非弁行為とは?
弁護士法で禁止されている理由・
報酬の有無・具体例・
企業の注意点などを分かりやすく解説!
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- この記事のまとめ
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「非弁行為」とは、弁護士または弁護士法人でない者が、報酬を得る目的で訴訟事件など一般の法律事件に関して法律事務を取り扱い、またはその周旋をすることを業とすることをいいます。
簡単にいうと、「弁護士以外の人が法律のトラブル解決を請け負ってはいけない」というルールです。非弁行為は、依頼者の不利益や無用なトラブルにつながるリスクが高いため、弁護士法によって禁止されています。
弁護士法では非弁行為のほか、関連する禁止行為が定められています。具体的には、以下のような行為が禁止されています。
・他人の権利の譲受けおよび実行を業とすること
・弁護士または法律事務所の標示・記載をすること
・弁護士が非弁行為等をする者から事件の周旋を受け、またはこれらの者に自己の名義を利用させること(非弁提携)
など企業においては、特に「紛争解決代行」を称する営業を受けた場合や、退職代行業者から連絡を受けた場合などに、相手方の対応が非弁行為に該当しないかどうかを検討しましょう。
この記事では非弁行為について、禁止されている理由・罰則・要件・具体例・企業の注意点などを解説します。
※この記事は、2024年7月10日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。
目次
非弁行為とは
「非弁行為」とは、弁護士または弁護士法人でない者が、報酬を得る目的で訴訟事件など一般の法律事件に関して法律事務を取り扱い、またはその周旋をすることを業とすることをいいます(弁護士法72条)。
簡単にいうと、「弁護士以外の人が法律のトラブル解決を請け負ってはいけない」というルールです。
非弁行為は、弁護士法によって禁止されている違法行為です。
非弁行為が禁止されている理由
非弁行為が弁護士法によって禁止されているのは、依頼者の不利益や無用なトラブルにつながるリスクが高いためです。
法律に関するトラブルを適切に解決するためには、高度な専門的知識を必要とします。
そのため弁護士法では、法律に関するトラブルの解決を取り扱うことができる者を、司法試験に合格して司法修習を終え、各都道府県の弁護士会に登録している弁護士または弁護士法人に限定しています。
その一方で、弁護士または弁護士法人でない者が法律トラブルを取り扱うと、不十分な知識等に基づいて誤ったアドバイスをした結果、依頼者に不利益を及ぼしたり、かえってトラブルを深刻化させたりするおそれがあります。
このような事態を防ぐため、弁護士または弁護士法人でない者が法律に関するトラブルの解決を取り扱うことは、「非弁行為」として罰則をもって禁止されています。
非弁行為に対する罰則
非弁行為をした者は、「2年以下の懲役または300万円以下の罰金」に処されます(弁護士法77条3号)。
また、法人の代表者や、法人・個人の代理人・使用人その他の従業者が、その法人または個人の業務に関して非弁行為をした場合には、その法人または個人にも「300万円以下の罰金」が科されます(同法78条2項)。
無報酬なら問題ない?
