プロバイダ責任制限法とは?
発信者情報開示請求の概要・事例・
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この記事のまとめ

プロバイダ責任制限法」とは、インターネット上での誹謗中傷などの権利侵害が発生した場合に、プロバイダ等が負う損害賠償責任の範囲や、被害者が発信者(加害者)を特定するために利用できる手続きなどを定めた法律です。

プロバイダ責任制限法では、以下の3つの制度が設けられています。
✅ プロバイダ等の損害賠償責任の制限
✅ 発信者情報開示請求
✅ 発信者情報開示命令事件に関する裁判手続き

2022年10月から「発信者情報開示命令」の制度が新たに施行され、被害者による発信者(加害者)の特定手続きが簡略化されました。従来の発信者情報開示請求の課題を解決するため、さまざまな工夫が盛り込まれていますので、最新の制度内容を確認しておきましょう。

この記事では、プロバイダ責任制限法について、目的・各制度の概要・事例・法改正のポイントなどを解説します。

わが社のウェブサイトのコメント欄に、最近、ひどいことを書き込む人がいるんです。それに反応する人もいて、やり取りがエスカレートして、誹謗中傷になりそうで心配しています。

早めに手を打つべきですね。もし誹謗中傷があり、被害者から請求があった場合、サイト管理者やインターネット接続業者には適切な対応が求められます。手続きはプロバイダ責任制限法に定められています。少し複雑ですが概要を勉強しましょう。

※この記事は、2023年1月13日時点の法令等に基づいて作成されています。

※この記事では、法令名を次のように記載しています。
・プロバイダ責任制限法…特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律
・プロバイダ責任制限法施行規則…特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律施行規則

プロバイダ責任制限法とは

プロバイダ責任制限法」とは、インターネット上での誹謗中傷などの権利侵害が発生した場合に関して、ルールや手続きを定めた法律です。

侵害情報の流通や削除に関してプロバイダ等が負う損害賠償責任の範囲や、被害者が発信者(加害者)を特定するための手続きなどが定められています。

プロバイダ責任制限法の目的

プロバイダ責任制限法の主な目的は、誹謗中傷などのインターネット投稿が行われた場合について、被害者の救済策を整備することにあります。具体的には、以下の2本の柱によって、被害者の救済が図られています。

権利侵害情報削除
発信者情報開示

権利侵害情報の削除

権利侵害情報(誹謗中傷など)のインターネット投稿は、放置するとさらに風評被害が広がってしまいます。そのため、投稿先のサイト管理者に対して、問題の投稿をいち早く削除させることが大切です。

しかし、インターネット上の投稿を削除したことによって、投稿者損害が生じることもあります。当該損害を賠償しなければならない場合、サイト管理者は削除をためらう可能性が高いです。

そこでプロバイダ責任制限法では、問題のある投稿が迅速に削除されるように、権利侵害情報の削除についてサイト管理者責任制限しています(同法3条2項)。

発信者情報の開示

権利侵害情報のインターネット投稿は、匿名で行われることも多いです。

被害者が投稿者に対して損害賠償請求などを行うに当たっては、投稿者の氏名住所などを特定しなければなりません。プロバイダ責任制限法では、匿名投稿者を特定するため、「発信者情報の開示」の各手続きが設けられています(同法5条以下)。

プロバイダ責任制限法で定められている3つの制度

プロバイダ責任制限法では、以下の3つの制度が定められています。

① プロバイダ等の損害賠償責任の制限
② 発信者情報開示請求
③ 発信者情報開示命令事件に関する裁判手続き

①プロバイダ等の損害賠償責任の制限

サイト管理者など(=特定電気通信役務提供者)は、権利侵害情報の「流通」と「送信防止」に関して、被害者や発信者(投稿者)に生じた損害についての賠償責任を制限されます(プロバイダ責任制限法3条)。

(1) 流通
サイトを通じた権利侵害情報の流通については、一部の例外を除き、被害者に対する損害賠償責任が免除されます。

(2) 送信防止
権利侵害情報の削除などの送信防止措置については、一定の要件を満たす場合、発信者に対する損害賠償責任が免除されます。

②発信者情報開示請求

サイト上での情報流通によって権利を侵害された被害者は、サイト管理者(コンテンツ・プロバイダ)やインターネット接続業者(アクセス・プロバイダ)に対して、発信者(投稿者)の特定につながる情報の開示を請求できます(プロバイダ責任制限法5条以下)。これを「発信者情報開示請求」といいます。

