【建設業法改正(2020年10月施行)に対応】
建設工事請負契約とは?
記載事項や契約書レビューポイントを解説!
- この記事のまとめ
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改正建設業法(2020年10月1日施行)に対応した契約書のレビューポイント
を解説!!建設業法の改正に伴い、建設工事請負契約のレビューを見直さなければなりません。 建設業法について知識がない方も、この記事を読めば、すぐに契約書レビューに実践できます!
見直すポイントは、4つです。それぞれのポイントを分かりやすく解説します。ポイント1│著しく短い工期が定められていないか?
ポイント2│注文者は、工期に影響が及ぼす事項について、情報提供を行ったか?
ポイント3│工期を施工しない日・時間帯が定められているか?
ポイント4│解除事由に「合併・事業譲渡等」が含まれている場合に、修正する必要はないか?(自社に有利にするための対応)
この記事では、建設工事請負契約の基本的な事項も解説しています。基本的なことを理解されている方は、 建設業法改正(2020年10月施行)で気を付けるべき建設工事請負契約書レビューポイント4つ からお読みください。
建設業法の改正点について、もっと詳細を知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
※この記事は、2020年6月1日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。
※この記事では、法令名を次のように記載しています。
・建設業法…2020年10月施行後の建設業法(昭和24年法律第100号)
・旧建設業法……2020年10月施行前の建設業法(昭和24年法律第100号)
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目次
建設工事請負契約とは?
建設工事請負契約とは、建設業者(請負人)が、建設工事(仕事)を完成させることを約束し、注文者がその建設工事(仕事)の結果に対して、工事代金(報酬)を支払うことを約束する契約です。 これは、民法に定められた「請負契約」(民法632条)にあたります。 そのため、基本的には、民法の請負のルールが適用されます。
契約書のタイトルに、「請負」という名称が使われていない場合であっても、工事代金(報酬)を支払って建設工事(仕事)の完成を目的として締結する契約であれば、「建設工事請負契約」に該当します。 たとえば、契約書タイトルが、「業務委託」「委任」「雇用」という名称であっても、建設工事請負契約にあたる可能性があるので注意しなければなりません。
建設業法では、「請負」以外の名称を使うことによる脱法行為を防ぐために、契約書のタイトルがどのような名称であろうと、工事代金(報酬)を支払って建設工事(仕事)の完成を目的として締結する契約は、すべて、「建設工事請負契約」とみなすものとしています(建設業法24条)。
第24条(請負契約とみなす場合)
建設業法 – e-Gov法令検索 – 電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ
委託その他いかなる名義をもつてするかを問わず、報酬を得て建設工事の完成を目的として締結する契約は、建設工事の請負契約とみなして、この法律の規定を適用する。
建設工事とは?
建設工事とは、建設業法では、土木建築に関する次のような工事をいいます(建設業法2条1項)。
- 土木建築に関する工事一覧
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土木一式工事/建築一式工事/大工工事/左官工事/とび・土工・コンクリート工事/石工事/屋根工事/電気工事/管工事/タイル・れんが・ブロツク工事/鋼構造物工事/鉄筋工事/舗装工事しゆんせつ工事/板金工事/ガラス工事/塗装工事/防水工事/内装仕上工事/機械器具設置工事/熱絶縁工事/電気通信工事/造園工事/さく井工事/建具工事/水道施設工事/消防施設工事/清掃施設工事/解体工事
このような建設工事の完成を請け負う営業を「建設業」といいます(建設業法2条2項)。 建設業を営むときは、建設業法のルールに従わなければなりません。 したがって、建設工事請負契約を締結するときは、建設業法に定められたルールに則って締結する必要があります。
建設業法の第3章は「建設工事の請負契約」というタイトルとなっており、契約に関するルールが定められています。
建設工事請負契約の方式
建設業法では、建設工事請負契約は、書面で締結することを定めています。
