第1回:法務機能をめぐる近時のトレンド・概要

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法務機能コンサルティングおよびリーガル・マネージド・サービスとして、法務機能の強化・向上をテーマとして、日本の企業の持続的な企業価値の向上に関する支援を実施している。戦略法務・ガバナンス研究会共同代表幹事、日本組織内弁護士協会理事、国際取引法学会理事、第二東京弁護士会常議員等を務める。
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EY弁護士法人所属 法務機能コンサルティング、リーガルマネージドサービスを取り扱う
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この記事について

企業において法務が担う役割については、従来の守りの法務機能とともに、攻めや戦略的な観点からの法務機能の強化が求められるようになってきました。

この特集では、改めて事業の推進に資する法務機能を考えるとともに、
✅ コーポレートガバナンス・グローバルグループガバナンスを実現する体制の整備
✅ 組織全体をコントロールする本社機能・法務機能の強化
✅ 組織を支える法務人材の育成・評価
など、成長を続ける企業において、企業価値の維持・創出を支える法務の1つの姿を提示することを目的としています。

※この記事は、2023年10月12日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。

法務機能の役割と強化の必要性

法務機能に求められる役割

近年、VUCAと呼ばれる不確実な時代において、企業を取り巻く環境は著しく変化しており、さまざまなリスクに対応することが求められています。全世界でサプライチェーンが形成されている中、海外で起きた出来事がすぐに自社のビジネスに影響することなどもあり、グローバルな視点で瞬時にリスクに対応することができるよう備えておくことが必要です。

また、ITやテクノロジーの進化により、日常生活に関わるあらゆることが自動化・効率化されていますが、同時にそれらを制御するためのルール作りも活発化しています。このような流れの中、既存・新規を問わずビジネスを成功させていくためには、テクノロジーの活用だけでなく、現在どのような法規制が存在し、今後どのような法規制が敷かれていくのかを把握し、ビジネスの方向性を決めていくという視点が非常に重要となります。さらに、現状の法規制に従うだけでなく、テクノロジーの進化に伴い、ときには法規制自体を変えるための行動が必要とされる場面も生じてきます。

いずれの場面においても法務機能に求められる役割は重要さを増し、ますます高度化・複雑化しています。リスクから企業を守るといった従来型の機能に加え、ビジネスのガイド・パートナーとしての役割を果たすことや、法的なバックグラウンドを基にビジネスに対して新しい示唆を与えることなど、さまざまな役割が期待されています。

法務機能の強化と人材

このような時代の流れの中、法務機能を強化することは、企業にとって喫緊の課題といえます。また、変化に対応する法務機能を構築していくためには、さまざまなバックグラウンドを持つ法務人材を集めてダイバーシティを確保することや、自社に足りないスキルを持った人材を採用し、新たな付加価値を自社の法務機能に足していくといった人材面での強化も必要となってくるでしょう。

一方で、日本の労働市場に目を向けると、労働人口の減少に直面しており、特に法務人材のような専門家人材は必要な技術の獲得などの育成に時間を要するため、労働市場の中でも数が少ないというのが現状です。法務機能に求められる役割の多様化に対応できる高度なスキルを備えた法務人材の確保は容易ではありません。このような環境下において、法務機能の強化をめぐるトレンドは、付加価値の低い定型的業務を効率化し、より付加価値の高い高度な業務にリソースを割くことで法務機能を強化するという傾向を強めています。

リーガルオペレーションズとは

米国から始まったリーガルオペレーションズ

近年、法務業務の効率化、さらには法務機能の強化をめぐるトレンドとして、「リーガルオペレーションズ」の考え方が広まってきています。リーガルオペレーションズとは、米国のCorporate Legal Operations ConsortiumCLOC)という団体の定義を和訳すると、「法務部門等がその『顧客』に対して、より効果的な業務提供を可能とする一連のビジネスプロセス、活動、その専門家」のことです。CLOCは、リーガルオペレーションズに関して12のコア・コンピテンシーを定義しています。

CLOC ”What is Legal Operations?

