業務委託契約書とは?
雇用契約との違いや記載すべき契約条項などを解説!
- この記事のまとめ
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業務委託契約書とは、委託者が受託者に対して、何らかの業務を委託する内容の契約書です。
業務委託契約は、雇用契約とは異なり、委託者が受託者に対して指揮命令権を持たないのが大きな特徴です。
また業務委託は、請負契約と比較されることもよくあります。法的には、業務委託契約は委任・準委任・請負のいずれかを内容とするケースが多いですが、契約によって業務委託の内容は異なります。
業務委託には、委託者・受託者それぞれの立場で、雇用にはないメリット・デメリットの両面が存在します。一方で、委託者は、業務委託が「偽装請負」に該当しないように、注意深い対応が求められます。必要な契約条項を漏れなく盛り込んで、業務委託契約の適正な運用に努めましょう。
この記事では「業務委託契約書」について、雇用契約や請負契約との違い、委託者・受託者のそれぞれにとってのメリットやデメリット、偽装請負に関する注意点、業務委託契約に規定すべき契約条項などを解説します。
※この記事では、法令名を次のように記載しています。
・労働者派遣法…労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律
(※この記事は、2022年3月10日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。)
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目次
業務委託契約書とは?
業務委託契約書とは、委託者が受託者に対して、何らかの業務を委託する内容の契約書です。業務の一部を委託するパターン・業務全部を委託するパターンの2つに分かれます。
業務委託契約を締結するのは、親事業者が下請事業者に業務を発注する場合や、会社がフリーランスに対して業務を発注する場合などです。
なお、「業務委託契約」という言葉は、法律に定義された用語ではありません。業務委託契約は、法律上は、その内容によって「請負契約」「委任契約(準委任契約)」に該当します。業務委託契約が、この3つのどれに該当するのかによって受託者の負う義務の性質が変わるため、注意が必要です。
以下、業務委託契約が「請負契約」「委任契約(準委任契約)」のどれに該当するのかを判断するポイントを解説します。
業務委託契約が請負契約に該当する場合
請負契約は、当事者の一方がある仕事を完成させることを約束し、相手方がその仕事の結果に対して報酬を支払う内容の契約です。(民法632条)
業務委託契約が、何らかの「仕事の完成」を目的とする場合は、請負契約に該当します。例えば、ソフトウェアを制作して納品することなどが「仕事の完成」に当たります。仕事の完成(ソフトウェアの開発を請け負ったならば、当該ソフトウェアを完成させること)がなされない場合は、債務不履行になります。
債務不履行となった場合はどうなるか
請負人の責に帰すべき事由によって仕事を完成できない場合、請負人(受託者)は注文者(委託者)に対して契約不適合責任(債務不履行責任)を負います。
具体的には、注文者は請負人に対して、以下のいずれかの方法により契約不適合責任を追及できます。
①履行の追完請求
目的物の修補・代替物の引渡し・不足分の引渡しなどにより、仕事を改めて完成することを請求できます(民法562条)。
②代金減額請求
履行の追完が不可能な場合や、請負人によって履行の追完がなされない場合などには、契約内容との不適合の程度に応じて、請負代金の減額を請求できます(民法563条)。
③損害賠償請求
仕事が完成しなかったことにより、注文者が被った損害の賠償を請求できます(民法564条、415条1項)。
④契約の解除
履行の追完が不可能な場合や、請負人によって履行の追完がなされない場合であって、契約内容への不適合の程度が軽微でない場合には、請負契約(業務委託契約)を解除できます(民法564条、541条、542条)。
ただし、仕事の目的物が契約内容の適合していないケースにおいて、注文者の供した材料または注文者の与えた指図によって不適合が生じた場合には、注文者は請負人の契約不適合責任を追及できません(民法636条)。
なお、請負人の契約不適合責任は、原則として契約の定めにより排除することが可能です(消費者契約法に基づく不当条項など、一部排除できない場合あり)。
業務委託契約が委任契約(準委任契約)に該当する場合
