建設DX企業で法務部を立ち上げる!
「法務未経験」だからこそ、事業の近くに

おすすめ資料を無料でダウンロードできます
5つのStepで解説!法務部のつくり方
この記事について

法務部がない会社で法務部を立ち上げる、しかも自分は「法務未経験」。難易度の高いミッションに挑戦し、それでもうまくいったポイントはどこにあるのでしょうか?

「Cross Talk―事業×法務の協働作戦―」第2回では、建設DXを推進するスパイダープラス株式会社で、法務部を立ち上げることになった牛田様と、事業側でカスタマーサクセスの責任者である駒井様に、法務部の立ち上げと、事業部と法務部の協力についてのお話を伺いました。

事業部と距離の近い法務部」はどうやってできたのか? 今日からできる工夫もご紹介します!

■インタビュイー
スパイダープラス株式会社 コーポレート本部 チームリーダー
牛田 昌宏(うした まさひろ)
2020年入社。前職は総務の機関法務担当だったが、スパイダープラスに入ってからは法務部立ち上げに主担当として取り組むこととなり、現在は法務の専任に。好きなことは音楽鑑賞。

スパイダープラス株式会社 セールスグループ カスタマーサクセス部長
駒井 隆也(こまい たかや)
2017年入社。入社前も、取締役が経営する別企業に勤務していた。プロダクト初期の頃から「SPIDERPLUS」のことを把握しており、現在は営業やカスタマーサクセスの責任者を務めている。好きなことはプロ野球観戦。

建設DXの会社はどんな業務をしている?

――スパイダープラス株式会社の事業と法務部について教えてください。

駒井:弊社はいわゆる建設DX現場管理サービスを開発・提供する会社です。建設DXとはどんなものかというと、ビルなどを建てる際に、昔だったら大きな図面を現場に持って行って、図面と見比べながらデジカメで現場の写真を撮って、帰ってPCでまとめて共有して、としていたところを、タブレットとSPIDERPLUSを使ってもらい、タブレットに図面やデータを入れて、その場で写真を撮ったり記録したりして、保存やアップロードもできるといった形で、ペーパーレス化や業務効率を上げることを実現しています。

牛田:社員は現在約250名で、法務部は3名体制です。部長の高橋は弁護士で、私はチームリーダーをしており、もう1人メンバーがいます。部長は海外事業の責任者もしており、法務の案件は基本的に私とメンバーで対応して、イレギュラー案件やレギュラーの中でも案件の大小、複雑性等に応じて部長に上げていますし、あえて外部専門家の意見がほしいときには顧問弁護士に相談したりしています。

――お二人はどんな業務を担当されていますか?

牛田:私は契約書申込書といった書面の整備・作成や、契約審査、顧客との内容調整や交渉の相談対応などを担当しています。契約審査は概ね月に数十件あり、社内の法律相談も行っていて、専用のSlackチャンネルにはほぼ毎日何かしらの相談が来ているイメージですね。

スパイダープラス株式会社・牛田様

駒井:私は20名ほどのカスタマーサクセスCS)の部長をしています。CSはサービスを最大限に使ってもらうため、初期設定や操作方法のオンボーディングから、ややマニアックな設定のサポートまで、「ツールは導入したけど、うまく活用できていないんだよね」というお客様の課題に向き合っています。

カスタマーサクセスはお客様をさまざまな面からサポート
スパイダープラス株式会社・駒井様

未経験から会社の法務部を立ち上げるまで

――牛田さんは法務のご経験が長いのですか?

牛田:前職は法務ではなく、総務全般のなかでも株主総会・取締役会といった機関法務を担当していました。契約法務はやったことがなく、入社して総務全般をする中で、取締役から「法務を強くしたい」と言われて、法務部の立ち上げをスタートしました。

私は法務未経験だったので、どうしたらいいか分からない中で、今の部長である弁護士の高橋に週2回ほど会社に来てもらい、一緒に法務部を作るということを進めていきました。最初は総務と兼務している時期もありましたが、「やる人がいないなら、やるしかない」と専任になって法務を引き受けました。

――未経験からの法務部の立ち上げや法務業務にはどんなことが役に立ちましたか?

