政令(施行令)と省令(施行規則)の違いとは?
基本を解説!

この記事のまとめ

政令(施行令)と省令(施行規則)の違いを分かりやすく解説!

この記事では、法令を理解するうえで欠かせない政令・施行令・省令・施行規則について分かりやすくご紹介します。

ヒー

法律を読んでいると、 「環境省令で定めるところによる」「政令で定める基準に従う」 など、省令や政令を参照しなければならないことが頻繁にあります。これは、どういうことなのでしょうか?あっちこっち参照しなければならないのは大変なので、法律に全部書いてくれたらいいのに・・・。

ムートン

法律は国会でつくられるものですが、省令や政令は行政でつくられるものです。細かい事項もすべて国会で決めてしまうのではなく、現場に即した柔軟なルールにするために、細かいことは行政に委ねることにしたのです。あっちこっち参照するのは大変ですが、ルールが機能するために大切なことなんですよ。以下、詳しく解説しますね。

※この記事は、2021年4月19日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。

政令とは

政令(せいれい)とは、憲法・法律を実施するために制定されるルールです(日本国憲法第73条第6号)。行政機関が制定する命令のなかで最上位の効力を有します。

政令や省令を含めた法体系の全体像については、以下より解説します。

法体系の全体像

法体系のピラミッドとは

政令(施行令)と省令(施行規則)の違いを理解するうえで、覚えておきたいのが法体系のピラミッドです。法令は、誰が制定したのかによって形式が区別されます。法体系のピラミッドとは、憲法を頂点に、誰が制定した法律がもっとも効力を有するものであるかを示したものとなります。

法令の形式には、憲法、法律、議員規則、最高裁判所規則、政令、総理府令・省令、行政機関である委員会や庁の長官の定める命令があります。これらは、誰が制定するかによって区別されます。 一般的に、政令のことを「施行令」、総理府令・省令のことを「施行規則」と呼んでいます。

法令の形式制定権者内容
憲法国民国の最高法規であり、これに反する法律や国家の行為は無効となります(憲法98条)。
法律国会憲法の次に効力をもつルールです。あらゆる事項に及びます。国民の権利を制限又は、国民に義務を課するためには法律に定めなければなりません。
議員規則衆議院・参議院両院の会議その他の手続及び内部の規律に関するルール(憲法58条2項)。一般的には法律の次に効力をもつとされます。
最高裁判所規則最高裁判所訴訟に関する手続、弁護士、裁判所の内部規律・司法事務処理に関するルール(憲法77条1項)。法律の次に効力をもちます。
政令(施行令)内閣憲法・法律を実施するために制定されるルール(憲法73条6号)。命令のなかで最上位にあるルールです。 法律から委任された事項について、委任の範囲において定めます。政令には、法律の委任がない限り、罰則や、国民の権利を制限し、又は国民の義務を課するルールを定めることはできません(同号、内閣法11条)。
総理府令・省令(施行規則)各省大臣各省大臣が担当する行政事務について、法律・命令を施行するため、又は法律・政令の委任に基づいて定めるルール(国家行政組織法12条)。政令と同じく、法律の委任がない限り、罰則や、国民の権利を制限し、又は国民の義務を課するルールを定めることはできません。
その他の命令委員会・庁の長官委員会と庁の長官が担当する行政事務について、法律に基づいて定めるルール。これも一般的に「規則」と呼ばれます。
例)会計検査院規則、人事院規則、公正取引委員会規則など

政令(施行令)、総理府令・省令(施行規則)、委員と庁の長官の定める命令をあわせて「命令」といいます。命令のなかでは、政令(施行令)が上位にあり、総理府令・省令(施行規則)、委員と庁の長官の定める命令の効力は政令に劣ります。

法体系のピラミッド(法令の力関係)を表すと次のとおりとなります。

憲法 > 法律 > 議員規則・最高裁判所規則 > 政令(施行令) > 総理府令・省令(施行規則)・その他の命令

告示・訓令・通達とは?

