企業のコンプライアンス推進と
LegalOn Technologies社での取り組み

特集・この記事について

コンプライアンス推進は企業にとって重要な課題です。ESGやSDGsにも対応しつつ、どのような施策や研修を行っていくべきか、担当者として悩んでいませんか?
本特集ではさまざまな企業のコンプライアンス推進について、参考となる取り組みをご紹介します!

初回の内容はコンプライアンスについての全体像と、LegalOn Technologies社でのコンプライアンス推進の取り組みのご紹介として、LegalForceユーザー向けに行われたオンラインセミナーの内容をレポートします。

登壇者
柄澤 愛子(からさわ あいこ)
株式会社LegalOn Technologies 法務・コンプライアンス担当 弁護士
慶應義塾大学法科大学院修了。2012年弁護士登録。都内法律事務所、特許庁審判部(審・判決調査員)を経て、2019年から現職。社内で法務、コンプライアンスなどの業務を担当する。LegalOn Technologiesのウェブメディア「契約ウォッチ」の企画・執筆にも携わる。

企業に求められるコンプライアンス推進

コンプライアンスとは

コンプライアンス」は一般的に「法令遵守」と訳されますが、社会規範や社会道徳を守ること、企業のステークホルダー(利害関係者)の利益を守ることなども含めた、広い概念として使われるようになっている言葉です。

近年コンプライアンスが注目されている理由の一つは、グローバル化に伴う人権意識の高まりや、雇用形態の変化(人材の流動性の高まり)などが挙げられます。また、近年、企業の評判・信用の重要性が高まっていることも理由として挙げられます。これは、SNSや口コミサイトなどで、企業の評判が一瞬で世界中に拡散するようになったことが影響しています。

今やコンプライアンスは「企業が、社会から信用・尊敬されているか」を表す重要な指標となりつつあります。
こうした流れの中で、コンプライアンスは企業の存続・成長に関わる非常に大切なものになりました。コンプライアンス担当や法務担当は、そのことを経営者や従業員に繰り返し伝えていく必要があります。

企業におけるコンプライアンスの重要性

コンプライアンス意識が低い企業は、

ハラスメントや不正行為が発生
→社内の雰囲気が悪化・作業効率が低下
→優秀な人材が退職
→業績が悪化
→社員のやる気低下・ストレス上昇
→新たなハラスメント・不正行為の温床となる

といった悪循環に陥ります。

また、SNSや報道などによってハラスメント不正行為が社外へ発覚すると、一気に企業の信用が低下してしまいます。

このような危機意識を持ち、コンプライアンス意識を高めるためには、社内の体制構築だけでなく、従業員の協力が必要不可欠です。コンプライアンス担当者の職務はその土台をつくり、また、発生した問題に適切に対処するなど、サポートをしていくことに尽きます。

コンプライアンスは面倒」と捉える従業員も少なくありませんが、「コンプライアンスがしっかりしていない企業は、従業員にとっても働きにくい」ことを繰り返し伝え、当事者意識を持ってもらうことが重要です。

LegalOn Technologiesのコンプライアンスへの取り組み

コンプライアンス推進の歴史

ここからはLegalOn Technologies社での取り組みをご紹介します。

【立上げ期】
2019年、コンプライアンス部が設置されました。部と言ってもメンバーは私1人で、法務開発担当との兼任だったので、新入社員や管理職向けのハラスメント研修SNS研修社内の内部通報窓口・ハラスメント相談窓口の立上げなど、必要最低限の取り組みをしました。

【安定期】
その後会社が大きくなり、コンプライアンスの機能を法務部内に移管。内部通報規程などコンプライアンス関連の社内規程を整備したり、法律事務所の協力を得て社外の内部通報窓口を設置したりしました。

【成長期】
会社の成長に伴い、法務部内に専任のコンプライアンス担当を置きました。部門ごとのコンプライアンス目標の設定、不定期だった社員研修の定例化(月1回)、コンプライアンス・リスク委員会の開催(年2回)などを実施。今後はコンプライアンス課をつくることも検討しています。

コンプライアンス推進の取り組みにおいて工夫していること

コンプライアンス推進の取り組みの中で、次のようなことを意識しています。

社内研修は、眠くなる研修にしないこと。法律用語を多用せず、わかりやすい言葉を使い、イラストや漫画なども活用しています。時間は15~30分くらいにおさえ、クイズを入れて参加型に。実施後は受講者からアンケートを取ってフィードバックをもらい、改善に役立てています。