牛田:法務部を作るという観点で参考にしたのは、書籍がメインです。事業会社として強い企業法務を作る、という内容の書籍を読んで、法務業務の基本的な手順や仕組みの整備を進めました。もちろん、実際は書籍のとおりにはいかないですし、世の中にある参考資料だけでは当社に応じたフローづくりなどはできませんでしたので、一旦仕組みを作ってみてそれを回してみて適宜改善していくという、PDCAを実際に回していた感じでした。幸いにして会社規模もそこまで大きくなかったので、PDCAは回しやすかったです。

契約審査にはLegalForceなどのサービスも活用して、調べれば分かるような環境が整っているので、学習しながら走れるようになっています。「法務に必要なものを作って」と言われて自分で環境を作ったからやりやすいのかもしれません。

部長の高橋には、分からないことの調べ方やどのように判断したらいいのかを教えてもらいました。もう1人のメンバーも私と同じで法務は未経験で、今も週1回一緒に勉強会をしています。

後は発生する法務業務を処理しながら、日々経験値をためていって、今に至る感じです。こういうチャレンジできる環境と、上司やメンバーへのリスペクトが「法務をやってみよう」と思えたきっかけですね。

BPOサービスを支える法務の仕事とは?

――お二人は業務でどのように関わられていますか?

駒井:私はCSの中にあるBPOサービスのチームで特に関わりがあります。BPOサービスはアプリでカバーしきれないスポット作業などについて、お客様から業務委託を受けることを提案するのですが、新しく契約書申込書を作成して交わすことが多く、よく法務部と連携しています。

アプリ活用の前後についてもサポートをするSPIDERPLUS BPO

牛田:私は法務としてその話を聞いて、契約書の作成や、顧客ごとの内容調整の可否や対応の判断などに関わることが多いですね。

駒井:実際の場面では、お客様の購買意欲が高まっている時に、我々も「申込書が完成しないのでお待ちください」とは言いたくない。そこで法務が最短で力を尽くして契約書を用意してくれるので、ビジネス目線では非常にありがたいと感じています。

牛田:確かに、サクサク話が進んでいることが多いですね。私も「スピード感は事業成長に繋がる」という意識があり、事業部側の「アクセルを踏みたい」という思いには応えたいです。ただ、法務としてリスクを抑えたいものは抑える、というところで線引きをしています。

急にデスクに来て「明日までにやりたい!」と言われても、拒絶せずに、大丈夫だと思えたら背中を押すこともあります。たまに複雑な内容のこともあるので、そういった相談はワークフローなど正規の相談ルートで依頼してほしいですが、どういった方法での相談でもできるだけ対応したいと思っています。

駒井:口頭で方針が見えた後に、きちんと相談の記録を残すことも大事ですね。

――そういった法務の判断のスピードを支えるものは何でしょうか?

牛田経験の蓄積相談相手がいること、その両方が判断のスピードに繋がるという感覚があります。コミュニケーション方法としてはリアルが一番いいと思っていて、直接話ができると早いですね。もちろん私だけで判断するのではなく、チームで相談しながら意思決定をしています。

あとは、案件のリスクがどの程度か、具体的には取引額やトラブルが発生する可能性を考えて、「リスクはゼロではないけれど、事業のスピードを緩めるほどではない」ということが見えれば、すぐ部長に相談して、これでいきます、という決め方ができます。

事業部から見える法務の姿と「距離のなさ」

――事業部側から見たときの法務部とはどんな存在ですか?