第19条 建設工事の請負契約の当事者は、前条の趣旨に従つて、契約の締結に際して次に掲げる事項を書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付しなければならない。
建設業法 – e-Gov法令検索 – 電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ
〔省略〕
国交省が作成した 「発注者・受注者間における建設業法令遵守ガイドライン」 によると、契約書面の交付については、災害時等でやむを得ない場合を除き、原則として工事の着工前に行わなければなりません。
また、一定の要件を満たせば、書面契約に代えて、電子契約による締結も認められています(建設業法19条3項)。
契約方式(3種類)
建設工事請負契約の方式には、次のようなものがあります。
締結相手との間で、継続的に建設工事の受発注を行うのかどうかに応じて、使い分けることをおすすめします。
- 建設工事請負契約の方式(3種類)
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①「建設工事請負基本契約(または建設工事請負基本約款)+注文書+請書」のセットで締結する方式
②「建設工事請負契約」のみで締結する方式
③「注文書+請書」のみで締結する方式
「建設工事請負基本契約(または建設工事請負基本約款)+注文書+請書」のセットで締結する方式
基本的な事項を、「建設工事請負基本契約」に定めて、個々の工事については、その「建設工事請負基本契約」に基づいて、個別契約を締結する方式です。
個別契約は、注文書と請書の取り交わしでも代用できます。
個々の工事ごとに詳細な契約書を作成する手間を省くことができるので、締結相手との間で、継続的に受発注を行うときに向いています。
「建設工事請負基本契約」ではなく、「建設工事請負基本約款」を用いることもあります。
これは、一方の当事者が、契約内容を記載した書面をいい、これに対して、相手方が同意することにより契約内容となるものです。
実務上、民間の建設工事では、民間工事標準請負契約約款や民間(旧四会)連合協定工事請負契約約款などがよく利用されています。
参考記事 ・中央建設審議会(建設業法に基づいて国土交通省に設置された諮問機関)が作成した「民間工事標準請負契約約款」 ・民間(七会)連合協定工事請負契約約款委員会(私的7団体の連合委員会)で作成された「民間(旧四会)連合協定工事請負契約約款」 |
なお、民間(旧四会)連合協定工事請負契約約款は、公開されておらず、 民間(七会)連合協定工事請負契約約款委員会 から購入する必要があります。
「建設工事請負契約」のみで締結する方式
工事を受発注するたびに、詳細な契約書を作成する方式です。 一回の工事について定める契約であるため、締結相手との間で、単発で受発注を行うときに向いています。
「注文書+請書」のみで締結する方式
「建設工事請負契約」に代えて、「注文書」と「請書」を作成する方式です。 契約は、一方当事者の申し込みに対して、相手方が承諾したときに成立します(民法522条1項)。
(契約の成立と方式)
建設業法 – e-Gov法令検索 – 電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ
第522条 契約は、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示(以下「申込み」という。)に対して相手方が承諾をしたときに成立する。
契約書は、申込みと承諾の意思表示が書かれた文書です。 そして、注文書は、申込みの意思表示が書かれた文書であり、請書は、承諾の意思表示が書かれた文書です。 そのため、注文書と請書のセットをもって、「契約書」と同義と考えることができます。
必ず定めるべき法定記載事項(建設業法19条)
旧法(2020年9月まで)には、契約に必ず記載すべき項目として、14項目が定められていました(旧19条1項1号~14号)。 新法(2020年10月から)では、これに加えて、新たに、「工期を施工しない日・時間帯」も追加されました(新19条1項4号)。 この点については、後述します。 建設工事請負契約をレビューするときは、必ず、これらの項目が定められているかを確認しなければなりません。
- 契約に必ず定めるべき14項目(旧法)
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・工事内容
・請負代金の額
・工事着手の時期・工事完成の時期
・請負代金の前金払・出来形部分に対する支払の定めをするときは、その支払の時期・方法
