【2025年施行】就職お祝い金の禁止とは?
変更点や求人メディア対応のポイントなどを
分かりやすく解説!
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- この記事のまとめ
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2025年4月1日から、募集情報等提供事業者による労働者への就職お祝い金(以下、お祝い金)の提供が原則禁止されます。
「募集情報等提供事業者」とは、求人サイトなどの情報メディアを運営する事業者を指します。
職業紹介事業者(転職エージェントなど)については、すでに2021年4月からお祝い金の提供が原則禁止されています。今回の改正によって、求人サイトなどの情報メディアに対しても、お祝い金の提供が原則として禁止されることになりました。お祝い金の提供禁止は、厚生労働省指針に加えて、職業紹介事業者の許可基準にも明記される予定です。許可基準に違反してお祝い金を提供すると、事業停止命令や許可の取り消しを受けるおそれがあるので十分ご注意ください。
この記事では、2025年4月から施行される就職お祝い金の禁止について、変更点や対応のポイントなどを解説します。
※この記事は、2024年12月6日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。
※この記事では、法令名を次のように記載しています。
- 指針…職業紹介事業者、求人者、労働者の募集を行う者、募集受託者、募集情報等提供事業を行う者、労働者供給事業者、労働者供給を受けようとする者等がその責務等に関して適切に対処するための指針
目次
【2025年4月施行】就職お祝い金の禁止とは
2025年4月1日から、募集情報等提供事業者(求人サイトなど)による労働者への就職お祝い金等の提供が原則禁止されます。
職業紹介事業者(転職エージェントなど)については、2021年4月からお祝い金等の提供が原則禁止されています。今回の改正によって、求人サイトなどの情報メディアに対しても、お祝い金等の提供が原則として禁止されることになりました。
就職お祝い金とは
「就職お祝い金」とは、就職(転職)が決まった人に対して、人材紹介サービスの運営事業者などが提供する金品をいいます。
人材紹介サービスの基本的な収益モデルは、求職者を企業へ紹介し、就職が決まった時点で年収に対する一定割合の報酬を受け取るというものです。
自社のサービスに登録してくれる人が多ければ多いほど、人材紹介による収益の増加が期待できます。そこで「就職が決まったらお祝い金○万円をプレゼント」などと銘打って、求職者に自社のサービスへの登録を勧誘する事業者が多数存在していました。
お祝い金の提供が原則禁止されることになった経緯・背景
お祝い金の提供は、2021年4月から職業紹介事業者に対して原則禁止とされました。
さらに、今回の職業安定法に関する省令・指針の改正により、2025年4月から募集情報等提供事業者によるお祝い金の提供も原則として禁止されます。
職業紹介事業者によるお祝い金の提供が原則禁止された経緯・背景
職業紹介事業者によるお祝い金の提供は、2021年4月からすでに禁止されています。
求職者は、運営事業者が質の良い人材紹介を行っているかどうかを見極めたうえで、登録する人材紹介サービスを選ぶことが望ましいです。
お祝い金が提供されることは、求職者にとって大きな魅力です。しかし、お祝い金を提供している事業者が、質の良い人材紹介を行っているとは限りません。
お祝い金に目が眩んで、粗悪な人材紹介サービスを選択してしまうなど、求職者の自主的かつ合理的な選択が妨げられるおそれがあります。
求職者の集客を図るに当たっては、金品の提供ではなく、人材紹介サービスの質を向上させてそれをPRすることが本来の姿であって、そのような取り組みを促すことが求められていました。
また、お祝い金を何度も得ようとして、複数回にわたり就職と離職を繰り返す人が続出し、企業側が定着率の低さに悩むような事態も生じていました。
上記の問題点を踏まえて、2021年4月から職業紹介事業者に対し、お祝い金の提供が原則として禁止されました。
募集情報等提供事業者によるお祝い金の提供が原則禁止される経緯・背景
2025年4月からは、インターネットなどを通じて求人情報の提供を行う「募集情報等提供事業者」についても、お祝い金の提供が原則として禁止されます。
募集情報等提供事業者によるお祝い金の提供については、職業紹介事業者と同様の問題が指摘されていました。
