広告審査とは?
目的・チェックすべき法律・
業務の流れ・注意点などを解説!

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要注意表現を紹介!広告審査の基本が分かるハンドブック
この記事のまとめ

広告審査」とは、会社が掲出しようとする広告内容を、法令やガイドラインに照らして問題ないかどうかチェックする業務です。

広告については、景品表示法・消費者契約法・健康増進法・薬機法などで規制が定められています。法務担当者は、取引相手や商品・サービスの種類に応じて、適用される法律を把握し、各法令のガイドラインも踏まえた上で広告審査を行いましょう。

今回は企業における広告審査について、目的・チェックすべき法律・業務の流れ・法務担当者の注意点などを解説します。

ヒー

昨今、広告に使用される表現が過激化しているように思います。

ムートン

そうですね。現代は広告にあふれていますから、広告を作成する側としては、少しでもインパクトのある広告にしたいのだと思います。しかし、インパクトを求めるあまり、法令に違反する内容や不適切な表現が用いられていたら元も子もありません。事前にそうした広告にストップをかけるのが法務部門の役割です。

※この記事は、2023年1月31日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。

※この記事では、法令名を次のように記載しています。
・景品表示法…不当景品類及び不当表示防止法
・薬機法…医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律

広告審査とは

広告審査」とは、会社が掲出しようとする広告内容を、法令やガイドライン(以下、法令等)に照らして問題ないかどうかチェックする業務です。

広告表現については、消費者保護のために、各種の法令等によって規制が設けられています。

広告文案を作成するのは営業部門などが多いと思われますが、作成された広告が「法令等に違反していないか」を確認するのは、法令等に精通している法務部門の役割になります。

広告審査の目的

広告審査の目的は、

  • 法令等違反となる広告表現
  • 法令等違反とはならないものの、消費者に誤解を与える広告表現

を排除することにあります。

法令等で広告規制が定められているのは、「消費者保護」を図るためであり、これらの規制は、当然順守しなければなりません。

また、法令等違反にはならなくとも、消費者に誤解を与えかねない広告表現は、消費者から反感を買い、自社のレピュテーション(評判)に悪影響を及ぼしかねません。

そこで法務部門が主体となり、自社の広告について、不適切な広告表現がないかを事前に確認する必要があります。

広告規制を定める主な法律・違反広告の表現例

広告規制は、主に以下の法律において定められています。

・景品表示法
・消費者契約法
・健康増進法
・薬機法
・一部の知的財産法(商標法・不正競争防止法など)
・金融商品取引法

各法律において、どのような広告表現が禁止されているのかを見ていきましょう。

景品表示法

景品表示法とは、商品やサービスの品質、内容、価格等を偽る表示を厳しく規制すること等により、消費者保護を図る法律です。

景品表示法では、主に「優良誤認表示」と「有利誤認表示」に当たる広告表現が禁止されています。

優良誤認表示(景品表示法5条1号)

商品やサービスの品質・規格などに関して、以下の表示を行うことは禁止されています。

実際のものよりも著しく優良であると示す表示

・事実に相違して、他社の類似商品・サービスよりも著しく優良であると示す表示

有利誤認表示(同条2号)

商品やサービスの価格などの取引条件に関して、以下の表示を行うことは禁止されています。

・実際のものよりも著しく有利であると消費者に誤認される表示

・他社の類似商品・サービスよりも著しく有利であると消費者に誤認される表示

消費者契約法

消費者契約法とは、消費者と事業者が締結する契約(=消費者契約)について、情報や交渉力で劣る消費者を保護するルールを定めた法律です。

具体的には、事業者による一定の不当な勧誘を禁止しており、仮に、不当な勧誘により契約が締結された場合は、消費者が後から契約を取り消すことができると定めています。

ムートン

広告表現については、以下のような不当勧誘に当たる表現を使用しないように注意する必要があります。

①重要事実の不実告知

②将来における変動が不確実な事項に係る断定的判断の提供


③不利益事実の不告知


など

健康増進法

健康増進法とは、国民の健康を増進するための基本方針や各種ルールを定めた法律です。

ムートン

健康増進法が定める身近なルールとしては、「望まない受動喫煙の防止」があります。

また、健康増進法では、食品の広告に関する以下の事項につき、著しく事実と異なる表示および著しく人を誤認させるような表示が禁止されています(健康増進法65条1項、健康増進法に規定する特別用途表示の許可等に関する内閣府令19条)。