委任契約は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾する内容の契約です(民法643条)。委任契約と似た契約類型に、準委任契約というものがあります(民法656条)。
委任契約と準委任契約との違いは以下のとおりです。
業務委託契約が、「何らかの法律行為(事実行為)の委託」を目的とする場合は、委任契約(準委任契約)に該当します。例えば、弁護士に損害賠償請求の代理を依頼することは「法律行為の委託(=委任)」、セミナー講師として登壇を依頼することは「事実行為の委託(=準委任)」に当たります。
委任契約(準委任契約)は、委託された法律行為(事実行為)を行えば債務の履行となり、その結果成果を得られるかは関係ありません(例えば、セミナー講師を受託し、セミナーのアンケートによる評価が悪くても契約違反になりません)。
実務上は請負契約・委任契約(準委任契約)ともに、「業務委託契約」と呼ばれることがあり、混同しやすく注意が必要になります。以上、簡単にまとめると以下の表のとおりです。
✔業務委託契約が請負契約となるのは…何らかの「仕事の完成」を目的とする場合
✔業務委託契約が委任契約となるのは…「仕事の完成」を目的とせず、法律行為を委託する場合
✔業務委託契約が準委任契約となるのは…「仕事の完成」を目的とせず、事実行為(事務処理)を委託する場合
※もっと詳細に知りたい方は「委任契約・準委任契約・請負契約の違いとは?基本を解説!」の記事も併せてご参照ください。
企業が業務委託契約書を締結する目的
企業が発注側として業務委託契約書を締結する場合、一般的には以下のような目的があります。
流動性の高い人材を確保する
業務委託契約の場合、解雇が厳しく制限されている雇用とは異なり、契約の打切りが比較的容易です。
発注側にとっては、自社のニーズに合わせて業務を発注し、不要になれば契約を打ち切るという形で、流動性の高い人材確保を実現できるメリットがあります。
外部の専門的人材を活用する
業務委託契約は、外部人材に対して、個別に業務を発注することに適した契約形態です。
特に、法務・会計・ITなどの専門的な人材は、自社の内部だけでは十分に確保できないこともあります。その場合、外部専門家との間で業務委託契約を締結し、自社の足りない部分を補ってもらうことは有力な選択肢でしょう。
低コストで人員を確保する
月額固定の賃金を支払う雇用とは異なり、業務委託の場合、発注量に応じて報酬が決定されるのが一般的です。発注側にとっては、業務が閑散としている時期には発注量を絞ることで、人員確保のコストを抑えられます。
また、業務委託の受託者については社会保険料を負担しなくてよい点も、発注側にとっての大きなコストメリットです。
業務委託契約と雇用契約の違い
業務委託契約は、しばしば雇用契約と比較されます。
業務委託契約と雇用契約の最大の違いは、当事者間の「指揮命令関係の有無」です。
業務委託の場合、委託者と受託者は対等な関係で契約を締結します。受託者は、業務のやり方を決定する広範な裁量を有し、委託者は受託者に対して、業務のやり方や作業場所・作業時間などに関して具体的な指示を行うことができません。
これに対して雇用の場合、使用者は労働者に対して指揮命令権限を有しています。労働者は、使用者の合理的な業務指示に原則として従う必要があり、使用者は業務のやり方などを細かく指示することも可能です。
このように、当事者間に指揮命令関係がないのが業務委託、指揮命令関係があるのが雇用という違いがあります。
なお、業務委託契約の場合は労働基準法や労働契約法が適用されないのに対し、雇用契約では適用される点に注意が必要です。
業務委託契約の種類
業務委託契約の内容は、当事者の想定する取引に応じてさまざまですが、報酬の支払方法と委託の継続性の2点に注目すると、以下の3種類に大別されます。
(1)毎月定額型の業務委託契約
「毎月定額型」は、委託者が受託者に対して、毎月決まった金額の報酬を支払うタイプの業務委託契約です。
- 毎月定額型の業務委託契約の例
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✅ 清掃業務委託契約
✅ システムの保守業務委託契約
✅ コンサルティング業務委託契約
✅ 弁護士・税理士などの顧問契約
など
毎月定額型の業務委託契約は、受託者に常時若しくは定期的に稼働してもらいたい場合、又は必要な時に随時相談したい場合などに締結されるケースが多いです。
委託者・受託者のどちらにとっても、業務委託報酬の変動がないため、収支の予測を立てやすい点が大きなメリットです。その反面、委託者が受託者に業務を依頼する頻度や量によっては、業務委託報酬と作業量が見合ったものでなくなる可能性があります。