また、1982年に創立されたAmerican Corporate Counsel Association(ACCA)を前身とする、会員数4万5000人以上の世界的な組織内弁護士団体であるAssociation of Corporate CounselACC)は、リーガルオペレーションズの成熟度に応じた課題や対応策を整理したマチュリティ・モデルを公表しています。

このような12のコア・コンピテンシーやマチュリティ・モデルというフレームワークにより、リーガルオペレーションズの共通言語化が行われた結果、これまで暗黙知とされ、各人の経験値によって運営されてきた法務部門において、ベストプラクティス(他社成功事例等)の再現が可能となり、また、法務の業務プロセスを見直す際の重要な視点が提供されています

日本版のリーガルオペレーションズの検討

日本でもこうした流れを受け、2021年に有志により、CLOCの日本支部に当たる「CLOC Japan Shared Interest Group」が非英語圏で初めて設立されました。また、同時期に、日本の著名企業の法務メンバーで構成される「日本版リーガルオペレーションズ研究会」が、上記12のコア・コンピテンシーを日本企業の法務部の目線で捉え直し、日本版の8つのコアを公表しました。


参考元|日本版リーガルオペレーションズ研究会「日本版リーガルオペレーションズの八つのコア」(NBL1191号、2021年)を基にEY弁護士法人が作成

日本版リーガルオペレーションズ研究会の8つのコア・コンピテンシーでは、法務部門の運営にとってコアとなる項目が定義されており、リーガルオペレーションズにおいては、これらの項目の習熟度を上げることで、法務業務の効率化・法務機能の強化につながるとされています。

本連載ではこれらの項目のうち、戦略マネジメント人材といった項目を中心に、これからの法務機能に求められる役割とは何かについて解説をしていきます。

リーガルリスクマネジメントとは

リーガルリスクの5類型

法務機能の主要な役割として挙げられるのが、企業とその企業グループ全体におけるリーガルリスクを適切にマネジメントするという役割です。ここでいうリーガルリスクについてはさまざまな考え方があるところですが、契約リスク規制対応リスク紛争・訴訟リスクといった狭義のものだけではなく、レピュテーションリスクを含む企業活動に伴うあらゆる「リスク」に付随する法的側面を指すものと捉えることが適切です。EY弁護士法人では、これらのリスクを大きく下記の5つに分類しています。

リーガルリスクマネジメントとは

リーガルリスクマネジメントとは、これらのリスクをマネジメントすること、すなわち、リスクの回避だけでなく、リスクの低減・受容・共有・活用(価値追求)などの手段を使って企業価値の毀損を防止すると同時に、企業価値の向上を図ることをいいます。なお、リスクへの対応として、COSO-ERM2017でリスクの「活用」(価値追求)が加わりました。

リーガルリスクマネジメントには大きく以下の2つの観点が考えられます。

① 企業および企業グループ全体で適切にリーガルリスクがマネジメントされているか
② 日々のオペレーションや経営判断の場面で、担当者や意思決定権者が個人・部門レベルで適切にリーガルリスクをマネジメントできているか

まず、①においては、リーガルリスクマネジメントのプロセスとして、企業内、さらには企業グループ内でリーガルリスクを棚卸した上で、自社および自社グループにとって重要なリーガルリスクを特定し、それらを分析・評価することが重要となります。

具体的には、上記のような分類に沿って自社におけるリスクの特定・識別を行った上で、それぞれのリーガルリスクにつき、インパクトの大きさや発生可能性などの観点から分析・評価をすることとなります。この際に重要なことは、リーガルリスクを特定・識別する上で担当者がその基準を明確に理解していること、また、分析・評価については、法的素養のある人材が実施することです。

そして、リーガルリスクの分析・評価の結果、重要なリスクについては法務機能が所管することにより重点的にマネジメントし、その他のリスクについては法務機能以外の部門で所管するものの、そのマネジメントについて法務機能や監査機能が定期的にモニタリングするような仕組みが必要となってきます。

