「事業理解×コミュニケーション力」を磨く。
信頼される法務担当に必要な仕事の姿勢とは

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この記事のまとめ

若手のうちは、誰もが課題に直面し、乗り越えることで成長します。でも、乗り越え方は人それぞれ。さまざまな若手法務に、成長の軌跡を聞く「Progress ー若手法務の歩き方ー」。

今回インタビューしたのは、マーケティングおよび広告・プロモーションのトータルエージェンシーである株式会社クレオで、契約法務、広告審査、コンプライアンス研修など幅広い業務を担当する高橋舞さん。

マーケティング職として同社に入社後、法務キャリアに転身しました。未経験から法務担当になった若手時代の心境や、自身が追求する理想の法務担当像とは。

インタビュイー
高橋舞
株式会社クレオ 法務室 兼 PMS・情報マネジメント推進室
2003年、株式会社クレオに入社。広告主のマーケティング支援を担当したのち、法務部門の立ち上げメンバーに。現在は事業部門からの法律相談対応、広告審査、知的財産権の管理、コンプライアンス研修などの業務を担当している。

マーケティング職から法務立ち上げメンバーへ

―――株式会社クレオに入社した理由を教えてください。

大学時代に心理学を専攻し、社会の枠組みの中で人間の心理がどのように動くかを分析する「社会心理学」を深く学びました。周りは卒業後に研究の道に進む人も多いのですが、私は社会心理学と関連が深いマーケティングの仕事をしたい気持ちが強く、広告代理店を中心に就職活動を行いました。そして縁あって、広告主のマーケティングを支援する職として当社に入社しました。

―――その後、どのような経緯で法務の道を歩み始めたのでしょうか。

入社して数年が経ったころ、自身のキャリアプランを見つめなおすようになりました。

そんな中、法務室の立ち上げメンバーにならないかとお声をかけていただきました。当社は消費者キャンペーンなどで数万件の個人情報を取り扱っており、クライアントからの信頼を獲得するためにプライバシーマークを取得する機運が高まっていたころです。その対応を主な目的として法務室が立ち上がりました。

当時、社内では法務の機能を担う組織はまだ整備されておらず、経営企画室の方が一人で法務業務を兼務している状態でした。そこで私と、当時の私の上司、担当役員の3名法務室が組織されました。それ以来、法務キャリアの道を歩んでいます。

―――現在はどのような業務を担当されていますか。

法務、人材育成、PMS推進室の3部門を兼任していますが、半分以上の時間は法務業務に割いています。契約審査、事業部門からの法律相談対応、薬機法対応、知的財産権管理などの業務がメインです。それ以外にも、若手社員向けの研修の企画・運営・講師なども担当しています。

「最初に相談される法務担当」を目指した20代

―――最初はどのような仕事を担当しましたか。

契約審査や法務相談などが主な業務でした。もともと一人法務で会社を支えていた上司から、マンツーマンでみっちり指導していただき、法務担当としての基礎を作ってもらえました。また日常業務に加え、異動当初から個人情報保護マネジメントシステム(PMS)の整備にも携わりました。

―――異動した当初はどのような心境でしたか。

入社から数年経ち、社内の人間関係ができている状態での異動でしたので、仕事は進めやすかったですね。PMSの仕事では事業部門の部長級とやり取りする機会が増え、断片的ではありますが会社経営というものが見え始めてきて高揚感がありました。

―――どのような法務担当者を目指していましたか。

「事業部門のメンバーから信頼され、最初に相談してもらえる法務担当者」を目指していました。当時から人とコミュニケーションを取るのが好きでしたし、法務担当の若手は自分だけでしたので、事業部門のメンバーが気軽に相談できる相手でありたいと心がけていました。そのおかげか、今でも毎日のように私の席まで色々な部門の方が相談しにいらっしゃいます。社内システム上でも法律相談は受け付けていますが、お互いの細かなニュアンスを汲み取るには直接、顔を合わせるのがベストですね。

―――思い出深い仕事はありますか。

コンプライアンス研修の企画・運営です。今では当たり前の「コンプライアンス」の概念が、当時の広告業界にはそこまで浸透していませんでした。しかし当社には「モノが売れるからといって、広告主やその先の消費者にウソをついてはいけない」という誠実さを重んじる文化が根づいていたため、法令順守の必要性が受け入れられやすい土台がありました。