また、どんなに作業をしても業務委託報酬が変わらないため、受託者にとっては業務に対するモチベーションが上がりにくいデメリットがあります。受託者の成果に対するコミットを求めたい場合には、後述する成果報酬型への移行又は併用を検討すべきでしょう。
(2)成果報酬型の業務委託契約
「成果報酬型」は、委託者が受託者に対して、達成した成果に応じて変動する報酬を支払うタイプの業務委託契約です。
- 成果報酬型の業務委託契約の例
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✅ 営業代行業務委託契約
✅ 店舗運営に関する業務委託契約
など
成果報酬型の業務委託契約は、固定費を削減したい委託者の思惑と、貢献に応じたインセンティブ報酬を得たい受託者の思惑が一致した場合に締結されるケースが多いです。
委託者にとっては、受託者が達成した成果が少なければ、業務委託報酬を低額に抑えられるため、赤字を回避しやすいメリットがあります。その一方で、受託者が大きな成果を挙げた期間については、毎月定額型よりも多額の業務委託報酬を支払うことになってしまいます。
受託者にとっては、成果を挙げれば挙げるほど業務委託報酬をアップできる点が大きなメリットです。その反面、成果が少なければ報酬も少なくなってしまうため、収入が不安定になりやすいデメリットがあります。
成果報酬型は、成果にコミットする受託者のモチベーションを高められる点が大きな特徴です。その一方で、受託者が達成した成果を水増しするなどの不正を行わないように、適切なチェックの仕組みを整えることが重要になります。
(3)単発業務型の業務委託契約
「単発業務型」は、必ずしも継続的な依頼を前提とせず、単発で業務を委託するタイプの業務委託契約です。
- 単発業務型の業務委託契約の例
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✅ ウェブサイト制作の業務委託契約
✅ コンテンツ制作の業務委託契約
✅ 建築設計管理業務委託契約
✅ 研修講師の業務委託契約
など
単発業務型の場合、業務ごとに個別に業務委託報酬が設定されます(例:60分の研修を1回実施したことにつき、10万円の業務委託報酬を支払う)。
単発業務型であっても、実際には反復継続して依頼がされることがよくあります。しかし、依頼が反復継続する場合でも、委託者の判断によって発注量をコントロールできる点が、単発業務型の大きな特徴です。
委託者にとっては、自社のニーズに応じて発注量をコントロールして、人件費等を調整できる点がメリットとなります。
受託者にとっては、純粋な作業量に応じて業務委託報酬が決まるため、稼働すればするほど報酬をアップできる点がメリットです。その反面、発注量は委託者の判断に依存するため、収入が不安定になりやすい側面があります。
業務委託契約書の主な記載事項
委託者・受託者間のトラブルを防止するため、業務委託契約書に盛り込むべき条項は多岐にわたります。
業務委託契約書に規定されることの多い契約条項を紹介しますので、想定しているプロジェクト等に合わせて、必要な条項を漏れなく盛り込みましょう。
委託業務の内容等
業務委託契約によって委託される業務の内容は、当事者の合意により自由に設計できます。
以下に挙げる事項を中心に、受託者が提供すべきサービスの内容を明確に特定しておきましょう。
なお、業務のバリエーションが豊富であり、業務委託契約を締結する段階では特定しきれない場合には、詳細を個別の発注書等に定めることも可能です。
受発注の方法
業務委託契約では、委託者から受託者に対して個別に発注依頼を行い、受託者が承諾して受注する方式をとることが多いです。
正式な受発注が成立すれば、仕事の遂行と報酬支払の義務が発生します。そのタイミングを明確化するため、受発注の方法を業務委託契約書に明記しておきましょう。
禁止事項
業務を遂行するに当たり、受託者側に禁止しておきたい事項がある場合には、業務委託契約書に禁止事項として規定しておきます。
盗作などの違法行為を禁止する例がよく見られますが、他にも自社の従業員に準じた服務規程等の遵守を求めるケースもあるようです。しかし、仕事のやり方について具体的な規律を及ぼそうとすると、後述する偽装請負に該当するおそれがあるので注意しなければなりません。
納品・検収の方法
成果物を制作・納品するタイプの業務委託契約では、納品・検収の方法についても取り決めておく必要があります。
特に、検収に関するルールが曖昧だと、報酬請求権の発生有無などを巡って、委託者と受託者の間でトラブルになりかねません。以下に挙げる事項を中心に、検収ルールを明確に定めておきましょう。