法令と間違いやすいものに「告示」「訓令」「通達」というものがあります(国家行政組織法14条)。これらは、国民に対して効力をもつものではないという点が法令とは異なります。

  • 告示
    各省大臣や委員会と庁の長官が、指定・決定などの処分などの事項について、一般に公に知らせること
  • 訓令・通達
    上級官庁が下級官庁や職員に対して命じ、又は示すこと。

このように、告示・訓令・通達は、法令とは異なりますので、これらを遵守しなければ処罰を受けるものではありません。しかしながら、法令を解釈するための道しるべとして、告示・訓令・通達が参考になることがあります。

政令(施行令)と省令(施行規則)の具体例

それでは、政令(施行令)と省令(施行規則)について具体的な条項を参照してみましょう。

ムートン

今回は、労働者派遣法の条文を読みながら、政令(施行令)と省令(施行規則)を読んでみます。実際の条文を読みながら理解を深めてくださいね。

労働者派遣法の政令(施行令)と省令(施行規則)

  • 政令(施行令)
    労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律施行令(労働者派遣法施行令)
  • 省令(施行規則)
    労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律施行規則(労働者派遣法施行規則)

練習その1│労働者派遣法35条の4

それでは、まず、労働者派遣法35 条の4を読んでみましょう。同条は、日雇い労働者を派遣することを禁止するものですが、「政令で定める業務」については、例外的に日雇い労働者を派遣してもよいことが定められています。

(日雇労働者についての労働者派遣の禁止)
第35条の4 派遣元事業主は、その業務を迅速かつ的確に遂行するために専門的な知識、技術又は経験を必要とする業務のうち、労働者派遣により日雇労働者(日々又は30日以内の期間を定めて雇用する労働者をいう。以下この項において同じ。)を従事させても当該日雇労働者の適正な雇用管理に支障を及ぼすおそれがないと認められる業務として 政令で定める業務について労働者派遣をする場合又は雇用の機会の確保が特に困難であると認められる労働者の雇用の継続等を図るために必要であると認められる場合その他の場合で政令で定める場合を除き、その雇用する日雇労働者について労働者派遣を行つてはならない。

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ここでいう「政令」とは、労働者派遣法施行令の頭書きに次のような記載があることから、労働者派遣法施行令のことをいいます。

内閣は、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律(昭和60法律第88号)第4条第1項、第6条第1号、第44条第6項、第45条第16項、第46条第14項、第47条第3項及び第54条の規定に基づき、この政令を制定する。

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それでは、労働者派遣法施行令から、労働者派遣法35 条の4の「政令で定める業務」について言及している条項を探してみましょう。労働者派遣法35 条の4の「政令で定める業務」について言及している条項は、労働者派遣法施行令4条1項となります。

