社長が逮捕されたら、どのタイミングで逮捕の事実を公表すべきでしょうか。
逮捕の事実が報道され得るタイミングと公表への影響
逮捕が行われた場合、その事実が報道機関から報道される可能性があります。その一般的な時期は、まず逮捕の当日又は翌日です。逮捕の事実が捜査機関から報道関係者に提供され、その中から報道機関が取捨選択する形で行われるのが通例です。
逮捕の事実が報道された場合には、できるだけ間を空けずに自社からも事実の公表を行うことが望ましいでしょう。その主な理由は、情報発信に対する会社の真摯な姿勢を表明するため、そして誤った内容があれば速やかに訂正するためです。
逮捕の事実が報道された場合に最も避けるべきなのは、会社側に真摯な説明をする意思がない、と判断されることです。公表する内容にはどうしても限りが生じてしまいますが、「今後随時説明するつもりである」という意思表明を行う趣旨で、速やかな公表が望ましいと言えるでしょう。
即時の公表を控えるべき場合
一方、逮捕直後に報道機関による報道がなく、かつ、事件の内容が十分に把握できていない状況では、逮捕の事実を即時に公表することは控えることを検討すべきと言えます。
刑事事件の場合、捜査機関の有する捜査情報を第三者が随時確認することは極めて困難です。現実的には、逮捕された本人から取調べの内容などを聞くなどして、断片的な情報を拾い上げていくしかないことも多いでしょう。このとき、逮捕の事実のみを積極的に公表しても、犯罪者とのレッテルを安易に貼られるリスクが生じるのみで、有益な効果は見込みにくいと考えます。
また、逮捕の事実が報道されていないときは、それが捜査機関の捜査方針を反映したものである可能性も否定できません。この場合に会社側が積極的に公表することは、捜査機関との間でトラブルの原因となり、社長本人の不利益につながる恐れがあり得ます。
公表する際の注意点
逮捕の事実を公表する場合には、その目的が逮捕の事実のみを公表するためであるのか、逮捕の対象となった犯罪事実の有無に言及するためであるのか、という点を十分に考慮することが適切です。
刑事手続における逮捕は、犯罪捜査を行う手段の一つにとどまります。そのため、逮捕は犯罪したことの根拠ではありませんが、世間一般的な理解は往々にして異なります。
逮捕の事実を公表する際には、あくまで犯罪事実の有無は不明であることを念頭において公表するのか、犯罪事実の有無に対して何らかのスタンスを明らかにするのか、という方針の違いに注意して、慎重に内容を吟味すべきでしょう。
まとめ
刑事事件の手続は、非常にスピーディーに流れていきます。その中で適切な対応を取るためには、迅速な判断の可能な体制をできるだけ早期に整えることが重要になるでしょう。社長が逮捕された事実を把握した場合には、極力速やかに弁護士への相談・依頼をされることをお勧めします。
※この記事は、2025年3月10日に作成されました。