No.1広告(No.1表示)とは?
景品表示法上の問題点や違反の予防策などを
分かりやすく解説!

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この記事のまとめ

No.1広告(No.1表示)」とは、自社の商品等の品質が優良であることや、価格などの取引条件が有利であることを訴求するために、「No.1」であることを強調して行われる広告(表示)です。

例えば「売上No.1」「安さ第1位」などがNo.1広告に当たります。

No.1広告が合理的な根拠に基づかず、事実と異なる場合は、優良誤認表示または有利誤認表示として景品表示法違反に該当します。
不当なNo.1広告を行うと、消費者庁長官による措置命令や課徴金納付命令を受けることがあるほか、刑事罰が科されるおそれもあるので注意が必要です。

不当なNo.1広告によって自社の評判を落とさないようにするためには、役員や従業員に対して景品表示法のルールを周知・啓発すること、広告のチェック体制を整備すること、および不当表示が判明した場合の対応体制を整備することなどが重要になります。

この記事ではNo.1広告(No.1表示)について、景品表示法上の問題点や不当表示の予防策などを解説します。

ヒー

ある商品で「ECモールで販売数1位!」という広告を出したいのですが、その調査期間が特定の1時間だけなんだそうです…。これって大丈夫なんでしょうか?

ムートン

それは恣意的な調査と言えるかもしれず、法務としては景品表示法違反に注意が必要です。No.1広告を行う際の注意点を確認していきましょう!

※この記事は、2024年12月26日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。

※この記事では、法令名を次のように記載しています。

  • 景品表示法…不当景品類及び不当表示防止法

No.1広告(No.1表示)とは

No.1広告No.1表示)」とは、自社の商品等の品質が優良であることや、価格などの取引条件が有利であることを訴求するために、「No.1」であることを強調して行われる広告表示です。

例えば、以下のような広告(表示)がNo.1広告(No.1表示)に当たります。

No.1広告(No.1表示)の例

・売上No.1(第1位)
・安さNo.1(第1位、最安値)
・顧客満足度No.1(第1位)
・品質No.1(第1位)
・日本一、世界一
など

No.1広告に関する景品表示法上の問題点

No.1広告が合理的な根拠に基づかず、事実と異なる場合は、優良誤認表示または有利誤認表示として景品表示法違反に該当します。
不当なNo.1広告を行うと、消費者庁長官による措置命令や課徴金納付命令を受けることがあるほか、刑事罰が科されるおそれもあるので注意が必要です。

合理的な根拠に基づかないNo.1広告は、不当表示に当たる

景品表示法では、事業者に対し、一般消費者の自主的かつ合理的な選択を阻害する行為を禁止しています。

「No.1」であることについて合理的な根拠がない場合は、景品表示法によって禁止されている「優良誤認表示」や「有利誤認表示」に該当するおそれがあります。

優良誤認表示とは

優良誤認表示」とは、商品または役務サービス)の品質規格その他の内容に関する不当表示です(景品表示法5条1号)。
以下の①および②の要件をいずれも満たす事業者の表示が、優良誤認表示に当たります。

優良誤認表示の要件

① 以下のいずれかに該当すること
(a) 実際のものよりも著しく優良であると示すもの
(b) 事実に相違して競争関係にある事業者に係るものよりも著しく優良であると示すもの

② 一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められること

顧客満足度No.1」「品質No.1」など、商品やサービスの内容に関するNo.1広告はよく見られます。このような広告につき、「No.1」であることについて合理的な根拠がない場合は、優良誤認表示に該当する可能性が高いです。

有利誤認表示とは

有利誤認表示」とは、商品または役務サービス)の価格その他の取引条件に関する不当表示です(景品表示法5条2号)。
以下の①および②の要件をいずれも満たす事業者の表示が、有利誤認表示に当たります。

有利誤認表示の要件

① 以下のいずれかに該当すること
(a) 実際のものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認されるもの
(b) 競争事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認されるもの

② 一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められること

安さNo.1」「最安値」など、価格に関するNo.1広告もよく見られるところです。このような広告につき、「No.1」であることについて合理的な根拠がない場合は、有利誤認表示に該当する可能性が高いと考えられます。

No.1広告が不当表示に当たる場合のペナルティ|景品表示法に違反するとどうなる?

