【2023年4月施行】
道路交通法(道交法)改正とは?
自動運転レベル4解禁の内容を
分かりやすく解説!
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- この記事のまとめ
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2023年4月1日より改正道路交通法が施行され、いわゆる「レベル4」の自動運転が解禁されます。遠隔監視などを条件に、自動運転車を活用した公道での巡回サービスが可能となります。
改正道路交通法において、レベル4の自動運転は「特定自動運行」と定義されています。特定自動運行を行う場合は、対象地域を管轄する公安委員会の許可を受けなければなりません。また、特定自動運行実施者に課された義務を遵守する必要があります。
今回は、レベル4の自動運転(=特定自動運行)の解禁に関して、道路交通法改正の内容を詳しく解説します。
※この記事は、2023年2月21日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。
※この記事では、法令名を次のように記載しています。
・道路交通法…道路交通法の一部を改正する法律(令和4年法律第32号)のうち、2023年4月1日までに施行される部分による改正後の道路交通法
・道路交通法施行規則…道路交通法施行規則等の一部を改正する内閣府令(令和4年内閣府令第67号)による改正後の道路交通法施行規則
目次
【2023年4月施行】道路交通法(道交法)改正とは|自動運転レベル4の解禁
2022年4月に公布され、2023年4月施行予定の改正道路交通法では、いわゆる「レベル4」の自動運転が解禁されます。
今回の改正では主に過疎地域で特定のルートを無人で走るバスでのレベル4の自動運転が想定されていますが、今後は高速道路での自家用車・トラックなどにも拡大される予定です。
改正道路交通法の公布日・施行日
改正の根拠となる法令名は、「道路交通法の一部を改正する法律」です。公布日と施行日は、以下のとおりです。
- 公布日・施行日
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公布日|2022年4月27日
施行日|2023年4月1日
レベル4の自動運転(=特定自動運行)とは
前提として、自動運転のレベルには、1~5まであります。
- 自動運転のレベル
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【レベル1】システムが、前後・左右のうち、いずれかの運転操作を支援する
例:自動ブレーキ、前の車に付いて走る、車線からはみ出さないなど
【レベル2】システムが、前後・左右の両方の運転操作を支援する
例:自動追い越し支援、自動合流支援など
【レベル3】過疎地域や高速道路などの特定条件下で、システムが全ての運転制御を行う。ただし、システムの継続が困難な場合には、運転者が適切に介入する必要がある
【レベル4】過疎地域や高速道路などの特定条件下で、システムによる完全自動運転がなされる(運転者の介入不要)
【レベル5】あらゆる条件下において、システムによる完全自動運転がなされる(運転者の介入不要)
今回解禁されるレベル4の自動運転は、道路交通法において「特定自動運行」と定義されています。特定自動運行を行う者は公安委員会の許可を受けた上で、道路交通法に定められるルールを遵守しなければなりません。
特定自動運行の定義
「特定自動運行」とは、自動運行装置を使用条件に従って使用し、操作者がいない状態で自動車を運行することをいいます(道路交通法2条1項17号の2)。ただし、自動運行システムが整備不良となった場合・自動運行システムが法令で定める使用条件を満たさない場合に、すぐに安全な方法で自動停止させる機能を備えている必要があります。
特定自動運行は公安委員会の許可制
特定自動運行を行おうとする者は、運行場所を管轄する公安委員会の許可を受けなければなりません(道路交通法75条の12第1項)。
公安委員会は、特定自動運行の許可を与えるか否かにつき、以下の5つの観点から審査を行います(同法75条の13)。
①自動車が特定自動運行を行うことができるものであること
②特定自動運行が、自動運行装置に係る使用条件(ODD:Operational Design Domain)を満たして行われるものであること
③特定自動運行実施者または特定自動運行業務従事者が実施しなければならない措置につき、円滑かつ確実な実施が見込まれること
④特定自動運行が、他の交通に著しく支障を及ぼすおそれがないと認められること
⑤特定自動運行が、人または物の運送を目的とするものであつて、当該運送が地域住民の利便性または福祉の向上に資すると認められること