発信者情報開示請求は、裁判所の仮処分手続きによって行うのが一般的です。

③発信者情報開示命令事件に関する裁判手続き

2022年10月より、誹謗中傷などの被害者による発信者(投稿者)の特定に関して、新たに「発信者情報開示命令事件に関する裁判手続き」が創設されました

従来の発信者情報開示請求の手続きについては、被害者に多くの時間とコストを強いる難点が指摘されていましたが、発信者情報開示命令事件に関する裁判手続きによって改善が図られています。

①プロバイダ等の損害賠償責任の制限の概要

権利侵害情報流通送信防止について、サイト管理者など(=特定電気通信役務提供者)の損害賠償責任を制限する規定の概要を解説します。

被害者に対する損害賠償責任の発生要件

権利侵害情報の流通については、送信防止措置を講ずることが技術的に可能な場合であって、以下のいずれかに該当する場合を除き、サイト管理者などは被害者に対する損害賠償責任を免れます(プロバイダ責任制限法3条1項)。

(1) サイト管理者などが、当該情報の流通によって他人の権利が侵害されていることを知っていたとき
(2) サイト管理者などが、以下の要件をいずれも満たすとき
・当該情報の流通を知っていたこと
・当該情報の流通によって、他人の権利が侵害されていることを知ることができたと認めるに足りる相当の理由があること

発信者に対する損害賠償責任の免責要件

権利侵害情報の送信防止措置を講じたサイト管理者は、当該送信防止措置が必要な限度で行われ、かつ以下のいずれかに該当する場合には、発信者(投稿者)に対する損害賠償責任を免れます(プロバイダ責任制限法3条2項)。

(1) サイト管理者などが、当該情報の流通によって、他人の権利が不当に侵害されていると信じるに足りる相当の理由があったとき
(2) 以下の要件をいずれも満たすとき
・被害者であることを主張する者から、侵害情報・侵害された権利・権利が侵害されたとする理由(=侵害情報等)を示して送信防止措置を講ずるように、サイト管理者などに対する申し出があったこと
・サイト管理者などが、発信者に対して侵害情報等を示し、送信防止措置を講ずることに同意するかどうかを照会したこと
・照会の到達日から7日を経過しても、発信者から送信防止措置を講ずることに同意しない旨の申し出がなかったこと

権利侵害情報の送信防止措置(削除依頼)とは

権利侵害情報の「送信防止措置」とは、当該情報の送信を防止する措置全般を意味します(プロバイダ責任制限法3条2項)。誹謗中傷投稿の削除などが典型例です。

前述のルールに従い、被害を主張する者から削除依頼を受けたサイト管理者は、発信者に対して削除に同意するか否かを照会した後、7日を経過してから投稿を削除すれば、発信者に対する損害賠償責任を免れます。

自社がサイト管理者となっている場合は、対応を想定しておけるとよいですね。

公職の候補者等に係る特例について

サイト管理者などが、公職の候補者等※から特定文書図画※の流通に関する権利侵害を理由に送信防止措置を講ずるよう申出を受けた場合、発信者に対する照会期間が7日から2日に短縮されます(プロバイダ責任制限法4条1号)。

※公職の候補者等:公職の候補者・候補者届出政党・衆議院名簿届出政党・参議院名簿届出政党
※特定文書図画:選挙運動のために使用し、または当選させないための活動に使用する文書図画

また、ウェブサイト等を通じて当選させないための活動に使用する文書図画を頒布する場合は、発信者の電子メールアドレス等の連絡先を、受信者端末の映像面に正しく表示させなければなりません(公職選挙法142条の5)。
この規定に違反して、発信者の電子メールアドレス等が正しく表示されていない場合に、公職の候補者等から送信防止措置の申し出を受けた場合、サイト管理者などの発信者に対する照会義務が免除されます(プロバイダ責任制限法4条2号)。