弁護士法違反に当たる非弁行為は、「報酬を得る目的」が要件とされています。
したがって、無報酬で法律トラブルの解決を請け負うことは、弁護士法違反の非弁行為に当たりません。
ただし、金銭の支払いを受けることに限らず、物をもらうことや接待を受けることも「報酬」に含まれます。
また、法律トラブルに関する依頼そのものは無報酬であっても、別の取引との間に一連性があり、全体を観察すると有償であると評価される場合は、「報酬を得る目的」があると判断されることがあるので注意が必要です。
非弁行為の要件
非弁行為に当たるのは、以下の要件を全て満たす行為です。
① 弁護士または弁護士法人でないこと
② 報酬を得る目的があること
③ 訴訟など一般の法律事件に関すること
④ 法律事務の取り扱いまたはその周旋を業とすること
⑤ 法律によって認められた行為でないこと
弁護士または弁護士法人でないこと
非弁行為は、弁護士または弁護士法人でない者についてのみ問題となります。弁護士または弁護士法人の行為は、非弁行為に当たりません。
報酬を得る目的があること
非弁行為に当たるのは、報酬を得る目的がある場合に限られます。したがって、無報酬の行為は非弁行為に該当しません。
ただし前述のとおり、報酬は金銭に限らない点や、他の取引との間に一連性があり、全体として有償と評価すべき場合には報酬を得る目的があると判断される可能性がある点に注意が必要です。
訴訟など一般の法律事件に関すること
非弁行為に当たるためには、以下のいずれかの事件に関する事務であることが必要です。
- 訴訟事件
- 非訟事件
- 審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件
- その他一般の法律事件
「法律事件」が何を意味するかについては、広く解する見解から狭く解する見解まで諸説あります。
大きく分けて、紛争性のある事件に限るとする「事件性必要説」と、紛争性の有無にかかわらず法律に関する事件であれば該当すると解釈する「事件性不要説」が対立している状況です。
司法書士会や行政書士会などは事件性必要説を主張していますが、弁護士会などは事件性不要説を主張しています。
法律事務の取り扱いまたはその周旋を業とすること
非弁行為に該当し得るのは、鑑定・代理・仲裁・和解その他の法律事務と、その周旋です。
「法律事務」とは、法律上の効果を発生・変更させる事項の処理をいいます。具体的には、法律相談や代理人としての活動、契約書の作成などが法律事務に当たります。
「周旋」とは、紹介することを意味します。例えば、弁護士に依頼者候補を紹介することなどが法律事務の周旋に当たります。
また、非弁行為に該当するためには、法律事務またはその周旋を「業とする」ことが必要です。
「業とする」とは、反復継続して行う意思をもって行うことを意味します。
したがって、1回限りのつもりで法律事務に対応した場合は非弁行為に当たりませんが、何度も継続して行う意思をもって法律事務を取り扱った場合は、たとえそれが初回であっても非弁行為に該当する可能性があります。
法律によって認められた行為でないこと
上記の要件を全て満たす行為であっても、法律によって特別に認められているものがあります。
例えば、以下のような行為は法律によって認められているため、非弁行為に当たりません。
・認定司法書士による簡裁訴訟代理等関係業務(司法書士法3条2項)
・債権回収会社による特定金銭債権の管理、回収(債権管理回収業に関する特別措置法11条1項)
など
非弁行為の具体例|よくあるパターンを紹介
非弁行為に当たる行為としては、以下の例が挙げられます。
・地主から土地を購入したいと考えている不動産業者が、その土地上に建物を所有している借地権者に対して、地主の代わりに立ち退き交渉を行った。
・債権回収のノウハウを持っていると称する業者が、貸しているお金を回収したい人から報酬を得て、債権回収を代行した。
・認定司法書士が、1件当たり140万円を超える債権回収の相談を受け、法的なアドバイスをした。
・「削除代行」などと標榜する業者が、インターネット上で誹謗中傷を受けている人から報酬を受け取って、SNSや匿名掲示板サイトの運営会社に対する削除請求を代行した。
など
非弁行為に関連する禁止行為
非弁行為そのものに加えて、弁護士法では非弁行為に関連する以下の行為が禁止されています。
① 他人の権利の譲受け・実行を業とすること(弁護士法73条)
② 弁護士または法律事務所の標示・記載等(同法74条)
③ 非弁提携(同法27条)
他人の権利の譲受け・実行を業とすること
他人の権利を譲り受けて、訴訟・調停・和解その他の手段によって、その権利を実行することを業とすることは禁止されています(弁護士法73条)。