成果物の権利
成果物については、知的財産権等の権利が誰に帰属するかを明確にしておきましょう。実務上は、委託者に帰属させるケースが多いようです(発注側の方が立場が強い実情を反映しているものと考えられます)。
なお著作権・著作者人格権との関係では、委託者に権利を帰属させる旨を定める場合には、併せて以下の2点を忘れずに規定しておきましょう。
業務委託報酬の額・支払方法等
業務委託報酬については、以下の内容を規定しておきましょう。
なお、発注する業務によって報酬体系が異なる場合には、業務委託報酬の細目は個別の発注書で定めることも可能です。
再委託の可否
受託者が受注した業務を、第三者に対して再委託できるかどうかについても、業務委託契約書で定めておきましょう。
委託者としては、受託者の個性や能力に注目して発注しているのであれば、再委託を認めるべきではありません。反対に、とにかく業務を適切に遂行(または仕事を完成)してくれさえすればよいのであれば、再委託を認めることも考えられます。
再委託を認める場合には、再委託先の責任により生じた損害については、全て受託者が委託者に対して賠償責任を負う旨を規定しておきましょう。
契約期間
業務委託契約の契約期間は、数か月~1年程度が平均的です。
当事者のいずれかから異議が述べられない限り、自動的に契約が更新される条項を定めておくと、更新手続の手間が省けて便利でしょう。
反社会的勢力の排除
コンプライアンスの観点から、暴力団等との取引を回避するため、業務委託契約にも反社会的勢力の排除に関する条項を規定する例が増えています。
反社条項に含まれる基本的な事項は、以下のとおりです。
なお、反社チェックの基本については以下の記事も併せてご参照ください。
秘密保持
業務委託契約の当事者間では、互いの営業秘密などをやり取りする機会も発生します。
そのため、秘密保持に関するルールとして、以下の内容を定めておきましょう。
なお、秘密保持契約については以下の記事で詳しく解説しています。
損害賠償
いずれかの当事者の責に帰すべき事由により、相手方に損害が発生した場合に備えて、損害賠償の範囲を定めておきます。
- 損害賠償の範囲の定め方
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✅ 民法の原則どおりとする場合
→「相当因果関係の範囲内で損害を賠償する」など✅ 民法の原則よりも範囲を広げる場合
→「一切の損害を賠償する」など✅ 民法の原則よりも範囲を狭くする場合
→「直接発生した損害に限り賠償する」、「損害賠償の上限額を定める」など
契約解除
契約期間が満了した場合の他にも、相手方に義務違反などがあった場合には、業務委託契約を解除できるようにしておく必要があります。
契約を打ち切るべきケースについて事前に検討を行い、解除の要件を漏れなく明確に規定しておきましょう。
業務委託契約書を作成する際の注意点
業務委託契約書を作成する際には、いわゆる「偽装請負」と収入印紙の貼り忘れに注意が必要です。
「偽装請負」のリスクに要注意
「偽装請負」とは、業務委託や請負の形式を取りながら、実質的には「労働者派遣」または「労働者供給」と評価すべき人員提供の形態を意味します。
会社間で「業務委託契約」を締結し、受託者側から委託者側に対して自社の従業員を派遣する場合(客先常駐等)に、偽装請負が問題になるケースが多いです。
偽装請負と判断されたらどうなる?
労働者派遣事業は、厚生労働大臣の許可を受けなければ行うことができません(労働者派遣法5条1項)。
また、労働者供給事業については、労働組合等が無償で行う場合を除き、一律禁止されています(職業安定法44条)。
業務委託が偽装請負と判断された場合、労働者派遣法や職業安定法の違反に該当し、改善命令・公表処分・刑事罰等の対象となるので要注意です。
偽装請負かどうかの判断基準|具体的な指揮命令関係の有無
通常の業務委託か偽装請負になるかの分かれ目は、業務を行う担当者が、委託者の指揮命令下にあると評価されるか否かにあります。
前述のとおり、業務委託は、委託者と受託者の間に指揮命令関係がないことが大きな特徴です。反対に、指揮命令関係があると評価すべき場合は、偽装請負に該当する可能性があります。
指揮命令関係の有無は、業務委託契約の規定に加えて、現場での業務実態も総合的に考慮して判断されます。
偽装請負のリスクを回避するためには、業務委託契約において指揮命令関係がないことを明記したうえで、委託者が常駐する社員に具体的な業務指示をしていないことを定期的に確認すべきでしょう。
業務委託契約書に収入印紙は必要?