②発信者情報開示請求の概要

誹謗中傷などの発信者(投稿者)を特定するために従来から認められている、発信者情報開示請求の概要を解説します。

開示を請求できる「発信者情報」とは

発信者情報開示請求により、サイト管理者(コンテンツ・プロバイダ)やインターネット接続業者(アクセス・プロバイダ)に対して開示を請求できる「発信者情報は、以下のとおりです(プロバイダ責任制限法2条6号・5条1項、プロバイダ責任制限法施行規則2条・3条)。

<発信者情報>
(1) 発信者その他侵害情報※の送信・侵害関連通信に係る者(発信者等)の氏名名称
(2) 発信者等の住所
(3) 発信者等の電話番号
(4) 発信者等の電子メールアドレス
(5) 侵害情報の送信に係るIPアドレス
(6) 侵害情報の送信に係る移動端末設備からのインターネット接続サービス利用者識別符号
(7) 侵害情報の送信に係るSIM識別番号
(8) (5)のIPアドレスを割り当てられた電気通信設備、(6)のインターネット接続サービス利用者識別符号に係る移動端末設備、(7)のSIM識別番号に係る移動端末設備から、侵害情報が送信された年月日・時刻
(9) 専ら侵害関連通信※に係るIPアドレス、当該IPアドレスに組み合わされたポート番号
(10) 専ら侵害関連通信に係るインターネット接続サービス利用者識別符号、当該インターネット接続サービス利用者識別符号に係る移動端末設備
(11) 専ら侵害関連通信に係るSIM識別番号、当該SIM識別番号に係る移動端末設備
(12) 専ら侵害関連通信に係るSMS電話番号
(13) (9)のIPアドレスを割り当てられた電気通信設備、(10)のインターネット接続サービス利用者識別符号に係る移動端末設備、(11)のSIM識別番号に係る移動端末設備、(12)のSMS電話番号に係る移動端末設備から、侵害関連通信が行われた年月日・時刻
(14) 発信者等についての利用管理符号

※(9)~(13)は特定発信者情報に該当
※侵害情報:被害者が権利侵害を主張する情報
※侵害関連通信:侵害情報の送信そのものではないが、それと相当の関連性を有する符号の電気通信による送信

発信者情報開示請求の要件

発信者情報開示請求は、以下の要件を満たす場合に行うことができます。

① サイト管理者・侵害情報の送信を媒介したインターネット接続業者への開示請求(プロバイダ責任制限法5条1項)

<発信者情報>
(1) 侵害情報の流通によって、請求者の権利が侵害されたことが明らかなとき(1号)
(2) 損害賠償請求の行使その他開示を受けるべき正当な理由があるとき(2号)

<特定発信者情報>
(1) 侵害情報の流通によって、請求者の権利が侵害されたことが明らかなとき(1号)
(2) 損害賠償請求の行使その他開示を受けるべき正当な理由があるとき(2号)
(3) 以下のうちいずれかに当たるとき(3号)
(ⅰ) 請求対象のプロバイダが特定発信者情報のみしか保有していない
(ⅱ) 請求対象のプロバイダが保有している特定発信者情報以外の情報が限定されている
(ⅲ) 特定発信者情報の開示がないと発信者を特定できない

② 侵害情報の送信以外の、(侵害情報の送信のための)ログイン時の通信などを媒介したインターネット接続業者などへの開示請求(同条2項)

<発信者情報>
(1) 侵害情報の流通によって、請求者の権利が侵害されたことが明らかなとき(1号)
(2) 損害賠償請求の行使その他開示を受けるべき正当な理由があるとき(2号)

発信者情報開示請求の活用

発信者情報開示請求は、誹謗中傷などの匿名投稿者特定するために活用できます。

まず、誹謗中傷などの投稿がなされたサイト管理者に対して、発信者情報開示請求を行います。サイト管理者からは、投稿に用いられた端末のIPアドレスなどの開示を受けられる可能性があります。

サイト管理者からIPアドレスの開示を受けたら、それを基にインターネット接続業者を特定し、投稿者の契約情報について発信者情報開示請求を行います。投稿者本人がインターネット接続業者と契約している場合、投稿者の氏名住所などの開示を受けられます。