・設計変更・工事着手の延期・工事の中止の申し出があった場合における、工期の変更・請負代金の額の変更・損害の負担と算定方法
・天災などの不可抗力による工期の変更・損害の負担・算定方法
・価格等の変動・変更に基づく請負代金の額・工事内容の変更
・工事の施工により第三者が損害を受けた場合における、賠償金の負担
・注文者が工事に使用する資材・建設機械を提供・貸与するときの内容・方法
・注文者が工事の完成を確認するための検査の時期・方法・引渡しの時期
・工事完成後における請負代金の支払の時期・方法
・工事の目的物が種類・品質に関して契約の内容に適合しない場合における、その不適合を担保すべき責任・当該責任の履行に関して講ずべき保証保険契約の締結その他の措置に関する定めをするときは、その内容
・遅延利息・違約金その他の損害金
・契約に関する紛争の解決方法
- 新法で追加された契約に必ず定めるべき項目
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・工事を施工しない日・時間帯の定めをするときは、その内容
建設業法19条に違反した場合
建設業法19条は、訓示的な規定であり、違反した場合の罰則がなく、違反行為が無効となるものではありません。 もっとも、認可行政庁(国土交通大臣・都道府県知事)から指示(28条)や勧告(41条)がなされるおそれがあります。 訓示的な規定であっても、違反した場合には、社会的に非難を受けるといった事態は想定されます。 そのため、法務担当者としては、訓示的な規定であっても、これを遵守するようアドバイスすることが賢明です。
建設業法改正(2020年10月施行)で気を付けるべき建設工事請負契約書レビューポイント4つ
それでは、今回の改正をふまえて、気を付けるべきレビューポイントを解説します。 建設工事請負契約を締結するときは、次の4つのレビューポイントを確認しましょう。
改正により、気を付けるべき契約書レビューポイント(6つ) | 重要度 |
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ポイント1 著しく短い工期が定められていないか? | 高 (対応必須) |
ポイント2 注文者は、工期に影響が及ぼす事項について、情報提供を行ったか? | 高 (対応必須) |
ポイント3 工期を施工しない日・時間帯が定められているか? | 高 (対応必須) |
ポイント4 解除事由に「合併・事業譲渡等」が含まれている場合に、修正する必要がないか? | 中 (自社に有利にするための対応) |
※重要度について
・高(対応必須)…気を付けないと、法令違反となるおそれがあります。
・中(自社に有利にするための対応)…気を付けなくても法令違反となるおそれはありません。自社に有利な契約内容とするために理解しておくとよいものです。
・低(確認的規定)とは?…改正された法令の定めを、契約でも確認的に定めるものです。定めなくても法令違反となるおそれはなく、法令の規定が適用されます。契約で定めることにより、改正された法令に違反しないための注意喚起となります。
ポイント1│著しく短い工期が定められていないか?(対応必須)
- 改正ポイント
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新法では、注文者は、「著しく短い工期」による請負契約を締結することが禁止されます(建設業法19条の5)。 違反した場合、請負代金額が500万円(建築一式工事では1500万円)以上であるときは、注文者は、認可行政庁(国土交通大臣・都道府県知事)から勧告を受けることになります(同法19条の6第2項)。 勧告に従わない場合は、企業名が公表され(同条3項)、企業のイメージダウン・社会からの信頼を失うといったリスクに繋がりかねません。
以下、それぞれの立場にたって解説します。
建設業者(請負人)の立場でレビューするとき
著しく短い工期の禁止は、建設業者(請負人)の禁止事項ではなく、注文者の禁止事項ですが、建設業者(請負人)としても、相手方が適法に業務を遂行するように、契約書のレビューを行うときには、あわせて、著しく短い期間となっていないか、注意するのがよいでしょう。
注文者の立場でレビューするとき
建設工事請負契約に「工期」に関する定めがあるときは、著しく短い期間となっていないか、注意しなければなりません。 もっとも、「著しく短い工期」であるかの判断基準は明確なものとはなっていません。 現在、中央建設審議会(建設業法に基づいて国土交通省に設置された諮問機関)が基準を検討しているため、その動向をウォッチする必要があります。 契約ウォッチ編集部も、こちらの動向が分かりましたらお知らせします。お見逃しなく!