①健康の保持増進の効果

②含有する食品または成分の量

③特定の食品または成分を含有する旨

④熱量

⑤人の体を美化し、魅力を増し、容ぼうを変え、または皮膚もしくは毛髪を健やかに保つことに資する効果

薬機法

薬機法とは、医薬品・医薬部外品・化粧品などの品質・有効性・安全性を確保するためのルールを定めた法律です。

広告表現に関し、薬機法では、医薬品・医薬部外品・化粧品などに関する虚偽広告誇大広告が禁止されています(薬機法66条1項)。

(例)
「強力育毛剤(育毛効果なし)」
「カリスマ薬剤師が調合! 新世代の医薬品」
「必ず効果を発揮する○○病治療薬」
「当社比3倍の効能を持つ医薬品(3倍の根拠が不明)」

また、医薬品等の効能・効果・性能について、医師などが保証したと誤解されるおそれのある広告表現も禁止です(同条2項)。

(例)
「○○医師も服用中!」

一部の知的財産法(商標法・不正競争防止法など)

一部の知的財産法も、広告表現に関連するルールを定めています。

例えば、商標法は、他人(他社)の登録商標を、

① 指定商品
② 指定役務
③ ①②に類似する商品・役務

の広告表現に無断使用した場合、商標権侵害になると定めています(商標法25条、37条)。

商標権侵害に当たる広告は、差止請求損害賠償請求の対象です(同法36条、民法709条)。
また、商標登録されていなくとも、不正競争防止法の「商品等表示」に該当する場合、差止請求や損害賠償請求の対象となります(不正競争防止法3条、4条)。

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商品等表示って何ですか?

ムートン

「人の業務に係る氏名・商号・商標・標章・商品の容器・包装など、商品または営業を表示するもの」です。以下に該当する広告表現を使用した場合、不正競争防止法違反となります。

・他人の商品等表示として、一般的に広く認識されているものと同一もしくは類似の商品等表示を使用して、自社と他社の商品や営業を混同させる広告表現
・自己の商品等表示として、他人の著名な商品等表示と同一もしくは類似のものを使用する広告表現

さらに、以下を誤認させるような広告表現(=誤認惹起表示)も不正競争防止法違反に当たります(同条2条1項20号)。

・商品の原産地・品質・内容・製造方法・用途・数量
・サービスの質・内容・用途・数量

金融商品取引法

金融商品取引法とは、資本市場の公正を確保して投資家を保護するため、有価証券(株券や国債など)およびデリバティブ取引(先物取引など)に関するルールを定めた法律です。

金融商品取引法では、金融商品取引業者(証券会社など)が行う広告に関する規制が定められています。

金融商品取引業者が行う広告には、法定事項を表示しなければなりません(同法37条1項)。具体的には、金融商品取引業者の商号・登録番号や、損失リスクに関する事項などの表示が義務付けられています。

また、金融商品取引業者が行う広告では、取引による利益の見込みなどについて、以下の表示は禁止されます(同条2項)。

・著しく事実に相違する表示
・著しく人を誤認させる表示

金融商品取引業者が不当な広告を行った場合、金融庁による業務改善命令などの行政処分の対象となります(同法51条、52条)。

広告審査業務の流れ

広告審査業務は、大まかに以下の流れで行います。

1|広告審査の受付
2|広告内容のチェック
3|所管部門との内容調整
4|広告の掲出

1|広告審査の受付

広告審査を担当する部署(法務部門など)は、広告を作成した部門から広告審査を受け付けます。メンバーの業務状況や各法令・ガイドラインへの習熟度を考慮して、適任者を担当に割り当てましょう。