駒井:やっぱり、会社の砦というか、ディフェンス面で非常に重要なポジションです。事業の軸がぶれないような契約書を、陰ながら作ってくれる人ですね。

実際に、お客様から業務委託の範囲を超えて「直接来て対応してくれる?」と要求されたときに、契約書を示して「業務内容はこう書いてあり、弊社ではここまでしかできません。人の派遣はできません」と伝えられたことがありました。

こういった要件を法務部が事前に定義してくれることは、みんな気付いてないですけど、交渉する我々を守ってくれるものですよね。

牛田:バックオフィスの仕事は、なかなか気が付かれないので、そう言ってもらえるのは嬉しいです。

駒井:直接伝えることはあまりないですけど、法務が今やるべき事業戦略に沿って、例えば申込書を先に作ったり、条件を確認したりというところを毎月毎日やってくれる。そういうところに頼もしさがあります。

――他にも事業部とのコミュニケーションで意識していることはありますか?

牛田:「なるべく早く回答してあげたい」と思っています。もちろん、法務として法的なリスクや懸念を洗い出した上で進めていくわけですし、案件を抱えすぎてしまって早く回答できないこともありますが、レスポンスが早いことで信頼を寄せてもらえたり、気軽に相談してもらえるような雰囲気ができると思っています。

駒井:そういうところも、法務への相談にハードルを感じないところですね。

――法務部と事業部の連携のコツは何でしょうか?

駒井先回りして法務に相談できるのもありがたいです。何か進める上で、上層部の質問には「それは法務に確認済みです」と言いたいので、先に法務と細かい疑問点を潰してから上に持っていくことが多いです。

牛田:オフィスはフリーアドレス制なので、声を掛けてもらいやすいように、他部署の従業員が集まる場所の近くに座ることもあります。物理的に近いので「ちょっといいですか?」みたいなコミュニケーションが発生したりして、事業部の人にも覚えてもらえる。それですぐに話が進むようになると好循環ですよね。

「未経験」法務の強みと、その先に目指すもの

――駒井さんから見た牛田さんの強みは何でしょうか?

駒井:強みというか、牛田さんは経験も積んでいて頼りになるから、もう「未経験」を未熟だとか、自信の無さみたいに見せないでほしいなと思います。業務を背負っていて、ずっと貢献していて、会社の成長がある。胸を張ってほしいです。

牛田:そんなに深く考えたことなかった…。社内で「牛田さんって前職も法務だったんですか?」と聞かれることが多いんです。採用面接などでも、「うちの法務部は弁護士と未経験のメンバー主体で作ってきました」と言うと、割と驚かれます。これって自分たちの特色自信でもあるのかなと。

――「未経験」はネガティブな要素ではない?

牛田:学ばなければならないことはたくさんあり、未経験のしんどさもあります。でも、事業部と一緒の方向を向いて、柔軟にやっていけるのは未経験の長所かもしれないです。自分も総務・バックオフィス全般から法務に入ってきたからこそ、事業との関わり方や、会社全体を見ることができたのかなと。誰かが拾わないといけない新しいことも受け止めていきたいと考えています。

駒井:法務を「未経験だからできることもある」と言えるのもいいところですよね。でも折れずに続けられた理由は何ですか? 総務と兼務している時期とか、拒否反応はなかった?

牛田:なんだろう、うちの会社が好きだからとか?(笑)。個人的には「自分がこうありたい」というよりも、会社や事業が成長していく方が嬉しいので、まあ、「やるしかないかな」みたいな。

――法務担当者へのメッセージをお願いします!

牛田:自分でやっていることが正しいかは分かりませんが、社内の話をどんどん聞いた上で、どうすれば事業が伸びるのかを考えて、一緒に前に進めていくという気持ちで業務に当たれるといいなと考えています。

駒井:牛田さんは即レスや、すぐ反応を返すことをひたすらやって、今の結果があると思うので、その中でスキルや経験が増えたんじゃないですか? 初心者でもそれをやれたらいいですよね。

牛田いっぱい数をこなすのも大事ですよね。今はそこからメンバーの方にどんどんお願いをしていく段階に入っています。広く経験を積んで、これからもいい仕組みを作っていければと思います。

(インタビュー日:2024年1月9日)

おすすめ資料を無料でダウンロードできます
5つのStepで解説!法務部のつくり方