当時の情報収集は書籍が中心で、研修メニューを体系化するのは大変でしたね。手に入る本はすべて目を通し、社内中をかけまわって、ケーススタディに使えそうな事例も集めました。研修で「教える側」になることで、関連法令の知識が深まっていくのを感じました。苦労はありましたが、法務担当初期の成功体験として今でも心に深く刻まれている仕事です。

信頼を得るための「事業理解×コミュニケーション力」

―――法務担当として最も大切にしていることは何ですか。

事業理解とコミュニケーション能力です。法務担当はただ法律の知識が豊富ならば務まる仕事ではありません。事業部門がビジネスのどこを重視し、どのような方向で進めたいのかを理解する力がないと「ただ正論をふりかざす人」という印象を抱かれ、事業部門への価値を提供できないからです。事業部に迎合するべきとまでは思いませんが、自社の事業を「業務フロー」くらいのレベルで細かく理解する努力は欠かせません。ベースとなる法律知識に加えて、事業理解×コミュニケーション力をもって、適切な判断を下していくこと。周囲からの信頼を得るにはこの掛け合わせが必要だと感じています。

自分が理想とする法務像を考える

―――これまで壁にぶつかった経験はありますか。

法律に関する学びがまだまだ足りないという意味で、常に壁にぶつかっています。私は法学部出身ではなく、法律関連の資格も持っていません。また当社は非上場企業ですから機関法務の仕事も未経験です。アカデミックな背骨がない私は、どのようにして企業法務としてのスキルを伸ばしていくか、常に模索しています。現在は、法務のゼネラリスト方向でキャリアを伸ばしていきたいと考え中です。今の会社で20年のキャリアになりましたので、当社事業への知見を踏まえた上で、どう事業部と一緒にビジネスを成功に導くかに重きを置いています。

―――ご自身の経験を踏まえて、若手の法務担当者にアドバイスをいただけませんか。

最初は法律の基礎知識自社の事業に関する知識を身につけることに集中し、仕事に慣れてきたら「自分の理想とする法務像」をじっくり考えてみてください。当社にも配属半年ほどの若手社員がいます。IT分野に強い関心がある社員なので、たとえば最近話題の「ChatGPT」や「DALL-E(ダリ)」のような生成系AIをビジネスに活用する際の法的な論点整理などは力を発揮できそうです。ある領域の専門性なら上司にも負けない、くらいの気概で自分の強みを作るのが良いかな、と思います。

趣味の書評で培われた「社会への貢献意欲」

―――高橋さんのお話を聞いていると「社会とつながり、貢献する意欲」が高いと感じます。何かそう思うきっかけがあったのですか。

趣味で行っている、小説の書評執筆が影響しているかもしれませんね。

文学作品はその時代を反映するものです。読んでいるうちに、国内外の情勢や歴史への関心が自然と高まります。仲の良いライターがジェンダー関連の仕事をしていたり、社会問題に触れる機会が日頃から多く、「仕事を通じてこの世の中を良くしたい」という気持ちは年々高まっています。

また年齢による変化も感じます。若手のころは自分のキャリアを積むことに必死でしたが、40代に入ってからは次の世代、特に女性の後輩たちが過ごしやすい環境を作りたいという意識も芽生えてきました。趣味や社外活動を通じた触れあいが蓄積し、違う世界が見えてきたのかもしれません。そういう意味では、仕事以外の趣味も大切にしてほしいですね。

積極性を持ち、貪欲に学び続けたい

―――今後取り組みたいテーマや想いを教えてください。

当社では次々と新規事業が立ち上がっています。価値のある法務サービスを提供するには最新のトレンドにも敏感でないといけません。書籍やWebでの情報収集、セミナーへの出席などできる限りアンテナを張り、当社のビジネスが円滑に進むサポートを続けたいです。世界的にも景気が良いとは言えない昨今、広告は世の中にポジティブな影響を与えるという重大な使命を背負っています。商品と消費者の接点として、広告自体の価値も増えるでしょうし、それをサポートする法務の役割も重大になると思うのです。これからも積極的に学び、事業部門のメンバーとコミュニケーションを取る姿勢を持ち続けて働きたいです。

私の一品

仕事に直結するアイテムではありませんが、Kindle電子書籍リーダーは常に持ち歩いています。仕事に関する本や趣味の本など、スキマ時間を使って読むようにしています。
隣はこの4月に当社の新入社員の企画運営を担当した際、新入社員の皆さんからいただいたプレゼント(スキンケア商品)です。マストアイテムというよりは、思い出の品です。

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