TOPQ&A記事「のれん分け」で弟子が独立する際、契約書を結ぶ必要はありますか?
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「のれん分け」で弟子が独立する際、契約書を結ぶ必要はありますか?

「ラーメン屋を経営しているのですが、のれん分けで弟子が独立することになりました。信頼関係が築けているのでトラブルにはならないだろうとは思っているのですが、念のために契約書など結んでおいた方が良いのでしょうか。」
のれん分けの実態に合わせて契約書を作成する必要があります。
まずは、どのような目的でのれん分けを行うのかという点を明確にし、目的に沿った制度を構築、契約書の作成を行います。その上で、弟子の方に契約書の内容について十分な説明を行うことが必要です。
回答者
藤井 直芳 弁護士
フランテック法律事務所

のれん分けの現状

フランチャイズ本部の会社が、社員独立制度としてのれん分けを実施していることがあります。

のれん分けの種類

のれん分けには、大別して(1内部募集型と(2外部募集型があり、両者はその目的が異なるため、制度としても異なる性質を持っています。

内部募集型について

一般的に「のれん分け」と呼ばれるのは、この内部募集型です。内部募集型は、その対象を自社の従業員とし、会社(本部)貢献への報奨、キャリアプランの一環として用意されることがあります。場合によっては、本部の不採算の直営店の経営建て直しのために、従業員にのれん分けを行うこともあります。

外部募集型について

外部募集型は、目的はあくまでフランチャイズ加盟契約の締結であって、契約締結前に一時的な雇用契約などを行い、フランチャイズ本部の従業員として経験を積むものです。

フランチャイズ本部としては、加盟希望者の適性をじっくりと見極めることができます。

実際の対応時のポイント

ご質問の事案は、内部募集型ののれん分け(社員独立制度)として整理できます。

契約類型の選択

ご相談の会社が、フランチャイズ・チェーンを展開している本部であれば、加盟希望者とフランチャイズ契約をすることが考えられます。ご相談の会社がフランチャイズ本部を展開していない時は、ラーメン屋の看板(商標)を利用許諾(ライセンス)するだけの、より簡単な契約も考えられます。両者の最たる違いは、本部による継続的な経営指導があるかないかです。

この他、ご相談の会社の店舗について、経営を委託するという契約も考えられます。

留意点

内部募集型ののれん分けにおいて、気を付けるポイントとしては、公平な審査基準の設定、経営者としての知識の習得、法定開示書面の交付・十分な説明などが挙げられます。他にも、会社が加盟希望者に店舗を譲渡する場合には、どの店舗を譲渡するかの選定の問題、金額の設定の問題などがあります。

公平な審査基準の設定としては、従業員の誰もがのれん分けとして独立できるわけではないため、長期の勤続年数や社内での高評価を求めることが考えられます。また、審査の手続きとしては、試験・面接を課すことが考えられます。

経営者としての知識の習得としては、今まで従業員として働いていた加盟希望者が、経営者として店舗を切り盛りしていくことになるため必要となります。加盟希望者とフランチャイズ契約等をするのであれば、加盟希望者は独立した事業者となるため、この点の意識を加盟希望者に持ってもらい、必要な知識(マーケティング、税務・会計、資金調達、組織・人材マネジメント等)を身につけてもらうべきです。

法定開示書面の交付・十分な説明については、ご相談の会社と加盟希望者の従前の関係性から、おざなりになりがちです。加盟希望者に対して十分な説明を行わないと、説明義務違反になってしまうため、注意して行う必要があります。

この点、飲食店(サービス業)のフランチャイズ本部は、法定開示書面(中小小売商業振興法第11条)を交付する義務があります。法定開示書面とは、フランチャイズ加盟にあたって、加盟希望者に十分に認識しておいてもらいたい内容をまとめた書面となります。法定開示書面の記載内容に沿って説明すれば、まず問題ありません。

まとめ

のれん分けの実態に合わせた契約書を作成し、加盟希望者に十分な説明を行った上で、契約を締結することが重要となります。

 

この記事は、2024年4月22日に作成されました。

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