譲渡制限株式の譲渡承認請求を受けたのですが、どう対応すべきでしょうか?
譲渡不承認決定の通知
株主からの譲渡承認請求(会社法136条。以下、法律名は省略します。)について、会社が拒否するのであれば、原則として、株主総会(取締役会設置会社の場合は取締役会)の決議でその旨の決定をする必要があります(139条1項)。その上で、当該決定の内容を株主に通知しなければなりません(同条2項)。この通知については、株主からの譲渡承認請求の請求日から2週間以内にしなければならず、期間内に通知をしなかった場合は、会社が株式譲渡を承認する旨の決定をしたものとみなされてしまうので(145条1号)、注意が必要です。株主が譲渡承認請求をする際に、買取先指定請求(138条1号ハ)をしていない場合には、会社が期間内に上記通知をすれば、株主は変わらないまま手続は終了となります。
会社または指定買取人による買取りの通知・供託
株主からの譲渡承認請求の際に買取先指定請求(138条1号ハ)がされている場合は、会社は、①自ら当該株式を買い取るか(140条1項)、②別に買受人を指定しなければなりません(同条4項)。①の場合は、承認拒絶の通知(前記1の通知)から40日以内に、会社から株主に通知をする必要があり(141条1項、145条2号)、②の場合は、同通知から10日以内に、指定買取人から株主に通知をする必要があり(142条1項、145条2号)、それぞれ期間が異なる点に注意が必要です。これらの通知に際しては、1株当たり純資産額に買取株式数を乗じた金額を供託し、供託証明書類を交付しなければなりません(141条2項、142条2項、会社法施行規則25条)。これらを遵守しないと、会社が株式譲渡を承認したとみなされてしまいます(145条2号3号、会社法施行規則26条1号2号)。
買取りの通知後の手続
会社または指定買取人が買取りの通知をすると、これらの者と株主との間で、売買価格未決定のまま売買契約が成立します。売買価格は、両当事者の協議によって定まりますが(144条1項、7項)、協議が調わない場合、買取通知があった日から20日以内に、当事者が申し立てることにより、裁判所が売買価格を決定することになります(同条2項〜4項、7項)。この申立てがない場合は、1株当たり純資産額に買取株式数を乗じた金額が売買価格になり(同条5項、7項)、供託金が売買代金の支払に充当されることになります(同条6項、7項)。
まとめ
株主による譲渡承認請求を拒否する場合、まず、会社で譲渡不承認決定をし、それを株主に通知しなければなりません。次に、株式を会社または指定買取人が買い取る場合、その旨を株主に通知し、供託金を準備して供託する必要があります。売買価格について当事者の協議で決まらない場合は、裁判所が売買価格を決定する手続(株式売買価格決定申立事件)に進むこともあります。各局面で期間制限がありますので、注意が必要です。なお、上記の株式売買価格決定申立事件は、株式価値の評価方法など高度に専門的な内容を伴う会社非訟事件であり、その審理においては、当事者の主張等だけでなく、専門委員の意見や鑑定人の株価鑑定が重要な役割を果たすことがあります。
※この記事は、2024年10月4日に作成されました。