現場と「ともに進む」コンプライアンスを目指して

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この記事について

コンプライアンス推進は企業にとって重要な課題です。ESGやSDGsにも対応しつつ、どのような施策や研修を行っていくべきか、担当者として悩んでいませんか?本特集では、さまざまな企業のコンプライアンス推進について、参考となる取り組みをご紹介します!

第3回は、株式会社スカラの金森久和様と山崎雄介様に、グループ全体のコンプライアンス推進の取り組みの内容や、現場と協働していくために工夫していることについて、詳しくお聞きします。

インタビュイー:
金森久和(かなもり ひさかず)
株式会社スカラ 経営管理本部 総務・法務部 シニアスペシャリスト
株式会社スカラの法務部門立ち上げから現在に至るまで、グループ全体の法務を管掌する。推し戦国武将は徳川家康。

山崎雄介(やまさき ゆうすけ)
株式会社スカラ 経営管理本部 総務・法務部 アソシエイト
新卒時から法務を担当し、現在は契約審査・法務相談・コンプライアンス推進などに携わる。法務担当2名でチェックしている契約書は月100件くらい。好きなことは筋トレ、バー巡り・カクテル作り。

法務・コンプライアンス担当は主に2名|グループ企業にも目配り

――貴社の事業内容を教えてください。

金森 株式会社スカラ、およびスカラグループは、IT、AI、IoTを中心に、ECプラットフォーム、教育、保険に加え、官民共創・DX、M&Aに関するコンサルティング、さらには投資・インキュベーションまで、広範な事業領域を手掛けています。これらの事業全体を通じて、社会問題を解決し、新たな価値を創造することを目指しています。

――法務・コンプライアンスの組織はどのような体制をとられていますか?

金森 総務・法務部という部署の中で、私と山崎、部門長と事務担当者1名で法務・コンプライアンスを担当しています。情報管理セキュリティや社内規程については、内部統制・情報セキュリティ推進本部や経営企画部など他部署と連携しながら対応を行っています。

もともと当社には法務の部署がなく、コンプライアンスは管理部門が担当していましたが、コンプライアンス推進の重要性が高まったことから、こうした体制になりました。また、各事業会社には法務担当が置かれていませんので、私たちがグループ全体の法務・コンプライアンスを所管しています。こちらから指示を出したり、各事業会社からの問い合わせに対応したりしています。

――どのような基準の下でコンプライアンスを推進していますか?

金森 東証プライム市場上場企業として守るべきコンプライアンスのガイドラインがありますので、そこに到達できているかが一つの基準になります。その点は年1回の監査などで確認されるので、定期的にコンプライアンス推進状況を監査人に説明しています。

株式会社スカラ・金森久和様

全グループ社員に年1回のコンプライアンス研修を実施

――コンプライアンス推進に当たっては、どのようなことに取り組まれていますか?

金森 一つは研修制度です。全グループ社員に毎年1回コンプライアンス研修を義務付けることで、グループ全体のコンプライアンスへの共通認識を持ってもらうようにしています。内部通報があった場合などは、私たちから不定期に情報発信をすることもあります。

――研修はどのような流れで実施していますか?

金森 グループ全体で500人を超える社員が在籍しており、全員を集めるのは難しいため、基本は総務・法務部で用意した動画を視聴する形としています。長さは25分くらいで、視聴後にはテストを実施。設問は、動画の内容の振り返りです。回答を記入した上で、期限までに提出してもらっています。

――入社時研修も実施しているそうですね。

山崎 新卒・中途に関わらず、入社の際に1時間程度のコンプライアンス研修を実施しています。コンプライアンスは単に法令遵守という意味合いだけでなく、社会規範社内規程などを守ることを含めた概念ですから、その部分の理解を促す内容になっています。また、前述のように当社は東証プライム市場に上場しているので、インサイダー取引の規制に関する教育も合わせて実施しています。この研修は状況に応じて対面またはオンラインで実施しています。

株式会社スカラ・山崎雄介様

社員それぞれの属性に合わせた啓蒙を意識

――コンプライアンス推進で工夫していることはありますか?

金森 できる限り、社員の属性に合わせた伝え方をするということですね。研修一つをとっても、新入社員もいれば、10年20年とキャリアを積んだ社員もいますし、職種や職位なども千差万別。全員にワンパターンの話をしても、わかってもらえないですよね。最近のニュースにからめた話をしてみたり、社員それぞれの属性を見ながら「スカラグループのコンプライアンスはこうなんだ」と共通認識を持ってもらえるように工夫しています。

――課題に感じているのはどんなことでしょうか?