なお、国土交通省が作成した資料 「中央建設業審議会 工期に関する基準の作成に関するワーキンググループ(仮称)の設置について」 には、中央建設審議会(建設業法に基づいて国土交通省に設置された諮問機関)が策定する基準のイメージがまとめられています。 そこで、この基準のイメージをふまえると、「著しく短い期間」であるかを判断するときには、次のような事項を確認し、無理な納期を設定していないかを検討するのがよいでしょう。
「著しく短い期間」を判断するときのチェックリスト | |
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全工期において考慮すべき事項 | ✅天災などの自然的要因 |
✅不稼働日(週休2日、祝日、年末年始、夏期休暇など) | |
準備期間において考慮すべき事項 | ✅用地買収、建築確認、道路管理者との調整 |
✅工事場所の周辺環境・近隣状況・用地規制 | |
✅仮設工作物の設置・資材機器の製作期間・調査・測量 | |
施行期間(基礎~内装仕上げ工事)において考慮すべき事項 | ✅労働者・建設資材の投入量 |
✅採用している工法 | |
基礎工事において考慮すべき事項 | ✅地下水・地下埋設物の存在 |
✅掘削土の搬出 | |
躯体工事において考慮すべき事項 | ✅養生期間 |
内装仕上げ工事において考慮すべき事項 | ✅受電の時期 |
✅設備の総合試運転の調整 | |
後片付け期間において考慮すべき事項 | ✅官公署の完了検査 |
✅工事の完成検査 | |
✅仮設工作物の撤去・清掃など | |
その他考慮すべき事項 | ✅過去の同種類似工事の実績 |
✅工事の特性 ・新築工事の場合:地下水・地下埋設物の存在 ・改修工事の場合:アスベスト除去工事 ・再開発工事の場合:保留床の処分時期 |
ポイント2│注文者は、工期に影響が及ぼす事項について、情報提供を行ったか?(対応必須)
- 改正ポイント
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新法では、注文者は、建設工事について、「工期等に影響を及ぼす事項」があるときは、請負契約を締結するまでに、建設業者に必要な情報を提供しなければなりません(建設業法20条の2)。
建設業法20条の2条は、訓示的な規定であり、違反した場合の罰則がなく、違反行為が無効となるものではありません。 しかしながら、法務担当者としては、訓示的な規定であっても、これを遵守するようアドバイスすることが賢明です。
以下、それぞれの立場にたって解説します。
建設業者(請負人)の立場でレビューするとき
情報提供する義務は、建設業者(請負人)の義務ではなく、注文者の義務ですが、建設業者(請負人)としても、相手方が適法に業務を遂行するように、契約書のレビューを行うときには、あわせて、「工期等に影響を及ぼす事項」について情報提供したかどうかを確認するのがよいでしょう。
注文者の立場でレビューするとき
契約書の記載に関するレビューポイントではありませんが、注文者は、契約を締結する前に、「工期等に影響を及ぼす事項」について情報を提供していなければなりません。 そのため、契約書のレビューを行うときには、あわせて、「工期等に影響を及ぼす事項」について情報提供したかどうかを確認しましょう。 もっとも、「工期等に影響を及ぼす事項」であるかの判断基準は明確なものとはなっていません。「工期等に影響を及ぼす事項」については、今後、国土交通省令(建設業法施行規則)で定められる予定です。
契約ウォッチ編集部も、こちらの動向が分かりましたらお知らせします。お見逃しなく!
なお、 国土交通省が作成した資料「新・担い手3法(品確法と建設業法・入契法の一体的改正)について」 には、工期等に影響を及ぼす事項の具体例があげられています。 そこで、この例をふまえると、少なくとも、次の事項について、情報提供を行ったかどうかを確認するのがよいでしょう。
情報提供すべき「工期等に影響を及ぼす事項」のチェックリスト | |
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地中の状況等に関する事項 | ✅支持地盤深度 |
✅地下水位 | |
✅地下埋蔵物 | |
✅土壌汚染 | |
設計に起因する調整に関する事項 | ✅設計図書との調整 |
✅設計間の整合 | |
周辺環境に関する事項 | ✅近隣対応 |
✅騒音振動 | |
✅日照阻害 | |
資材の調達に関する事項 | ✅資材の調達 |
ポイント3│工期を施工しない日・時間帯が定められているか?(対応必須)
- 改正ポイント
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新法では、建設業者と注文者は、「工期を施工しない日・時間帯」を定めるときは、これを建設工事請負契約に記載しなければなりません(19条)。
前述のとおり、建設業法19条は、訓示的な規定であり、違反した場合の罰則がなく、契約が無効となるものではありませんが、法務担当者としては、遵守することをアドバイスするのが賢明です。
以下、いずれの立場にも共通して検討すべきポイントを解説します。
