委任契約・準委任契約・請負契約の違いとは?
基本を解説!
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請負契約のレビューポイントはこちらの解説をご覧ください。
委任契約のレビューポイントはこちらの解説をご覧ください。
※この記事は、2021年5月20日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。
目次
委任契約とは
委任契約は、 当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生じる契約 です(民法643条、旧民法643条)。
委任契約と似ているものに、準委任契約と請負契約がありますので、それぞれ違いを解説します。
委任契約と準委任契約の違い
準委任契約とは、業務委託契約の一つであり、特定の業務を遂行することを定めた契約を意味します(民法656条)。委任契約と準委任契約との違いは、 委任契約は、法律行為を委託する契約であるのに対し、準委任契約は、事実行為(事務処理)の委託をする契約です。
法律行為とは、例えば、契約を締結するための意思表示があげられます。たとえば、代理人契約等がイメージしやすいでしょう。これに対し、事実行為(事務処理)は、理論上は無限に想定しえます。たとえば、セミナー講師としての講演、商品の広告宣伝業務、研究・調査業務などです。これらを委託する契約は、準委任契約と整理されます。したがって、実際の取引においては、委任契約よりも、準委任契約の方が、広く用いられている契約であると言ってよいでしょう。
- 委任契約……法律行為を委託する契約
- 準委任契約……事実行為(事務処理)を委託する契約
委任契約と請負契約の違い
さて、委任契約(準委任契約)と混同しやすい契約類型に、請負契約があります。請負契約は、当事者の一方がある仕事を完成させることを約し、相手方がその仕事の結果に対して報酬を支払うことによってその効力を生じる契約です(新632条※旧民法でも同じ)。 委任契約(準委任契約)との最大の違いは、 請負契約は、仕事の完成が、契約内容となっている点です。
委任契約(準委任契約)は、委任された法律行為ないし事実行為を行えば債務の履行となり、その結果成果物が生じるかどうかは契約内容になっていません。たとえば、セミナー講師を受託し、セミナーのアンケートによる評価が悪くても契約違反になりません。また、研究・調査業務を受託して、依頼者の望むような結果が出なくても、契約違反にはなりません。
成果に対する報酬を支払うことが合意された委任契約も、成果を出さなければ報酬が支払われないにとどまるのであり、債務不履行には該当しないと考えられます。
これに対し、請負契約は、仕事を完成させることがその契約内容となっています。たとえば、住宅建築を請け負ったならば、住宅を完成させなければ債務不履行になります。また、ソフトウェアの開発を請け負ったならば、当該ソフトウェアを完成させなければ債務不履行となります。
- 委任契約……法律行為を委託する契約
- 請負契約……仕事の完成を義務づける契約
委任契約・準委任契約・請負契約の違いを詳細に解説
委任契約・準委任契約・請負契約の間では、特に以下の各点について違いがあります。
・契約不適合責任(瑕疵担保責任)の有無
・善管注意義務の有無
・再委託の可否
・報酬請求権の有無
・中途解約の可否
契約不適合責任(瑕疵担保責任)の有無
請負契約の場合、売買契約の規定が準用され、請負人は注文者に対して「契約不適合責任」を負います(民法559条、562条以下)。
契約不適合責任とは、引き渡された目的物の種類・品質・数量が契約内容に適合していない場合に、請負人が注文者に対して負う責任です。
請負契約に基づく仕事の結果、目的物に欠陥が生じた場合、注文者は請負人に対して修補・代金の減額・損害賠償を請求できます。また、軽微でない欠陥が修補されない場合は、契約の解除も可能です。
2020年3月31日まで適用されていた旧民法では「瑕疵担保責任」という名称でしたが、2020年4月1日に施行された現行民法によって「契約不適合責任」と改められました。
委任契約でも、成果に対して報酬を支払う委任契約(民法648条の2)などは、売買契約の契約不適合に関する規定が準用される可能性があると考えられます(民法559条、562条以下)。
善管注意義務の有無
委任契約・準委任契約の受任者は、委任者に対して善管注意義務を負います(民法644条、656条)。善管注意義務とは、「善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務」を縮めて表現した用語です。