さらに、お祝い金を得ようとする労働者が、複数の募集情報等提供事業者に対して採用決定の報告をした結果、企業が複数の事業者から成功報酬を請求されるなど、特有の問題も発生していました。
こうした状況が問題視され、求人サイトなどを運営する募集情報等提供事業者についても、2025年4月からお祝い金の提供が原則禁止されることになりました。
告示日・施行日
募集情報等提供事業者のお祝い金の禁止に関する指針改正の告示日および施行日は、以下のとおりです。
- 告示日・施行日
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告示日|2024年10月11日
施行日|2025年4月1日
募集情報等提供事業者によるお祝い金の提供禁止の概要
2025年4月1日から新たに適用される、募集情報等提供事業者によるお祝い金の提供禁止に関する規制の概要を解説します。
お祝い金の提供が新たに禁止される「募集情報等提供事業者」とは
「募集情報等提供事業」とは、以下のいずれかの行為を内容とする事業をいいます(職業安定法4条6項)。求人情報を掲載するウェブサイト(=求人サイト)の運営事業などが、募集情報等提供事業の典型例です。
- 募集情報等提供に当たる行為
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① 職業紹介事業者等の依頼を受け、労働者の募集に関する情報を、労働者になろうとする者または他の職業紹介事業者等に提供すること。
② ①のほか、労働者の募集に関する情報を、労働者になろうとする者の職業の選択を容易にすることを目的として収集し、労働者になろうとする者または職業紹介事業者等に提供すること。
③ 労働者になろうとする者または職業紹介事業者等の依頼を受け、労働者になろうとする者に関する情報を、労働者の募集を行う者、募集受託者または他の職業紹介事業者等に提供すること。
④ ①~③のほか、労働者になろうとする者に関する情報を、労働者の募集を行う者の必要とする労働力の確保を容易にすることを目的として収集し、労働者になろうとする者または職業紹介事業者等に提供すること。
提供が原則禁止されるお祝い金の具体例
募集情報等提供事業者による提供が原則禁止される金銭等(お祝い金)には、例えば以下の金品が含まれます。
- お祝い金の具体例
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・金銭(お祝い金)
・ギフト券
・カードやアプリのポイント
など
上記のほかにも、金銭と同じように利用できるものについては、2025年4月以降、募集情報等提供事業者による提供が原則として禁止されます。
提供が認められる「社会通念上相当と認められる程度」とは
改正指針では、「社会通念上相当と認められる程度」を超える金銭等(お祝い金)の提供が禁止されています。
「社会通念上相当と認められる程度」を超えるかどうかは、就職後早期の離転職による定着率の低下や、報酬の重複請求などの問題・トラブルを発生させるおそれがないかどうかの観点から総合的に判断されます。
その際、以下の要素などが考慮されます。
- 「社会通念上相当と認められる程度」の考慮要素
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・提供される金銭等の趣旨、額、経済的価値、提供手法
・提供される金銭等の有する離転職誘因効果
・複数事業者からの料金請求等に伴うトラブルが生じやすい、または生じてきた形態かどうか
など
お祝い金の提供禁止に抵触しないものの具体例
一例として、以下のような金銭等の提供は、お祝い金の提供禁止に抵触せず認められるものとされています。
- 募集情報等提供事業者が提供してよい金銭等の例
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・利用者に対してサービスの質の向上を目的とするアンケートへの回答を求めた上で、抽選によって少数者に対して提供する500円程度の電子ギフト券等
・イベント来場者を確保するため、転職フェアへの来場およびブース訪問者に対して提供する500円程度の電子ギフト券等
※求人サイトへの登録の対価として提供されるものを除きます。
【2025年1月施行】「職業紹介事業者」によるお祝い⾦禁⽌の許可条件化
職業紹介事業者によるお祝い金の提供は、指針によって2021年4月から原則禁止されています。
