しくは変更し、又は取引を実施すること。
⑹ 前各号に掲げるもののほか、次のいずれかに該当する行為であつて、公正な競争を阻害するおそれがあるもののうち、 公正取引委員会が指定するもの
イ~二 略
ホ 自己の取引上の地位を不当に利用して相手方と取引すること。
へ 略

私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律– e-Gov法令検索 – 電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ
事例

勧告審決平成17年12月26日
総資産額でみて銀行業界トップのY銀行が、不良債権処理のため公的資金の注入を受けたことにより収益の向上に努めている状況下において、 変動金利で融資を行う機会を利用して金利スワップ(融資とは別の商品)の購入を融資先企業に提案することにより、 その取引上の地位が同銀行に劣っている中小企業に金利スワップの購入を余儀なくさせているとして優越的地位の濫用に該当するとされた。

取引の相手方の役員選任への不当干渉

自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して、正常な商慣習に照らして不当に ①役員の選任をあらかじめ自己の指示に従わせる、または②承認を受けさせる、ことが規制されています。

第2条
1~8 略
9 この法律において「不公正な取引方法」とは、次の各号のいずれかに該当する行為をいう。
⑴~⑸ 略
⑹ 前各号に掲げるもののほか、次のいずれかに該当する行為であつて、公正な競争を阻害するおそれがあるもののうち、 公正取引委員会が指定するもの
イ~二 略
ホ 自己の取引上の地位を不当に利用して相手方と取引すること。
へ 略

引用元│私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律– e-Gov法令検索 – 電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ

【一般指定】
(取引の相手方の役員選任への不当干渉)
13  自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して、 正常な商慣習に照らして不当に、取引の相手方である会社に対し、 当該会社の役員(法第2条第3項の役員をいう。以下同じ。) の選任についてあらかじめ自己の指示に従わせ、又は自己の承認を受けさせること。

公正取引委員会「不公正な取引方法(昭和五十七年六月十八日公正取引委員会告示第十五号)」

⑥競争者に対する不当な取引妨害・内部干渉

「競争者に対する不当な取引妨害・内政干渉」は、次の2つの類型に分けられます。

  • 競争者に対する取引妨害
  • 競争会社に対する内部干渉

競争者に対する取引妨害

国内において競争関係にある事業者とその取引相手との取引を不当に妨害することが規制されています。

第2条
1~8 略
9 この法律において「不公正な取引方法」とは、次の各号のいずれかに該当する行為をいう。
⑴~⑸ 略
⑹ 前各号に掲げるもののほか、次のいずれかに該当する行為であつて、公正な競争を阻害するおそれがあるもののうち、公正取引委員会が指定するもの
イ~ホ 略
へ 自己又は自己が株主若しくは役員である会社と国内において 競争関係にある他の事業者とその取引の相手方との取引を不当に妨害し、 又は当該事業者が会社である場合において、その会社の株主若しくは役員をその会社の不利益となる行為をするように、不当に誘引し、 唆し、若しくは強制すること。

引用元│私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律– e-Gov法令検索 – 電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ

【一般指定】
(競争者に対する取引妨害)
14 自己又は自己が株主若しくは役員である会社と国内において 競争関係にある他の事業者とその取引の相手方との取引について、 契約の成立の阻止、契約の不履行の誘引その他いかなる方法をもつてするかを問わず、その 取引を不当に妨害すること。

公正取引委員会「不公正な取引方法(昭和五十七年六月十八日公正取引委員会告示第十五号)」
事例(「妨害行為」にあたるとされた事例)

勧告審決昭和35年2月9日
脅迫、威圧、誹謗中傷、物理的妨害、内部干渉など行為の外形からみて反社会的・反倫理的であって競争手段として不公正な行為
勧告審決昭和38年1月9日
競争者の顧客を奪取する行為が、債権侵害として不法行為に該当するような態で行われる場合
大阪高判平成5年7月30日
取引拒絶等による競争者排除
勧告審決平成8年3月22日
輸入総代理店契約を背景として、輸入総代理店または供給業者が、価格維持を目的として、第三者による並行輸入を阻害する場合