一般的に、企業をめぐるリーガルリスクは多岐にわたるため、当然法務機能がそのリスク全てをマネジメントすることは不可能であり、ビジネス機能を含む他の機能も同時にリスクマネジメントの当事者になるという意識を持っておく必要があります(第1線であるビジネスの現場がリスクオーナーとなるべきです)。

また、これらのリーガルリスクは時代の流れとともに絶えず変化していくため、継続的に法改正等をモニタリングしながら、リーガルリスクの見直しを定期的に行う必要があります。

次に、②については、ビジネス機能の現場の担当者部門意思決定権者など第1線の人材のリーガルリスクに対する感度を高めておく必要があります。これには全社、グループを挙げての法務教育が必要になります。

そして、第2線として自社の法務機能を担う法務人材が、個々の問題の解決に当たってリーガルリスクマネジメントの概念を理解しておくことが重要です。法務人材は、リーガルリスクに直面した際、安直にリスクを恐れ、リスク回避の手段のみによって「ノー」を突き付けるのではなく、当該リスクのインパクトの大きさや発生可能性を分析・評価し、リスクの受容や低減・共有・活用といった方法も検討して、最適な答えを導く必要があります。このような役割を果たすためには、法的知識だけでなく、ビジネスへの深い理解・状況分析力・アイデア力・判断力などのスキルが重要となります。

法務機能のパーパス

適切なリーガルリスクマネジメントの実践は、どの企業の法務機能にも求められますが、近年では企業によりガバナンスの機能なども法務機能に求められており、その役割は多様化してきています。もちろん、自社にどういった法務機能が必要かという個別具体的な課題については、各企業のビジネス形態や戦略に左右されます。

また、サスティナブル経営などの観点から、企業が自社のパーパスを設定し、経営の大前提として自社の存在意義を見直す動きが盛んですが、法務機能も同様に、自社においてなぜ法務が存在するのか、パーパスを設定して法務機能の存在意義を改めて問うことで、自社にとって必要な法務機能を再定義し、法務機能の「軸」を作ることができます。

そして、パーパスを設定することの意義は、法務機能の「軸」を作ることにとどまらず、個別具体的な局面での判断の拠り所となること、組織への共感により当事者意識を高め、メンバーの自律的な課題解決に向けた取り組みを推進すること、さらにはグループ内での法務機能の連携を強化することなどのメリットも存在します。

ビジネスに対する法務機能の付加価値

法務機能の分類

法務機能に関しては、さまざまな分類がなされていますが、大きくは企業価値の向上に貢献する「攻めの法務機能」と企業価値の毀損防止に貢献する「守りの法務機能」に分類することができます。

EY弁護士法人では、さらにこれら攻めと守りの法務機能について、求められるフェーズによって内容が変わり得ることを踏まえて、以下の図のように、戦略レベルで求められる法務機能(以下、「戦略的法務機能」)とオペレーションレベルで求められる法務機能(以下、「オペレーショナル法務機能」)の観点からも分類しています。

実務においては相対的な側面もあり、明確に分類をすることは難しいですが、戦略的法務機能に分類されるものは、ビジネスに対する付加価値が高く、ここに対していかにリソースを割くかということが法務機能を強化する上で重要な課題の一つとなっています。

このような分類を行うことのメリットは、マッピングの方法と組み合わせることで、現状の業務把握課題の洗い出しを視覚的に行うことができるという点にあります。上記の分類に沿って現在担当する業務内容を整理すると、自社の法務機能が担っている業務が、どの領域(分類)の機能を果たしているのかということが可視化されます。

例えば、戦略的法務機能に該当する業務が少ないのであれば、その領域においてより付加価値を高められる業務を検討し、また、オペレーショナル法務機能の業務が多いのであれば、業務の効率化が図れないかを検討することで、自社の法務機能における課題の設定と対応策の検討を客観的に実施することができます。

戦略的法務機能の例

戦略的法務機能が何かということについては、各企業のビジネス形態などにも左右されるため一概に定義することはできませんが、例えば、企業同士のパートナーシップの方法について法務機能がアドバイスを行い、関与していくという例を考えてみましょう。