その実効性を確保するため、2025年1月から、お祝い金の提供の原則禁止が職業紹介事業者の許可条件に追加されます。
職業紹介事業者は「許可制」|違反すると許可取り消しも
「職業紹介事業者」とは、厚生労働大臣の許可を受けて職業紹介事業を行う者をいいます。
「職業紹介」とは、求人および求職の申込みを受け、求人者と求職者との間における雇用関係の成立をあっせんすることをいいます(職業安定法4条1項)。
いわゆる「ヘッドハンティング」や「求人紹介・マッチング」など、転職エージェントが間に入って求職者と企業を結び付けるのが職業紹介です。
職業紹介事業を行おうとする者は、有料の場合は必ず、無料の場合も一部の例外(学校や地方公共団体など)を除いて、厚生労働大臣の許可を受けなければなりません(同法30条1項・33条1項)。
職業紹介事業の許可には、条件を付すことができるものとされています(同法32条の5第1項・33条4項)。
許可条件に違反した場合は、職業紹介事業の許可を取り消されるおそれがあるので要注意です(同法32条の9第1項3号・33条4項)。
2021年から職業紹介事業者はお祝い金による転職勧奨禁止|実効性確保へ
2021年4月以降、職業紹介事業者は原則として、求職者に対してお祝い金を提供してはならないとされています。
お祝い金の提供禁止に関する規制内容は、2025年4月から募集情報等提供事業者に対して適用される内容と基本的に同じです。
職業紹介事業者によるお祝い金の提供禁止は、指針において定められていますが、2025年1月からは職業紹介事業者の許可条件にも追加されることになりました。
違反事業者について職業紹介事業の許可を取り消せるようにして、お祝い金の提供禁止の実効性を確保することが意図されています。
指針に違反して、お祝い金を提供したらどうなる?
職業紹介事業者や募集情報等提供事業者が、指針に違反して求職者にお祝い金を提供したら、以下のペナルティを受けるおそれがあります。
① 厚生労働大臣の指導・助言・改善命令等
② 事業停止命令
③ 有料職業紹介事業者の許可取り消し
厚生労働大臣の指導・助言・改善命令等
厚生労働大臣は、指針に違反する疑いのある職業紹介事業者や募集情報等提供事業者に対し、業務の適正な運営を確保するために必要な指導・助言をすることができます(職業安定法48条の2)。
指導・助言に従わない事業者は、厚生労働大臣から改善命令を受ける可能性があります(同法48条の3第1項)。改善命令に従わない場合、その旨が公表されてしまいます(同条3項)。
事業停止命令
有料職業紹介事業者または特定募集情報等提供事業者(=労働者になろうとする者に関する情報を収集して募集情報等提供事業を行う者)が、厚生労働大臣の改善命令に違反した場合には、期間を定めて事業の全部または一部の停止を命じられることがあります(事業停止命令。職業安定法32条の9第2項・43条の4)。
また2025年1月以降、有料職業紹介事業者が許可条件に違反してお祝い金を提供した場合は、改善命令がなされていなくても、直ちに事業停止命令を受けることがあります。
有料職業紹介事業者の許可取り消し
有料職業紹介事業者が許可条件に違反した場合は、厚生労働大臣によって許可を取り消されることがあります(職業安定法32条の9第1項3号)。
2025年1月以降、有料職業紹介事業者が許可条件に違反してお祝い金を提供した場合は、許可取り消しの対象となるので十分ご注意ください。
お祝い金の提供禁止に関して、事業者に求められる対応
求人サイトなどを運営する募集情報等提供事業者として、これまでお祝い金を提供していた場合には、2025年3月までにお祝い金の提供を停止しましょう。現金だけでなく、ギフト券やポイントなども提供禁止の対象となる点に注意が必要です。
また、転職エージェントサービスなどの職業紹介事業者においても、すでにお祝い金は提供していないはずですが、2025年1月からはこれまで以上に規制が厳格化されるため、疑われるような行為をしないように努めましょう。
さらに、事業停止などのリスクを踏まえ、求人掲載を行う事業者も、出稿先の求人メディアなどがお祝い金の提供を行っていないか確認しましょう。
【2025年4月施行】職業紹介事業に関するその他の新規制
上記の内容に加えて、2025年4月からは職業紹介事業者に対し、紹介手数料率の実績公開と違約金規約の明示が義務付けられます。
職業紹介事業者は、厚生労働省ウェブサイトなどを参照して、自社の事業体制の見直しを行いましょう。
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