No.1広告が優良誤認表示または有利誤認表示に当たる場合、広告を行った事業者は以下のペナルティを受けるおそれがあります。

  • 措置命令
  • 課徴金納付命令
  • 刑事罰

措置命令

消費者庁長官は、優良誤認表示または有利誤認表示に当たるNo.1広告をしている事業者に対し、その広告の差止めや、再発防止のために必要な措置などを命ずることができます(景品表示法7条)。

措置命令に対しては従わなければならないほか、消費者庁のウェブサイトで措置命令を受けた旨が公表されるため、社会的評判の悪化などが懸念されます。

課徴金納付命令

優良誤認表示または有利誤認表示に当たるNo.1広告をしている事業者は、消費者庁長官から課徴金納付命令を受けることになります(景品表示法8条)。

課徴金の額は原則として、違反広告をしていた期間における売上額の3%です。ただし、消費者庁に対して違反事実を任意に報告した場合は、課徴金額が半分に減額されます(同法9条)。

刑事罰

2024年10月以降、優良誤認表示または有利誤認表示に当たるNo.1広告をした者は、「100万円以下の罰金」の対象となります(景品表示法48条)。
また、法人の代表者・代理人・使用人等が違反広告をした場合は、法人も「100万円以下の罰金」の対象となります(同法49条1項2号)。

さらに、消費者庁長官から措置命令を受けたにもかかわらず、その措置命令に違反した者は「2年以下の懲役または300万円以下の罰金」に処されます。懲役と罰金が併科されることもあります(同法46条)。
法人の代表者・代理人・使用人等が措置命令に違反した場合は、法人にも「3億円以下の罰金」が科されます(同法49条1項1号)。

No.1広告に合理的な根拠が認められるための要件

消費者庁は、No.1広告に合理的な根拠が認められるためには、少なくとも以下の4つの要件を満たしている必要があるとする考え方を示しています。

① 比較する商品等が適切に選定されていること
② 調査対象者が適切に選定されていること
③ 調査が公平な方法で実施されていること
④ 表示内容と調査結果が適切に対応していること

参考:消費者庁表示対策課「No.1表示に関する実態調査報告書」p17

比較する商品等が適切に選定されていること

No.1広告は、競合他社との比較において、自社の供給する商品やサービスがNo.1であることを示す表示です。
したがって、No.1広告に合理的な根拠があると認められるのは、比較対象となるべき同種または類似の商品やサービスを適切に選定した上で、比較した際の順位を調査する必要があります。

調査対象者が適切に選定されていること

顧客満足度などの主観的な評価によってNo.1広告を行う場合は、売上額などの客観的な数値を用いる場合に比べて、調査者による恣意性や調査対象者のバイアスが働きやすいことが懸念されます。

このような恣意性やバイアスを排除するためには、調査対象者を無作為に抽出しなければなりません。

また、評価を行う資格がある人を調査対象者に選定することも大切です。
例えば、実際に商品やサービスを利用したことがない人に対してアンケートを取ったのに、それらの人を「顧客」と称して「顧客満足度No.1」などと広告することは、不適切な表示に当たります。

調査が公平な方法で実施されていること

No.1広告に関する調査内容の客観性が担保されるように、調査方法についても、調査者による恣意性や調査対象者のバイアスを排除して公平な調査が行われるようにする必要があります。
結論ありきの調査を行うのではなく、あくまでも客観的かつ公平な方法で調査を行うことが大切です。

表示内容と調査結果が適切に対応していること

No.1広告において表示する調査方法やその結果は、実際に行った調査を正しく反映している必要があります。
調査の条件を正確に記載していなかったり、調査結果を恣意的に切り取ったり改変したりすると、不当表示に該当するのでご注意ください。