このような場面においてどのように戦略的法務機能を発揮していくかを考える場合、どのような内容のアドバイスを行うかといった内容面も当然重要ですが、同時に法務機能の立ち位置にも大きな付加価値をもたらす機会が存在するという点に注意する必要があります。

例えば、法務機能がバックオフィスとしての役割に徹しており、ビジネス機能との距離が遠い場合は、ビジネス機能が相手方と信頼関係を築き、パートナーシップの組み方を全て固めた上で、仕上げとして契約書を作る段階において法務機能に相談が来るようなケースが多いように思われます。

このようなケースでは、契約書のドラフト段階になって、例えば、「出資」というスキームで契約書のドラフトの依頼が来ていたものの、検討した結果、資本関係を持たないスキームの方がより自社にとってよりメリットが多いことに気付いた場合であっても、既に相手方と合意した後で社内決裁なども完了しており、そのスキームを一から変えることは状況的にできないといったことも考えられます。

逆にこのケースにおいて、法務機能とビジネス機能の距離が近く、当初からビジネス部門が法務機能に対して相談に来ていた場合はどうでしょうか。交渉の初期から法務機能がタイムリーに関与することにより、出資以外のスキームを提示するなどして、自社にとって最適なパートナーシップの在り方が実現できていたかもしれません。

このようなケースにおいては具体的なアドバイスの中身というよりも、法務機能の立ち位置をどうするかという組織・体制の点が戦略的法務機能を発揮する際のキーポイントとなっています。戦略的法務機能を発揮するためには、そもそも組織設計として、ビジネス機能から独立して法務機能を配置するのではなく、ビジネス機能の中に法務機能を作り、よりスピーディーに情報をキャッチするといった体制の方が、戦略的法務機能をより効果的に発揮することができるということも考えられます。

以上は一例にすぎませんが、戦略的法務機能を効果的に発揮するためには、業務の内容を見直すだけではなく、組織・体制の在り方も見直すことを念頭に置く必要があります。

組織・体制の面から考える法務機能の在り方

国際的競争力の高い企業の法務部門の4つの特徴

それでは、戦略的法務機能を効果的に発揮するための組織・体制とはどのようなものでしょうか。多数の日本企業へヒアリングを行った結果、以下のように国際的競争力の高い企業の法務部門の4つの特徴が見えてきました。

①人材

まず1つ目は、「人材」です。国際的競争力の高い企業では、グループ全体の法務部門を統括するジェネラルカウンセル(GC)または最高法務責任者(CLO)というポジションが設置されています。GCやCLOという法務のバックグラウンドを持った役員レベルの人材の存在は、経営やビジネスの重要な意思決定の場面に法務人材が参画することを必然とし、法務人材・組織とビジネスとの距離を格段に近付けています

企業としても、複雑化したビジネス環境に対応するためには、経営戦略やその判断において、法的な観点からの指摘を得ることが欠かせません。また、昨今、企業はあらゆるステークホルダーへの説明責任が増している中、経営におけるインパクトも無視できなくなっており、このような人材の登用が増加しています。また、国際的競争力の高い企業では、従業員規模に対する法務人材の割合が高いことも特徴といえます。

②ビジネスとの連携

2つ目は、「ビジネスとの連携」です。経済産業省の「国際競争力強化に向けた日本企業の法務機能の在り方研究会」でも指摘されているように、日本企業の法務部門の多くは相談に応える「受け身」の体制です。しかし、前述の通り、戦略的法務機能を発揮するためには、ビジネス部門から案件や相談が持ち込まれるのを待つだけでなく、自ら情報を収集し、ビジネスの初期段階から検討に関与し、積極的かつ的確な提案を行うことが必要となります。

この情報収集について、ビジネス部門担当者と法務担当者の個人的なつながりに頼ってしまうと、当該担当者が異動等で在籍しなくなってしまった途端、法務機能の発揮が難しくなってしまいます。そこで、組織として安定的かつ継続的に法務機能を発揮するため、情報収集の体制や業務基盤の整備が必要になります。