競争会社に対する内部干渉

競争者である会社の内部の意思決定や業務執行に干渉して、 当該会社の株主や役員をして競争者の不利益となる行為をするようにさせる行為が規制されています。

第2条
1~8 略
9 この法律において「不公正な取引方法」とは、次の各号のいずれかに該当する行為をいう。
⑴~⑸ 略
⑹ 前各号に掲げるもののほか、次のいずれかに該当する行為であつて、公正な競争を阻害するおそれがあるもののうち、公正取引委員会が指定するもの
イ~ホ 略
へ 自己又は自己が株主若しくは役員である会社と国内において競争関係にある他の事業者とその取引の相手方との取引を不当に妨害し、 又は当該事業者が会社である場合において、その会社の株主若しくは役員をその 会社の不利益となる行為をするように、不当に誘引し、唆し、若しくは強制すること。

引用元│私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律– e-Gov法令検索 – 電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ

【一般指定】
(競争会社に対する内部干渉)
15 自己又は自己が株主若しくは役員である会社と国内において 競争関係にある会社の株主又は役員に対し、株主権の行使、株式の譲渡、秘密の漏えい その他いかなる方法をもつてするかを問わず、その 会社の不利益となる行為をするように、不当に誘引し、そそのかし、又は強制すること。

公正取引委員会「不公正な取引方法(昭和五十七年六月十八日公正取引委員会告示第十五号)」

不公正な取引方法を用いた場合の法的責任

不公正な取引方法を用いた事業者は、公正取引委員会による排除措置命令・課徴金納付命令の対象となるほか、損害を被った取引先等から差止請求や損害賠償請求を受ける可能性があります。

公正取引委員会による排除措置命令

不公正な取引方法を用いた事業者は排除措置命令の対象となり、公正取引委員会により当該行為の差止めや、関連する契約条項の削除などを命じられます(独占禁止法20条1項)。

ヒー

排除措置命令って何ですか?

ムートン

不公正な取引方法に該当する行為をやめさせる(排除する)ため、事業者に対して必要な措置を命ずることです。

排除措置命令に対しては取消訴訟の提起が6か月間認められますが、出訴期間を経過すると排除措置命令が確定します。確定した排除措置命令に違反した場合、違反者には「2年以下の懲役または300万円以下の罰金」が科されるほか(独占禁止法90条3号)、法人にも「3億円以下の罰金」が科されるので注意が必要です(独占禁止法95条1項2号)。

公正取引委員会による課徴金納付命令

不公正な取引方法のうち、以下の行為は公正取引委員会による課徴金納付命令(一定の制裁金(課徴金)の納付を命ずる行政処分)の対象です。

  • 供給に関する取引拒絶(独占禁止法20条の2)
  • 差別対価・取引条件などの差別的取扱い(独占禁止法20条の3)
  • 不当廉売(独占禁止法20条の4)
  • 再販売価格の拘束(独占禁止法20条の5)
  • 優越的地位の濫用(独占禁止法20条の6)

課徴金額は、違反行為期間における売上額の3%(優越的地位の濫用は1%)です。ただし、優越的地位の濫用以外のものについては、調査開始日前10年以内に同一の違反行為によって排除措置命令または課徴金納付命令を受けた場合のみ、課徴金納付命令の対象となります。

取引先等による差止請求・損害賠償請求

不公正な取引方法によって利益を侵害され、著しい損害が生じている者、または生じるおそれがある者は、違反事業者に対して侵害の停止または予防を請求できます(差止請求。独占禁止法24条)。

また、排除措置命令が確定した後であれば、違反事業者に対して、不公正な取引方法によって実際に被った損害の賠償を請求することもできます(独占禁止法25条、26条1項)。なお、損害賠償請求権の消滅時効期間は、排除措置命令の確定から3年です(独占禁止法26条2項)。

参考文献

公正取引委員会ウェブサイト「独占禁止法」

土田和博他「条文から学ぶ独占禁止法」第2版

白石忠志「独占禁止法」第3版

菅久修一ほか「独占禁止法」第4版