山崎 研修に関連するところですと、動画のもとになる教育資料の内容にアップデートがあると、そのつど再撮影が必要になります。動画は自社で撮影・編集を行っているので、更新のたびにそれなりの工数がかかってしまう点が課題です。

金森 研修では、私と山崎が交代で講師として話していますが、本職の話し手にはかなわないので、クオリティを上げていくことも課題だと感じています。また現場からは、各部署の業務と関わりが強い内容に特化した研修プログラムを組んでほしいという声が上がっています。

――現場からも法務に課題が上がってくるのですね。

金森 そうですね。各部署が扱う分野に応じて、守るべきルールやセキュリティレベルには濃淡があります。今まではグループ共通の認識を共有することに重きを置いてきましたが、各部署の実情に即したコンプライアンス推進をすべきところにきているのではないかと思います。

例えば、M&A投資を扱う部署からは、「通常より一段階厳しいコンプライアンスを求められるので、範囲を区切ってより深い内容のプログラムをつくってほしい」という要望をもらっています。万一問題が発生すれば、当社だけでなく関わってくださる方々にも影響するので、しっかり取り組まなければなりません。

社会課題解決のため、現場とのコミュニケーションで進めるコンプライアンス

――貴社ならではのコンプライアンスの視点はありますか?

金森 当社として定めているコンプライアンス行動基準は、法律や社会の常識・ルールに反しないように考えて業務に当たるという、ごく一般的な内容です。一方で、私たちスカラグループは社会問題の解決を目指す組織なので、「自分たちよりも、まず周りのことを考えよう」というメッセージも掲げています。行動基準は社内ポータルに掲載し、入社時研修でも紹介し、周知徹底を図っています。

――行動基準の周知だけでなく、現場とのコミュニケーションも重視されているそうですね。

山崎 そうですね。現場の社員には、コンプライアンスはどうしても普段の業務とかけ離れているような印象を持たれがちです。現場の実際の業務と結びつけて、「この法改正は、こんな業務と関係ある分野ですよ」と具体的に伝えながら説明するようにしています。

金森 私も、直接現場社員と関わる機会を大事にしています。普段の法務相談などでも、「この業務をするときには、こんなリスクを考えるといいですよ」とコンプライアンスの観点でアドバイスすることで、「そういう考え方があるんだ」と気付いてもらえる。業務に関するこうしたやりとりができれば、自然にコンプライアンスを守ることにつながっていくはずです。グループ全体で500人以上が働いているので難しい部分はありますが、その一つひとつのチャンスを大事にしていきたいですね。

変わりゆく「コンプライアンス」を広い視野で捉える

――「コンプライアンス」をどのように捉えていますか?

金森 コンプライアンス自体、日々変わっていくものだと思います。ある時点のコンプライアンスが、2~3年後に通用するとは限りません。近年クローズアップされているSDGsなど、考慮すべき事柄は増えていきます。私たちコンプライアンス担当者は、いま企業に求められているコンプライアンスをアップデートし、社内に展開し続けなければなりません。

――先ほど「コンプライアンスは『法令遵守』だけではない」というお話がありましたが、その部分についても詳しく教えてください。

山崎 社員からの法務相談でよく、「これは法的に問題ないですか」という質問が来ます。しかし、いくら法律的には問題なくても、モラルやマナーに反するおそれがあるということも。昨今の社会情勢を鑑みると、その点には一層気を遣わなければなりません。SNSでの炎上などさまざまなリスクを想定し、法律に限らない広い視野でコンプライアンスを考える必要があります。

その重要性を認識してもらえるよう、社員には「お客さまにここまで説明を尽くせば、会社としてこんなメリットがありますよ」などと具体的に伝えています。

日々の発信の積み重ねが、コンプライアンス推進の原動力に

―― コンプライアンスに関する情報はどのように集めていますか?

山崎 社会の動き、特に法律分野のホットなトピックは常に追っています。国内はもとより、事業活動に影響する海外の法律にも目配りをしていますね。意識しているのは、LegalOn Technologiesや法律事務所などが主催するセミナーを受講するなど、複数のソースから情報を得ること。ピックアップした情報を元に、必要があれば社内に展開しています。

―― コンプライアンスを社内に広めていくためのポイントはありますか?

山崎 コンプライアンスは、社員に「業務負担が増える」と思われてしまう面があります。コンプライアンス担当としては、なるべく現場に負担がかからないように、ルールや仕組みを作っていくことが大切だと思います。

―― 日々のコンプライアンス推進業務で、どのようなことを大切にしていくとよいでしょうか?

金森 私はコンプライアンス担当として「発信」を大切にしています。そもそも法務担当者は、「何をしている人かわからない」「必要な業務なの?」と思われてしまうこともあります。そのため「私の役割はあなたのサポートです」と発信を続けているんです。すると、社員のほうから困ったときに相談してくれたり、悩みを発信してもらえるようになっていく。そうした日々の積み重ねが、コンプライアンス推進につながるのではないでしょうか。

(インタビュー日:2022年12月6日)

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