(法第35条の4第1項の政令で定める業務等)
第4条 法第35条の4第1項の政令で定める業務は、次のとおりとする。
⑴  電子計算機を使用することにより機能するシステムの設計若しくは保守(これらに先行し、後続し、その他これらに関連して行う分析を含む。)又はプログラム(電子計算機に対する指令であつて、一の結果を得ることができるように組み合わされたものをいう。第17号及び第18号において同じ。)の設計、作成若しくは保守の業務
⑵ 機械、装置若しくは器具(これらの部品を含む。以下この号及び第18号において「機械等」という。)又は機械等により構成される設備の設計又は製図(現図製作を含む。)の業務
⑶ 電子計算機、タイプライター又はこれらに準ずる事務用機器(第17号において「事務用機器」という。)の操作の業務
⑷ 通訳、翻訳又は速記の業務
⑸ 法人の代表者その他の事業運営上の重要な決定を行い、又はその決定に参画する管理的地位にある者の秘書の業務
⑹ 文書、磁気テープ等のファイリング(能率的な事務処理を図るために総合的かつ系統的な分類に従つてする文書、磁気テープ等の整理(保管を含む。)をいう。以下この号において同じ。)に係る分類の作成又はファイリング(高度の専門的な知識、技術又は経験を必要とするものに限る。)の業務
⑺ 新商品の開発、販売計画の作成等に必要な基礎資料を得るためにする市場等に関する調査又は当該調査の結果の整理若しくは分析の業務
⑻ 貸借対照表、損益計算書等の財務に関する書類の作成その他財務の処理の業務
⑼ 外国貿易その他の対外取引に関する文書又は商品の売買その他の国内取引に係る契約書、貨物引換証、船荷証券若しくはこれらに準ずる国内取引に関する文書の作成(港湾運送事業法第2条第1項第1号に掲げる行為に附帯して行うもの及び通関業法(昭和42年法律第122号)第2条第1号に規定する通関業務として行われる同号ロに規定する通関書類の作成を除く。)の業務
⑽ 電子計算機、自動車その他その用途に応じて的確な操作をするためには高度の専門的な知識、技術又は経験を必要とする機械の性能、操作方法等に関する紹介及び説明の業務
⑾ 旅行業法(昭和27年法律第239号)第12条の11第1項に規定する旅程管理業務(旅行者に同行して行うものに限る。)若しくは同法第4条第1項第4号に規定する企画旅行以外の旅行の旅行者に同行して行う旅程管理業務に相当する業務(以下この号において「旅程管理業務等」という。)、旅程管理業務等に付随して行う旅行者の便宜となるサービスの提供の業務(車両、船舶又は航空機内において行う案内の業務を除く。)又は車両の停車場若しくは船舶若しくは航空機の発着場に設けられた旅客の乗降若しくは待合いの用に供する建築物内において行う旅行者に対する送迎サービスの提供の業務
⑿ 建築物又は博覧会場における来訪者の受付又は案内の業務
⒀ 科学に関する研究又は科学に関する知識若しくは科学を応用した技術を用いて製造する新製品若しくは科学に関する知識若しくは科学を応用した技術を用いて製造する製品の新たな製造方法の開発の業務(第1号及び第2号に掲げる業務を除く。)
⒁ 企業等がその事業を実施するために必要な体制又はその運営方法の整備に関する調査、企画又は立案の業務(労働条件その他の労働に関する事項の設定又は変更を目的として行う業務を除く。)
⒂ 書籍、雑誌その他の文章、写真、図表等により構成される作品の制作における編集の業務
⒃ 商品若しくはその包装のデザイン、商品の陳列又は商品若しくは企業等の広告のために使用することを目的として作成するデザインの考案、設計又は表現の業務(建築物内における照明器具、家具等のデザイン又は配置に関する相談又は考案若しくは表現の業務(法第4条第1項第2号に規定する建設業務を除く。)を除く。)
⒄ 事務用機器の操作方法、電子計算機を使用することにより機能するシステムの使用方法又はプログラムの使用方法を習得させるための教授又は指導の業務
⒅ 顧客の要求に応じて設計(構造を変更する設計を含む。)を行う機械等若しくは機械等により構成される設備若しくはプログラム又は顧客に対して専門的知識に基づく助言を行うことが必要である金融商品(金融商品の販売等に関する法律(平成12年法律第101号)第2条第1項に規定する金融商品の販売の対象となるものをいう。)に係る当該顧客に対して行う説明若しくは相談又は売買契約(これに類する契約で同項に規定する金融商品の販売に係るものを含む。以下この号において同じ。)についての申込み、申込みの受付若しくは締結若しくは売買契約の申込み若しくは締結の勧誘の業務

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とても長い条項ですが、これらの各号に定めている業務については、日雇い労働者を派遣してもよい、ということになります。たとえば、通訳や翻訳やイベントの受付業務などが定められていますね(同項4号、12号参照)。

このように、法令に「政令で定める」という条文があるときは、該当する政令を探したうえで、政令の中で法令の条文について言及している条文を探すことで、法令の意味を理解することができるのです。

練習その2│労働者派遣法26条1項10号

つぎに、労働者派遣法26条1項10号を読んでみましょう。「厚生労働省令で定める事項」という文言がありますね。「厚生労働省令」には、一体どんなことが定められているでしょうか?

(契約の内容等)
第26条 労働者派遣契約(当事者の一方が相手方に対し労働者派遣をすることを約する契約をいう。以下同じ。)の当事者は、厚生労働省令で定めるところにより、当該労働者派遣契約の締結に際し、次に掲げる事項を定めるとともに、その内容の差異に応じて派遣労働者の人数を定めなければならない。
⑴~⑼ (略)
⑽ 前各号に掲げるもののほか、厚生労働省令で定める事項

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「厚生労働省令」とは、厚生労働省が制定した省令です。厚生労働省のサイトから、厚生労働省が制定した省令を検索することができます。このうち、労働者派遣法の委任を受けて定められた省令は、「労働者派遣法施行規則」となります。そこで、労働者派遣法施行規則を参照してみましょう。

施行規則は、法律又は政令(施行令)の定めに基づくルールが定められています。そのため、施行規則は、「法律●条の定める~~~とは、……である。」「政令●条の定める~~~とは、……である。」といった形式で定められていることが一般的です。

それでは、労働者派遣法施行規則に、労働者派遣法26条1項10号について言及している条文を探していきましょう。労働者派遣法施行規則の何条に定められているでしょうか?

