工事請負契約書とは? 作成の目的・注意点などを解説!

この記事のまとめ

「工事請負契約書」とは、注文者が請負人に対して何らかの工事(建物の新築や増改築など)を発注し、請負人がこれを受注する内容の契約書です。

工事請負契約には、建設業法による規制が適用されます。建設業法では、工事請負契約に定めるべき条項や、当事者が負う義務などが定められています。

工事請負契約を締結する際には、建設業法の規制内容を踏まえた内容になっているかをよく確認しましょう。

この記事では「工事請負契約書」について、作成の目的や建設業法による規制内容、作成時の注意点などを解説します。

工事請負契約書をレビューする際、気を付けないといけない点って何ですか?

民法などに加え、建設業法も踏まえたレビューを行わないといけないことですね。

(※この記事は、2022年4月6日時点の法令等に基づいて作成されています。)

工事請負契約書とは?

「工事請負契約書」とは、注文者が請負人に対して何らかの工事を発注し、請負人がこれを受注する内容の契約書です。

一般論としては、契約は口頭でも成立するため、原則として契約書がなくとも契約は成立します。しかし、工事請負契約書については、建設業法19条にて、契約書を作成・交付する義務、双方が署名(又は記名押印)する義務が課されており、記載しなければならない内容も決められています(記載しなければならない事項の詳細は、後述の「工事請負契約書に定めなければならない条項(法定記載事項)」にて詳しく解説します)。

(建設工事の請負契約の内容)

第19条 建設工事の請負契約の当事者は、前条の趣旨に従つて、契約の締結に際して次に掲げる事項を書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付しなければならない。

「建設業法」– e-Gov法令検索 – 電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ

また、契約書面の交付については、災害時等でやむを得ない場合を除き、原則として工事の着工前に行わなければなりません。(国土交通省「発注者・受注者間における建設業法令遵守ガイドライン(第3版)」8頁)

なお、一定の要件を満たせば、書面契約に代えて、電子契約による締結も認められています(建設業法19条3項)。

工事請負契約書を締結する場面の例

工事請負契約書が締結されるのは、住宅・店舗用物件・ビルなど、建物に関する工事を行うケースが多いです。例えば、以下の工事の受発注が行われる際には、工事請負契約書が締結されます。

請負人の義務内容は「仕事の完成」

工事請負契約は、民法上の「請負契約」に該当するため、請負人が果たすべき義務は「仕事の完成」です。例えば注文住宅の新築工事であれば、請負人は設計書に従って建物を完成させる必要があります。

これに対して、何らかの事務の委託を内容とする「委任」又は「準委任」の場合、受任者の義務は事務を行うことそのものであって、仕事の完成は義務の範囲に含まれません。例えば「委任者のオフィスで週3回3時間ずつ作業をする」という客先常駐の準委任契約では、「作業をする」こと自体が受任者の義務である一方で、何らかの成果物を完成させることは受任者の義務ではないのです。

このように、委任・準委任とは異なり、「仕事の完成」が請負人の義務内容に含まれている点が、請負契約の大きな特徴です。

請負契約・委任契約・準委任契約の違いについては、以下の記事にて別途解説していますので、必要に応じてご参照ください。

新築建物の所有権の帰属先・移転のタイミング

工事請負契約に基づいて新築された建物の所有権は、材料を提供した者に帰属すると解されています(大審院大正4年5月24日判決等)。つまり、請負人が材料を提供した場合は請負人に、注文者が材料を提供した場合は注文者に、新築建物の所有権が帰属するということです。

一般的な工事請負契約では、材料の大部分を提供するのは請負人である施工業者です。そのため、新築建物の所有権は、当初は施工業者に帰属するケースが大半でしょう。この場合施工業者は、注文者に対して代金の支払と引き換えに新築建物を引き渡し、その時点で施工業者から注文者に対して所有権が移転します。

建設工事標準請負契約約款とは?

国土交通省に設置された中央建設業審議会は、建設業法34条2項に基づいて「建設工事標準請負契約約款」を公表し、工事請負契約の当事者に対してその履行を勧告しています。

建設工事標準請負契約約款は、建設工事についてのルールを詳細に定めて、後日の紛争を予防することを目的としています。また、当事者間の力関係の差を反映して、過度に偏った内容の契約が締結されないようにすることも、建設工事標準請負契約約款の主要目的の一つです。

国内の業者によって施行される工事請負契約の大半には、建設工事標準請負契約約款が適用されています。注文者として工事請負契約を締結する際には、必ず約款の内容に目を通しておきましょう。

工事請負契約書を締結する主な目的

冒頭で記載したとおり、工事請負契約書は建設業法により、作成が義務付けられています。書面化の義務が課されている理由は主に以下のような目的を達成するためです。

工事の内容・仕様等を明確化し、トラブルを予防する

工事請負契約書では、実施する工事の内容や、建築する建物の仕様などを細かく決めることになります。特に建物の仕様については、以下に挙げる事項を中心として、細部にわたる取決めが必要です。

契約上の建物の仕様が不明確だと、注文者の想定とは異なる建物が完成してしまうおそれがあり、こうしたトラブルを予防するために、工事請負契約書の作成が求められます。なお、契約に定められた建物の仕様は、請負人の契約不適合責任(民法562条以下)を追及する際の基準となるため、明確かつ詳細に規定しておきましょう。

トラブルが発生した際のルールを決めておく

施工不備等により、注文者と請負人の間でトラブルに発展することも想定されます。そのため工事請負契約書では、以下に挙げる例のように、トラブルが発生した際に適用されるルールを定めておくことも大切です。