このように、サイト管理者とインターネット接続業者の2段階で発信者情報開示請求を行うことにより、匿名投稿者を特定できる可能性があります。

発信者情報開示請求の手続き

発信者情報開示請求は、裁判所に対する仮処分申立てによって行うのが一般的です。

裁判所は、被害者に生じ得る著しい損害または急迫の危険を避けるために必要と判断した場合は、サイト管理者やインターネット接続業者に対して発信者情報開示の仮処分命令を発します(民事保全法23条2項)。

審尋期日(開示請求先から事情や意見を聞く期日)が開催されるため、段階ごとに4~6カ月程度の期間を要するのが一般的です。

2022年10月施行|③発信者情報開示命令事件に関する裁判手続きの概要

2022年10月より、従来の発信者情報開示請求の問題点を改善する形で、新たに「発信者情報開示命令事件に関する裁判手続き」が設けられました。

この手続きの詳細については、以下の記事をご参照ください。

本記事では、この手続きの概要のみを解説します。

発信者情報開示命令とは

発信者情報開示命令とは、裁判所がサイト管理者やインターネット接続業者などに対して発する、発信者情報を開示すべき旨の「命令」です。

従来の発信者情報開示の仮処分命令とは異なり、「非訟事件」という簡易的な形式によって審理・発令されるのが、発信者情報開示命令の大きな特徴となっています。

従来の発信者情報開示請求からの改善点

従来の発信者情報開示請求は、サイト管理者・インターネット接続業者の2段階で仮処分申立てを行う必要があり、非常に長い期間とコストがかかることが難点でした(目安期間:9カ月~1年程度)。

これに対して、新設された発信者情報開示命令事件に関する裁判手続きは、手続きを一つにまとめることができるのが大きな特徴です。その結果、従来の発信者情報開示請求に比べて、手続きに要する期間が大幅に短縮されることが期待されます(目安期間:4~6カ月程度)。

発信者情報開示命令事件の手続き

裁判所に対して発信者情報開示命令の発令を求める手続きの流れは、以下のとおりです。

① 裁判所に、サイト管理者に対する発信者情報開示命令の申立てを行う(プロバイダ責任制限法8条)
② ①に伴い、提供命令の申立てを行い、サイト管理者が有するインターネット接続業者の名称の提供を求める(同法15条1項1号)
③ ②で得たインターネット接続業者の情報を基に、インターネット接続業者に対する発信者情報開示命令の申立てを行い、これをサイト管理者へ通知する
→サイト管理者が、インターネット接続業者に対して、自身が有する発信者情報を提供する(同法15条1項2号)
④ 開示命令の申立てが認められると、サイト管理者・インターネット接続業者から発信者情報(IPアドレス、発信者の氏名・住所など)が開示される

+これらの手続きにあわせて、
①・③の開示命令の申立てに伴い、消去禁止命令の申立てを行い(同法16条1項)、サイト管理者・インターネット接続業者に対して発信者情報を消去することを禁止する命令を出してもらう

プロバイダ責任制限法に関する事業者の対応・注意点

掲示板やSNSなどを運営する事業者は、誹謗中傷などの投稿による被害を主張するユーザーから、プロバイダ責任制限法に基づき、発信者情報の開示を請求される可能性があります。

もし発信者情報の開示を請求された場合には、裁判所の手続きに従って対応すれば、基本的に問題ありません。裁判所から開示命令が発令された場合には、それに従って発信者情報を開示しましょう。

また、誹謗中傷に当たるとされる投稿につき、ユーザーから直接削除請求を受けることも想定されます。

この場合、権利侵害の有無を精査した上で、侵害があると認めた場合には、問題の投稿を削除すべきです。権利侵害を知ることができたにもかかわらず削除を怠ると、被害者から損害賠償を請求される恐れがあります(プロバイダ責任制限法3条1項2号参照)。
なお、侵害があると信じるに足りる相当の理由があれば、投稿の削除について発信者に対する損害賠償責任を負うことはありません(同条2項1号)。

この記事のまとめ

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参考文献

総務省ウェブサイト「インターネット上の違法・有害情報に対する対応(プロバイダ責任制限法)」

総務省ウェブサイト「プロバイダ責任制限法Q&A」