内部通報・ハラスメント相談で大切にしているのは、ただ相談を待つだけでなく、少しでも気になることがあれば調査する姿勢です。そして、通報・相談内容を格納するフォルダにはアクセス制限をかけるなど、もちろん秘密保持には細心の注意を払います。また、調査を行う際、ハラスメント案件などでは被害者と加害者が存在しますが、中立的な立場で事実認定し、必要なときはその妥当性を慎重に考慮して処分の判断をすることになります。

コンプライアンス推進の取り組みにおいてぶつかった壁

① コンプライアンス推進に取り組む時間がない
特に当初はコンプライアンス推進に充てられる時間が少なく、悩みました。現在は、研修資料に使うイラストは外部サービスを活用したり、研修を対面ではなくeラーニングで配信するようにしています。また、社内の状況に応じた最低限の取り組みを行い、「その他のことは余裕ができたらやる」と割り切って考えることも意識しています。

② 内部通報・ハラスメント相談窓口を認知してもらえない
従業員にとって「最後の砦」となる内部通報・ハラスメント相談窓口ですが、認知が進まないと相談してもらえません。全社会議や社内のポスター、チャットツールなどで地道に周知しています。

周知の方法も大切で、

「通報者・相談者の秘密は守る」
「ハラスメント・不正の行為者からの報復は、企業として絶対に許さない」
「通報・相談したことを理由に不利益な取り扱いをしない」

ということを繰り返し伝え、社長・CEOからも社内に周知してもらうようにしています。

③ 研修を受けてくれない
せっかく研修を準備しても、「忙しくて時間がない」「顧客対応が先」と、従業員が受けてくれないこともあります。研修時間を短くして受講しやすくしたり、一人ひとりの受講日時を決めるなどの対策はありますが、結局はこまめにリマインドするしかありません。その際、各部門の上長にリマインドしてもらうのが効果的だと考えています。

コンプライアンス担当がやるべきこと

企業のコンプライアンス担当は何をするか

企業のコンプライアンス担当として最低限実施することが望ましいのは、下記の3点です。

ハラスメント情報管理個人情報などに関する社内研修(場合によっては社外の講師に依頼)
・社内の内部通報窓口ハラスメント相談窓口の設置
・コンプライアンス関連の社内規程の整備(内部通報規程策定や、就業規則へのハラスメント禁止条項追加など)

これらを行った上で、企業の規模や状況に応じて、可能であれば下記も実施しましょう。

・SNSや著作権、下請法や反社会的勢力対策、接待・贈答などに関する社内研修
・社外の内部通報窓口・ハラスメント相談窓口の設置
・コンプライアンス関連の社内規程の整備(反社会的勢力排除規程、コンプライアンス規程     の策定など)
・コンプライアンス・リスク管理委員会の開催
・リスク管理(起こりそうなリスクの棚卸し・優先順位付け)

コンプライアンス推進のヒント

① 社内研修はどんな内容にするべき?
最も優先するのが望ましいのは、改正労働施策総合推進法(パワハラ防止法)施行を受けて厚生労動省のガイドラインにも掲載されているハラスメント研修です。

研修を実施する際は、内容が充実しすぎると受講者が「消化不良」になってしまうため、基本的なところをわかりやすく説明し、長くても1テーマ30分に収まる内容で行うのがベターです。
ハラスメントなどの重要なテーマは、数回に分けて研修を実施することも考えられます。

② 窓口で相談を受けた後は、どう対応する?
相談内容や相談者の意向に応じて、軽いものは相談を受けるのみで終了とすることもありますが、必要であれば調査を行います。客観的な証拠を集め、関係者へのヒアリングを実施するほか、相談者の同意を得て社内の必要な範囲に情報を共有します。事実認定をした上で、会社としての処分を決定します。
こうした相談後のフローはあらかじめ設計しておき、都度改良していくのがよいでしょう。

③ ハラスメントとまでは言えなそうな、社内の不満などをどこまで聞くべき?
重大な問題をすくい上げるには、悩み愚痴・不満など比較的軽い相談を気軽にできる窓口は望ましいと言えます。
この場合もある程度話を聞いた上で、ハラスメントに明らかに該当しない場合はその旨を伝えたり、相談者の同意が得られたら、不満を抱えていることをその上司にも共有するなど、窓口担当としてできることをしましょう。

(セミナー開催 2022年10月26日)