業務委託契約書を書面で作成する場合、その内容に応じて収入印紙の貼付が必要になることがあります。
請負契約の場合
業務委託契約が請負契約に該当する場合、その契約書面は印紙税法上の「第2号文書」に当たるため、収入印紙の貼付が必要です(契約金額が1万円未満の場合を除く)。
何らかの仕事の完成を目的とする業務委託契約を書面で締結する場合には、収入印紙を忘れずに貼付しましょう。
<請負契約書の印紙税額>
契約金額 | 印紙税額 |
---|---|
1万円未満 | 非課税 |
1万円以上100万円以下 | 200円 |
100万円超200万円以下 | 400円 |
200万円超300万円以下 | 1,000円 |
300万円超500万円以下 | 2,000円 |
500万円超1,000万円以下 | 1万円 |
1,000万円超5,000万円以下 | 2万円 |
5,000万円超1億円以下 | 6万円 |
1億円超5億円以下 | 10万円 |
5億円超10億円以下 | 20万円 |
10億円超50億円以下 | 40万円 |
50億円超 | 60万円 |
契約金額の記載のないもの | 200円 |
継続的取引の場合
業務委託契約書が継続的取引の基本契約書に該当する場合、その契約書面は印紙税法上の「第7号文書」に当たるため、収入印紙の貼付が必要です。
「継続的取引の基本契約書」とは、個別の発注(取引)すべてに対して適用される契約書をいいます。たとえば最初に業務委託契約書を締結した上で、その後の発注はメールや発注書などで個別に行うことが予定されている場合、業務委託契約書が「継続的取引の基本契約書」に当たります。
単発(1回限り)の発注を前提とする場合を除き、多くの業務委託は「継続的取引の基本契約書」に該当すると思われるので、書面で締結する場合には忘れずに収入印紙を貼付しましょう。
- 継続的取引の基本契約書の印紙税額
-
4,000円
委任契約の場合
業務委託契約が委任契約(または準委任契約)に該当し、かつ継続的取引の基本契約書に該当しない場合には、印紙税法上の課税文書に当たらないため、収入印紙の貼付は不要です。
すなわち、何らかの仕事の完成を目的とせず、かつ単発の発注に過ぎないケースでは、業務委託契約書に収入印紙を貼付する必要はありません。
ただし、本当に収入印紙を貼付する必要がないかどうかは、慎重に検討すべきです。委任契約だと思っていたら本当は請負契約だった、単発だと思っていたら継続的取引の基本契約書に該当したなどのケースでは、収入印紙の貼付を怠ったとして追徴課税を受けるおそれがあるのでご注意ください。
収入印紙の負担はどちらがするべき?
収入印紙の購入費用をどちらの当事者が負担すべきかについては、法律上明確なルールはありません。
負担者は当事者間の契約交渉によって決まりますが、実務上は折半とするケースが多いです。ただし、原本を1通のみ作成する場合には、原本の保管者が収入印紙の購入費用を負担することもあります。
いずれにしてもトラブルを避けるため、誰が収入印紙の購入費用を負担するかにつき、業務委託契約において明記しておきましょう。
なお印紙税法上は、一つの課税文書を2以上の者が共同で作成した場合、作成者全員が連帯して印紙税を納める義務を負います(印紙税法3条2項)。
課税文書に当たる契約書の場合、すべての当事者が作成者となります。したがって、いずれの当事者が保管しているかにかかわらず、収入印紙の貼付漏れが発見された場合には、すべての当事者が連帯して印紙税(過怠税を含む)の納付義務を負う点に注意が必要です。
電子契約書に収入印紙は不要?
業務委託契約書を電子締結する際には、紙の契約書を作成する場合とは異なり、収入印紙を貼付する必要はありません。電子契約のファイルは、印紙税法の課税文書に該当しないからです。
また、電子契約のファイルを印刷したとしても、原則として印刷物に収入印紙を貼付する必要はありません。印紙税は作成された課税文書の原本に対してのみ課されるところ(印紙税法3条1項)、印刷物はコピーに過ぎないからです。
ただし、電子契約を印刷した書面に、相手方の署名・押印・原本証明のいずれかが付されている場合には、印紙税の課税対象となる点にご注意ください(印紙税法基本通達19条2項)。
(同一の内容の文書を2通以上作成した場合)
印紙税法基本通達 – 国税庁
第19条
2 写、副本、謄本等と表示された文書で次に掲げるものは、課税文書に該当するものとする。
(1) 契約当事者の双方又は一方の署名又は押印があるもの(ただし、文書の所持者のみが署名又は押印しているものを除く。)
(2) 正本等と相違ないこと、又は写し、副本、謄本等であることの契約当事者の証明(正本等との割印を含む。)のあるもの(ただし、文書の所持者のみが証明しているものを除く。)
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/inshi/inshi01/04.htm
この記事のまとめ
業務委託契約書の記事は以上です。最新の記事に関する情報は、契約ウォッチのメルマガで配信しています。ぜひ、メルマガにご登録ください!
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