ヒー

ありました!労働者派遣法施行規則22条ですね!

ムートン

そのとおりです。早速、読んでみましょう!

第22条 法第26条第1項第10号の厚生労働省令で定める事項は、次のとおりとする。
⑴  派遣労働者が従事する業務に伴う責任の程度
⑵ 派遣元責任者及び派遣先責任者に関する事項
⑶ 労働者派遣の役務の提供を受ける者が法第26条第1項第4号に掲げる派遣就業をする日以外の日に派遣就業をさせることができ、又は同項第5号に掲げる派遣就業の開始の時刻から終了の時刻までの時間を延長することができる旨の定めをした場合における当該派遣就業をさせることができる日又は延長することができる時間数
⑷ 派遣元事業主が、派遣先である者又は派遣先となろうとする者との間で、これらの者が当該派遣労働者に対し、診療所等の施設であつて現に当該派遣先である者又は派遣先になろうとする者に雇用される労働者が通常利用しているもの(第32条の3各号に掲げるものを除く。)の利用、レクリエーション等に関する施設又は設備の利用、制服の貸与その他の派遣労働者の福祉の増進のための便宜を供与する旨の定めをした場合における当該便宜供与の内容及び方法
⑸ 労働者派遣の役務の提供を受ける者が、労働者派遣の終了後に当該労働者派遣に係る派遣労働者を雇用する場合に、労働者派遣をする事業主に対し、あらかじめその旨を通知すること、手数料を支払うことその他の労働者派遣の終了後に労働者派遣契約の当事者間の紛争を防止するために講ずる措置
⑹ 派遣労働者を協定対象派遣労働者に限るか否かの別
⑺ 派遣労働者を無期雇用派遣労働者(法第30条の2第1項に規定する無期雇用派遣労働者をいう。)又は第32条の4に規定する者に限るか否かの別

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「厚生労働省令で定める事項」として、第1号から第7号までの事項が列挙されていますね。

すなわち、労働者派遣法26条1項10号の読み方をまとめると、まず、同項は、 労働者派遣契約の当事者は、前各号に掲げるもののほか、厚生労働省令で定める事項を定めなければならないと定めています。そして、ここでいう「厚生労働省令」とは、 労働者派遣法施行規則22条のことでしたね。

つまり、労働者派遣法26条1項10号とは、労働者派遣契約の当事者は、労働者派遣法施行規則22条各号の事項(派遣労働者が従事する業務に伴う責任の程度など)を、当該労働者派遣契約に定めなければならない、という意味となります。

主務省令とは?分かりやすく解説

法律や政令(施行令)において、省令(施行規則)に細目的事項を委任する場合には、「厚生労働省令で定める事項」などと省名が指定されるのが一般的です。

しかし、省名を指定せずに「主務省令で定める事項」などと記載されることもあります。この場合の「主務省令」とは、法律を所管する省(または内閣府など)が定める省令(または内閣府令など)のことです。

「主務省令」という形で省名を特定せずに記載される理由は、立法政策や省庁間の権限分掌の都合によるため一概に言えません。

典型的な例としては、法律を所管する省(または内閣府など)が複数あるケースが挙げられます。
たとえば「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」(番号法、マイナンバー法)では、「主務省令」に細目的事項を委任する条文がたくさん出てきます。これは、内閣府・総務省の2つが同法を所管しているためです。

(定義)
第2条
1~6 略
7 この法律において「個人番号カード」とは、氏名、住所、生年月日、性別、個人番号その他政令で定める事項が記載され、本人の写真が表示され、かつ、これらの事項その他主務省令で定める事項(以下「カード記録事項」という。)が電磁的方法(電子的方法、磁気的方法その他の人の知覚によって認識することができない方法をいう。第十八条において同じ。)により記録されたカードであって、この法律又はこの法律に基づく命令で定めるところによりカード記録事項を閲覧し、又は改変する権限を有する者以外の者による閲覧又は改変を防止するために必要なものとして主務省令で定める措置が講じられたものをいう。

行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律 – e-Gov法令検索 – 電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ

まとめ

政令・施行令・省令・施行規則の説明は以上です。最新の記事に関する情報は、契約ウォッチのメルマガで配信しています。ぜひ、メルマガにご登録ください!

参考文献

大島稔彦監修『法制執務の基礎知識 第3次改訂版 : 法令理解、条例の制定・改正の基礎能力の向上』(第一法規)