No.1広告のOK例とNG例

合理的な根拠があると考えられるNo.1広告と、不当なNo.1広告の具体例をそれぞれ紹介します。

合理的な根拠があるNo.1広告の具体例

以下のようなNo.1広告には、合理的な根拠があり、景品表示法違反には該当しないと考えられます。

A市内で販売されている競合商品の価格を全て調査し、自社商品の価格が最も安いことを確認した上で、「A市内最安値」とする広告を掲載した。

B市内のスーパーマーケットで販売されている競合商品の売上高を全て調査し、自社商品の売上高が最も多いことを確認した上で、「B市内売上No.1」とする広告を掲載した。

不当なNo.1広告の具体例

以下のようなNo.1広告は、合理的な根拠に基づいておらず不当であり、景品表示法違反に該当すると考えられます。

× 競合サービスのうち、市場における主要なものを比較対象に含めることなくアンケート調査を行い、「顧客満足度No.1」とする広告を掲載した。

× 「顧客満足度No.1」と表記しているのに、実際には自社商品を利用したことがない人を対象にアンケートを行っていた

× 通常よりも著しく安い価格でサービスを提供した顧客に対してアンケートを行った上で、「コスパが良いと思う○○サービスNo.1」とする広告を掲載した。

× 自社の商品を選択肢の最上位に固定し、選択されやすくなるようにした上でアンケート調査を行い、「おすすめしたい商品No.1」とする広告を掲載した。

× 自社商品が1位になるまで調査を繰り返す、1位になったタイミングで調査を終了するなど、結論ありきの恣意的な調査が行われていた。

不当なNo.1広告によって評判を落とさないための対策

企業が合理的な根拠のない不当なNo.1広告を行うと、一般消費者や消費者庁から指摘を受け、社会的な評判を落としてしまうおそれがあります。

不当なNo.1広告が行われてしまうのは、景品表示法による不当表示規制に対する理解のなさや、広告に関するチェック体制の不備などに原因があるケースが多いです。各企業においては、以下のような対策を徹底しましょう。

  • 役員や従業員に対する周知・啓発
  • 広告のチェック体制の整備
  • 不当表示が判明した場合の対応体制の整備

役員や従業員に対する周知・啓発

広告に関与する役員や従業員に対しては、景品表示法の考え方を周知および啓発することが大切です。
また企業全体として、景品表示法を含む法令遵守の方針や、法令遵守のためにとるべき手順などを明確化することが求められます。

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広告のチェック体制の整備

実際に掲出しようとする広告については、景品表示法違反に当たる表現が含まれていないかどうかを、きちんと確認できるようチェック体制を整えることが大切です。

具体的には、以下のポイントを押さえた体制整備を行いましょう。

  • 広告の根拠となる情報(調査の方法や結果など)を確認する。
  • 確認した情報を必要に応じて共有し、各関連部署において確認できるようにする。
  • 広告を管理する担当者や担当部門をあらかじめ定めておく。
  • 広告の根拠となる情報を一定期間保存するなど、事後的に確認できるようにする。

なお、第三者機関が実施した調査を盲目的に信用し、No.1広告の根拠として用いるのは不適切です。調査内容が表示内容と適切に対応しているかどうかなど、No.1広告の合理的な根拠として堪え得るかどうかを、自社の責任において確認する必要があります。
広告管理の体制やフローなどを整備する際には、上記のことに留意しましょう。

不当表示が判明した場合の対応体制の整備

優良誤認表示または有利誤認表示に当たるNo.1広告を行ってしまったことが判明したら、事実関係を迅速かつ正確に把握した上で、再発防止に向けた措置等を講じる必要があります。

実際に違反広告が判明してから調査体制を整えたのでは、迅速かつ正確な調査を行うことは困難です。平時の段階から、違反広告が判明した場合の担当部署担当者を定め、実際の対応手順などをマニュアル化しておきましょう。

ムートン

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参考文献

消費者庁表示対策課「No.1表示に関する実態調査報告書」