③法務部門の守備範囲

3つ目は「法務部門の守備範囲」です。国際的競争力の高い企業の法務部門は、契約書の審査や法律相談・訴訟対応といった典型的な法務業務に加えて、ESG経済安全保障対応レピュテーションリスクマネジメントといった経営課題につながる分野について、主体的にまたは他の部門と密に連携して取り組んでいます。経営課題につながる分野で法務部門がプレゼンスを示すことにより、当該企業における法務部門の存在価値を向上させ、ビジネスとの連携もより深まる結果につながります。

④グローバルな法務ガバナンス

最後に4つ目として、「グローバルな法務ガバナンス」が挙げられます。昨今は日本企業の海外展開が進み、大規模な海外子会社を持つ企業や、企業全体の売上比率において海外の方が高い企業も珍しくありません。国際的競争力の高い企業の法務部門では、日本の本社法務の責任者が、海外を含むグループ会社のGCやCLO等の責任者を通じて連携し、その役割や権限分配の範囲を明確化することで、グループ全体の適切なリーガルリスクマネジメントの観点から必要な範囲で、本社法務としてグループ会社の状況を把握できる体制をとっています。

欧米を含む海外では、訴訟に発展した場合の賠償額や規制当局の課す制裁金が日本と桁違いに大きく、世界中のあらゆるところでビジネス活動をしている日本企業にとってグローバルな法務ガバナンス体制の不備は深刻な経営課題といえます。もちろん、グローバルなグループガバナンス体制の構築は、法務だけでなく本社の管理部門全般の問題でもあります。

そして、法務ガバナンスという縦の関係だけではなく、法務部門は企業内のルールの取り扱いに関連して、他の管理部門との連携の機会も多いことから、情報が集まりやすく、本社の各管理部門を横断するハブ組織として、横の関係においても経営課題に主体的に取り組み、グループ全体のガバナンスをドライブする存在にもなり得ます。

法務機能を支える法務人材の育成・評価

法務人材の人事評価・育成制度

法務人材について独自の人事評価・育成制度を整備することも法務機能にとって重要な課題となっています。日本企業の多くが、いわゆる総合職採用を前提としたローテーション人事を採用し、全従業員統一の評価制度の下で経営を行ってきましたが、法務人材をはじめとする専門家人材に統一的な評価制度はなじまないものとなってきており、専門家人材向けの人事評価・育成制度を個別に設定することが望ましいといえます。

また、法務人材は外部法律事務所の弁護士と異なり、当事者として「判断」に深く関与することができるという強みを有しています。その裏返しとして、戦略やビジネスについての深い見識、取引慣習への理解、バランス感覚、問題解決のための想像力などを備えていることが求められます。

法務人材のキャリアプラン

法務人材のキャリアの一つのゴールとして、GCなどの役員が考えられますが、役員層での判断事項は法務分野に限られず、各種経営判断に携わることになるため、ビジネスの理解や経営判断のスキルを備えることは重要なキャリアパスの一つともなります。これらのスキルの獲得については、教育・研修や日常の法務業務だけでは身につかない部分もあるため、育成ステップとしてビジネス経験や法務以外の管理部門を経験する機会を設けることも重要な育成方法の一つとなります。

法務機能の組織設計と育成・評価

さらに、法務人材の育成・評価は法務機能の組織設計・ガバナンスの観点においても、重要な役割を担っています。グループ内に複数の法務機能を抱える企業にとって、各法務機能に共通の人事評価や育成制度を適用することで、グループ全体の法務機能の水準の維持および強化を図ることが可能となります。特に、海外の法務機能とどのような連携を図るかということは日本企業における大きな課題となっていますが、人事評価や育成制度をうまく活用することも有効な手段の一つとなります。

おわりに

以上、第1回は法務機能のトレンド、ビジネスに付加価値をもたらす法務機能、法務機能の組織体制、人事評価・育成制度などについて概要を記載しました。第2回以降は、具体例・事例とともに、各項目についてより詳しく解説していきます。