上記の各ルールが自社にとって不利な内容の場合、実際にトラブルが発生した際に、非常に厳しい戦いを強いられてしまいます。あまりにも偏ったルールが定められている場合には、契約交渉の中で削除・修正を求めましょう。

訴訟などに発展した場合の証拠資料として用いる

建築請負契約書に注文者と請負人の間で合意した内容をすべて明記することで、合意内容を証明する証拠として、利用できます。

万が一、注文者と請負人の間で訴訟に発展した場合でも、建築請負契約書がきちんと作成されていれば、審理は契約書の内容に沿って理路整然と行われます。その結果、紛争の早期解決につながる可能性が高いでしょう。

工事請負契約書に定めなければならない条項(法定記載事項)

建築請負契約書においては、以下の事項を必ず記載する必要があります(建設業法19条1項)。

以下、上記の中で特に注意すべき条項について、解説します。

工事遅延に伴う違約金についての条項

請負人の責めに帰すべき事由によって工事が遅延する場合、注文者は請負人に対して損害賠償を請求できます。損害額について当事者間での紛争が複雑化することを防ぐため、工事請負契約書で違約金を定めておくのがよいでしょう。

なお、「民間建設工事標準請負契約約款(乙)」33条2項では、違約金額を「延滞日数に応じて、請負代金額に対し年14.6%以内の割合で計算した額」と定めています。具体的な違約金の料率・計算方法については、注文者と請負人の間で協議して決定しましょう。

工期の延長についての条項

天候不順が続いたなどの事情によって、建設工事の工期が遅れるのはよくあることです。「民間建設工事標準請負契約約款(乙)」21条では、工期の延長(変更)について以下のとおり定めています。

(工期の変更)

不可抗力によるとき又は正当な理由があるときは、受注者は、速やかにその事由を示して、発注者に工期の延長を求めることができる。この場合において、工期の延長日数は、受注者及び発注者が協議して定める。

国土交通省「民間建設工事標準請負契約約款(乙)」

基本的には上記のとおりで問題ないと考えられますが、特別な懸念がある場合には、契約交渉の中で特約について協議を行いましょう。

工事請負契約書におけるその他の条項の例

上記の必須項目以外にも、工事請負契約書には、当事者の合意によって自由に条項を定めることができます。工事請負契約書に定められることの多い条項としては、以下の例が挙げられます。

工事請負契約書を締結する際の注意点

工事請負契約書を締結するに当たっては、建設業法との関係で、以下の各点に注意する必要があります。

現場代理人を選任する場合の通知

建設工事を行うに当たっては、工事現場に現場代理人(実際の工事を管理する担当者)を置くのが一般的です。

請負人は、工事現場に現場代理人を置く場合、以下の事項を書面により注文者に通知しなければなりません(建設業法19条の2第1項)。

現場代理人に関する事項は、工事請負契約書にまとめて規定しておくのが便宜です。

請負代金の定め方

注文者は、請負人に対する取引上の優越的地位などを不当に利用して、建設工事の施工に通常必要と認められる原価に満たない請負金額を定めてはなりません(建設業法19条の3)。

特に、ゼネコンなどの親事業者が下請事業者に建設工事を発注する場合には、原価割れが発生するような不当に低い請負代金を定めないように留意しましょう。

工期の定め方

注文者は、注文した建設工事を施工するために通常必要と認められる期間に比して、著しく短い工期を設定してはなりません(建設業法19条の5)。

不適切な工期の設定は、請負代金と同様に、ゼネコンなどの親事業者と下請事業者の間の工事請負契約において発生しがちですので注意しましょう。

請負代金の見積り

建設業者は、建設工事の請負契約を締結するに当たって、以下の各点に留意しつつ見積りを行うよう努めなければなりません(建設業法20条)。

特に、個人が注文者となる建売住宅や注文住宅の工事に関しては、注文者の知識のなさに便乗して、見積りの作成が疎かになりがちです。建設業者としては、誠実な顧客対応の観点からも、詳細な見積りを提示するように努めましょう。

下請業者を活用する場合の注意点

注文者から受注した建設工事を、請負人である建設業者が下請事業者に丸投げする「一括下請負」は、原則として禁止されています(建設業法22条1項、2項)。

ただし、多数の者が利用する施設及び共同住宅の新築工事を除いて、注文者の承諾を得ている場合には、例外的に一括下請負も認められます(同条3項、建設業法施行令6条の3)。請負人が下請事業者を活用する場合には、工事請負契約書において、注文者による一括下請負の同意を取得しておきましょう。

工事請負契約書に貼付すべき収入印紙の金額

工事請負契約書は、印紙税額の一覧表(その1)の第2号文書に該当します。そのため、契約金額(請負代金額)に応じて、以下の金額の収入印紙を貼付する必要があります。

契約金額印紙税額
1万円未満非課税
1万円以上100万円以下200円
100万円を超え200万円以下400円
200万円を超え300万円以下1,000円
300万円を超え500万円以下2,000円
500万円を超え1,000万円以下1万円
1,000万円を超え5,000万円以下2万円
5,000万円を超え1億円以下6万円
1億円を超え5億円以下10万円
5億円を超え10億円以下20万円
10億円を超え50億円以下40万円
50億円を超えるもの60万円
契約金額の記載のないもの200円

工事請負契約書に収入印紙を貼付していないと、税務調査の際に指摘を受ける可能性があるので、忘れずに貼付しましょう。

この記事のまとめ

工事請負契約書の記事は以上です。最新の記事に関する情報は、契約ウォッチのメルマガで配信しています。ぜひ、メルマガにご登録ください!

参考文献

国土交通省「発注者・受注者間における建設業法令遵守ガイドライン(第3版)」

国土交通省ウェブサイト「建設工事標準請負契約約款について」

国税庁ウェブサイト「No.7140 印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで」