【2024年11月等施行】道路交通法改正とは?
自転車のながらスマホ罰則化・
青切符導入などのポイントを分かりやすく解説!
- この記事のまとめ
-
2024年11月1日から、改正道路交通法が施行されます。
今回の道路交通法改正の主な目的は、自転車等による交通事故を防止することです。自転車の酒気帯び運転に対して罰則が新設されるほか、自転車運転中の「ながらスマホ」も禁止されて罰則の対象となります。
上記のほか、2026年5月までには車が自転車等の右側を通過する際のルールの新設、普通仮免許等の年齢要件引き下げ、自転車等に対する反則金制度の新設(青切符の導入)が行われる予定です。この記事では、2024年11月から施行される道路交通法改正について、変更のポイントを解説します。
※この記事は、2024年9月30日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。
※この記事では、法令名を次のように記載しています。
- 改正道路交通法…「道路交通法の一部を改正する法律」(令和6年法律第34号)による改正後の「道路交通法」
目次
【2024年11月施行】道路交通法改正とは
2024年11月1日から、改正道路交通法が施行されます。今回の道路交通法改正には、自転車等の交通事故を防止することを目的とした各種の新ルールが設けられました。
道路交通法改正の背景
今回の道路交通法改正の主な目的は、自転車等による交通事故を防止することです。
近年では、自転車の運転中に携帯電話(スマートフォンなど)を使用したことに起因する交通事故の件数が増加傾向にあります。
また、自転車を酒気帯び状態で運転すると、酒気帯びでない状態に比べて死亡重傷事故率が大幅に高まることが分かっています。
こうした状況を踏まえて、今回の道路交通法改正には、自転車運転中の「ながらスマホ」の禁止・罰則化や酒気帯び運転の罰則化など、自転車等の交通事故を防止することを目的とした変更が盛り込まれました。
公布日・施行日
今回の道路交通法改正の公布日と施行日は、以下のとおりです。
- 公布日・施行日
-
公布日|2024年5月24日
施行日|
① 2024年11月1日(自転車の酒気帯び運転に対する罰則の新設、自転車運転中の「ながらスマホ」の禁止・罰則化、原動機付自転車等の運転の明確化)
② 公布の日から起算して2年を超えない範囲内において政令で定める日(車が自転車等を追い抜く際のルールの新設、普通仮免許の年齢要件引き下げ、自転車等に対する反則金制度の新設)
改正のポイント
今回の道路交通法改正は、2024年11月1日から一部が施行されるほか、残りは2026年5月23日までに施行されます。主な改正内容は以下のとおりです。
<2024年11月1日施行>
① 自転車の酒気帯び運転に対する罰則の新設
② 自転車運転中の「ながらスマホ」の禁止・罰則化
③ 原動機付自転車等の運転の明確化
<2026年5月23日までに施行>
④ 車が自転車等の右側を通過する際のルールの新設
⑤ 普通仮免許等の年齢要件引き下げ
⑥ 自転車等に対する反則金制度の新設
【2024年11月施行】改正点1|自転車の酒気帯び運転に対する罰則の新設
2024年11月1日から、酒気を帯びた状態で自転車を運転する行為などが新たに刑事罰の対象となります(改正道路交通法117条の2の2第1項3号・117条の3の2第2号・3号)。
酒気帯び運転とは
「酒気帯び運転」とは、体内にアルコールを保有している状態で車両を運転する行為です。
酒気帯び運転は禁止されているほか(改正道路交通法65条1項)、特に以下のいずれかを満たす分量のアルコールを体内に保有した状態での酒気帯び運転(以下、単に「酒気帯び運転」といいます)は、刑事罰の対象とされています。
(a) 血液1ミリリットルにつき0.3ミリグラム以上
(b) 呼気1リットルにつき0.15ミリグラム以上
従来は、自転車を含む軽車両については、酒気帯び運転に関する罰則の対象外とされていました。
しかし、今回の道路交通法改正により、自転車の酒気帯び運転については新たに罰則の対象に含められました。
なお、自転車以外の軽車両については、引き続き酒気帯び運転に関する罰則の対象外とされています。
自転車の酒気帯び運転に対するペナルティ|罰則・自転車運転者講習
改正道路交通法が施行されると、自転車の酒気帯び運転をした者は「3年以下の懲役または50万円以下の罰金」に処されます(改正道路交通法117条の2の2第1項3号)。
また、自転車の運転者に対して酒類を提供した者や飲酒をすすめた者、運転者が酒気を帯びている自転車に同乗した者も、「2年以下の懲役または30万円以下の罰金」に処されます(改正道路交通法117条の3の2第2号・3号)。
また、自転車の酒気帯び運転を含む15種類の危険行為を3年以内に2回以上した者は「自転車運転者講習」の受講が義務付けられます(改正道路交通法第108条の3の5第2項、道路交通法施行令第41条の3第2項)。
自転車運転者講習の受講を怠ると、「5万円以下の罰金」に処されます(改正道路交通法120条1項17号)。
【2024年11月施行】改正点2|自転車運転中の「ながらスマホ」の禁止・罰則化
2024年11月1日から、自転車の運転中にいわゆる「ながらスマホ」をすることが禁止され、罰則の対象となります(改正道路交通法71条5号の5・118条1項4号)。
「ながらスマホ」とは
いわゆる「ながらスマホ」とは、自動車等の運転中において、携帯電話を通話のために使用し、または携帯電話に表示された画像を注視することなどをいいます(自動車等が停止しているときを除く)。
自転車の運転中における「ながらスマホ」は、従来の道路交通法では特に禁止されていませんでした。
しかし、「ながらスマホ」が自転車事故の主要な原因となっていることに鑑み、改正道路交通法によって新たに禁止されました(改正道路交通法71条5号の5)。
「ながらスマホ」に対するペナルティ|罰則・自転車運転者講習
改正道路交通法が施行されると、自転車の運転中に「ながらスマホ」をした者は「6カ月以下の懲役または10万円以下の罰金」に処されます(改正道路交通法118条1項4号)。
また、「ながらスマホ」も「自転車運転者講習」の対象となります。
【2024年11月施行】改正点3|原動機付自転車等の「運転」の明確化
2024年11月1日から施行される改正道路交通法により、原動機付自転車の「運転」の定義に、「ペダルその他の人の力により走行させることができる装置を用いて走行させる場合」が含まれることが明確化されました(改正道路交通法2条1項17号)。
従来の定義では、特にペダル付原動機付自転車(いわゆる「モペット」)のペダルを漕いで走行させることが、原動機付自転車の「運転」の定義に該当するかどうか不明確でした。そのために、交通事故や交通違反が増加していることが問題視されていました。
改正道路交通法による「運転」の定義の明確化は、上記の問題点を解決するために行われたものです。
【2026年5月23日までに施行】改正点4|車が自転車等の右側を通過する際のルールの新設
2026年5月23日までに施行される改正道路交通法により、車両が特定小型原動機付自転車等(=特定小型原動機付自転車および軽車両)の右側を通過する際のルールが新設されます。
自動車対自転車の交通事故では、自転車の右側面に自動車が接触するケースが増加していることを踏まえた改正です。
特定小型原動機付自転車等を除く車両は、同一方向に進行している特定小型原動機付自転車等(歩道または自転車道を通行しているものを除く)の右側を追い越し以外で通過する場合において、当該特定小型原動機付自転車等との間に十分な間隔がないときは、実際の間隔に応じた安全な速度で進行しなければなりません(改正道路交通法18条3項)。
その際、車両が右側を通過する特定小型原動機付自転車等は、できる限り道路の左側端に寄って通行しなければなりません(同条4項)。
【2026年5月23日までに施行】改正点5|普通仮免許等の年齢要件引き下げ
2026年5月23日までに施行される改正道路交通法により、準中型仮免許と普通仮免許が、17歳6カ月に達した者にも与えられるようになります(改正道路交通法88条2項)。
また、準中型免許と普通免許の運転免許(本免許)試験も、17歳6カ月以上であれば受験できるようになります(同法96条1項)。
従来の道路交通法では、準中型および普通の仮免許および運転免許試験受験の年齢要件は、いずれも18歳以上とされていました。
今回の道路交通法改正によって年齢要件が6カ月間引き下げられたのは、早生まれの者も高校卒業までに普通免許等を取得できるように配慮したものです。
ただし、18歳に達する前に運転免許試験に合格したとしても、実際に準中型免許または普通免許が与えられるのは18歳に達してからとされています(同法90条1項)。
したがって、17歳6カ月以降に教習所へ通って運転免許試験に合格した後、18歳になってから免許証を受け取り、新生活が始まる4月以降はすぐに運転できるようになるといった流れが想定されます。
【2026年5月23日までに施行】改正点6|自転車等に対する反則金制度の新設
2026年5月23日までに施行される改正道路交通法により、自転車などの軽車両に対する反則金制度が新設されます(改正道路交通法125条1項)。
反則金制度とは、道路交通法違反に当たる行為をした運転者に対して「青切符」を交付し、反則金を納めることを条件として刑事訴追等をしないこととする制度です。
従来は、自転車などの軽車両は反則金制度の対象外とされていました。
しかし、近年では自転車の交通違反による検挙件数が増加しているところ、反則金制度がないと常に煩雑な刑事手続きが必要となるほか、運転者には前科が付く可能性があります。
このような懸念を踏まえて、自転車に対する交通違反の取り締まりを合理化するため、自転車などの軽車両も新たに反則金制度の対象とされることになりました。
自転車運転中における主な反則行為の例
改正道路交通法による反則金制度の対象となる、自転車の運転中における主な違反行為としては、以下の例が挙げられます。
・速度違反
・信号無視
・一時不停止
など
反則金制度の対象外となるケース
酒酔い運転・酒気帯び運転・妨害運転などの悪質な違反行為や、交通事故を起こした場合は、反則金制度の対象外とされています。また、自転車の運転中に交通違反をした者が16歳未満の場合も、反則金制度の対象外です(改正道路交通法125条2項)。
さらに、反則金制度の適用を受けるかどうかは違反者の任意で、反則金の納付を拒否することもできます。
反則金制度の対象外となる場合や、反則金の納付を拒否した場合には、通常の刑事手続きに従って自転車の交通違反に対する処分が決定されます。
具体的には、警察が捜査を行った後に、事件が検察官へ送致されます。検察官は、交通違反者を起訴するか否か判断します。起訴された場合は、刑事裁判において有罪・無罪および量刑が審理されることになります。
ただし、交通違反者が20歳未満の場合は、原則として通常の刑事手続きではなく、家庭裁判所の少年審判に付されます。少年審判では、交通違反者に刑事罰を科すのではなく、保護観察などの保護処分の要否が審理されます。
改正道路交通法に関する事業者の注意点
企業においても、通勤や業務中の移動の際に従業員が自転車を用いるケースがあるかと思います。
従業員が自転車の交通違反を犯して取り締まられた場合、警察に呼び止められて業務が滞ってしまうおそれがあるほか、酒気帯び運転では車両等を提供した者・酒類を提供した者・飲酒をすすめた者にも罰則が適用されます(企業の場合は代表者などが処罰されます)。
また、取り締まりの事実が大々的に報道されると、企業としての社会的評価が損なわれてしまうかもしれません。
道路交通法の改正は、企業の営業活動には直接関係が無いようでも、間接的には影響を及ぼす側面があります。
事業者は、
- 通勤や業務中の移動に自転車を利用している従業員に対して注意喚起をする
- 酒気帯び運転についての従業員教育を行う
- 酒類を提供する飲食店では、運転者でないことの確認を行う
などの対応を行うことが望ましいでしょう。