なお、以下のいずれかに該当する場合には、特定自動運行の許可は与えられません(同法75条の14)。
(a)特定自動運行の許可を取り消され、取り消しの日から5年を経過していない者(許可を取り消されたのが法人の場合には、取消原因事実が発生した当時、現に当該法人の役員として在任した者で、当該取り消しの日から5年を経過していない者を含む)であるとき
(b)許可を受けようとする者が法人である場合において、当該法人の役員が(a)に該当する者であるとき
特定自動運行実施者の遵守事項
「特定自動運行実施者」とは、レベル4の特定自動運転を行う事業者のことです。
特定自動運行実施者は、道路交通法に基づき、以下のルールを遵守する必要があります。
①特定自動運行計画等の遵守
②特定自動運行業務従事者に対する教育
③特定自動運行主任者・現場措置業務実施者の指定
④特定自動運行中の遵守事項
⑤特定自動運行主任者の義務
⑥特定自動運行が終了した場合の措置
⑦特定自動運行において交通事故があった場合の措置
特定自動運行計画等の遵守
特定自動運行を行う際は、以下の計画・条件に従わなければなりません(道路交通法75条の18)。
①公安委員会の許可を受けた特定自動運行計画
→特定自動運行計画では、
・ 使用する自動車の型式や使用条件
・ 特定自動運行の経路・日時・運送する人または物
・ 管理場所の所在地・連絡先、実施すべき措置
などを定める必要があります(同法75条の12第2項2号)。
②公安委員会によって付された許可条件
→公安委員会は特定自動運行の許可をする際、道路における危険防止などのために条件を付け加えることができます(同法75条の15第1項)。さらに、特別の必要が生じた場合には、条件の変更・追加も認められています(同条2項)。
特定自動運行業務従事者に対する教育
特定自動運行業務従事者とは、特定自動運行に関する業務に従事する、以下の者をいいます。
・特定自動運行主任者
・現場措置業務実施者
・その他の特定自動運行のために使用する者
特定自動運行実施者は、特定自動運行業務従事者に対し、特定自動運行業務従事者が実施しなければならない措置を円滑かつ確実に実施させるための教育を行わなければなりません(道路交通法75条の19第1項)。
実施すべき教育の内容は、道路交通法施行規則9条の27に定められており、法令・自動運行装置の仕様・各種措置の実施手順・設備の使用方法などが含まれています。
特定自動運行主任者・現場措置業務実施者の指定
特定自動運行実施者は、特定自動運行を行うに当たり、「特定自動運行主任者」を指定しなければなりません(道路交通法75条の19第2項、道路交通法施行規則9条の28)。
なお、特定自動運行主任者になるには、以下の要件を備えている必要があります。
①両眼の視力または両耳の聴力を喪失していないこと
②遠隔監視装置その他の特定自動運行計画に従って特定自動運行を行うために必要な設備を適切に使用できること
③①②のほか、道路交通法令により特定自動運行主任者が実施しなければならない措置を円滑かつ確実に実施する上で、支障があると認められる者でないこと
さらに、自動車に映像・音声の確認装置(ドライブレコーダーなど)を備え付け、かつ管理場所に特定自動運行主任者を配置して特定自動運行を行う場合には、現場措置業務実施者を指定しなければなりません(道路交通法75条の19第3項)。
現場措置業務実施者とは、「特定自動運行において交通事故があった場合の措置」を実施する者です。
特定自動運行中の遵守事項
特定自動運行実施者は、特定自動運行中の自動車について、以下のいずれかの措置を講じなければなりません(道路交通法75条の20第1項)。
①自動車に映像・音声の確認装置を備え付け、かつ管理場所に特定自動運行主任者を配置する措置
※現場措置業務実施者の指定が必須
②特定自動運行において交通事故があった場合の措置などを講じさせるため、特定自動運行主任者を自動車に乗車させる措置
また、特定自動運行を行っている最中は、特定自動運行中である旨が自動的に表示される装置を、自動車の前方・後方から見やすい位置に取り付けて作動させなければなりません(同条2項、道路交通法施行規則9条の30)。
特定自動運行主任者の義務
管理場所に配置された特定自動運行主任者は、以下の義務を負います(道路交通法75条の21第1~2項)。
- 特定自動運行中の自動車につき、映像・音声の確認装置の作動状況を監視しする義務
- 確認装置が正常に作動していないことを認めた場合、特定自動運行主任者は直ちに特定自動運行を終了させる措置を講じる義務
- 道路において特定自動運行が終了した場合、直ちに道路交通法令所定の措置を講ずべき事由の有無を確認する義務