建設業者・注文者のいずれの立場にも共通するレビューポイント
あなたが、建設業者と注文者のいずれの立場であっても、「工期を施工しない日・時間帯」を取り決めたときは、必ず契約書に定めなければなりません。 そのため、契約書に、「工期を施工しない日・時間帯」について、記載漏れがないかを確認しましょう。
たとえば、土日祝日をお休みとする場合は、次のように定めることが考えられます。
- 記載例
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(工事を施工しない日・時間帯)
受注者は、以下の日時は本工事を施工しないものとする。
⑴土曜日
⑵日曜日
⑶年末年始(12月31日から1月4日まで)
⑷国民の祝日に関する法律に定める休日
⑸国民の祝日が日曜日にあたるときはその翌日
ポイント4│解除事由に「合併・事業譲渡等」が含まれている場合に、修正する必要がないか?(自社に有利にするための対応)
- 改正ポイント
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新法では、建設業者が、事業の譲渡・会社の合併・分割を行うときに、事前認可を受ければ、新たに建設業の許可を取得しなくても、引き続き、建設業を営むことができるようになります(建設業法17条の2)。
以下、それぞれの立場にたって解説します。
注文者の立場でレビューするとき
建設業者から、解除事由から「合併・事業譲渡等」を削除することを求められることが考えられます。 たしかに、改正建設業法で定められた「認可手続き」によると、合併・事業譲渡等がなされたときも、適法に営業を継続していくことができますので、旧法に比べると、「合併・事業譲渡等」を解除事由とする必要性はなくなったといえます。
しかしながら、建設業者が、事前の認可を受けなければ、事業の継続はできません。 また、「特定」建設業者は、同じく「特定」建設業の許可を取得している事業譲渡先でなければ、認可を得ることができません。 あるいは、「一般」建設業者は、同じく「一般」建設業の許可を取得している事業譲渡先でなければ、許可を得ることができません。 すなわち、「特定」建設業者から「一般」建設業者への事業譲渡や、「一般」建設業者から「特定」建設業者への事業譲渡を行うときは、認可を得ることができません。
そこで、注文者としては、建設業者からの削除要請に対する妥協案として、「合併・事業譲渡等を行う場合において、建設業法17条の2第1項に定める認可を受けることができなかったとき」という定めに修正することが有益です。
- 記載例
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(解除)
建設業者が、次の各号のいずれかに該当する場合、注文者は、何らの通知又は催告をすることなく、直ちに本契約、個別契約、その他当事者間の契約(以下併せて「本契約等」という。)の全部又は一部を解除することができる。この場合、非該当者は、本契約等の解除の有無にかかわらず、自らが被った損害の賠償を該当者に請求することができる。
〔省略〕
⑻事業の全部若しくは重要な一部の譲渡、会社分割、合併、又は解散(法令に基づく解散を含む。)した場合において、建設業法17条の2第1項に定める認可を受けることができなかったとき。
〔省略〕
建設業者(請負人)の立場でレビューするとき
契約書の記載に関するレビューポイントではありませんが、解除事由に「合併・事業譲渡等」が含まれている条項があるときは、削除するのが有利です。
注文者がこのような解除条項を定める背景としては、「事業の譲渡・合併を行った場合、建設業の許可が失われるため、適法に事業を続けられないのではないか」という点を懸念していることがあげられます。
そこで、建設業者としては、万一、事業譲渡・合併がなされた場合であっても、改正建設業法で「認可手続き」が新設され、適法に営業を継続していくことができることをご説明して、削除に応じてもらうよう交渉していくことが考えられます。
- 記載例
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(解除)
建設業者が、次の各号のいずれかに該当する場合、注文者は、何らの通知又は催告をすることなく、直ちに本契約、個別契約、その他当事者間の契約(以下併せて「本契約等」という。)の全部又は一部を解除することができる。この場合、非該当者は、本契約等の解除の有無にかかわらず、自らが被った損害の賠償を該当者に請求することができる。
〔省略〕⑻事業の全部若しくは重要な一部の譲渡、会社分割、合併、又は解散(法令に基づく解散を含む。)したとき。
〔省略〕
まとめ
改正建設業法(2020年10月1日施行)に対応した契約書のレビューポイントは以上です。 実際の業務でお役立ちいただけると嬉しいです。
改正点について、解説つきの新旧対照表もご用意しました。
〈サンプル〉
建設業法の改正点について、もっと詳細を知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
参考文献
国土交通省「発注者・受注者間における建設業法令遵守ガイドライン」