主に弁護士ではない者が、権利の譲渡を受けてみだりに訴訟を誘発し、紛争を助長したり、非弁行為の禁止を潜脱したりする事態を防ぐための規制です。
権利を譲り受けた後に実行することが要件とされているため、主に回収困難となった債権を譲り受けるケースが想定されています。
「業とする」とは、非弁行為の要件と同様に、反復継続して行う意思をもって行うことを意味します。
ただし、形式的には弁護士法73条に抵触する行為であっても、主に弁護士ではない者が、権利の譲渡を受けてみだりに訴訟を誘発し、紛争を助長したり、非弁行為の禁止を潜脱したりするおそれがなく、社会的・経済的に正当な業務の範囲内に認められる場合は、弁護士法73条違反に該当しないと解されています(最高裁平成14年1月22日判決)。
例えばファクタリング業者(売掛金などの債権を買い取る業者)は、債権を譲り受けて実行することを業としていますが、あえて紛争を引き起こそうとして債権を譲り受けているなどの事情がない限り、弁護士法73条違反には当たらないと考えられます。
弁護士法73条に違反した者は「2年以下の懲役または300万円以下の罰金」に処されます(同法77条4号)。
また、法人の代表者や、法人・個人の代理人・使用人その他の従業者が、その法人または個人の業務に関して弁護士法73条に違反する行為をした場合には、その法人または個人にも「300万円以下の罰金」が科されます(同法78条2項)。
弁護士または法律事務所の標示・記載等
弁護士または弁護士法人でない者は、弁護士または法律事務所の標示・記載をしてはなりません(弁護士法74条1項)。
また、弁護士または弁護士法人でない者は、利益を得る目的で、法律相談その他法律事務を取り扱う旨の標示・記載をしてはなりません(同条2項)。
さらに、弁護士法人でない者は、その名称中に弁護士法人またはこれに類似する名称を用いてはなりません(同条3項)。
これらの標示・記載に関する規制は、弁護士または弁護士法人でない者を、そうであると相談者・依頼者が誤認しないようにするためのものです。
弁護士法74条に違反した者は「100万円以下の罰金」に処されます(同法77条の2)。
また、法人の代表者や、法人・個人の代理人・使用人その他の従業者が、その法人または個人の業務に関して弁護士法74条に違反する行為をした場合には、その法人または個人にも「100万円以下の罰金」が科されます(同法78条2項)。
非弁提携
弁護士は、弁護士法72条から74条の規定に違反する者から事件の周旋を受け、またはこれらの者に自己の名義を利用させてはなりません(弁護士法27条)。
資格ある弁護士が無資格者と結託することにより、適切なリーガルサービスの提供が阻害された結果、依頼者の利益が害されたり、トラブルが深刻化したりする事態を防ぐための規制です。同規制によって禁止されている弁護士の行為は「非弁提携」と呼ばれています。
なお非弁提携については、弁護士の職業倫理を定める「弁護士職務基本規程」でも規制されています。
具体的には、弁護士が弁護士または弁護士法人でない者との間で報酬を分配することが原則として禁止されており(同規程12条)、違反した弁護士は弁護士会による懲戒の対象となります。
非弁行為について企業が注意すべきポイント
非弁行為に関して、企業は特に以下のポイントに注意しましょう。
- 「紛争解決代行」の営業に要注意|必ず弁護士資格などの確認を
- 退職代行業者による非弁行為に要注意|越権行為には対応しない
「紛争解決代行」の営業に要注意|必ず弁護士資格などの確認を
「あなたに代わってトラブルを解決します」などと称して、紛争解決代行の営業をしてくる業者が存在します。
紛争解決に関する業務を代行できるのは、認定司法書士が1件当たり140万円以下の請求を代理する場合などごく一部の例外を除き、弁護士または弁護士法人のみです。
「紛争解決代行」を掲げる業者から営業を受けた場合は、必ず弁護士または弁護士法人であるかどうかを確認し、確認できなければ相談しないようにしましょう。
退職代行業者による非弁行為に要注意|越権行為には対応しない
従業員が退職しようとする際に、その従業員から依頼を受けた退職代行業者が会社へ連絡してくるケースがあります。
退職の意思を伝えるだけであれば問題ありませんが、会社との間で残業代の支払いや有給休暇の取得などに関する交渉を行うためには、原則として弁護士または弁護士法人であることが必要です。
無資格の退職代行業者は、残業代の支払いや有給休暇の取得などに関する交渉を請け負うことができません。退職代行業者が越権行為をしていると思われる場合には、会社として対応しないようにしましょう。
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