特定自動運行が終了した場合の措置
特定自動運行が終了した場合において、自動車または特定自動運行主任者に対して以下のいずれかの措置・命令が行われているときは、特定自動運行主任者は直ちに、自動車を当該措置・命令に従って通行させるため必要な措置を講じなければなりません(道路交通法75条の22第1項)。
- 警察官の現場における交通規制の指示
- 警察官等の交通整理
- 混雑緩和を目的とした警察官の禁止、制限、命令
- 混雑緩和を目的とした警察官の指示
- 危険防止を目的とした警察官の禁止、制限
- 交通の安全と円滑を図ることを目的とした警察官の禁止、制限、命令
また、
- 特定自動運行を終了した自動車に緊急自動車・消防用車両が接近している場合
- 当該自動車の付近に緊急自動車・消防用車両がある場合
には、特定自動運行主任者は直ちに、緊急自動車・消防用車両の通行を妨げないようにするため必要な措置を講じなければなりません(同条2項)。
さらに、特定自動運行を終了した自動車が違法駐車と認められる場合には、特定自動運行主任者は直ちに駐車方法を変更し、または自動車を当該場所から移動するため必要な措置を講じる義務を負います(同条3項)。
特定自動運行において交通事故があった場合の措置
特定自動運行中または運行終了後の自動車について交通事故があったときは、特定自動運行主任者は以下の措置を講じなければなりません。(道路交通法75条の23第1項)
- 直ちに最寄りの消防機関に通報する
- 現場措置業務実施者を現場に向かわせる
- 事故現場の最寄りの警察署の警察官に対して、事故発生日時などを報告する
なお、事故現場に到着した現場措置業務実施者は、道路における危険を防止するため必要な措置を講じなければなりません(同条2項)。
人身事故の発生時には、自動車の乗務員が、直ちに負傷者を救護する・道路における危険を防止するなどの必要な措置を講じなければなりません。さらに特定自動運行主任者(死亡・負傷によりやむを得ないときはその他の乗務員)は、現場の警察官または最寄りの警察署の警察官に対して、事故発生日時などを報告する義務を負います(同条3項)。
また、警察官からの命令・指示(同条4項、5項)があった場合には、特定自動運行主任者・乗務員はそれに従って対応しましょう。
特定自動運行に関するルールに違反した場合の罰則(ペナルティ)
道路交通法上の特定自動運行に関するルールに違反した場合、特定自動運行の許可取り消しや効力の停止、さらに刑事罰の対象となる可能性があります。
特定自動運行の許可取り消し・効力の停止
特定自動運行実施者が以下のいずれかに該当する場合、公安委員会から特定自動運行の許可を取り消されるか、6カ月間を上限に許可の効力を停止される可能性があります(道路交通法75条の27)。
①特定自動運行実施者または特定自動運行業務実施者が、特定自動運行に関して道路交通法令に違反したとき
②特定自動運行計画が許可基準(同法75条の13第1項)に適合しなくなったとき
③特定自動運行実施者が欠格事由(同法75条の14)に該当することになったとき
また、特定自動運行中に交通事故が発生したときや、特定自動運行に関する道路交通法令違反があったときには、30日間特定自動運行の許可の効力が停止される可能性があります(同法75条の28)。
刑事罰
特定自動運行に関する道路交通法違反については、刑事罰の対象とされているものがあります。主な違反行為と法定刑は、以下のとおりです。
無許可での特定自動運行 偽りその他不正の手段による特定自動運行許可の取得 無許可での特定自動運行計画の変更 特定自動運行実施者に対する公安委員会の指示への違反 | 5年以下の懲役または100万円以下の罰金(同法117条の2第2項) |
特定自動運行主任者による交通事故があった場合の措置義務違反(死傷者があった場合) | 5年以下の懲役または50万円以下の罰金(同法117条3項) |
特定自動運行計画等の不遵守 | 1年以下の懲役または30万円以下の罰金(同法117条の4第2項) |
特定自動運行主任者による交通事故があった場合の措置義務違反(死傷者がなかった場合) | 1年以下の懲役または10万円以下の罰金(同法117条の5第2項) |
特定自動運行上の注意義務違反等による他人の建造物の損壊 | 6か月以下の禁錮または10万円以下の罰金(同法116条2項) |
特定自動運行時の交通事故に関する警察官への報告義務違反 | 3か月以下の懲役または5万円以下の罰金(同法119条1項) |
許可事項の変更に関する届出義務違反 報告義務・資料提出義務違反 | 20万円以下の罰金(同法119条の2の3) |
この記事のまとめ
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