案件の割り当てを効率的に行うため、広告審査の受付窓口は一本化すべきです。また、申請書をフォーマット化するなどして、スムーズに広告審査を受け付けられるように工夫しましょう。

2|広告内容のチェック

広告審査の担当者は、関連法令の規制内容を踏まえて、広告内容に問題がないかどうかチェックを行います。

適法な広告か、それとも不適切な広告であるかは、必ずしも明確に区別できるものではありません。判断が微妙な広告については、どうしても担当者が主観的に審査しなければならない部分があります。

広告審査の客観性を確保するためには、複数の担当者による審査を行うのがよいでしょう。

3|所管部門との内容調整

広告審査で特に問題点が指摘されなければ、広告を作成した部門に連絡し、掲出に向けた手続きを進めてもらいます。

これに対して、広告審査で何らかの問題が指摘された場合には、広告表現の変更について、両部門間で調整を行います。

ムートン

広告審査担当者は、あくまでもリスク回避の観点からブレーキ役に徹し、危険な広告表現については積極的に差し替えを主張する姿勢が求められます。

4|広告の掲出

広告審査を経て、問題のない内容に仕上がった段階で、実際に広告を掲出します。掲出された広告については、審査内容が適切に反映されているかを念のため確認しましょう。

法務担当者が広告審査を行う際の注意点

法務担当者が広告審査を行う際には、不適切な広告の掲出を許さないように、以下の各点に注意して対応しましょう。

・適用される法令の種類を把握する
・各法令のガイドラインもチェックする
・広告審査は保守的に行うべき|リスクがあれば指摘する

適用される法令の種類を把握する

まずは、審査対象の広告について、どの法令の広告規制が適用されるのかを確認する必要があります。

①景品表示法
→商品・サービスに関する広告表現全般に適用

②消費者契約法
→個人向け商品・サービスに関する広告表現に適用

③健康増進法
→食品に関する広告表現に適用

④薬機法
→医薬品・医薬部外品・化粧品・医療機器・再生医療等製品に関する広告表現に適用

⑤商標法
→他人の登録商標を用いた広告表現に適用

⑥不正競争防止法違反
→他人の著名な商品等表示、商品の原産地・品質・内容・製造方法・用途・数量、サービスの質・内容・用途・数量に関する広告表現に適用

⑦金融商品取引法
→金融商品取引業者による広告表現に適用

複数の法令が適用される場合もあることに留意して、適用法令を漏れなく確認しましょう。

各法令のガイドラインもチェックする

法令上の広告規制については、所管の監督官庁がガイドラインを公表している場合があります。

①景品表示法
消費者庁ウェブサイト「景品表示法関係ガイドライン等」

②健康増進法
消費者庁ウェブサイト「健康増進法(誇大表示の禁止)」

③薬機法
厚生労働省ウェブサイト「医薬品等の広告規制について」

④金融商品取引法
金融庁ウェブサイト「法令・指針等」

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各ガイドラインには、禁止される広告表現の具体例や判断基準などがまとめられており、広告審査の際には大いに参考となります。

法令上の条文だけでなく、ガイドラインの内容にも留意しつつ広告審査を行いましょう。

広告審査は保守的に行うべき|リスクがあれば指摘する

広告表現には無限の幅があり、他の表現に代替することはいくらでも可能です。したがって、少しでも問題がありそうなものは、会社のリスクを考慮して差し替えるべきでしょう。

広告審査担当者の役割は、広告表現が不適切と判断されるリスクを見落とさず、確実に社内における検討の俎上に載せることです。そのためには、保守的な視点から広告審査を行い、わずかなリスクであっても指摘する姿勢が求められます。

この記事のまとめ

広告審査の記事は以上です。最新の記事に関する情報は、契約ウォッチのメルマガで配信しています。ぜひ、メルマガにご登録ください!

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