もし委任契約・準委任契約の受任者が、事務処理の過程で故意・過失により委任者に損害を与えた場合、受任者はその損害を賠償しなければなりません。その反面、過失なく事務処理を行っていれば、善管注意義務を果たしたものとして、受任者は委任者に対する損害賠償責任を負わないことになります。
これに対して請負契約の場合、請負人の義務は仕事を完成させることであり、その過程でどのように業務を行ったかは問題になりません。契約不適合責任の規定にも表れているように、あくまでも仕事の結果によって請負人の責任の有無が決まります。
そのため請負契約では、委任契約・準委任契約とは異なり、請負人は注文者に対する善管注意義務を負わないと解されています。
再委託の可否
請負契約の場合、請負人は仕事を完成させるに当たり、自らの責任で下請事業者などへ再委託をできるのが原則です。
前述のとおり、請負人の義務は仕事を完成させることで、その過程でどのように業務を行っても構いません。したがって、下請事業者への再委託を行うかどうかも、請負人の裁量次第ということです。
これに対して、委任契約・準委任契約の場合、受任者は委任者からの信頼に基づいて事務を受任しています。そのため、受任者は委任者の許諾を得たとき、またはやむを得ない場合を除いて、委任事務を再委託することが認められていません(民法644条の2第1項)。
ただし、契約で別段の定めをすれば、請負契約において再委託を禁止することも、委任契約・準委任契約において再委託を認めることも可能です。
なお、民法または契約に基づいて再委託が行われた場合、再委託先が注文者・委任者に対して直接責任を負うかどうかは、請負契約と委任契約・準委任契約で異なります。
請負契約の場合、再委託先は注文者に対して直接責任を負わず、あくまでも請負人が全責任を負います。
これに対して委任契約・準委任契約の場合、再委託先(復受任者)は委任者に対し、その権限の範囲内において、受任者と同等の義務を直接負うものとされています(民法644条の2第2項)。
報酬請求権の有無
請負契約は、請負人が仕事の完成を約束し、注文者が仕事の結果に対して報酬を支払うことを約束する内容の契約です(民法632条)。つまり、請負契約において報酬の支払いは必須であり、請負人や注文者に対して、仕事の完成と引き換えに必ず報酬を請求できます。
これに対して、委任契約・準委任契約の場合、民法上は無償が原則とされています。受任者は、契約等に基づく特約がなければ、委任者に対して報酬を請求することができません(民法648条1項)。
ただし実務上は、委任契約・準委任契約であっても、委任者の受任者に対する報酬の支払いを定めるケースが圧倒的に多数です。
たしかに民法上は、報酬請求権の有無について、請負契約と委任契約・準委任契約では異なるルールが採用されています。しかし実際には、報酬に関するルールは契約内容次第であり、きちんと疑義のないように契約で定めておくことが重要といえるでしょう。
中途解約の可否
請負契約も委任契約・準委任契約も、いずれかの当事者に債務不履行があった場合には、契約の解除が認められます(民法541条、542条)。
さらに、請負契約と委任契約・準委任契約については、債務不履行解除とは別に当事者による任意解除(中途解約)が認められています。ただし、任意解除の要件は、請負契約と委任契約・準委任契約で以下のとおり異なります。
(1)請負契約の任意解除
注文者は、請負人が仕事を完成しない間に限り、いつでも損害を賠償して請負契約を解除できます(民法641条)。このとき、すでに行われた仕事の結果のうち可分な部分によって、注文者が利益を受ける場合は、その部分について請負人は注文者に報酬を請求可能です。
請負人は、注文者が破産手続開始の決定を受けた場合に、請負契約を解除できます(民法642条1項)。
(2)委任契約・準委任契約の任意解除
委任者・受任者の双方は、いつでも委任契約・準委任契約を解除できます(民法651条1項)。ただし、相手方に不利な時期に委任契約・準委任契約を解除した場合には、相手方に生じた損害を賠償しなければなりません(同条2項)。 なお、委任者または受任者について破産手続開始の決定がなされたことは、委任契約・準委任契約の当然終了事由とされています(民法653条2号)。
まとめ
委任契約・準委任契約・請負契約の違いは以上となります。取引実務上では、請負契約も、委任契約(準委任契約)も、「業務委託契約」と呼ばれることがあり、両者には混同が生じやすいと言えますので、この機会にぜひご理解いただければ幸いです。
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